白骨遺体③
私の見立て通りだ。
保険金で買い取った訳ではなかったが、東京の出て来た松永は板倉松子の家に下宿し、家財を譲り受けていた。
板倉松子と松永典久の関係がはっきりとしたことで、松永家の家宅捜索令状が下りた。
私たちは鑑識官を引き連れ、松永家に乗り込んだ。
玄関は施錠されていたが、鑑識官の一人が開錠してくれた。庭に当たる土地を売り払ってしまってしまったので、敷地一杯に木造の二階屋が建っている恰好になっている。入口から廊下が伸び、二階へ上がる階段があった。
中は広そうだ。この家に一人で暮らしていたとなると、心細かったことだろう。松子は晩年、用心棒代わりに、若い学生に二階を貸していたのだ。
廊下に上がって直ぐ、応接間があった。誰もいない空き家にしては、部屋の中は綺麗に片付いていた。定期的に掃除を行っているからだろうか。
「では、お願いします」
竹村の言葉を合図に、鑑識官が屋敷内に散らばって行った。指紋や毛髪など、この屋敷にいた人間の痕跡を探して回るのだ。
応接間から順に屋敷の中を見て回ろうとしたが、直ぐに、奥に向かった鑑識官から、「ちょっと、こちらに来てもらえませんか?」と呼ばれた。
奥に向かう。恐らく寝室として使っていたのだろう。八畳ほどの部屋があった。部屋に入ると、若い鑑識官が真ん中の畳を、持ち上げようとしているところだった。
「どうしました?」畳をまくるのを手伝う。
「部屋に入ったら、畳をまくった跡がありました。それで、畳をまくってみようと思って――」
何かありそうだ。四人で四隅を持って、「よっ!」と畳を持ち上げた。
「おっ!」畳の下には床板があるはずだが、黒々とした空間がぽっかりと広がっていた。畳は広がった穴に被せてあっただけだ。
鑑識官が懐中電灯で穴の中を照らした。床下の地面に、床板の破片が転がっていた。
「ちょっと降りてみます」
若い鑑識官が床下に降りる。
「ひょっとして、床下に壺が隠してあったのかもしれませんね。床板をはがして、それを見つけた人間がいた」竹村が言うと、吉田がすかさず「竹村さん、壺じゃなくて、花瓶ですって――」と訂正した。
「うひひ」と竹村は気にした様子がなかった。
若い鑑識官が床下に降りて、床板の破片を取り除く。私たちは床下でうごめく鑑識官の背中を見つめた。
「大変です!」鑑識官が顔を上げた。
「どうしました?」
「ゆ、床下に白骨遺体があります」
「えっ!?」
鑑識官が体をずらし、床下を懐中電灯で照らしてくれた。
床下はコンクリートで覆われていたが、一部が破壊されていた。そして、そこには人骨らしきものが見えた。
「応援を呼んで来ましょう」吉田が走り出した。
松永家の床下から白骨遺体が出て来た。どういうことだ? 殺されたのは誰だ? いや、まだ殺されたとは限らない。だが、殺されたのだとしたら、一体、誰が殺したのだ? 疑問が渦巻く。私の頭脳は激しく回転していた。




