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38話 二組の御巫候補


 板の道も乗り越え、エンジェリア姫達に待ち受けていたのは、雪の坂道です。


「……楽しそう」


「楽しそう」


 エンジェリア姫とゼーシェリオン様は下り坂を想像してでしょう。楽しそうに登っています。


「早く滑りたいの」


「滑りたいよな」


「ふにゅ。ルーにぃ、一緒に滑るの」


「良いだろう。滑るのための板は創造魔法でつくろう」


 楽しそうに話していたら、頂上まではあっという間です。


 エンジェリア姫達は、頂上で板を作ります。


 板の上に乗り、早速坂を滑ります。


「ふみゃぁぁぁ」


 エンジェリア姫の楽しそうな声が響き渡ります。


「これもう一度やりたいくらい楽しいの」


「今度いくらでもつきやってやろう」


「ふにゅ。今度はみんなで一緒になの。フォルはエルグにぃや、二人の御巫候補さん達や……とにかくみんななの」


 滑り終えたエンジェリア姫が余韻まで楽しんでいるようです。


「ふにゅぅ。次はどこなんだろう。楽しい場所が良いの」


      **********


 エンジェリア姫達は次々と困難な道を通り抜け、とうとうアスティディアへ辿り着きました。


「……ふにゅ。すごいきれいな場所なの」


「俺は行く場所があるからまたあとで」


「ふにゅ。ありがとなの」


 イールグ様と別れ、エンジェリア姫とゼーシェリオン様二人になりました。


 エンジェリア姫は、発展した街並みをきょろきょろと見回しています。


「……ゼロ、御巫候補さんってどこにいると思う? 」


「普通に考えて玉座だろ……つぅか、なんでこんな栄えた場所で人が誰もいないんだ? 」


「分かんないの。とりあえず、御巫候補さん探すの。ルーにぃが言っていたお話、聞いてみるの」


 エンジェリア姫とゼーシェリオン様は、御巫候補がいると思わしき王宮へ向かいました。


      **********


「……誰とも会わなかったの。これは流石に不思議なの」


 エンジェリア姫とゼーシェリオン様が王宮へ辿り着くまで、誰一人として人を見ていません。


 エンジェリア姫もその事に疑問を覚えています。


「……とりあえず行ってみるの。行ってみない事にはなにも分かんないの」


「そうだな。行ってみるか」


 王宮の中、玉座の間を目指してエンジェリア姫達は歩きます。


「……歩くのやになってきた。王宮までも遠かったから」


「もう少しだからがんばれ。帰ったらぎゅぅでもちゅぅでも何でもしてやる」


「エレはフォルの恋人なんだからそんな事しません……ぎゅぅはしたいけど」


「お前前に兄妹は別なのとか言って堂々としてただろ」


「あの時のエレとは違うんです。エレは成長しているんです。いつまでもエレエレとしているだけのいきものと思っていたら大間違いなんです」


 エンジェリア姫が不機嫌そうにそう言います。


「……玉座ってこっちだよね? ……なんで知ってるんだろう」


「……今はとりあえず話を聞き行く事だけを考えれば良いだろ」


「ふにゅ。それもそうなの」


 本来の記憶の影響でしょうか。エンジェリア姫とゼーシェリオン様が道を知っているのは。


「……ぷにゅ。ここなの」


「ここだな」


 エンジェリア姫とゼーシェリオン様が玉座の間に入りますが、誰もいません。


「ふにゅ……誰もいないの。人がいない王国なの」


「流石にそれはありえねぇだろ。どこかに誰かいるはずだ」


「……ふにゅ。ここの奥に隠し通路があるはずなの。ゼロ、行ってみるの」


 エンジェリア姫とゼーシェリオン様は、この国の国王である御巫候補しか知らないはずの、玉座の後ろの隠し通路見つけ出しました。


      **********


 なんの迷いもなく隠し通路を歩くエンジェリア姫とゼーシェリオン様。その先にあったのは、巨大な魔法機械です。


「……世界管理システム……でも、なんだか違和感」


「違和感? 」


「ふにゅ。エレの知っている本物の世界管理システムはもっと繊細なの。こんなに雑じゃない」


 普通に見ただけでは分かりませんが、エンジェリア姫には分かるのでしょう。


 細部が本来の世界管理システムよりも雑に作られているという事が。


「アスティディアになんでこんな分かりやすい偽物が……ううん。そんな事どうでも良いの。もし、これが誰もいない原因だとすれば、これをどうにかしないと」


「どうにかってどうするんだよ。俺らでどうにかできるのか? 」


「……現在改変魔法。今回のこれは効果があるはずだから。でも、エレ一人にできる魔法じゃないの」


「分かった。手伝う」


 エンジェリア姫は自分一人では荷が重い魔法であろうと、ゼーシェリオン様がいればそんな魔法でもできるようになります。その性質を使って魔法を使っています。


「……ふみゅ? 」


 エンジェリア姫とゼーシェリオン様は、現実改変魔法を使い、本来の景色を取り戻しました。


 世界管理システムは消え、そこには眠っている一人の少女とその少女の手を握る少年がいました。


 その少年と少女が、イールグ様の言っていた御巫候補です。


「……そういう事だったんだ」


 この世界の真実に気がついたのでしょう。エンジェリア姫が使われた現実改変魔法にはそのような効果もありますから。


「……きみは」


「初めまして、ノーヴェイズ様。私はエンジェリア。いっぱいお話したいけど時間がないから。この薬をその子にあげて。それと、エレ、ずっとあなたのファンだったの。だから、夢が覚めた先で、いっぱいお話したい。一緒に魔法具作りたいの。忘れても、忘れないで」


 この夢の記憶は現実では持っていない。それくらい気づいているのでしょう。それでも、エンジェリア姫はここで言葉を紡ぎます。


「あと、エレ達の代わりで巻き込んでごめんね。ずっと、ありがと」


「……それは俺の方だよ。ずっと、きみがいたから、俺は世界管理システムを作るまでに至った。また会った時、ぜひきみの自慢の魔法具達を見せて」


「うん。魔法具自慢大会なの……ってもうそろそろ行かないと。また会おうね。ノヴェにぃ。それに、ピュオねぇ」


「……ノヴェにぃ、ピュオねぇ。俺も、いっぱい話たいから、今度はちゃんと顔を合わせて話しよう」


 エンジェリア姫とゼーシェリオン様は、そう言って玉座の間まで戻りました。


      **********


「……フォルがやって欲しかった事ってこれで最後なんだよね? 」


「多分」


「……ねぇ、少しお散歩したいの。エレ、他にもいっぱい行きたい場所あるから」


 寂しそうにエンジェリア姫がそう言います。


「……そうだな。どこに行く? 」


「……ふにゅ……あっ、フォルが前楽しい場所があるって教えてくれたの。エリクルフィアのある大陸で人がいないけどとっても楽しいんだって言ってた」


「却下。それ絶対楽しい場所じゃねぇから。あいつが楽しそうに言ってたんだろ? 」


「ふにゅ。そうなの。前に聞いた時、本当に楽しそうに言っていたの。おすすめの場所とは言われなかったけど、そこに行った時に楽しかったんだって。エレが行きたいって言っても連れて行ってくれなかったけど」


 危険地帯を遊び場だと言うのがフォル様ですから、そこも危険な場所だったのでしょう。


 エンジェリア姫が残念そうにしています。


「じゃあどこに行く? エレはどこでも良いの。ゼロについていくの。だから、どこか楽しい場所に連れてけなの」


「楽しい場所ってどこだよ。そんな急に言われて思いつくようなもんじゃねぇぞ……まぁ、エレの頼みだから、いくつか回るか。楽しいかどうか分からねぇが」


 ゼーシェリオン様がそう言って、エンジェリア姫と一緒に転移魔法で様々な場所へ向かいました。


      **********


 星の音 最終章 二話 二組の御巫候補

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