第十三話 「いっちゃん、家出する」
皆様、おはようございます。
戦後の混乱が続く昭和20年秋。
養女先の山本家で飢えに苦しんでいた衣津子は、ある日、近所の柿を食べて酷く叱られてしまいます。
8月8日の大空襲のわずか一週間後、戦争は終わった。
ラジオの前に立たされて『天皇陛下のお言葉』を聞いた。
何を言ってるかわからなかったが、大人たちが口々に「負けた」と言って泣いていた。
私は(戦争、終わったのか)とだけ思った。
その後、どうなるとか何も考えていなかった。
それからふた月が過ぎた頃、山々はすっかり秋の模様に衣替えを終えていた。
戦後の福山の街はあちこち空襲の被害で壊れた建物の間にバラックが立ち並んでいた。
が、私の住んでいる周辺は空襲に遭わなかったため、見た目は以前と何も変わっていなかった。
私は山本の家で、あまり食べさせてもらえず、お腹が空いていた。
近所の柿の木に実がついているのを見つけ、なんとか木に登ってそれを食べようとしたが近所の人に見つかってこっぴどく怒られた。
それが養母にばれてしまい、私はでっかいお灸を首と背中の付け根あたりに据えられた。
ところが火が大きくなりすぎて火傷のようになってしまい、私は熱さに耐えきれなくなって外へ飛び出した。
(もうここへは帰らない)
と決心した私は、福山の空襲後、実母が身を寄せている成羽へ行こうと駅に向かった。
福山駅から上りの岡山行きの汽車に乗って倉敷まで行った。
ここで反対方向の汽車に乗り換えて「たかはし」(高梁駅)で降りることは覚えていたので、ホームへ出て反対側に行く汽車に乗った。
(これで成羽に行ける。もう叱られなくて済む)
そう思った私は、少しホッとした。
しかし、次々と駅には着くが、「たかはし」とは言わない。
おかしいな?とは思ったが、(まぁ、そのうち着くだろう)とずっとその汽車に乗っていた。
随分、時間が経って『もじ〜、もじ〜、終点です』という声が聞こえた。
私は仕方なくその駅で降りた。
(つづく)
第十三話をお読みいただき、ありがとうございました。
倉敷で乗り換え、高梁に着くはずが、気づけば終点、九州の「門司」。
見知らぬ駅に降り立った8歳の少女。
叱られずに済むという安堵の裏で、物語は思わぬ方向へ動き始めます。
果たしていっちゃんの運命は。
明日もお楽しみに。




