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25話 赤い結晶


 エンジェリア姫がゼーシェリオン様を探しに行く少し前の事です。フォル様は、ルーツエング様と話をしていました。


「そういう事だ。あの二人に結晶の破壊をさせる」


「了解。なんて言いたくないんだけど、仕方ないか。あれは御巫の素質に反応して姿を見せるから。でも、二人に結晶の破壊は不可って判断したら、その時は好きなようにやらせてもらうよ」


「それで良い。あの二人がなるべく危険な目に遭わないようにしてくれて構わない。出現だけさせれば、あとは誰が破壊しようと変わらないから……頼めるか? 」


 本来、黄金蝶は自ら御巫候補を危険に晒す行為をしたがりません。


 いくら必要な事だとはいえ、断られてもおかしくはない話です。


「……その条件なら。その代わり、これ終わったらあの子らにも何かご褒美だって言ってあげてよ。僕は当然休暇」


 フォル様には一番縁のないものでしょう。管理者は仕事と言ってはいますが、神獣としての役割を果たしているだけでもありますから。


「三日くらいならどうにか作れるようにする」


「へぇ、ダメ元で言ってみるものだね。まさかの三日間も。じゃあついでに経費申請も通しといてねー」


 申請が通らないと理解しているのでしょう。フォル様は書類だけ渡して、転移魔法でゼーシェリオン様のいる研究所まで転移しました。


      **********


 エンジェリア姫が研究所でゼーシェリオン様を探しています。ですが、全く見つかりそうにありません。


「……ところで、フィル。どうしてついてきたの? つまんないよ? 」


「暇だったから」


 ついてきたというより、あとから追ってきたが正しいのですが。


 フィル様も一緒にいます。


「……まぁ良いけど。あの子迷子になってない? 地図でも置いておく? 」


「地図あったところで」


「それはそうなんだけどね。ないよりはある方が良いかなって」


 エンジェリア姫のために、バレないように地図を床に置いて様子を見ています。


「……戻した。あの子地図があればゼロを見つけたあとも使えるって気づいてない? 」


「エレは目の前の事しか見えなくなりやすいから」


「それはそうだけど……とりあえず様子見か」


 あまり表立って行動できないのでしょう。エンジェリア姫がゼーシェリオン様を見つけるまでは、これ以上手伝いはしていません。


      **********


 エンジェリア姫がゼーシェリオン様を見つけ、赤い結晶まで辿り着きましたが、赤い結晶はどこかへ消えてしまい、研究所は更地になってしまいました。


「……まずいな。最悪を想定してここ一体立ち入り禁止にした方が良い。フィル、ネージェ達と主様に連絡して立ち入り禁止と閉じ込めるための結界魔法の許可」


「今してる」


 フィル様が連絡魔法具を使い、被害を減らすように協力を呼びかけてます。


「早急にやってくれるように頼んだ」


「ありがと……助けたいけど、それだとあの子らの成長に繋がらないよね……もう少しだけ、様子を見るか」


 エンジェリア姫とゼーシェリオン様は、古い村の跡まで来ています。


「ゼロ、あれなぁに? 」


「井戸」


「異土? えっと、分かんないの。覗けば分かるの? 」


 現在では井戸が使われている場所は限られています。エンジェリア姫は見た事がなかったのでしょう。


「覗いても分かんねぇだろ。つぅか、何を覗こうとしてんだ? 水か? 」


「土」


「は? 何言ってんだ? 」


 エンジェリア姫は井戸を異国の土とでも思っているのでしょう。この中には土が大量に入っているとか考えていそうです。


「……土入れる場所違うからな。それより早く探さねぇと」


 エンジェリア姫とゼーシェリオン様は、井戸から目を離して赤い結晶を探しています。


「……あの子、歴史的なものに関する勉強もさせた方が良いかも。その辺はあまりさせてなかった」


「それならおれが教える。歴史は得意、だから」


「うん。よろしく……今度は倉庫の前で止まってる。あれも何か聞いてるみたい……」


 エンジェリア姫がゼーシェリオン様に、木造の倉庫を何か聞いています。ゼーシェリオン様は、呆れた様子ですが、ちゃんと答えてあげているようです。


「なぁに? 」


「倉庫。中に物入れる倉庫」


「倉庫……ふにゅ。次行くの」


 エンジェリア姫は、赤い結晶を見つけるのと同時に、見た事のないものを楽しんでいるのでしょう。


 再び歩き出すお二人を見ながら、フォル様がフィル様に紙を渡しています。


「これとかどう? エレの分かりそうな問題もあるから、やだとは言わないと思う」


「半分くらい分かりそうで半分くらい分からないがエレには良いと思う」


「……うん。そうだね。ゼロは知っているみたいだから、少し難しめで」


 こんな場所でもエンジェリア姫とゼーシェリオン様の勉強についての話し合いです。


「……あれが……ここまで近くで見ると異様さが際立って見える。でも、このくらいなら僕らが出る幕じゃなさそう」


 エンジェリア姫とゼーシェリオン様が、赤い結晶を見つけました。


 エンジェリア姫が魔法杖を取り出して、破壊魔法を使っています。


「……フォル」


「二人でいればどうにかなるよ。あの二人はずっとそうしてきているんだ」


 破壊魔法では赤い結晶は傷一つ付いていません。


「……ぷにゅ。もう一回? 」


「効かねでんだろ。他の方法考えねぇとだな」


 赤い結晶が再び眩い光を出します。エンジェリア姫が瞬時に防御魔法を使っていましたが、防ぐだけの強度はなかったようです。


 フォル様がすぐに防御魔法と癒し魔法を使ったため、エンジェリア姫とゼーシェリオン様は無事でした。


「……むすぅ。エレのお世話係を危ない目に合わせるのはだめなの……むすぅ」


「エレ? 」


「星の音よ、破壊の音色を奏でろ! 」


 エンジェリア姫の切り札でもある魔法です。耳には聞こえる事のない音色が赤い結晶にヒビを作ります。そこからヒビが広がっていき、砕け散りました。


「ぷにゅぅ。これでみんな安全なの」


「安全。つぅか、これで解決できるなら初めからやってれば良かったな」


「ふにゅ。そうなの。エレも今気づいた。それより、これ破壊できたけど、おかえりをどうすれば良いのか分かんないままなの。ゼロ、どうすれば良いのか分かる? エレはおかえりしたい気分」


 エンジェリア姫がゼーシェリオン様の手を握りました。


「……あれが転移魔法を妨害していたの気づいてないんだか」


「……そろそろ出て教えた方が」


「そうだね。眠そうなエレを放置していたくないから」


 フォル様とフィル様がエンジェリア姫とゼーシェリオン様に姿を見せました。


「ぷにゃ⁉︎ ふぇぇぇぇん! 」


 エンジェリア姫がフォル様に気づいて、泣きつきました。


「お疲れ様」


「ゼロもフォルもいなくて寂しかったのー。今日はエレを愛でろなのー」


「うん。いっぱい愛でてあげる。明日からしばらく暇だから、その間ずっと愛でてあげるよ」


 今回の仕事でフォル様は、三日間の休暇がもらえますから、その時間を使ってエンジェリア姫を愛でるのでしょう。

 普段は何かあればそちらを優先してエンジェリア姫を優先できないので、この時間はフォル様にとって貴重なのでしょうね。


「デートでもする? それとも家でゆっくり過ごす? 」


「お家でゆっくり過ごすのがすきなの。エレはフォルと一緒にいられるだけで良いけど」


 エンジェリア姫もフォル様も嬉しそうです。


 ゼーシェリオン様は少し不機嫌ですが。


「……ゼロも一緒にいるんだよ? エレの事寂しくさせたんだから」


 エンジェリア姫の言葉で、ゼーシェリオン様の表情が明るくなりました。


「帰ろ」


「うん」


 フォル様が転移魔法を使って帰りました。


「明日は少しだけテストするよ」


「やなの! 」


      **********


 星の音 三章 九話 赤い結晶

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