27話 試験
楽しいデート時間は終わり、調合師協会本部の試験部屋で、エンジェリア姫はゼーシェリオン様とゼムレーグ様の試験管をしています。
「とりあえず、ずるだめなの。しないと思うけど、言っておかないとだから。注意事項は言ったから、筆記試験開始」
流石はエンジェリア姫です。試験中の試験会場には受験者と試験管以外は入る事ができないので、中にはいませんが、ガラス張りの窓の外から、隙間が見えないほど人が溢れています。
全員、エンジェリア姫が試験管をするという事できた調合師協会と魔法具技師協会に所属する方々でしょう。
職人街で受ける事のできる試験は全て、いくつかの難易度があります。エンジェリア姫は、合格者一割以下の最難関試験の満点合格者。数少ない、最難関試験の試験管資格所持者です。
ゼーシェリオン様もゼムレーグ様も調合学はかなり学んできたのでしょう。今のところは迷う事なく書いています。
「試験時間言い忘れてた。残り三十分なの。残り五分になったら言うけど、それより前に終わったら終わったって言ってくれれば良いの」
できれば早く終わらせてフォル様の元へ行きたいのでしょう。エンジェリア姫は、待っている間に魔法具の設計図と設計をしています。
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「エレ、終わったー」
ゼーシェリオン様が筆記試験を終えたようです。エンジェリア姫は、魔法具技師免許試験の筆記試験の用紙を持って、ゼーシェリオン様の席の前に向かいました。
「じゃあ、次これやって」
「……良いのか? 」
「良いの。みんな知ってるから」
「エレ、こっちも終わった」
「みゅ」
ゼムレーグ様も終わったようです。エンジェリア姫は、ゼムレーグ様の方にも用紙の受け渡しをしました。
「言い忘れもう一個あったの。希望があれば、詳しい結果を教えるけどどうする? 」
「俺欲しい」
「じゃあ、オレも貰おうかな」
「みゅ。じゃあ点数ちゃんとつけるの」
希望がなければ、点数はつけなかったのでしょう。試験管の資格があるかどうかと免許の取得のための点数に達しているかだけを見る予定だったのでしょう。
「……」
エンジェリア姫は、受け取った筆記用紙の採点をしています。
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ゼーシェリオン様とゼムレーグ様の筆記試験が終わり、エンジェリア姫達は外へ出ました。
「次は実技試験なの。魔法具とお薬を一個ずつエルに献上するの」
魔法具技師免許試験も調合師免許試験も森の中で自ら素材を探して作るのが決まりです。
エンジェリア姫は、試験管として、その間に筆記試験の採点を終わらせます。
「……ふにゅ。採点おわったぁ」
エンジェリア姫が採点を終えましたが、ゼーシェリオン様とゼムレーグ様はまだ戻って来ません。
「お疲れ様」
「ぷにゃん⁉︎ フォルなの! 」
「うん。仕事がひと段落したから、様子を見に来たんだ」
フォル様がここまで来てくれた事にエンジェリア姫は大喜びです。抱きついて、すりすりしています。
「寂しかったのー。フォルいないから。フォルいないとエレは寂しくなっちゃうの。だからずっと一緒にいて」
「そんなに可愛く頼まれたら断りづらいんだけど」
フォル様は仕事がありますからエンジェリア姫の頼みを聞きたくても聞けないのでしょう。困っているフォル様を見て、エンジェリア姫は、少し寂しそうに
「……いられるだけで良いの」
と言いました。
「……エレー、両方終わった」
「ふにゅ。二人とも遅いの。もう少し遅かったら減点だったの」
二つ同時にやっていても、試験時間は同じなようです。
「……見た目は良いの……中身も良いの。でも、もっと良いのを作れたはずなの……減点……結果は……後日送るの。合格だから、講習に参加する」
「ん? なんか矛盾が……」
「気のせいなの。講習は今からここでします。本当は室内でやるだろうとかは考えなくて良いの」
協会に所属する事に関しての説明から始まります。
「協会に所属するのが免許所持者の条件なの。このあと、両方の協会に所属するための用紙を書いてもらう事になるから、帰っちゃだめ。協会に所属すれば、素材や実物を安く買う事ができるの。それに売る事もできるの。それで」
「エレ、売るためには審査が必要だって事も説明しないと」
本来試験管は一人では行いません。今回は特例なので、エンジェリア姫一人での説明は慣れていないのでしょう。フォル様がサポートしています。
「ふにゅ? 審査……あったの⁉︎ 両方売るには厳しい審査を通ってもらうの。いくら免許を持っていようと、まだ売れるだけの質を持っていないとかあるから。それに、中には、他の人が作ったものを免許を持っている人の名義で売る事もあるから。粗悪品が出回らないためにも必要な事なの」
「これは個人で売る時の話で、団体で大量生産して売る事に関しては、十人に一人は免許所持者がいる事と審査が条件。君らはこっちの方は関係ないかも知れないけど、一応説明が規則だから」
エンジェリア姫が言っていない事をフォル様が付け加える形で、講習をしていきます。講習時間は各一時間ですが、同じところもあり、両方合わせて一時間で終わりました。
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講習が終わり、ゼーシェリオン様とゼムレーグ様が魔法具技師免許と調合師免許を手に入れました。
「お疲れ様なの……お外騒がしい」
「……お前らが原因だろ」
「うん。エレとフォルが揃っているから」
「師弟が揃うのに珍しいも何もないと思うの」
エンジェリア姫はフォル様から調合も魔法具製作も教わっています。ですが、騒がれているのはそれが理由ではないでしょう。
最難関試験満点合格者が二人揃っているという事に関して騒がれているのでしょう。フォル様が来るとは誰も知らなかったはずですから。
「……とりあえず終わったの。このあとは、親睦会的なのがとかあるけど、参加は自由だから参加せずにエレを甘やかすべきだと思う」
「そこは参加していろんな話を聞いてこいって言えよ」
「参加して僕とエレの時間を邪魔しないでって言えば良いの? 」
エンジェリア姫もフォル様もこれが全て聞こえている事に気づいていないのでしょうか。気づいていて言っているのでしょうか。
「……なんて言いたいけど、今回は参加しないとなの。それも条件の一つだから。エレが目につけている新人を紹介するって条件。親睦会は、なぜか本部にある宴会場でやるから、そこ集合……最下位の人が進行役やるのー! 」
そう言うや否や、エンジェリア姫はフォル様と一緒に走って宴会場へ向かいます。外にいる見学者達もエンジェリア姫のその言葉を聞き急いで宴会場へ向かい出します。
少し遅れて、ゼーシェリオン様とゼムレーグ様も宴会場へ向かいました。
「……そう言えば、フィルは? 一緒にお仕事だったんじゃないの? 」
「一緒ではないよ。手分けしてやった方が早く終わるから。ここに来る前に珍味見てたから終わっているだろうけど」
「ふにゅ。それはお邪魔できないの。フィルの大好きな時間だから、連絡するのもお邪魔になっちゃう。だからあとで報告するの。ゼロとゼムの合格報告。きっと待ってるから」
本当は今すぐにでも教えてあげたいのでしょう。ですが、フィル様が楽しそうにしているのを邪魔せずに我慢しています。
「……そう言えば、次はどこにお仕事? 」
「天界」
「一緒に行くの。いきたくなくても行くの。だからエレも連れてって。お仕事の邪魔はしないように良い子にしているから」
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星の音 三章 十一話 試験




