第十話 「いっちゃん、山本禮子になる」
皆様、おはようございます。
住み慣れた上山家を離れ、養女として山本家に入ったいっちゃん。
そこで待っていたのは、実家での温かな日々とは正反対の、冷たく厳しい現実でした。
孤独と空腹の中、いっちゃんなりの「生き抜くための知恵」が芽生え始めます。
養女に入った家は、「山本」という姓だった。
養父は優しそうに見えたが、養母はかなり気性が荒そうな顔に見えた。
「衣津子」という名前は山本家には合わないと言われ、お寺で「禮子」と名を改められた。
私は『上山衣津子』から『山本禮子』になった。
学校も東国民学校から山手の国民学校に移り、なんだか別の人間になったような気がした。
朝食は、私がかまどでご飯を炊かなければならなかった。
ご飯は食べさせてもらえたが、養母の機嫌が悪いとご飯抜きのこともあった。
一度、お腹が空いた状態でご飯の炊き上がる匂いがすると我慢できなくなって先に少し食べてしまったことがある。その時は烈火の如く養母に怒られた。
それ以来、私はご飯が炊き上がる前に釜の蓋を開けて、煮湯状態のご飯の上だけを掬って食べるようにした。こうすれば炊き上がった時に食べた痕跡が残らないので、これはうまくいった。
その時、私は思った。
――自分で食べていかないと、生きていけない。
(つづく)
第十話をお読みいただき、ありがとうございました。
炊きあがる前の「煮湯のご飯」を掬って食べる――。
叱られないように、でも飢えを凌ぐために、必死の思いで編み出した方法。
「自分で食べていかないと生きていけない」との思いを強くした、いっちゃん。
しかし、さらなる悲しみの報せが――。
来週もお楽しみに。




