嫌なお泊り会 ①
注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。
ご了承下さい。
真希ちゃんは教科書を机に立て、先生からの目線を隠しながら何かをしていた。
隣に座っている私から見ればその様子は丸見えだ。真希ちゃんは隠れながら人形を作っていた。ハサミで布を裁つ音も、針で縫う音も失くし、真希ちゃんは机の中からどんどんと材料を取り出し、その形を整えていった。
……スゴイ女子っぽい! 今の時代でそんなこと言ったら炎上するかなァ!? でもスッゴイ可愛いんだけど!!
授業が終わると、真希ちゃんはそれを見せつけてきた。何だあのドヤ顔。ブチ犯してやろうか。
……さて、最近の私の悩み事を言っておこう。真希ちゃんの伯父さんのことは……まあ、ちょっと思うところはあるが、今は違う話だ。
授業が終わる度に、なぜか毎回私の教室を覗く長身の女の子。身長180はあるんじゃない?
そんな人が、じーっと私を睨んでいる……気がする。
ぼっさぼさの、寝癖のまま学校に来ているすぼらな容姿の女子なんて私知らない。喋ったこともないし、たまにあの人が私の家まで着いてきている……気がする。
そう思うといつも監視されている……気がする。
被害妄想も甚だしいのだが、なんだかそんな気しかしないのだ。
次の授業が始まる直前、その子はさっと消えてしまう。いったい何が目的なのか。一切心当たりがない。人の恨みを買うようなことは……ちょっとだけ心当たりがあるけど、あの子は知らない。
学校が終わり、少しだけ遅れた提出物を先生に渡し、今日の部活動(と言う名の遊びだが)を終わらせ、真希ちゃんに相談した。
「……うーん……何か、いや、心当たりはあるんですけど……。……ちょっと危ないかもですね。どうします?」
「どうしますって……どういう?」
「色々危ないかもしれません」
「危ないって!?」
「ワンチャン内蔵ぐっちゃぐちゃ」
「最悪の中に入る死に方じゃない!? こわっ!?」
真希ちゃんからは詳しい話を一切聞かずに、そのまま帰路を共にしてしまった。
理由! 理由を教えて! このままだと何か私の家に来そう!!
「今日は万全を期して涼夏ちゃんの家に泊まりますけど、大丈夫ですか?」
「大丈夫だと思うけど……いや……まあ……」
クッソ……今日偶然にも両親がいねぇ……!! 断る理由も無ければ……ちょっと真希ちゃんのパジャマ姿が見たい心もある……!! こんな嫌な動機のお泊り会なんか望んでない!!
いや、真希ちゃんは心配してるのは分かってるんだけど、分かってるんだけど……! 分かってるんだけどさ!!
「大丈夫ですか? 傍にいた方が良いんですけど……」
「……うん、大丈夫、ダイジョウブ……」
やってやろうじゃねぇかこの野郎!! 今の真希ちゃんは女のコ! 同性同士がお泊りしてもべーつに何も不思議なことは――。
「お友達とのお泊り会なんて……もしかしたら初めてかも知れません。……楽しみです」
真希ちゃんはその微笑みを手で隠しながらそう言った。
お母さんありがとう。私を女として産んでくれて。もし男だったら勃起してた。
そのまま、真希ちゃんと一緒に家まで着いてしまった。……なんだか、背後から気配を感じるような……ないような……。
「あ、でも着替えとかどうするの?」
「伯父さんに持って来てもらいます」
「……親とかじゃないんだ」
「こういう時に一番速いのは伯父さんですし、ちょっと欲しいものもあるので」
……あれ、もしかして私、本気でヤバい人物に付け狙われてる?
そのまま真希ちゃんを我が家に上がらせると、すぐに彼女はスマホで電話を始めた。おそらくあの伯父さんだろう。
その間、私は自室へと全速力で戻り、決して見られてはならない諸々の物品を即座に片付けた。その間僅か二分。危なかった。
直後には、真希ちゃんが私の部屋の扉をノックした。さあ、今ならもう何も問題ない。
真希ちゃんは扉を開け、部屋を一通り見渡すと、すぐにカーテンを閉めてベッドの下を覗いた。
何を納得したのか、真希ちゃんは微笑んだ。
「色々説明してほしいんだけど……」
「ああ、忘れてました。えーと、どこから話しましょう?」
「まず……えーと、ストーカーの正体」
「……カーテンを覗いてみて下さい」
その答えに疑問を持ったが、素直にカーテンの隙間から外を覗いた。
この窓は車道側に位置する。つまり玄関の付近にいる人物も筒抜けなのだ。
美しくも、どこか寂しげな夕焼けに照らされ、影を伸ばしている女が、玄関先でじっと立ち尽くしていた。私と同じ制服、そして高い背。
前髪で隠れている目は、じろりとこちらを覗いた。私はすぐにカーテンを閉めた。
「まあ、あんな感じです」
「どんな感じ!?」
「あの人つい昨日話したばかりの隣の隣のクラスの人なんですけどね。多分私に執着してます」
「あ、被害者私じゃなくて真希ちゃん……」
「やっぱり男のコのほうで話しかけたのが悪かったのかなぁ……」
あぁ……性癖を壊されて真希くんがぴったりはまる性癖に再修復された哀れな人だったか……。
「で、問題はここから。多分あの人とり憑かれてますね」
「おっとー? 急にオカルトチックになったぞぉー?」
「声を聞いた限り『同性愛許すマジ』みたいな幽霊ですね」
「この時代において色々アウトな存在じゃない!?」
「更に言うなら『純愛こそ至高』ですね」
「結果として拗れに拗れまくってああなってるの!?」
「あの人から見ると涼夏ちゃんは私を寝取ったみたいになってるんですかね?」
「寝てから言え! いや私も寝てないけど!? つーかその場合! BSSだろうが!!」
何だこの状況!! ストーカーかと思ったら幽霊にとり憑かれてるし!! その幽霊はNTRに憤慨してるし!! まず寝てないし!! 寝てから言え!! そしてNTRじゃなくてBSSだし!! あぁ!? 自分で言ってて何を言ってるのか分からねぇ!!
何かもうムカついてきた! 真希ちゃんが家にいるのどうでも良くなってきた!!
「真希ちゃん!!」
「はい」
「あいつぶん殴ってきて良い!?」
「それは辞めて下さいよ!? あの人身長何cmあると思ってるんですか!?」
貴方も充分背が高いでしょうが!!
すると、家のチャイムが鳴り響いた。
どくんと私の心臓が鳴り響き、先程までの威勢はどこへやら。私はそのチャイムの音に怯えてしまった。
「あ、大丈夫ですよ。これは伯父さんですから」
「あぁ……良かった」
「じゃあ私は――」
「……ヒトリニシナイデ……」
「一緒に来ます? することなんてないですけど」
私は何度も頷いた。
真希ちゃんの背に隠れながら、玄関まで行くと、真希ちゃんは恐れることもなく扉を開けた。見ると、確かに真希ちゃんの伯父さんだった。あのオシャレな眼帯は、少々柄が変わっている。
「ああ、どうも。今日はよろしくお願いするよ。はいこれ、着替えと、頼まれてたもの」
「ありがとう伯父さん」
「……なんだか巻き込まれてるみたいだな。俺たちが何とかしようか? 費用はかさむが」
「ううん、大丈夫です。伯父さんが出しゃばる問題じゃないし」
「そうか。……ああ、涼夏、だったっけ」
真希ちゃんの伯父さんは優しい笑みを浮かべながら、私に語りかけた。
「うちの姪に手ぇ出したらどうなるか分かってるよな?」
あ、威嚇だった。
「出しませんよ。まず、別に私同性愛者じゃないし……」
「恋ってのは恋するまで分からないからな。まあ、まず真希が男性か女性かも分からないんだが……。……とりあえず、どっちでもそういう感情は出てくる。俺の親友たちもそうだったしな」
そのまま真希ちゃんの伯父さんは手を振って帰ってしまった。玄関の周りには、あの女はいなかった。
少しずつ、夜が訪れてくる。夜なんて、この歳になるともう怖くも感じないし、思春期の黄金時間なのに、今は気が気でない。
今夜の夕食は、真希ちゃんが作ってくれることになった。カップ焼きそばでも食べようとしていたから、これは嬉しい誤算だった。
それにしても……真希ちゃんの割烹着可愛いな……。
「何が食べたいですか? 何でも作れますよ? コオロギの素揚げでも」
「……いや……そんな百年以上前の食生活には戻りたくないかな……」
「イタリアンでも作りましょうか? あ、でも材料が足りないかも」
「……トルコ料理」
「あー……マントゥは作れるかな……」
真希ちゃんは冷蔵庫の中を見ながらレシピを考えているようだ。
……割烹着姿の真希ちゃんの背中……。……小ぶりなおしり……。……ふむ……。
「あ、ムサカも作れそう。じゃあゆっくり過ごしてて下さい。多分二、三時間くらいで出来るので」
料理の無茶振りに答えられるのって、地味にスゴイことよね……。この場合無茶振りした私が悪いんだけど……。
それにしても、トルコ料理ってケバブしか知らないんだけど。テキトーに言ったから全然何が出てくるか分からないんだけど。
聞こえてきた単語はマントゥとムサカ。何だそれ。ゲームになかった? そんな名前のやつ。
調べても良いんだけど……うーん……お楽しみは後に取っておくのも……また悦と言うものではないか?
真希ちゃんの伯父さんが持って来た神ゲーを遊んでいると、あっという間に夕食が出来上がった。
並べられたのは、家では中々香らないスパイシーな匂い。小さな水餃子のようなものに赤いソースがかかっている何かと、ハンバーグに似た何か、グラタンに似た何か、ついでのようにあるケバブ。ピラフまである。
「えーと……どれがどれ? 美味しそうだけど」
「可愛い水餃子みたいなのがマントゥ、マンティとも言われます。羊肉を使うんですけど、なかったので牛肉ですね。玉ねぎとかナスとかと一緒にひき肉を入れて茹でて蒸したものです」
「……ハンバーグみたいなのは?」
「キョフテですね。トルコ版ハンバーグみたいなものです」
「……グラタンっぽいのは?」
「ムサカです。これはじゃがいもやにんじん、あとナスや玉ねぎを素揚げしたもののスライスと、ひき肉入りトマトソースを何層も重ねたものです。どちらかと言うとギリシャ風ですね」
「……スゴくない?」
「えへへ……」
風変わりだからか全てが美味しく見える。そしてキョフテにかかっているソースは可愛らしくハート型でかけられている。あざとい……あざとすぎるぞこの娘……!!
しかしこれ……箸で食べるものなのか? ピラフもあるからスプーンか?
私達は手を合わせ、夕食を始めた。
最後まで読んで頂き、有り難う御座います。
ここからは個人的な話になるので、「こんな駄作を書く奴の話なんて聞きたくねぇよケッ!」と言う人は無視して下さい。
私は、百合を書きたい。
私は、幸せな百合を書きたい。
しかし、それでは面白くない。レズビアンではないと自負する女の子が、性別すらもあやふやな人に恋し、少しずつ自分が同性愛者であったと自覚する過程も好きなのだ。
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