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いっちゃん(第一部)  作者: Thomas C. Knitter


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第十五話 「いっちゃん、農家で子守りをする」

皆様、おはようございます。


置き屋を離れ、農家へと送られた衣津子さん。

そこでの仕事はさらに過酷な「飯炊きと子守り」でしたが、持ち前の子供好きが、周囲の人々の心を動かしてゆきます。

ふた月ばかり過ぎた頃、私は急に農家に行けと女将さんに言われた。


「お前は子守りは上手だが、顔の器量が悪いし、ここに居てもこの先、やって行けん。私の知り合いに子どもが生まれたばかりのうちがあって、お前を子守りにほしいという人がおる。そこは農家だから食べることに困ることもない。もう話はできとうけん、明日から、お前はそこに行きんしゃい」


私は不安だったが、何も言い返すことができず、ただ頷いた。

次の日、私は迎えにきた農家の主人に連れられ、その家に入った。


そのお家は藁葺き屋根の大きな家だった。

私はそこで飯炊きと子守りをするようになった。

家の人はみんな優しくしてくれた。

もちろん、お手伝いなので、洗濯や掃除などやることはたくさんあった。

それでも、やっぱりご飯が食べられることは、私にとって何よりの報酬であった。


田植えの時期になったある日、親戚の田植えの手伝いに行くので、ついて来いと言われ、私はついて行った。田植えの間、子供の世話をする人間が必要だったのだ。

とても大きなうちで、田んぼもかなり広かった。一日では終わらないため、二、三日泊まりがけになるということだった。

その家に着くと、私は、そのうちの子やら、他の親戚の子も一緒に面倒をみることになった。

置き屋で子供と接するのは慣れていたから、どの子ともすぐに仲良くなった。

その子らは「れいこちゃん、れいこちゃん」と言って私にまとわりついてきた。

私はあやとりをしたり、おじゃみをしたりして仲良く遊んだ。

夜は、親戚一同が一緒にご飯を食べた。私は一段下がったところでご飯を食べた。

すると、そのうちの子が、


「今日、れいこちゃんが遊んでくれたっちゃけん、楽しかった」


と言った。すると、他の子もうんうんと頷き、


「れいこちゃんがいてくれてたのしかった」


と口々に言い出した。

それを聞いたその家の主人が、私を見て


「あんたがれいこちゃん? すごかね〜。子供らがこんなに喜ぶのは今まで見たことなかよ。今度、秋の稲刈りの時も来てくれるばいね?」


と言われた。

私は、お世話になっている家の奥さんの顔を見た。奥さんが優しく頷くように私を見ていたので、


「ありがとうございます。また稲刈りの時に来ます」


と言った。

主人は嬉しそうに、


「まぁ、こっちへ上がって、子供らと一緒にご飯を食べんしゃい」


と言ってくれた。

私は、少し緊張しながら座敷の上へと上がった。

すると、子供達が、


「れいこちゃ〜ん」


と言って一斉にまとわりついてきた。


「こりゃ、スゴか。あんたがおってくれりゃ、安心して農作業ができるバイ。絶対、秋も来んしゃいね」


と言ってもらえた。

私は気恥ずかしかったが、


「はい」


と言って大きく頷いた。


(つづく)


第十五話をお読みいただき、ありがとうございました。


置き屋の女将さんに「器量が悪い」と言われ、自信を失いかけていたいっちゃん。

しかし、農家の子どもたちは、彼女の優しい心と遊びの才能を見逃しませんでした。

「座敷へ上がりんしゃい」

その一言は、いっちゃんの胸に静かに残りました。


来週もお楽しみに。

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