36話 再会
扉が開く頃、エンジェリア姫達は起きました。
「……そういえば、エレ達に奇跡の贈り物。きっと、この先でこの記憶が役にたつ時が来る」
「みゅ? 」
「扉を探す前に、森へ向かって欲しいの。そこで、エレ達の残っている魔力を使って奇跡を見せてあげるから……だから、フォルにこの奇跡を届けてあげて」
幼いエンジェリア姫と幼いゼーシェリオン様は、別れ際そう言い残しました。
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エンジェリア姫とゼーシェリオン様は幼いお二人の言葉に従い森を目指しました。
「森って迷子になる場所なの。ゼロがきっと迷子になるからエレががんばって迷子にならないようにしないと」
「逆だろ」
エンジェリア姫がゼーシェリオン様の手を握ります。
「贈り物ってなんなんだろ」
「なんなんだろうな」
詳しい話は聞かないままエンジェリア姫とゼーシェリオン様はその贈り物という奇跡を探しました。
「みゅにゃ⁉︎ 魔物さんなの。じょぉかー」
普通の魔物であればエンジェリア姫の浄化魔法で浄化できます。
エンジェリア姫は魔物に襲われそうになる度に浄化魔法を使いました。
「……本当に便利だよな。エレの浄化魔法。すぐに使えるから、突然の事でも対応できる」
「すぐに使えるようになったのは割と最近なの……ふぇ⁉︎ 」
エンジェリア姫が目の前に映るものを見て、驚いたあと、涙を流しました。
「……贈り物の奇跡」
かつてギュゼルの一員であった皆様が森の中で迷われています。
「……双子姫様」
「ふにゅ。エレとゼロなの」
エンジェリア姫が嬉しそうにゼーシェリオン様に抱きつきました。
「仲良しエレとゼロなの」
「相変わらず、可愛らしいですわね。双子姫様は。こんな状況なのに癒されるなんて、ないと思っていましたわよ」
「ふにゅ。癒しなの。エレはみんならぶで癒しなの」
ゼーシェリオン様がエンジェリア姫の涙を拭いてあげています。
「フュリねぇ達は、ずっとここにいたのか? 」
「いえ、突然ここに迷いこんでしまいましたが、それまでは様々な場所を転々としていました」
「……エレ達ずっと……ふにゅにゅ。会えて嬉しいの。むにゅ。いっぱいお話したい事あるけど、この空間から出られなくなっちゃうかもしれないから、出口探すの。協力してくれる? 」
エンジェリア姫は涙を堪えています。エンジェリア姫を落ち着かせようとしているのか、ゼーシェリオン様がエンジェリア姫の頭を撫でてあげています。
「もちろんです。私達もここから出る方法を探していたので、一緒に探しましょう。あっ、デューゼ様とリーグと合流を先にしたいのですが、よろしいですか? 」
「ふにゅ。一緒に探すのー……でも、どこをどう探せば良いのか分かんない。いつもはフォルが教えてくれていたから……フォル」
エンジェリア姫が寂しそうにしています。
「おー、姫様までいるとは偶然偶然」
フュリーナ様が探そうとしていたテンディーゼ様とリーグリード様が気まずそうなフォル様と一緒にきました。
「……」
「みゅにゃ⁉︎ フォルなのー。寂しかったからすりすりしてやる。そのあとゼロにすりすりしてやる」
エンジェリア姫はフォル様に抱きついて、宣言通りすりすりしています。
「ふにゅぅ。すりすり」
「……」
「……すりすり」
エンジェリア姫に反応しないフォル様。エンジェリア姫が頬を膨らませています。
「……」
「……フォル様、あんな事で犠牲者を出してはいけない。そのご命令を最後まで守れなかった事、お許しください」
「ずっと気がかりでしたの。あのあと、フォル様はどうしたのかというのが。優しい統率様は悲しまれた事でしょう。ですが、あまり責任を感じないでくださいませ。あれは、我々が力及ばなかっただけの事。他の誰かの責任ではありませんわ」
ギュゼルの皆様は、仲間思いで優しい方々でした。誰もフォル様を恨んでなどいないでしょう。
ですが、それでもフォル様は自分を許せないのでしょう。この幼いエンジェリア姫と幼いゼーシェリオン様の奇跡も、自分の幻想と思われている可能性があります。
「……むすぅ。エレはフォルと一緒にらぶしながら出口探すのー。というか、フォルいないと出口探すの大変なんだから、フォルがどうにかするの」
「……投げやりだな。エレらしいけど」
この空気を知って壊すかのようにエンジェリア姫がそう言ってゼーシェリオン様の方へ行きました。
「早く帰ってエレとらぶしながら休みたいよなー」
「ふにゅふにゅ。やすみたいのー」
ゼーシェリオン様がエンジェリア姫の考えを理解したのでしょう。一緒になってこの重い空気を壊そうとしています。
「だとよ。フォル、双子姫様の願いを聞き入れんわけにはいかんじゃないかぁ? 」
「……そう、だね。出口ならここへきた時に確認してある。こっち」
フォル様が出口へ案内しようとしていますが、エンジェリア姫が動こうとしません。
「……エレ? 」
「……エレ、フォルに笑顔になって欲しいだけなのに……」
「また泣いた。エレ、ぎゅぅしてやるからここでは泣き止んでくれ。今お前が泣いてるとみんなが困るから。俺と二人っきりの時にしてくれ」
「……ふにゅ」
エンジェリア姫が必死に泣き止もうとしています。
「……泣き止まなくて良いよ」
「ふぇ⁉︎ 」
「……ごめん。心配ばかりかけて。君を悲しませて」
フォル様がエンジェリア姫の額に口付けをしました。
戸惑うエンジェリア姫を見て笑顔を見せるフォル様に、エンジェリア姫が顔を真っ赤にしています。
「デューゼ、リーグ、魔物の気配が多い。襲ってくるかもしれないから警戒を怠るな。フュリーナとミュンティンは常に防御魔法と強化魔法の付与。クリー、出口まで双子姫を優先しようとしているようだが、フュリーナとミュンティンを守る事に徹しろ」
「ふぇ、それって、エレとゼロはフォルが守ってくれるって」
「君らは自分達でどうにかできそうだけど、守らせて? 」
エンジェリア姫がこくこくと必死に頷いています。
「……それはそうと、リーグとフュリーナって、あれから少しは進展とか」
「な、なに言っているんですか! オレ達はただの幼馴染だって何度言えば分かるんですか! 」
「ただの幼馴染の仲じゃないでしょ。その様子だとまだ両片想い中か。いつになったら恋人にまで発展するんだか」
エンジェリア姫を心配させないようにそう取り繕っているだけなのかもしれませんが、ギュリエンで皆様と一緒にいた時のような振る舞いをしています。
エンジェリア姫も少し安心したのか、自然と涙が止まっていました。
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フォル様が事前に扉の場所を確認してくれていたおかげで、無事に出る事ができました。
エンジェリア姫は、フォル様に呼ばれて、フォル様の部屋で二人っきりです。
「……」
「……ありがと」
「みゃ⁉︎ 」
「明日、一日空けたから、君と一緒にいてあげる。今日のお礼、これで良いかな? 」
「お礼なんていらないの。でも、一日空けたならエレと一緒にいて欲しい。フォルとらぶしたいから、エレと一緒にいるの」
エンジェリア姫がフォル様に抱きつきました。報告書を読んでいるフォル様は、エンジェリア姫を抱きしめながら、報告書から目を離さずにいます。
「……みゅぅ。むずかしそう」
「君にも理解できる内容しかないと思うけど? 今回のは」
「今日はお疲れ様だからなにも考えたくないの。だからむずかしい」
「お疲れか……なら、これ一通り見たら寝るか。今日は一緒に寝てあげる」
「ふにゅ。フォルは忙しいとねむねむしてくれる率下がるから嬉しいの」
フォル様が報告書を読み終わるまでエンジェリア姫は大人しく待っていました。報告書を読み終えるとすぐにベッドへ直行です。
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星の音 四章 最終話 再会




