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落日の驚愕、奇跡の軍議

「……馬鹿な。あり得ぬ。断じてあり得ぬ!」 徳川家康は、震える手で遠眼鏡を投げ捨てた。 眼下に広がる大坂の空を、黄金の光が帯状に貫き、それが巨大な城郭へと吸い込まれていくのを、数万の徳川勢と共に目撃したのだ。


「正純……今の光、あれは何だ。なぜ、あのような怪鳥がこの冬の空を埋め尽くすのだ!」 側近の本多正純も、顔を真っ青にして言葉を失っている。 「……分かりませぬ。されど、城内へ降りた光の中に、石田三成に似た男を見たという物見の報告が相次いでおります」


「三成だと!? 奴は十四年前に、このわしが六条河原で処刑したはずだ!」 家康の背筋に、かつてない冷たい戦慄が走った。単なる兵力差では測れない、人智を超えた何かが大坂城に味方しようとしている。 「……天海を呼べ! 天海をこれへ出せ! 奴の霊力で、あの光を打ち消せと申せ!」


大坂城:本丸御殿

一方、城内では、静寂と熱気が交互に押し寄せていた。 人の姿に戻った三成、ナオト、弘の三人は、自分たちを囲む武将たちの顔ぶれと、その「年月の重み」に立ち竦んでいた。


「……十四年、ですか」 三成が、掠れた声で呟いた。 目の前の淀殿の目尻には、関ヶ原の頃にはなかった細い皺が刻まれ、幼かった秀頼は、今や父・秀吉を凌ぐほどの偉丈夫となっている。


「信じられねえ……」 ナオトは、震える手で自分の顔を触った。 「俺たちにとっては、さっきまで佐和山で逃げてたはずなのに。ここは……1614年? 大坂冬の陣……歴史の教科書で読んだ、豊臣が滅びる最後の戦いじゃないか」


「ナオト殿、先ほどから『滅びる』とか『教科書』とか、妙なことを申されるな」 真田幸村が、鋭い視線のまま一歩前に出た。 「治部少輔様、そしてそこの若者。確かに貴殿らは、十四年前のあの日から時を止めて現れたようだ。だが、今のこの城に、感傷に浸る暇はない。外を見よ」


幸村が指差した先には、水平線まで埋め尽くすような徳川の「葵」の旗印が、蟻の這い出る隙もなく城を囲んでいた。 「徳川の軍勢、二十万。対する我らは、浪人衆を合わせて十万。もはや豊臣に味方する大名は一人もおらぬ。この絶望的な状況を、貴殿らはその光と共に変えられるのか?」


三成は、ゆっくりと視線を上げ、城を取り囲む敵勢を見据えた。 「……幸村殿。この三成、関ヶ原では確かに負けました。忠義だけでは勝てぬことを、身を以て知った。しかし――」


三成は、隣に立つナオトの肩に手を置いた。 「このナオト殿や、神使アカハラが導いたこの奇跡は、単なる逃走のために与えられたものではあるまい。家康……あの老いた狸が、最も恐れるのは何だと思う?」


三成の瞳に、かつてない鋭い光が宿る。 「それは、『計算の立たぬことわり』だ。我らが持ってきたのは、未来の知識と、神の翼。この城は、もはや籠城の城ではない」


ナオトは、三成の言葉に背中を押されるように、腰袋から現代の「レーザー墨出し器」を取り出し、スイッチを入れた。 暗い広間の床に、真っ直ぐな、一点の曇りもない赤い光の線が走る。


「……幸村さん、大野さん、木村さん。俺に少し時間をください。この城を、徳川が一生かかっても突破できない『最強の壁』にして見せます」


淀殿が、その赤い光を見つめながら、震える声で微笑んだ。 「……やはり、あなたは希望の光を連れてきてくれたのですね、治部」

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