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第一章 青春同好会スタート!①

 夢を見た。自分が幼いころの夢だ。自分は宙に浮いている。あたりを見回すと、かわいい装飾が壁のあちこちに貼ってあった。これは幼稚園だろうか?部屋には小さい子供がたくさんいる。みんな椅子に座って先生を見ている。先生が子供たちに質問した。


「みんなはの大きくなったら何になりたいですか?」


 子供たちは勢い良く手を挙げる。そして、先生に指名される。


「サッカー選手!」

「宇宙飛行士!」

「ケーキ屋さん!」


 一人ずつ笑顔で自分の夢を発表している。


 何人か指名された後、一人の男の子が指名された。幼いころの自分だった。「はい!」と元気に返事をしてその場に立つ。


「○○○○!」


 何か言っている。だが、何を言っているかが分からない。だが、自分の発言に先生は笑顔で拍手をしてくれている。周りの子も『すごーい!』と言いながら拍手をしている。そんなにすごい夢だったのか?小さいころの俺すごいな!


 子供のころの自分を俯瞰でみると、こんなに元気な子だったんだなぁと新鮮な気持ちになる。


 その次に女の子が発表する番になった。黒のロングヘアーで顔の整った女の子だ。


「私は、小説家になる!」


 目をキラキラさせて発表する姿はどこか自身に満ち溢れていた。だが、それとは反対に周囲の子供からは『へんなのー』や『かわってるね』などの声が聞こえてくる。


「小説家なんかなれるわけないじゃん!」


 ふと誰かがそう言うと女の子は声の主を探し一人の男の子を見つけた。そして、近づく。そして、にっこりと笑う。そして、男の子の顔をパンチする。


 殴られた男の子は数メートル後ろに勢いよく倒れ込み、泣きわめく。しかし、それも構わず女の子は馬乗りになり、笑顔でもう殴ろうとする。


「やめてー!」


 男の子が泣きながら言っても女の子は殴る手を止めなかった。慌てて先生が仲裁に入る。泣き叫ぶ男の子。殴る女の子。それを見て泣く周りの子供たち。地獄絵図だ。


 そういえばこんなこともあったなぁ……。この女の子は今何をしているんだろう。どこかで元気にやってたらいいけど……。どこかで目覚まし時計が鳴る音がする周りを見渡しても見つからない。音だけが響き渡る。なんでないんだろう……。


 夏樹が目を覚ますと見慣れた天井が視界に広がっていた。


…ああ、そうか。これは夢か――。


 突然、枕元でスマホがけたたましく鳴り、頭の中で余韻が切り裂かれた。


 時計を見るといつも起きる時間である七時三十分を指していた。


「めんどくせえなぁ……」


 頭をボリボリと掻きながらボーっとする。


「やっぱサボろっかな……」


 再度ベッドに横たわり、スマホを適当にいじる。しかし、まだあの言葉が頭から離れない。


「『フツー』の人生を生きていきたいのならそのままいればばいい」


 正直、その言葉にはイラっとした。だが、間違ったことは言っていないとは思う。このまま『フツー』に生きるのであれば、無視していればいい。


 結局自分の意見がまとまらないまま、もやもやした気分のままベッドから起き上がる。


「しょうがない……行くか」


 時間にはまだ余裕があるのでゆっくり準備しても間に合う。これが夏休みのいいところだ。制服に着替えて部屋を出て階段を降りる。顔を洗い、朝食を食べ、歯磨きをする。すべてが終わったら鞄を手に取り靴を履く。――すべて、いつも通り。


「ちょっと出かけてくる」


 通学路のアスファルトから立ち上る陽炎が、遠くの景色をぼやかしていた。肩に食い込むリュックの重みが、今日も一日が始まることを告げている。


 背中に汗がじんわりと滲みはじめて、ワイシャツが少し肌に張りつく。


 どこかから聞こえてくる蝉の声は、やけに甲高くて、まるで何かを急かしてくるみたいだった。

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