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真希くんの家 ②

注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。


ご了承下さい。

「おまたせぇ」


 真希くんが欠伸混じりに部屋に入ってきた。


 もはや光すらも置き去りにする速度で下着類をしまい、私たちは平然と、毅然とした態度を貫いた。


 それに真希くんは疑問に思っていたようだが、すぐに気を取り直していた。


 危ない危ない。もしバレれば……本当に、軽蔑された目で見下される……友だち辞められちゃう……。


「どれが良い?」


 真希くんはそう聞いた。


 え、何、やっぱバレてた? 火あぶりか打首か選ばせてあげるってこと?


「一応色々持ってきたけど、どっちが良い? クッキーとかチョコとか、一応人数分のケーキとか。全部食べよっか」


 真希くんは両手に乗せていたお菓子を乗せているお盆を机の上に置いた。


 あぁ、良かった。処刑じゃなくて……。


 すると、真希くんは流石に私たちの様子がおかしすぎているのか、疑問を浮かべた表情で口を開いた。


「何か……変な空気だね。あ、ひょっとして――」


 バレたか……? 下着を物色したことがバレたか……?


 もしバレたらそれはもう……伯父さんの伝手で東京湾にコンクリートで固められて沈められる……! もしくは……薬品でドロドロに溶かされる……!!


「ベッドの下、見た?」


 真希くんから出たのは、意外な言葉だった。しかしベッドの下は、確かに誰も見ていない。


 ベタな物だとエロ本、まあまさかそんな分かりやすい場所にあるわけがないけど……。と、なると、何だ。


 見られたら不味いものなのは確か。気になりはする。しかし今ベッドの下を見れば……それこそ不味い。


 すると、瞳が真希くんにバレないように、小さく手招きをした。


 気づいた私と亜美、それと白ちゃんと農が顔を近づけ、瞳は小さく、せめて真希くんに聞こえないように囁いた。


「分かってるわねあんたら」

「ベッドの下だろ? 分かってる」

「分かってるじゃない農のバカ」

「バカは余計だろ!?」


 真希くんが不思議な表情を浮かべている。そんな中、洸平は笑顔で真希くんを会話を続けている。これ以上の密会は危険か。


「私が真希くんの注意を引きつける。もう一人欲しいかも」


 亜美の提案に、農が無言で手を上げ立候補した。


 何でこんなときに絶妙なコンビネーションを見せるのか。まあそれを思っているのは私だけではないだろう。


 すると、亜美と農がアルバムを片手に真希くんに近づいた。


「なあ真希、このお前の両親っぽい人だけどよぉ!」

「どっちがどっちか気になるんだよねぇ!!」


 亜美と農はそう叫びながら、真希くんの視界をさえぎった。


 さあ、こっちは見ていない。今だと農が目配せで伝えた。


「あぁ、これは……伯父さんとお母さんだね。真ん中の子が僕」


 ちょっとそれ以上に気になる回答が真希くんの口から出てきたんだけど……!?


 いや、今は……今は、ベッドの下! ただ純粋たる好奇心と僅かながらの邪な気持ちが原動力の私たちは、もう惑わされない!


 手を伸ばせば、すぐそこにある! すぐそこに――!


「あれ、何してるんだい? 涼夏さん」


 洸平が、何の悪意も、ただ無邪気に、ただ疑問を持って呟いた。


 こんの……この! 顔は百点のノンデリがよォ!! いっつも笑ってるだけの万年長袖のアホンダラがよォォ!!


 今私たちが、何やってるのか分かってて、わざと言ったのか!? 挙げ句の果てにはお前を海に沈めるぞ!?


 だが洸平は変わらず笑みを浮かべている。


 あ、こいつ本当に純粋に疑問に思ってるだけだ! こんなことやってる自分が恥ずかしくなるくらいあいつ心が清らかだ!


 真希くんの視線は、私たちに向こうとしていた。亜美と農は冷や汗をかいて、必死に頭を回している様子が良く見える。


 さあ、どうする! どうする……! 瞳を犠牲にすれば……いや、もう間に合わない……! 手は伸び切っている……!!


 手はベッドの下にもう入っている! 私たち二人どっちも腕を伸ばしている! 状況証拠で明らかに私たちはクロ!! 言い逃れなんてもう出来ない!!


 どうする、どうすると悩んだ末に、突然白ちゃんが窓の外を指さし、筆を走らす時間もないからか唇を震わせて言葉を出そうとしていた。


「ッ……ッッ……ポォッ!!」


 変な声だ! だけど、けど、真希くんの視線は、白ちゃんの指の先に向いた!


 当たり前だ! 真希ちゃんの性格はおもしろ好き! 面白そうならそっちに行ってしまうどうしようもない性格! 向かないわけがない!


 今だ! 今なんだ! 例え後でバレても、ベッドの下にあるその姿を見れば、私は、いや! 私たちはそれで――!!


 ベッドの下から出てきたのは、麻紐で結ばれた紙の束だった。


 私は瞳と目を合わせ、互いに首をかしげた。


「何、これ」

「……さぁ?」


 すると、私たちに視線を戻した真希くんがなぜかその端麗な顔を一気に紅潮させた。


 声にもならない奇声を発しながら紙の束を簒奪しようと飛びかかってきたが、私と瞳は紙の束を亜美に投げ渡した。


「あれ、これ……楽譜だ」


 一目見た亜美がそう言った。


 また、真希くんは奇声を発してその場でうずくまり、悶え苦しんでいた。


「……あー、なるほど。これアレだ。オリジナルだ。なら多分……うん、真希くん。これ作った時期は、中学生のころ?」


 その亜美の問いかけに、真希くんの呼吸と動悸が荒くなっており、異常な発汗も見られ始めた。


「あっ……アッ……! アァ……殺して……いっそ僕を殺して……もしくはもうそれ燃やして……」

「なるほど、中二病黒歴史オリジナル曲か」


 農がそう言うと、真希くんはさらに悶え苦しみ始めた。


「中学の僕を……殺したいッ……!! あぁ、殺してやる……!! 伯父さんの友だちに頼んでタイムマシン作ってもらって中学生のころの()を殺してやるッ!! 自分殺しのタイムパラドックスを引き起こしてやる……!!」


 真希くんは亜美が持っている楽曲の束を奪い取り、窓に身を乗り出して飛び降りた。


 まあ、真希くんなら着地も大丈夫だろう。そう思った通り、きちんと着地した音が聞こえた。


 そのまま真希くんは奇声を発しながら遠ざかった。恐らく過去の遺物の滅却をしようとしているのだろう。


 黒歴史の(ダムナティオ・)抹消(メモリアエ)というやつだ。


 真希くんが帰ってくるまで、私たちは真希くん特製のお菓子を食べて待っていた。


 あいかわらず美味しいなぁ……真希くんの手作りは。

最後まで読んで頂き、有り難う御座います。


いいねや評価をお願いします……自己評価がバク上がりするので……何卒……何卒……

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