26話 職人街
エンジェリア姫達は、フォル様の休暇の最終日、職人街を訪れました。
「明日かは仕事になるから、今日は楽しも」
「ふにゅ。エレとフォル、ゼロとゼムとフィルで一緒に遊ぶのを希望するの」
エンジェリア姫はフォル様とデートしたいのでしょう。
「エレはフォルとデートするの。フォルとのデート楽しみ」
「うん。楽しみだね。僕の可愛いエレ」
エンジェリア姫とフォル様は、手を繋いで魔法具技師協会に向かって歩き始めます。
「明日はお仕事でエレはゼロとゼムと一緒なの。そして明日は暇だから調合免許と魔法具技師免許の特別試験を用意してもらったの」
「へぇ、君が試験管? 」
「ふにゅ。ゼロとゼムを餌食にしてやるの」
本来であればありえない事ですが、エンジェリア姫の頼みという事で許可が出たのでしょう。
ゼーシェリオン様とゼムレーグ様の試験監督をできるからか、エンジェリア姫は楽しそうです。
「ふにゅふにゅ。魔法具買ってくれるの? 」
「うん。好きなもの買ってあげる。この前のお礼も兼ねて」
赤い結晶の件でしょう。エンジェリア姫はフォル様の手伝いができるのであれば、それで良いと言う気がしますが、魔法具が欲しいのかそれに関して何も言っていません。
「なんの魔法具にしよう。ゼロに使える魔法具が良いかもしれない。ゼロ、なんだかそそっかしいと言うか、危なっかしいから。エレが守ってあげないと」
エンジェリア姫はゼーシェリオン様を赤い結晶の件が大きいのでしょうが、守る対象として見るようになっています。
「守るのは良いけど、僕との時間もちゃんと確保して欲しいよ」
「それは確保するから心配しなくて良いの。エレの最優先事項としてフォルとの時間があるから。ゼロとの時間はその次なの」
「それなら良いけど。一緒にいられる時間が仕事とかで少ないのに、君がゼロを優先して一緒にいてくれないとかならないから」
「フォルらぶなの。フォル一番。優先順位も一番。ゼロがエレと遊びたがっていてもゼロを連れてきてでもフォル優先するの」
一生懸命熱弁しています。それだけ大事なのでしょう。
「うん。嬉しいよ」
「ぴにゃ⁉︎ ふ、ふにゅぅなの」
エンジェリア姫が顔を真っ赤にして俯いています。
職人街は、魔法具の明かりで照らされている場所。その明かりで、真っ赤なエンジェリア姫の瞳が輝いて見えます。
「……」
「ぷにゃ」
「君の瞳って光に当たるとほんとに綺麗だね。そういう宝石みたい」
エンジェリア姫の瞳が特殊だからそう見えるのでしょう。恥ずかしそうに目を隠すエンジェリア姫。
「可愛い」
フォル様はいつもの事のように笑って見ています。
「……エレ、ついたよ」
「……ぷにゃ⁉︎ もうついちゃった」
「ここ終わってもまだ今日一日はずっと一緒にいれるんだから、そんな寂しがらないでよ」
少しでも長くフォル様といたいからなのでしょう。寂しそうにフォル様を見つめています。
「……そんなに可愛い顔しないでよ……明日暇な時間は構ってあげるから」
「ふにゅ。魔法具いっぱい買うの。防御魔法具と結界魔法具と」
「……君が作る方が効果高くて良いと思うけど」
「買うのが良いの。どんな魔法具なら売れるのか分かるから」
エンジェリア姫の作る魔法具は売れるものがありませんから、こういった場所で研究するのでしょう。
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大量の魔法具をフォル様に買ってもらいご機嫌なエンジェリア姫です。
「ふんにゅん♡ ゼロに見せびらかしてやるの」
「僕に買ってもらったって? 」
「免許持ってたらこんな魔法具を作って売り出せるんだって。エレが特別に試験してあげるんだからありがたく思うべきだと思うの。講義まで全て見学者を入れる条件でがんばるんだから、ゼロはエレをもっと褒めるべきだと思うの」
ただでさえ人見知りのエンジェリア姫からしてみれば、褒められて良い事なのでしょう。次の目的地である調合師協会本部まで向かっています。
「ここの道はとっても歩きやすくて良いの。他の場所にも広まって欲しいけど、けんざいひ? とかがかかってできないの? 」
「だろうね。ものを揃えるだけでも相当な苦労と金がかかるから。ここの人達がこの技術を外に出したがらないのもあるけど」
「争いごとに使われるのを避けるため……だったよね? 少しだけお勉強したの」
褒めて褒めてと言わんばかりに、エンジェリア姫がフォル様の方に頭を向けています。
フォル様がエンジェリア姫の頭を撫でると、満足したかの表情を浮かべていました。
「うん。正解。ここの技術はいくらでも悪用できるから」
この職人街の道は全て整備されています。歩きやすさを追求したここならではの方法で。
紺色のシンプルな道ですが、足が疲れにくくなるよう配慮されていて、エンジェリア姫はお気に入りの場所でしょう。
「ふにゅん。ずっとここにいたいくらい良い場所なのに、そういう理由で広まらないのは……仕方ないとは分かっても、悲しいの。争いなんてなければ、広まっていたのかな」
「かもしれないね。っていうか、これは君も関係ある話だよ。君の知識や技術が悪用されれば世界はとんでもない事になるから」
「……エレはそんな事しないの」
エンジェリア姫がすると思われていると思ったのでしょう。心外だと言わんばかりに不貞腐れています。
「そうじゃないよ。君の意思関係なくそうさせられる事だってあるかもしれないから気をつけろって事。僕がずっと守ってあげられるなら良いけど、そうじゃない時だってあるでしょ」
「それはそうかもだけど……フォルがずっとエレを守ってくれれば良いと思うの。そうすればエレは安心していられるから……安心いらないから、らぶだけでも良いけど」
「君は僕と一緒にいたいだけでしょ。できるだけいれるようにするけどさ。何かあった時のために身を守る術をもう少しだけ持っていた方が、僕が安心するとかもあるけど君のためにもなるんだけど」
エンジェリア姫は切り札となるあの魔法はほとんど使いません。リスクとか考えて、あまり多用しない方が良いものですから。
他の使える魔法も、支援系が多く、攻撃系の魔法は苦手です。
魔法杖の効果でどうにかできる事はエンジェリア姫の場合ほぼないので、自分の力だけで身を守る術を持つ必要はあるでしょう。
「……フォルが教える条件なら」
「良いよ。教えてあげる」
「なら良いの」
フォル様といられる事が重要なのでしょう。フォル様に教えてもらえると知り嬉しそうにしています。
「……もう着いちゃった。もっとお話ししていたいのに。時間も歩くのもフォルと一緒だと早く感じてやなの」
「そうだね。僕も君と一緒にいると早く感じるよ」
「……お仕事中ももうこんな時間とかいつも言ってるの。信用ないの」
普段からフォル様を見ているエンジェリア姫がジト目でフォル様を見ています。
「それは……仕事が多すぎるんだよ。主様の補佐までやっているんだ。時間がいくらあっても足りないよ。エレとの時間は楽しくて早くすぎるんだ」
「ぷにゅ。それなら良いの。調合師協会本部のあとは、少しだけ家具を見たい。まだ家具が全部あるわけじゃないから」
「うん。欲しい家具があったら買って、後日送ってもらおう……そういえば、君の部屋にする予定部屋のベッドって」
「もちろん、三人入る広さにするの。エレとゼロとフォルと一緒にねむねむできるように」
少し名残惜しそうですが、エンジェリア姫はフォル様と一緒に植物で囲まれている建物、調合師協会本部へ入りました。
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星の音 三章 十話 職人街




