真希ちゃんはトラブルを引き寄せる ②
注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。
ご了承下さい。
別に隠れる必要はないのだが、何だか隠れてしまう。私と亜美は、会長に引き摺られる真希ちゃんの後を追っていた。
真希ちゃんが連れてこられたのは、なぜか生徒指導室だ。何かやらかしたとか?
いや、それなら会長の言葉がよく分からない。やっぱり変なトラブルにでも巻きこまれたのだろう。
慎重に、誰にも気づかれないように耳を亜美と一緒にぴとりと密着させると、話し声が僅かに聞こえる。
「――と言うわけなんですが……」
「イヤッ……ホントッ……! ……それに関しては……本当に申しわけありませんでした……」
「……まあ、君に責任があるわけではないし……今回は……」
「……私から小指詰めるように言っておきますので……」
「そんなヤクザみたいな責任の取らせ方は望んでないから……」
「いや……本当に……伯父が大変失礼なことを……」
伯父? 真希ちゃんの伯父さん?
伯父さんがこの学校にいる? しかもちょっとやらかしてる? もしかしてヤバい人?
瞬間、私の背後から、灼けるような気配が突き刺さった。同時におどろおどろしくも、どこか優しい声も脳に響いている。
ばっと振り返ると、そこには高身長の女性がいた。両手を白色の手袋で隠し、右目にオシャレな白色の眼帯を着けている美人な女性だ。
おそらく、180cmくらいだろうか? めちゃくちゃ背が高い。
「あのー」
女性から聞こえる天女のような声は、耳を突き抜け脳を癒やした。油断してしまえばちょっとヨダレが垂れそうだ。
「五常真希って子、知りません?」
ああ、そうだ。誰かに似ていると思えば、真希ちゃんによく似てるんだ。
「あの……この部屋に……」
「ああ、ありがとうございます。じゃあちょっと離れたほうが良いですよ」
その言葉と同時に生徒指導室の扉が勢いよく開かれた。直後に見えたのは、真希ちゃんが跳躍している姿。
そのままの勢いで真希ちゃんは綺麗な脚を伸ばし、飛び蹴りをその女性に放った。
一連の動作は素早かった。それこそ並大抵の人は反応さえも出来ない程に。そんな飛び蹴りを、女性は片腕だけでするりと受け流した。
そんな最悪の遭遇なのに、女性はにこやかな笑顔を向けて真希ちゃんに親しげに話しかけた。
「久しぶり真希。元気だったか?」
「……伯父さん、色々言いたいことがあるんですけど」
「特におかしいことはしてない……はず。うん、何もしてない。妻に誓う」
伯父!? 伯父さん!? まんま女性だけど!?
……いや、言われてみれば、真希ちゃん程の目立つアホ毛ではないが、ちんまりとアホ毛が立っている。あのアホ毛って家系なんだ……。
真希ちゃんの伯父らしい女性……女性? は唐突に姿を消した。走り去ったとか、そういう単純な動作ではない。霧が晴れるとか、多分そんな感じで消えた。
すると、私の背後から声が聞こえた。
「どうもどうも。真希の伯父です。ヨロシク」
私と亜美の肩に、真希ちゃんの伯父さんの手が置かれた。音もなく、そして姿も見えずに移動している……つまり縮地?
「やめて伯父さん! また私の友達惚れさせるきでしょ!!」
「失礼な!! 俺は何もしてない!! 今までのは何か勝手に惚れてきてるだけだし!!」
「赤い髪の人も、めちゃくちゃ背が高い人も、巫女さんも、シスターさんも!?」
「うん!!」
「元気良い返事!! でもまだ言いたいことはあるの!!」
真希ちゃんがここまで可愛い怒声を出すとは珍しい。よほど苦い思い出があると睨んだ。
「私が入学すると聞いたら学校を黒い車で囲むのはやめて! 迷惑してるし近隣住民さんに迷惑!!」
「可愛い姪っ子が入学したって言うなら挨拶はしないと駄目だろ!? ん? 甥っ子? 姪っ子? どっちだ?」
あ、伯父さんでもそれは知らないんだ……。
「それで黒い車で囲むのがやりすぎって言ってるの!!」
「えーでも……心配だしぃ……妹からも頼まれてるしぃ……?」
「お母さんったら……また変なことやって……」
割と苦労人なのだろうか真希ちゃんは。
「あ、ちょっと待って。名刺あげる。……名刺どこにあったっけ……つーかどの名刺使お……」
真希ちゃんの伯父さんはポケットをまさぐり、そこから取り出した黒く長方形の箱を開け、何枚かの紙を手に取った。
「真希の友達だろ? えーと……不動産会社社長の名刺と、医者の名刺と、運送会社社長の名刺と、二郎系ラーメン店長の名刺と、メイド喫茶のチェキと、えーと……何か欲しいコネとかない? それに合った名刺出すよ?」
「……じゃあ、政治家とか……」
「じゃあ政治家に賄賂を渡してる会社の名刺を渡そう」
ちょっと問題発言が聞こえたきが……!?
私達に渡された名刺は、明らかに紙の質がそこら辺の用紙と段違いの、いかにも金持ちの名刺だった。もう文字を読むきも起きない……。
「おまけにシェイク店の店長の名刺も渡しておこう。クーポンいる?」
「あ、貰います……」
「半額のやつ? 何枚欲しい? あ、十枚しか持ってなかった」
「じゃあそれで……」
「今限定のやつ売ってるからね」
「ああ、美味しかったです……」
「あ、楽しんでくれた? さくらんぼの」
「はい……。……ああ、あの店の」
テキトーに受け答えしてて話を聞いていなかった……。
貰ったクーポンは、確かにあの店の物だ。……一枚無料券が混じってる……。
「伯父さん……そんなお年玉みたいに色々渡さないで……」
「あ、真希もいる? 他に何かあったかな……。株主優待券くらいしかないか。何か欲しい物ある? 大体買えるし大体何とかなるけど」
「……前に飛行機って言った時にとんでもないことになったから辞めとく……」
この伯父さんマジでヤバい人の可能性が浮上した。最悪アッチ系の人?
聞いたら……東京湾に沈められるかなぁ……でも聞きたいしなぁ……。気になるしなぁ……。
「……伯父さん、まず学校を黒スーツの人達で囲むのを辞めて……」
「あ、そう? こうしないと逃げられるかと思って」
「そんなことしなくても連絡すれば待つから……」
「いやーちょっと遅れたけど入学おめでとう」
「……ありがとう……?」
黒スーツの人達で黒塗りかぁ……。やっぱりヤのつく自営業の人かなぁ……。それならそれで飛行機を買えるのがわけ分からないけど……。
「それで? 挨拶したかっただけ?」
「そうそう。ついでに、友達とか出来てるか心配だったから」
「大丈夫。コミュ力カンストしてるから」
何だか会話から外されてる気がする……。
「まあ、安心した。それじゃあ俺はこれで!!」
そう言って真希ちゃんの伯父さんは走り出し、廊下の窓ガラスを突き破り飛び出した。
色々大丈夫かあの人!? 倫理観とか外れてるのか!? それともあの家系はみんな何かしら一般常識から外れている何かがあるのか!?
すると、亜美が少しだけ青ざめた顔で呟いた。
「あの人の左腕……体温を感じなかった……コワー……」
「マジ?」
「マジマジマジン。感じた?」
「私は感じたけど……」
「じゃあ左腕だけかな……コワー」
私達は部室に戻り、真希ちゃんから少しだけ詳しい話を聞いた。
「なんて言えば良いんでしょう……変人? な集団の一人です」
「何でそこに疑問を持つの? あっっっきらかに変な人よあれ」
「まあそれはそうなんですけど。基本的にはたまーにやってくる伯父さんってだけなんですよねぇ」
変な伯父さん……何だか瞬間移動もしていたような……?
この一族は果たしてどうなっているのだろうか。色々謎が残る。というか真希ちゃんが謎に包まれてるのは遺伝か……。
最後まで読んで頂き、有り難う御座います。
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