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11話 世界管理システム


 世界管理システムへの道が開かれる日、エンジェリア姫達は転移魔法でヒントが示した場所へ向かいました。


「雨でじめじめさん」


 振り続ける雨に濡れる事はありませんが、エンジェリア姫は、両手で頭を守っています。


「虹さんないの」


「……エレ、何かあったらすぐに言ってよ。長時間ずっと魔力を大量に消費し続けるなんて普段やらないから」


「みゅ? ずっと使うと疲れる以外に何かあるの? 」


 そんな使い方はする事がないので、知っている方が珍しいでしょう。


「慣れてないと疲れ以外の症状が出るかもしれないんだ」


「……むにゅ。なんかあったら言うの。んっと、魔力をいっぱい放出……」


 エンジェリア姫がゼーシェリオン様に抱きつきました。


「ゼロ、魔力放出分かんないの。苦手なの」


「俺が手伝ってやる。だから、やり方覚え……できるようになれろ」


 エンジェリア姫はゼーシェリオン様に協力してもらい、魔力を大量に放出します。


 エンジェリア姫の魔力に反応して、透明な道が現れました。


「……この道なの? 」


「うん。フィルからエレが苦手そうな場所って聞かなかった? 」


「聞いたの……でも……でも……虫さんいっぱいとかだと思って……こんなの知らないの……」


 透明の道は空高くに続いています。エンジェリア姫達は、世界管理システムがある古代遺跡に行くためにこの透明な道を進まなければなりませんが、エンジェリア姫は高い場所が苦手です。


「……がんばるの……ふにゃ⁉︎ 虹さんある⁉︎ 」


 透明な道の奥に虹が見える事を発見したようです。エンジェリア姫は、ゼーシェリオン様の手を握り、早く早くと急かすように手を上下に振ります。


「虹さん虹さん。もっと近くで見るの」


 恐怖よりも好奇心が勝ったのでしょう。透明な道を歩くのに怖がっている様子はありません。


 エンジェリア姫は楽しそうな様子で透明な道に足を踏み入れました。


「虹さん近くで見るのー」


「危ないから走んな」


「やなのー」


 虹を真上から見る機会などエンジェリア姫は少ないでしょう。フォル様あたりは仕事で良く目にしていそうですが。


 虹の真下に来たエンジェリア姫は、立ち止まり下を見ています。


「ふにゃぁ。すごいの」


「……怖くないの? 」


「みんないるから大丈夫なの。それに、こんなにきれいな景色を見られるのに怖いなんてないの」


 虹と雲の下から緑色の地面が見えるこの景色を堪能しているようです。皆様と一緒という安心感を抱いて。


「管理システムのところに行かないとだけど、もう少しこの景色を見たい気がするの」


「君が大丈夫ならいくらでも見ていて良いよ」


「……行くの。疲れちゃうから」


 口にはしていませんが、自分がというよりフォル様がでしょう。エンジェリア姫は、俯いて足を動かしました。


       **********


 透明な道を歩く事早一時間。古代遺跡はまだ見えません。


「……これいつになったら着くの? 」


「そろそろ半分くらいは歩いているんじゃないかな」


「フォル、エレに希望を持たせるような事は」


 半分は半分でしょう。ですが、この先は真っ直ぐ歩きやすい道を歩いてはいられません。時間的には、一時間以上かかるでしょう。


「……みゅ? ……変なの発見……これ、行くの? エレやだよ? 」


「……がんばれー」


 崖、というよりは、かなり急な階段でしょうか。エンジェリア姫の目にそれが映っています。


「……ぷにゅぅ……」


「ゆっくりで良いよ」


「……ふにゅぅ……がんばるの。ゼロ、がんばってのぼり切ったら褒めるの。なでなでするの……ゼムとフィルも」


 エンジェリア姫は覚悟を決めて急な階段を登ります。


「……手が疲れるの」


 一段一段が高く、腕力で登らなければなりません。


 一段登ると少し休み、また一段登っています。


「大丈夫か? むりすんなよ? 」


「大丈夫なの。がんばるの」


      **********


 登り始めてから一時間以上経ったでしょう。エンジェリア姫は頂上まで辿り着きました。


「……ここなの? 」


 古い建造物がポツンと建っています。


「ふにゃぁ……礼拝堂? 」


「には見えないよね。中は迷路みたいになっているらしいから、はぐれないように気をつけて」


「うん」


 エンジェリア姫は、ゼーシェリオン様の手を握り、建物の中へ入りました。


      **********


「入り組んでる洋館」


「同感」


「エレ、次こっち」


 歩くたびギシギシと床が音を出しています。

 薄暗く、はっきりと見えているのはゼーシェリオン様とゼムレーグ様だけでしょう。


 壁には古い文字が長々と綴られています。世界管理システムにとって大事な事ですが、古くなっていてほとんど読めません。


「エレ、そこ少し段差ある」


「ぷにゅ。ゼロとゼムがいるとこういう場所は便利なの」


 ゼムレーグ様がエンジェリア姫が頃ばないように声をかけています。


      **********

 

 灯りのない薄暗い廊下をゆっくりと転ばないように歩くエンジェリア姫に周りが合わせて歩く事数十分。


 巨大な扉がエンジェリア姫達の足を止めました。


「……これって」


「流石に知っていたか。愛明種の使う紋章だよ」


「……どうして……ううん、考えてみれば当然なのかも。愛明種は隠れて暮らしていたとされているから。でも、こんな場所にどうやって」


 私の記録には愛明種はほとんど載っていません。ですが、この場所にいたという事に関してだけは少しだけ載っています。


 愛明種は、特殊な魔法を悪用されないよう、人の元には降り立たず、天の地にて文明を築いた。特殊な魔法の応用にて大地を創り、資源を創り、水を創った。


 それがこの場所なのでしょう。


「……」


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。愛明種に関しても、私が生み出される前の種。エンジェリア姫がなぜ難しい顔をしているのか知りません。


「巨大なハートは全てを愛する愛明種の掟を象徴するもの……エレにはできない事なの」


「君は無理にそれをする必要はないよ。僕は……愛して欲しいけど」


「みゅ⁉︎ フォルはらぶなの。だいすきなの。だいすき……ぎゅぅしたいの」


 エンジェリア姫がそう言ってフォル様に抱きつきました。


「……エレはゼロは好きじゃないんだ」


「らぶなの……というか、ゼロは……兄妹。エレのお世話するのがゼロなの。フィルのらぶと違うの。でもすきなのは変わりないの」


 ゼーシェリオン様が満足そうにしています。


「というか、これどうやって開けるの? この手の扉って、その種でなければ開ける事ができないはずなんだけど」


「……これがあればこの手の扉は開く事ができるよ」


 空色の丸い宝石があしらわれたネックレスです。これは、フォル様が持つ、紋章の扉を開けられる特殊な魔法石のネックレスです。


「管理者特権」


「特権……便利」


「管理者特権じゃなくて、おれとフォルだけの特殊な魔法による魔法石」


「……生命魔法の応用で創ったの? 」


 ゼムレーグ様がフィル様の持つネックレスをじっと見てそう言いました。


「そう」


「便利なの……ぷにゅ? エレ達にくれたあれと違う? 」


「うん。君とゼロに渡したのは、二人で一緒にいないと効果がないんだ。それに、開けられる扉は制限してある。危険だと分かっている場所に二人だけで行かせられないからね」


 エンジェリア姫とゼーシェリオン様も似たようなネックレスを持っています。ですが、そのネックレスはフォル様とフィル様の持つものより性能が低いです。


 この扉は、エンジェリア姫とゼーシェリオン様の持つネックレスでは開ける事ができないでしょう。


「……開けるけど、この先は何があるか分からない。管理システムを守るための仕掛けがされているはずだ。絶対に側から離れないで。側にいれば、守れるから」


「ふにゅ」


 フォル様が空色の宝石を扉にかざします。扉の紋章が光り、扉がゆっくりと開きました。


      **********


 

 扉を開けた先にあるのは、巨大な魔法機械です。エンジェリア姫は、真っ直ぐと巨大な魔法機械の元へ向かいました。


「……これが……フィル、いつも通りお願い」


「分かってる」


 エンジェリア姫が巨大な魔法機械を起動させます。


 古い文字ですが、世界崩壊の時間と書かれた画面が現れました。


「……どうして、管理システムにこんなものが」


 本来の世界管理システムであればあり得ない事。世界崩壊に関する内容がぎっしりと画面上に映し出されています。


 世界を守るために存在する世界管理システム。それが世界を崩壊させる存在になっているというのは、明らかな異常でしょう。


「……フォル、管理システムがもし壊れたら、世界にどんな影響が出るの? 」


「今まで以上に酷い世界になるだろうね。だから、今君がやろうとしている事はおすすめできない。それに、これが壊れるという事はこの世界のみならず、他の世界にまで影響が出かねない事だ」


 世界管理システムがあるからこそ、今の世界達は共存する事ができています。もし、世界管理システムがなければ、過度に影響し合い、この世界にも他の世界にも、悪影響しか与えないでしょう。


 ですが、このまま放っておいたとしても、悪影響はこの世界のみならず、他の世界にも出てくるでしょう。


「……」


「……エレ、方法がないなら」


「がんばるの。方法は、ないかもしれないけど、探すの。もしかしたら、ほんの少しだけ長く……長く? ぴにゃ⁉︎ それなの! フィル、エレの小型魔法機械をこれに繋げるから、接続機貸して」


 エンジェリア姫は何か思いついたのでしょう。フィル様から魔法機械を繋ぐ接続機を借りて、エンジェリア姫の持つ小型魔法機械と世界管理システムを繋げています。


 世界管理システムの、世界を守護するために必要な機能だけを残し、後の機能を全て停止させています。


「……これを……これで……ぷみゅ。できたの」


「さすが、天才姫。良くこんな不可能に近い方法を思いついて成功させるよ」


「ふにゅ……天才魔法具博士だからとぉぜんなの」


 フォル様に褒められたエンジェリア姫が調子に乗っています。


「ぷみゅぅ。一仕事終わったの……疲れたの。エレねむねむさん。フォルと一緒にねむねむさん。ゼロは抱き枕」


「お疲れ様。もうここには用がないから帰ろうか。エレ、帰りは寝てて良いよ」


「ふにゅ? 良いの? フォルらぶなの」


 エンジェリア姫が、フォル様に抱きつくと、突然何かが崩れる音が聞こえてきました。


      **********


 星の音 一章 最終話 世界管理システム

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