魔法使い真希くん!
注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。
ご了承下さい。
「てれれれれれーてれれれれーれーれーれー」
「わーいわーい」
「やんややんや」
「がやがやがやがや」
……何やってるのコイツラ……。
真希くんが良く聞くBGMを口ずさみ、亜美と会長とタカハシ先生が賑やかす。本当に何をやっているのか分からない。まあ、それはいつものことなんだけど。
問題はタカハシ先生だ。あんた一応教員だろうが!
「こちらにあるのは一枚のハンカチ」
「分かったコインが出て来るんだ!」
「よし出て行け。マジックのネタバラシはタブーだ」
「許して下さい」
「……ゆ、る、し、ま、す」
「あ、り、が、と」
結構仲が良いよな真希くんと亜美……。
「全く……ネタバラシされたせいでマジックを変えないといけないじゃないですか」
真希くんはハンカチをひらひらと揺らすと、それは一瞬で杖に変わった。
「ほーらハンカチもすねてステッキになった。よーし会長しっかりきゃっちしてくださいねー!」
その小柄な杖が空中で何度かくるくると回ると、一瞬で少し大きなハンカチに変わった。会長が驚きながらもそれを両手で掴むと、少しずつそのハンカチが膨らみはじめた。
「な、何か生命の鼓動を感じるんだが……!」
「そりゃまぁ、なぜか良く使われる鳩がいますから」
真希くんはハンカチを取ると、会長の手の上には鳩の雛がぴぃぴぃ鳴いていた。
どうでも良いが、本当に何でマジックと聞くと帽子から鳩が出てくるイメージがあるのだろうか。誰かそれが得意な人でもいたのだろうか。
すると、真希くんの誇った表情が私の方へ向いた。
「あ、ちょうどいい所に涼夏ちゃん。ポケットに五百円玉があるので好きに使っていいですよ?」
「ふぇ?」
ポケットに五百円玉を入れた記憶は無い。入れたのなら、私はこのお金で購買にあるあんパンでも買うはずだ。
ポケットを上から恐る恐る触ってみると、何やら硬い物がある。円くて、程々の大きさ。それこそ……五百円玉くらいの……。
弄ってみれば、真希くんの言う通り。五百円玉が一枚入っていた。
真希くんは私達の驚く表情を見ながらにやにやと笑みをこぼしている。何だこのイケメン。集団で襲われても文句言うなよこのヤロー。
それにしても……真希くんは多機能だ。お菓子作れてマジックも出来て、しかもしかもでイケメン、カワイイ。さては完璧か?
さて、この五百円でも使ってあんパンでも買いに行こ。
「それで、何で先生と会長が?」
「私顧問ですよ?」
「生徒会長として視察も仕事の内だ」
……そう言って遊びに来ただけでは? そう訝しんだが、まあこの部活動自体遊びみたいな物だし別に良いかな……。
「それで真希くんにマジックをさせていたと」
「面白いよ? さっき浮いてたもん。坐禅組みながら」
「絵面が危ないッ!! 別の意味で不安がマッハ!!」
色々アレな光景しか思い浮かばない! 大丈夫かそれ!?
そんなことをしていても、真希くんは依然としてマジックを続けている。タネとか仕掛けとかどこに忍ばせてるんだろう。
テレビでよく見るマジシャンは、まあ仕込む時間など大量にある。だけど真希くんはそれを仕込みながら学校に来て、当たり前のように過ごし、そして誰にもバレなかった。
何だ? 真希くんは二十一世紀から来た未来人か何か?
真希くんの口の中から三本目の剣が出てきているところを見ながら、私はそんな思考の海に落とされていた。
……剣? それはそれで大丈夫か? 銃刀法違反じゃないか? 刃引きとかちゃんとしてる?
……まあ、多分大丈夫でしょ。
「あ、いてっ。唇切っちゃった」
駄目じゃん!! 本物じゃん!! 本物の刃物じゃん!! タカハシ先生も注意しろよ教師だろてめぇ!? 会長も会長だろ、なに年相応にはしゃいでんだてめぇ!! マジック楽しんでんじゃねぇぞ!?
おっとはしたない。つい暴言が。おしとやかにおしとやかに。中学生時代の黒歴史が再発するところだった。
真希くんの体から出た物品が部室を埋め尽くした頃、ようやくネタ切れか真希くんは動きを止めた。
「それではありがとーございました!」
一応拍手でもしておくか。実際凄かったし。
タネも仕掛けも分からないマジックは、もう魔法と言ってもいいだろう。やはり真希くんは魔法使い?
「どうしたんですか? 涼夏ちゃん」
「ん、考え事」
「僕のことですね?」
「メンタリストでもあったか……」
「ああ、なら良かった。僕のことを考えるたびに、きちんと僕の声を思い出してくださいね」
真希くんは優しく微笑んだ。何だこいつ。何だか下腹部辺りがイライラする。あーもう知らないぞ。何が起こっても全部が全部真希くんのせいだからな。えーおい。この場には四人いるんだぞえーおい。
「……何か、顔が怖いんですけど」
「いや、別に」
「もしかしてエッチなことでも考えてました?」
「……あーもう知らない。私は知らないよ。全部全部真希くんが悪い」
挑発して来たのは真希くんだ。全責任は真希くんにあるし、私は何も悪くない。
真希くんの両腕を鷲掴みにしながら、大きく開かせた。どうにも抵抗が少ないように思える。それがまた私の被虐心を昂らせる。
理性なんてもう殆ど無い。必要すら無いと思っている。
「あ、あの涼夏ちゃん? か、顔が……近い……色々……」
「……大丈夫、痛くはしないから」
「発言がもうおかしいですよ!? ちょ、いやっ、会長!!」
真希くんは会長に視線を向けたが、なぜか会長は両手で顔を隠しながら顔を背けている。
「いやー何も見えないぞー。風紀の乱れなんて確認出来ないぞー。あーあー」
それで良いのか生徒会長。
タカハシ先生のほうを見ると、スマホを取り出し私達の姿を撮っていた。
「ああごめんなさいごめんなさい! 資料! 資料ですから! 決して邪な考えは持っておりません! ああでももう少し顔近付けて貰って良いですかね!? 良いですよね!? 視線は互いに見つめ合う感じで!! 私を、私を見ないで!!」
この人は本当に、教師になったのが奇跡なくらいに色々拗らせている。
再度真希くんに視線を戻すと、上目遣いで頬をわずかに紅に染めながら、そのキレイな唇をわずかに開いた。
「……せめて……優しく……」
……あーもう……。何だこいつ本当に……!
「……もうあんなこと言わない?」
「ど、どんなことなのかは知りませんけど、はい。もちろん!」
「……よし許す」
「あぁ良かった……」
真希くんは安堵の息を吐くと、そのまま俯いた。
「……その、僕はそんなにイケナイことをしましたかね?」
「……あーもう……。……亜美、縄出して」
「何でそうなるんですか!?」
「いや、何か……もう喋らせないほうが良さそう。世のため人のため。暴れないでねー」
「おかしい! 全部がおかしい! 何で何で!! 僕が何をしたって言うんですか!!」
「私の理性を崩壊させた」
「とばっちりだ! いやとばっちりでも無い! 理不尽、理不尽だ!! 僕何も悪いことしてない!!」
「そういうところ、そういうところだよ真希くん」
亜美から受け取った縄を激しい抵抗をくり返している真希くんに縛り付ける。何で縛ってるのかって? ……まあ、ノリに近い。
相変わらず会長は顔を逸らして、タカハシ先生は真希くんのあられもない姿を写真で撮っている。
「さて、脱出マジック開始」
「いやー……出来そうだけど……。……あ、一個忠告しますね。誰か来ますよ」
直後に、この旧館に位置する部室の隣の廊下から、床が軋む音が聞こえた。直後に響いたノック音、そして扉を開けられた。
「高梁先生いらっしゃ――何をやっとるんだね君たちィ!?」
やって来たのは校長先生だった。名前はまだ知らない。確か……えーと……えーと……イトウ……?
イトウ校長はそのメガネを外して再度私達のほうに視線を向けた。しかし発する言葉は変わらない。
「何をやっとるんだね君たちィ!?」
タカハシ先生も流石にマズいと感じたのか、逃げだそうと脚を動かした。しかし、つい先程の真希くんのマジックによって散らばったトランプを踏み、そのまま滑って転んでしまった。
「違うんです! ただ押し倒された姿を撮っただけなんです! ただ縛られている姿を撮っただけなんです! 邪な思いなんてこれっぽっちもないんです!」
「話は職員室で聞こう」
「イヤーヤダー!! 違うんです本当に!! クビだけは!! 本当にクビだけは!! もう三十路近いのに職歴ほとんどない状態で教員まで辞めちゃったらもうどうすることもできないんです!! お先真っ暗なんです!! 彼氏もいないし親はもう老い先短いし!!」
……何か可哀想になってきた。まあ、残念でもないし当然か。
ふと真希くんのほうを見ると、いつの間にやら縄を残してその場から消えていた。焦って辺りを見渡せば、真希くんが教室の窓を開けながら、その縁に座り込みながら私に手を振っていた。
「魔法使い真希くんと呼んでもいいよ」
そう言い残して、真希くんはゆらりとそこから飛び降りた。私はすぐに窓から身を乗り出して下を見たが、真希くんの姿は消えてしまっていた。
……何なんだろう。本当に、あの子って。
最後まで読んで頂き、有り難う御座います。
ここからは個人的な話になるので、「こんな駄作を書く奴の話なんて聞きたくねぇよケッ!」と言う人は無視して下さい。
やっぱり女のコかもしれない。
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