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35話 御巫の秘密


 謎空間へ入ったあと、エンジェリア姫と逸れてしまったゼーシェリオン様の方は、幼いエンジェリア姫らしき影を見つけました。


「エレ! 」


 ゼーシェリオン様は、幼いエンジェリア姫らしき影を追いかけましたが、見失ってしまいます。


「……この辺にいたはずだが」


「……」


 誰かがゼーシェリオン様の服の袖を掴み、ゼーシェリオン様は、掴まれた袖の方を見ました。


「……」


 そこにいたのは、ゼーシェリオン様が追いかけていた幼いエンジェリア姫です。


「……エレ、なのか? 」


「他に誰に見えるか聞きたいの。エレ以外にいると思うの? こんなにエレエレした生き物」


「……いるわけねぇな」


 フォル様が良くエンジェリア姫を見ては言っていた言葉です。エンジェリア姫だけに使う言葉なので、幼いエンジェリア姫はそれが自分であるとの証明とでも思っているのでしょう。


「……エレ、足疲れたの」


「抱っこしてやる」


「ふにゅ」


 ゼーシェリオン様が幼いエンジェリア姫を抱っこしてあげています。幼いエンジェリア姫はゼーシェリオン様に抱っこされて嬉しそうです。


「……エレ、ゼロの事がずっとすきなの。ここ覚えてる? エレの、エレ達の戻りたくない場所。でも、ゼロと二人で一緒だった素敵な場所。エレはずっとゼロに守られてきたの」


「……違う。守ってもらってたのは俺の方だ。いつも、エレがいてくれたから」


「お互い様なの。だからお互いだいすきで良いの。それより、ゼロはフォルがだいすき? ……じゃなくてフォルもだいすき? 」


「ああ……好き」


 幼いエンジェリア姫がゼーシェリオン様の頬に口付けをします。そこには僅かながらに癒し魔法が使われていました。


「なら、あそこに向かって。あそこにいけば、エレの秘密を知れるから。エレの、願いを教えるから」


「……研究所か。良いのか? お前あそこから抜け出したんだろ? 俺がいるからとかなら気にしなくて」


「良いの。抜け出したんじゃなくて、ゼロを探していただけだから。エレは、ゼロをあそこに連れて行くの。足疲れたからゼロに歩いてもらうけど」


 幼いながらもエンジェリア姫らしいです。ゼーシェリオン様が呆れながら幼いエンジェリア姫を連れて研究所へ向かって歩きます。


「……ゼロはフォルとフィル、どっちが魔法具……魔法学に精通していると思う? 比べるわけじゃないけど、不思議なの」


「フォルだろうな。フィルの得意とするのは歴史関連だ。そっちに関してはフィルの方が上だろうな」


「ふにゅ。エレもそう思うの。だから、不思議なの。どうしてフォルはフィルに魔法具を作ってもらうのかって。フォルの方がもっと良いものを作れるのに」


 フォル様はフィル様を立てているのか、魔法具を作ろうとしません。幼いエンジェリア姫がそれを機にするのは、幼いゼーシェリオン様のように現在のお二人にはない記憶があるからでしょうか。


「他の事で手がまわらねぇんじゃねぇのか? フィルは魔法具技師としての仕事を優先しているがフォルは管理者としての仕事優先だからな」


「それはあるかもしれないけど……良いの。むずかしい話してもエレがつまんないから。楽しいお話だけをするの……ってもうつきそう」


 幼いエンジェリア姫はもう少し二人で話していたかったのでしょう。目的地が見えてきてつまらなそうにしています。


      **********


「ゼロー、連れてきたのー」


「報告の前に降りろ。撫でてやるから」


 幼いエンジェリア姫と幼いゼーシェリオン様が抱きしめあいます。


「……エレも? 」


「……やらないの。さすがのエレにも恥ずかしさがあるから」


 エンジェリア姫が頬を赤らめてゼーシェリオン様から目を逸らします。


「……ゼロ、あのね、エレの秘密とお願い。この空間はエレの魔法による異常。エレ達は、フォルを助けたいの。諦めてほしくないの。だから、エレと協力して、フォルを助けてあげて。フォルの目的を止めて」


「ああ……って、あいつの目的とかなにも知らねぇがな。けど、やれるだけやってみる。エレと一緒に」


 ゼーシェリオン様の答えに、幼い方も幼くない方もエンジェリア姫は喜んでいます。


「ふにゅ。それでこそエレのゼロなの」


「ふにゅ。エレのゼロだからそのくらい言ってもらわないと」


 と二人のエンジェリア姫は誇らしげに言いました。


「……エレはなにも話してないだろ? だから俺からもう少しだけ説明する……だから、そっちのエレの世話を」


「えっ、じゃあそっちのエレ頼めるのか? 」


「片方は引き受ける」


 ゼーシェリオン様が幼いエンジェリア姫の頭を撫でてあげています。幼いゼーシェリオン様の方は、エンジェリア姫に抱きしめられています。


「星の御巫と月の御巫について、必要な時に覚えてなかったとしても知っておいた方が良いと思うんだ。まず星の方は、かつて唯一姫と呼ばれた姫の生まれ変わり。エレにも話したけど、奇跡と癒しを得意とする。心当たりはあるだろ? 」


「今回の事に加えていくつかは。癒しの方に関しては、エレとぎゅぅってやっていると感じるのもあるのか? 」


「あれは漏れ出ているから。無意識のうちに自分の周りを癒しているんだ。意識的に使えばもっと効果が高いはず」


 エンジェリア姫は今まで一度も意識的に使った事がないのでしょう。使った事があるのであれば、幼いゼーシェリオン様は断言できるはずです。


「月の御巫は……星の御巫の魔力を貰い、星の御巫の一部の魔法を使う事ができる。月の御巫自体がそれを必要としない魔法師だから、知っていても使う機会は少ないだろうけど、一応知識として持っておいた方が良いだろうから」


「……星と月は運命共同体だと聞くが、それについても聞かせてくれるか? 月に星が必要なように、星にも月が必要な理由があるんだろ? 」


 ゼーシェリオン様が聞くと、幼いゼーシェリオン様がこくりと頷きました。


「星の御巫は月の御巫がいる事で魔力を安定させる事ができる。月の御巫以外でもで気がするけど、月だけは星の魔力を扱えるから、互いに利がある状態なんだ。それ以外にも星の御巫が月の御巫と一緒にいる事で得られるものは大きい」


「……ふにゅ。エレはゼロと一緒にいれば良いの。そこだけ理解した……ふっにゅん」


「……可愛い……そういう事だな。エレ偉い。理解できて偉い」


 幼いゼーシェリオン様が、ドヤ顔エンジェリア姫の頬に口付けをします。


「……ぷにゅ……ふにゅ。そういえば、フォルが心配しているかも。エレとゼロが中々帰ってこないって」


「そうだな。ここから出る方法も見つけねぇとだが……どこかに出口があるのか? 」


「あるけど……今はいけない。ここから出る扉が開くのは今じゃないから。それと、フォルならエレとゼロの居場所くらい把握できると思う。だから、そんなに気にしなくても」


「ふにゅ。それもそうなの。フォルはエレ達を見つけてくれると思うから、エレ達はとりあえずここにいれば良いの」


 エンジェリア姫が幼いゼーシェリオン様の頭を撫でています。撫で心地が良かったのか、撫でる手が止まりません。


「……星の御巫と月の御巫に戻るけど、元々、そんな呼び方なかったんだ。だから、そういう事ができる程度で、星の御巫だからとかはあまり気にしなくて良いと思う。エレだからできるんだみたいな感じで」


「ふにゅ。分かったの」


「……ゼロ、扉開くまでおやすみしたいの」


「そうだな。休むか」


 ここから出るための扉が開くまでの間、ゼーシェリオン様達はもう少し詳しい話を、エンジェリア姫達は寝ていました。


      **********


 星の音 四章 二話 御巫の秘密

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