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パティシエ×異世界転生_乳化の錬金術師 ~転生パティシエは甘味で世界を繋ぐ~  作者: もしものべりすと


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第十五章 皇帝との謁見

翌日、蓮たちは帝国の宮殿に召喚された。


宮殿は、王国の王宮とは対照的だった。華やかさよりも、威圧感を重視した設計。高い天井、暗い廊下、そして至る所に立つ衛兵たち。


蓮たちは、玉座の間に通された。


そこには、帝国皇帝が座っていた。


五十代の、厳格な顔つきの男だ。白髪交じりの髪を短く刈り込み、軍服を身にまとっている。


そして、その傍らに——。


黒いローブを纏った男が立っていた。


宰相・ケンゴ・シュヴァルツ。


黒田健吾。


「ようこそ、王国の使者たち」


皇帝が、低い声で言った。


「遠路はるばる、ご苦労だった」


「お招きいただき、感謝いたします、陛下」


セラフィーナが、外交的な挨拶を返した。


「今回の訪問の目的は、和平の可能性を探ることです。両国の緊張を緩和し、平和的な解決を——」


「無駄だ」


黒田の声が、セラフィーナの言葉を遮った。


「和平など、あり得ない。帝国は、戦争によって繁栄を取り戻す。それが、唯一の道だ」


セラフィーナは、黒田を睨みつけた。


「宰相殿、それは——」


「王女殿下には、黙っていてもらおう」


黒田は、嘲笑を浮かべた。


「俺が話したいのは、そこの男だ」


黒田の視線が、蓮に向けられた。


「久しぶりだな、神崎。いや、今は『レン・カルディア』か」


「……ああ、久しぶりだ、黒田」


蓮は、黒田の視線を受け止めた。


「こっちでも、出世したみたいだな。宰相か。すごいじゃないか」


「お前もな。ギルドマスターだって? 才能もないのに、よくやるよ」


黒田の声には、明らかな嘲りが含まれていた。


「でも、それも終わりだ。俺は、お前の全てを奪う。この世界でも、お前を叩き潰す」


「……なぜだ」


蓮は、静かに尋ねた。


「なぜ、そこまで俺を憎む。前の世界でも、今の世界でも。俺は、お前に何かしたか」


黒田の表情が、一瞬歪んだ。


「お前は……何もしていない」


「じゃあ、なぜ——」


「それが、許せねえんだよ!」


黒田が、叫んだ。


「お前は、才能がないのに、諦めなかった! 何度失敗しても、何度罵倒されても、夢を捨てなかった! 俺には、それができなかった!」


黒田の目には、怒りと——悲しみが混じっていた。


「俺は、才能があった。お前よりも、ずっと上だった。でも、俺は怖かったんだ。本気を出して、失敗するのが怖かった。だから、いつも適当にやって、お前を見下して、自分を守っていた」


「……」


「でも、お前は違った。才能がないのに、本気で努力していた。俺は、それが羨ましかった。そして、憎らしかった」


蓮は、黒田の言葉に驚いていた。


前世での黒田の態度。あれは、嫉妬だったのか。蓮への憧れの裏返しだったのか。


「だから、俺は決めた。この世界では、俺がお前を超える。お前が築き上げたものを、全部奪い取る。そうすれば、俺の勝ちだ」


黒田は、蓮を睨みつけた。


「戦争を起こす。王国を滅ぼす。そして、お前を絶望させる。それが、俺の目的だ」


皇帝が、咳払いをした。


「宰相、私的な感情を、国政に持ち込むのは——」


「黙れ」


黒田は、皇帝に向かって言い放った。


皇帝の顔が、強張った。


「貴様……」


「俺は、お前の操り人形じゃない。俺には、『人心掌握』の力がある。この帝国は、すでに俺の支配下にある」


黒田は、指を鳴らした。


すると、玉座の間にいた衛兵たちが、一斉に動いた。


皇帝を、取り囲む。


「な、何をする!」


「陛下、あなたには、しばらくお休みいただきます」


黒田は、冷たく微笑んだ。


「これからは、俺がこの国を動かす」


衛兵たちが、皇帝を連れ去っていく。


そして、残りの衛兵が、蓮たちを取り囲んだ。


「王国の使者たちも、投獄だ。いい情報源になるだろう」


「黒田!」


蓮が叫んだが、衛兵たちに取り押さえられた。


セラフィーナも、護衛の騎士たちも、抵抗する間もなく拘束された。


「連れて行け」


黒田の命令で、蓮たちは玉座の間から引きずり出された。


最後に見たのは、黒田の勝ち誇った笑顔だった。


蓮は、帝国の地下牢に放り込まれた。


冷たい石の床。小さな格子窓から差し込む、わずかな光。


セラフィーナも、護衛の騎士たちも、別々の独房に入れられた。


蓮は、壁にもたれて座り込んだ。


「……くそ」


状況は、最悪だった。


黒田にクーデターを起こされ、皇帝は幽閉され、自分たちは投獄された。


このまま処刑されるのか。それとも、人質として利用されるのか。


蓮には、打つ手がなかった。


しかし、蓮は諦めなかった。


「まだだ……。まだ、終わりじゃない」


蓮は、牢の中で、黒田の言葉を思い出していた。


「お前は、才能がないのに、諦めなかった」


そうだ。蓮は、諦めない。どんな状況でも、最後まで足掻く。


それが、蓮の唯一の武器だ。


蓮は、目を閉じた。


この牢から出る方法を、考え始めた。


そして、黒田との最終決戦に向けて、心を整えた。


戦いは、まだ終わっていない。


(第二部 完)

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