体育だよ真希ちゃん!!
注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。
ご了承下さい。
「はいセーーフ!!」
私が走り込んで教室に入った直後に、チャイムがけたたましく鳴り響いた。
「あっぶね……漫画読んでたら遅れるところだった……」
「そんな理由で……」
「じっくり読まない? その話の考察とか伏線回収とか考えながら読んで時間が経たない?」
隣の席の真希ちゃんとそんなことを喋っていた。どうやら私とは読み方が違うらしい。
それにしても、今日真希ちゃんなんだ。今日体育あるけど、どっちで着替えるんだろ。
そんなこんなで体育の授業になったが、女子更衣室には真希ちゃんの姿が見えない。今日は女子トイレに入った姿が確認されたのに。
グラウンドに出ると、誰よりも早く真希ちゃんが体育座りで地面に座っていた。その足下に生えている雑草を千切っては投げて千切っては投げて遊んでいた。
「ふふ……惨めな雑草……私みたい」
……病んでるのかな。それともさては生理か? ……何か、何かこう……。……まあ、良いや。
準備運動のランニングを始めた真希ちゃんは、誰よりも速く走っている。しかも息切れもしていない。もうあの子人間に化けた虎とかじゃないの? 李徴だったりしない? ああ、李徴は人間から虎になったのか。
今日は走り幅跳びだった。……真希ちゃんはどっちで成績付けるんだろ……。男子としてか、女子としてか。体育の先生もどちらで成績を付けるのか悩んでいる。
「ああ、じゃあ今日は女のコと言うことで」
「……いやー……でも、そうだな。ああ……いや……好きな、方で……」
「あー……じゃあ、男のコの方で測って下さい」
あ、それでも良いんだ。
けど真希ちゃんの女子の列に並んで自分の番を待っていた。もう色々この子が分からない……。
「ねえねえ真希ちゃん」
「何でしょうか涼夏ちゃん?」
「……結局どうするの? えーと、今は女子として測るみたいだけど」
「女のコとして測って、記録としては男のコで」
「……真希くんになった方が良いんじゃないの?」
真希ちゃんはくしゃりと笑った。
「今日は一日中女のコでいたいので」
そんな一日もあるんだ。ちょっと理解に苦しむが、まあそう言う人もいるのだろう。多様性、多様性。昨今多様性認めないと私に石が投げられる。
……まあ、真希ちゃんみたいに生物学的な性別も分からない人ってそうそういない……と言うか真希ちゃん以外にいてたまるか!!
「えー五常真希さん」
「あ、はーい」
次は真希ちゃんの番らしい。……そう言えば、何だかんだで運動をしている姿を見たことが無いかも。けど走っている姿は何度か見たことがあるし、亜美を投げ飛ばしたフォームから、相当運動神経が高いことは分かるけど。
真希ちゃんはその可愛らしい姿とは裏腹に、とても凛々しい顔で走り始めた。助走を一瞬で走り去り、真希ちゃんは前へ前へと高く飛んだ。
そのまま滑り込む様に砂場に着地すると、すぐに距離を測る係の二人がメジャーを伸ばした。
……見たかぎりだと、さっき飛んだ男子よりも遠くに飛んでない? 砂場にギリギリ入っているから記録が取れるけど……。
「えー……。……7m11」
周りから困惑と驚愕の声が漏れた。
あっれー……去年の高校生男子の陸上の一位の人って7m64だったはず……。一応この学校の三年に6m90の記録持ってる先輩がいるらしいけど……。
陸上競技大会で上位を狙えるレベルの運動神経……こっわ。何あの子。
「うーん、まあこんなところか」
真希ちゃんはズボンについた砂と土を払いながらそんな言葉を漏らしていた。
もしかしてこれ、真希ちゃんの最高記録じゃない? 本当に何なのあの子……!?
二回目の記録は、7m83。もう陸上大会で上位を狙える成績。それに真希ちゃんは涼しい顔をしながら周りの人に手を振っている。
……さては本気じゃなかったな? 見た感じ、この砂場8mもないし。記録が取れるギリギリを狙ったな? 二回目は脚が外に出てたし。
「ねえねえ真希ちゃん」
「……何か聞きたそうな顔ですね。最高記録ですか?」
「……バレた。まあそんな感じ。最高記録何m?」
「さあ? 中学校の頃はそのまま外に着地しちゃったので」
「あー、記録無し? ……いやそんな規格外な記録無しなのも驚きだけど」
「中学は全校生徒が百人もいない田舎だったので、そんなに広くなかったんですよ。だから全力だとどれくらい行くか分かりません」
「……8mは超えられる?」
「もう少し頑張れば10mは超えられます」
……これは……まあ……うん。真希ちゃん「人工的に作られたパーフェクトヒューマン説」の可能性が出て来た。
「あ、でも10mは世界記録ですよね?」
「ええ、まあ……」
「じゃあ8mくらいで自制します」
ただの虚言か、はたまた自信か。……様子を見る限り、本当に出来そうだなぁ……。
そして、ついに亜美の番だ。亜美は運動音痴、略してうん――……危ない危ない。とにかく、亜美は運動が苦手だ。
「……あー……真希ちゃぁぁん……」
「大丈夫ですよ。今日は頼まれたおはぎを作ってきたので、終わったら一緒に食べましょう!!」
「よっしゃやる気出て来た!!」
私も食べたいそれ。
そのまま亜美は何とも無様な走りを見せながら、全力で飛んだ。問題は、上に飛んでいることだろう。
前へ飛んでいるのではない。出来る限り精一杯満点の青空に向かって上へ飛んだのだ。そのまま亜美は、砂場の上に垂直に着地した。
「えー、30cm」
あっちゃー……。
走り高跳びなら平均くらいには行けたかもしれないのに……。いや無理か……。
亜美は、髪に砂が付くのもお構いなしにその場で駄々をこね始めた。
「はい、さっさと離れる。邪魔だ」
「あーもう私の上に着地して跡を残すが良い。私の屍をこえてゆけい!!」
「はーいごめんなさいねぇー今すぐ退かすからねぇー」
そのまま亜美を投げ飛ばし、無理矢理砂場から退かした。
どうにもこいつあれだな。社会常識と言うものを理解していない。……お団子ヘアーがよもぎ味だったり、爆弾になったり、胸から何でも出せるやつに常識を説く私のほうが非常識なのでは?
まだ倒れている亜美の口の中に、何処から取り出したのか真希ちゃんがおはぎを何十個も詰め込んで、体育の授業は終わった。
最後まで読んで頂き、有り難う御座います。
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