第五話 「いっちゃん、もう一人、妹が生まれる」
皆様、おはようございます。
昭和17年夏。
福山の立派な新居の離れで、新しい命が産声を上げました。
「産めよ増やせよ」という時代の空気の中、上山家に加わったのは六番目の女の子。
赤ちゃんを囲んで繰り広げられる、姉妹たちの可笑しくも賑やかな「サル」論争をお楽しみください。
前にも言ったが、福山の家は中庭があって、離れ屋敷もある立派な家だった。
昭和17年8月、この離れで母はもう一人、女の子を産んだ。
世の中は産めよ増やせよの時代。
男子の出産をしなければ、その家の嫁じゃないという空気があったが、父は無事に生まれた六人目の娘の誕生を素直に喜んだ。
私は、生まれたばかり赤ちゃんを見ながら、
「なんかサルみたいじゃなぁ」
と言った。すると伝姉が、
「心配せんでもええが。いっちゃんも生まれた時はサルじゃったんじゃき」
「え〜、うちはサルじゃなあよ」
「サルじゃったんじゃって。なぁ、明姉」
すると明姉は、
「生まれてすぐは、誰でもこんなんになるんよ」
と笑った。
「じゃあ、伝姉もサルじゃったんじゃ」
と私がいうと、
「うちはサルじゃねえで。生まれながらの人間じゃ」
と伝姉。
「もう、いっつも自分ばっかり!」
怒る私に、明姉が、
「伝ちゃんも生まれた時はサルみたいじゃったよ」
と教えてくれた。
「え、うちもサルじゃったん? うそじゃろ。え〜ガックシじゃわ〜」
伝姉がそう言うと家族みんなが大笑いした。
こうして『香代子』と名付けられた末娘を加えて、上山家は六人の娘がいる家庭となった。
(つづく)
第五話をお読みいただき、ありがとうございました。
末娘の香代子が加わり、ついに六人姉妹が揃った上山家。
「自分は生まれながらの人間じゃ」と言い張る傳姉さんの強がりも、明姉の一言で崩れ去る……そんな何気ない笑い声が、家中に満ちていました。
さて、今週、お付き合いいただきありがとうございました。
来週は、いっちゃんがいよいよ国民学校に入学。
しかし、時代は少しずつ、その足音を険しく変えてゆきます。
来週もお楽しみに。




