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20話 王なき国ロスト王国


 ロスト王国に向かう前日の晩、エンジェリア姫とゼーシェリオン様は二人で夜を過ごしていました。


「ゼロ、あのね、エレはゼロを応援するの」


「ああ……不安か? 」


「……うん。良くない事が起こるんじゃないかって、不安、なの」


 エンジェリア姫は星の御巫の素質とも言える未来視と過去視の両方を使えます。今は意識的に使えないようですが、エンジェリア姫は、なんとなくで未来の可能性を感じ取っているのでしょう。


「……大丈夫だ。なんて言っても、お前の不安を減らす事はできねぇか」


「ううん。ゼロがいつも通り笑ってそう言ってくれると安心する。エレは単純なの」


 エンジェリア姫は、そう言ってゼーシェリオン様に抱きつきました。


「……ふかぁ。ゼロ、今の弾力見た? すごいふかぁだったの。このふかぁさはまさに、エレの夢のベッド」


「ソウダナー」


「なんで、棒読みなのー」


 そう言いながら、エンジェリア姫が楽しそうにあまり痛くなさそうな猫パンチを繰り出しています。


「エレ、魔力多い。それ逆効果になるから抑えろ」


「ふぇ? あっ……このくらい? ゼロが直接もらってくれないとむずかしいの。威力とかふんにゅんは良いとして、攻撃に魔力を乗せる方法以外分かんないのもあると思うけど」


 エンジェリア姫は魔力吸収量が多く、ゼーシェリオン様は魔力吸収量が少ないのでこうして定期的にゼーシェリオン様に魔力を与えています。


 ゼーシェリオン様からの場合は別の方法ですが、エンジェリア姫はこの方法以外では、試してみてできなかったそうです。


「……動くから疲れる。ねむねむさんなの」


「そうだな。明日早く起きねぇとだから寝るか」


 動くからというのもあるのでしょうが、魔力を使っている分疲れるのでしょう。


 エンジェリア姫とゼーシェリオン様は、明日に備え二人でくっついて眠りました。


      **********


 一面が氷景色。建物も氷と統一感を出すためでしょう。水色の建物が並んでいます。


「ふっふっふ、今日は絶対に寒くならないように、ぽかぽかさんなのー」


「……なぁ、お前このあとドレス着替えるから意味ねぇぞ」


 今回のエンジェリア姫は、厚手のコートを着て防寒完璧に決め込んでいましたが、ドレスはそんなに防寒しっかりしていません。


「ぴぇ」


「ゼロ、エレをいじめない。王宮は温度調整されているから大丈夫だよ。寒くないから……多分」


 王宮の中は人が普通に住める温度です。ドレスでは少し寒いかもしれませんが。


「そういえば、エレはどこでお着替えすれば良いの? 」


「俺が使っていた部屋で着替えてくれ。少し不便だが、着替えくらいは普通にできるだろ」


 今は純ロスト王家の皆様は肩身の狭い思いをされております。


 使用している部屋は狭く、必要最低限のもの以外はありません。


「ふにゅ。早速行くの」


      **********


 王宮の一室、広々とした空間。

 ドレスに着替えたエンジェリア姫は、フォル様と一緒にいます。


「なにやってるんだろう」


「さぁ? 危ない事ではありそうだけど」


 なにやらばくだ……爆発魔法具を扱っているようです。ですが、かなり苦戦しています。


「みゅぅ」


 なにやら困っている様子。エンジェリア姫は、困っている皆様を放っておけないようです。


 吸い込まれるかのように悩んでいる王家の皆様の元へ向かっています。


「お困りそうだからエレがお手伝いするの」


「この魔法具を完成させられますの? 」


 純ロスト王家は一人を除いて全員男性です。その一人である銀髪の少女。

 彼女は、ルーヴェレナ様。エンジェリア姫の友人です。


「……できるの。少し待ってて」


 エンジェリア姫は、慣れた手つきで魔法具を完成させていきます。


「ふにゅ。これで良いの。完成。天才魔法具ぎ……博士を褒めろなの」


 これは調子に乗っている時のエンジェリア姫ですね。調子に乗っているエンジェリア姫をロスト王家の皆様が次々と褒めています。


「すごいな。エレ」


「ふにゅ。すごいの……ぷにゅ? 」


 ぽちっと、わざとではないのでしょう。調子に乗っていて、意図せず触ってしまったのでしょう。


 爆発魔法具の起動ボタンを。


「ゼロ! 」


「……っ」


 ゼムレーグ様がゼーシェリオン様の腕を引っ張り、爆発魔法具から離します。


 呆然としているエンジェリア姫は、フォル様が駆けつけ、防御魔法を瞬時に使いました。


 轟音と共に、王宮が崩れます。


「……ふぇ? みゃ? 」


「まったく、ほんとになにをやらかすか分かんないよ」


「ふぇぇぇん……ごめんなさい」


 泣いているエンジェリア姫をフォル様が優しく抱きしめています。他の皆様の安否はエンジェリア姫とフォル様の場所からは瓦礫が邪魔して見えません。


「ゼロとゼムは怪我なし! 一緒にいる! 」


「ルーヴェレナですわ! 月夜とレイと一緒にいますわ! 怪我は当然ありませんわ! 」


 次々と無事を知らせる声が聞こえてきます。運が良いというより、皆様の対応が早かったからでしょう。怪我人すらいません。


「フォルとエレも無事! 怪我してない! ……ていうか、王云々の前に王宮の消えるってなに? 」


「ぷにゅにゅ……ごめんなさいなの」


「これは作らせた方が悪い。君が気に病まなくて良いよ」


「ふにゃぁ」


 エンジェリア姫が気に病みすぎないようにするためでしょう。エンジェリア姫の頭を撫でて慰めているようです。


「……ざっと見積もっても億はいくだろうね。素材だけであとは自分達でやるとしても数十万は稼がないと」


「それなら、エレががんばるの! お菓子を売るの! お菓子複製の魔法具あるから、それでいっぱい売るの! 」


 責任を感じているのでしょう。エンジェリア姫は自分でどうにかしようとしています。


「……全員噴水前に集合! 今後の事とかで話がしたい! ……エレ、君もだ。一緒に行くよ」


「ふにゅ」


 エンジェリア姫は、フォル様と手を繋いで、外にある噴水前まで向かいました。


      **********


 皆様揃うと、エンジェリア姫は、フォル様の後ろで気まずそうにしています。


「まずは、意思確認だ。反論があれば言って。なければなにも言わなくて良い。君らはかつての王なき平和王国を望んでいる。その認識で合ってるかな? 」


 誰一人として声を出しません。肯定という事でしょう。


「だとしても王宮は必要だ。君らが過ごす場所として。そこで、君らは自分達でここを建て直す気はある? なければ言って」


 またしても誰一人として声を出しません。


「なら、エレの案だけど、お菓子を売るっていうのはどうかな? エレに売るお菓子を渡して、集計もやってもらう。みんなは一つでも多く売る。一番売り上げた人には何かご褒美でも用意しようかな。なにが良いか考えておいて」


「それフォルも参加すんのか? 負かせてやるから参加しろー」


「売り上げはいらないから参加しろー」


「それは良いですわね」


 皆様、フォル様が参加する事を望んでいるようです。次々と参加を希望する声をあげています。


「売り上げは渡すよ。参加も君らがそこまでしてほしいっていうならするよ。その代わり、僕が勝ったら君ら全員、神獣式訓練を受けてもらうよ」


 楽しそうです。いつになく楽しそうです。勝負がというより、勝ったあとの事で楽しそうです。


「金稼ぎ法も異論はないという事で、エレ、頼める? 」


「ふにゅ。ついでにこれも。お城の空間魔法具なの。ここに設置するから、直るまでここで生活するの。エレもここで集計とるから」


 エンジェリア姫は、空間魔法具を起動させ、中に入りました。


      **********


 星の音 三章 四話 王なき国ロスト王国

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