真希ちゃんの秘密 ②
注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。
ご了承下さい。
「登るにしたって……こんな、こーんな山の中に、意味もなくこんな壁な時点で怪しくない?」
亜美はそう言った。
まあ、その通りだ。怪しい。意図が分からない。土砂崩れしないためだというなら、こんなところに作らないし、それだと低すぎる。
そんなこと言ってしまえば、まずこの山も……ちょっと、おかしいし。
何だよこの山。私知らないこんなところにある山。
「……白ちゃん。私たちを背負える? あの上に行きたいんだけど」
白ちゃんはちょっとだけ悩んだ末に、首を縦に動かした。
白ちゃんの背は相当高い。180cm超えだ。背負ってもらえれば……まあ、届くだろう。
壁の高さはおよそ3mほどだろう。きっと届く。
白ちゃんに背負ってもらい、何とか腕を伸ばすと、指先が壁の上に触れた。
何とかしてその壁のふちを握り、そのまま体を上げた。何とかして上半身だけでも壁の上に乗ればこっちのものだ。
そういえば、何のためにこんなことしてたんだっけ。あぁ、そうだそうだ。真希ちゃんの家を探しに来てるんだ。
真希ちゃんの姿はもう見当たらないが、痕跡は残っている。そこらへんの知恵は亜美が持っている。まだ尾行は可能だろう。
ようやく壁の上に登った私は、下に手を伸ばして、次に登ってくる亜美に手を伸ばした。
問題なく、亜美も上に登ってこれた。そう、問題があるとするなら、白ちゃんだ。
身を乗り出して手を伸ばせば、まあ届くだろうか。ただ、白ちゃん多分……重いんだよね。
亜美と二人で白ちゃんの腕を掴んで引き上げようとしても、やはり女子二人の筋力で、180cmの人を上げるのは困難だ。
「仕方ない……白ちゃん! 待ってて!! すぐ帰るから!」
白ちゃんは残念そうな顔をしたが、すぐに手を振った。
私は、仕方なく白ちゃんをおいて、亜美と共に先へ進んだ。
壁を超えた先には、変わらず山が続いている。しかし違いがあるとすれば、人が舗装し作ったであろう土道があることだろう。
それにしても、やっぱりこの山はおかしい。というか、まず何のための壁? 封鎖地区でもないでしょ、ここ。
「……なんだろうね、ここ。この奥に真希ちゃんの家があるとは思えないし」
亜美が口からそう零した。
「やっぱり秘密基地?」
「秘密基地ならもう秘密じゃなくなるから、ただの基地になるわけだけど」
「良いんじゃない? バレなければ」
バレなければって……真希ちゃんよく分からないところで勘が鋭いからなぁ……。
先へ進んでも一向に終わりが見えない。さては真希ちゃん、全力で走ったりしたのだろうか。あの子の足めちゃくちゃ速いし。
昨日は雨が降っていた。そのせいなのか、この山の木々は、この山道は、水気を多く含んでいる。
次第にそれが鬱陶しくなり、次第にそれが厄介になる。
湿度が高い。じめじめとして、涼しくなっているわけでもない。山の中は少しだけでも涼しいイメージがあったのに。
汗が浮かび始めた。汗が乾かない。息がしずらい。息が出来ない。
ちょっと、いや、やはり、おかしい。おかしいんだ。
この山、おかしいんだ。
本当にここ、現実? 私が見てる夢とかだったりしない?
進めば進むほどに、現実的な……何かが薄れていくのを感じる。それが壊れていっていることも感じ取れる。
「……暑い、夏みたい」
「梅雨もまだなのに夏……?」
亜美があんな弱音を吐くのもよく分かる。暑すぎる。
何の用があって真希ちゃんはこんなところ……。
そんな疑問を晴らすように、それとも私たちの心情を察していたかのように、道の終わりが見えてきた。
その先に、うっすらと、ありふれた古民家のような建物が見えた。
より歩みを寄せると、赤茶色の瓦が目立つ木造の家だと分かる。しかしその柱も壁も、今は腐敗や虫食いが目立ち、人が住んでいるとは到底思えない。
明らかに立ち寄ってはいけない雰囲気だ。しかし亜美は、この蒸し暑さに耐えきれないのか、真っ先に扉を開けて中に入ってしまった。
「ちょっ!? 亜美! 呪われてもしらないからね!!」
「だいじょーぶ!! ちょっと休むだけ!!」
それが危ないって言ってるんだけどなぁ!!
仕方なく、私も入ってみた。中は案外、というかかなり涼しい。
エアコン……は、ぱっと見、見当たらない。扇風機、冷房の類は無い。
それなのに、中はやけに涼しい。そして外見よりも部屋が広く、二階もある。
しかし人の気配が見当たらない。家具の一切も見当たらず、黒ずんだ畳だけが敷かれている。
真希ちゃんが目指すとしたらここだけど……やっぱりあの子、ちょっと危ないことしてるんじゃ……?
「やっぱり秘密基地かな」
ようやく異質さに気付いた亜美が、しかしそれを公言するのを避けるように言った。
「そんなわけないでしょ。それならもう少し綺麗でしょ。真希ちゃんのことだし」
「じゃあここ、何?」
「……廃墟……にしては、やっぱりおかしいし」
ここはおかしなことばかりだ。何だが白ちゃんのことも心配になってきた。
「……そろそろ戻らない?」
気分を変えるように、亜美へそう言った。
亜美もごくりと喉を鳴らし、冷や汗を浮かべて悩んでいた。
気持ちは分かる。真希ちゃんは結局見つからず、何の成果も得られないまま帰るのは、心残りが多くあるだろう。
けどこんな危ない場所に居続けるなら。これは当たり前の感情だろう。
「……分かった。戻ろ。真希ちゃんは行方不明ってことで」
「それはそれで問題な気が……」
「良いの! 明日来なかったら本気で警察に相談しないといけないけど」
珍しく亜美が弱気だ。それもそうか。
私たちは、玄関の前に戻ってきた。
私が扉を開けようとした瞬間、少し遠い後ろから木が軋む音が聞こえた。
ばっと振り返ってみると、亜美も振り返って後ろを凝視している。
「……亜美じゃない?」
「ここギシギシ言わない」
「階段? 階段じゃない?」
「……足音なんて、一回もしなかったのに? 人がいるの?」
玄関から入ってすぐに上に続く階段が見える。これもまた木造で、ギシギシと音を立てるのは常識だろう。
私と亜美が互いに目を合わすと、またギシリと音が鳴った。
今度こそ確実だ。階段の、上の段からだ。
「……ヤバくない?」
「……速く、速く開けて」
「あ、あぁ、そっか」
私が格子戸にかけている手に力を込めても、なぜか戸は開かない。
がたがたと揺れるだけで、一向に外の景色を見せてくれない。
「速く!」
「分かってる! けど開かない!!」
「何で急にホラー展開になるの!! コッテコテのホラーなんて誰も興味ないんだよ!?」
「うっさい!! 分かってる!! こっちだって冗談じゃないんだから!!」
そんなことを言っても、やはり格子戸は動かない。
それどころか、階段を降りる足音が速くなっている。気づかれたんだ。
不味い、本当にヤバい。
それなのに、私の視線はもう、階段の方に向いていた。
階段の上、そこは完全に闇だった。窓の一つもないのだろう。
ただ、亜美といっしょに、固唾をのんで、誰が来るのかを見ていた。
一体なぜだろうか。若気の至りの好奇心? それとも恐怖? 正直に言うと、多分どれも違う。
そして、階段を降りて現れたのは――。
「あれ、お前ら――」
「「きぃやぁぁぁぁ!!」」
私と亜美は、そんな悲鳴を発しながら、片目をおしゃれな眼帯で隠している長身の女性に、亜美が胸から取りだした数多のガラクタを投げつけた。
容赦の一つもない全力投球、こっちは恐怖に支配されてるし、正当防衛。
何十と、鈍器にもなるであろう物を投げ続けた。
「辞めろ! いやっ、ほんと、ほんとに辞めろ!! 物を投げるな!! 俺! 俺だって!! えーい!! 一回投げるな大馬鹿野郎ども!!」
その女性が叫ぶと、ようやく私たちは手を止めた。
おや、よく見ると……真希ちゃんの伯父さんだ。
「ようやく止まったか……」
とりあえず、最後の一つであるゴルフボールを伯父さんに向けて投げた。
伯父さんは軽々とそれをキャッチして、逆に私に投げ返してきた。
投げ返されたゴルフボールは、見事に私に額の中心に激突した。
私はその痛みに呻きながら額を抑えた。
「いったぁ!? 大人がすることですか!?」
「子供だからって人にゴルフボールを投げつけるんじゃない!!」
クッソ正論だ! 何も言い返せねぇ!!
「それで、何でこんなところに……?」
「どーせ真希追いかけてたんだろ。まったく……こんなところまで来るなんてな」
伯父さんは階段の上のほうに視線を向け、大きく「まーさーきー!!」と叫んだ。
そんな声の後に、階段を急いで駆け下りる足音が聞こえると、その直後に少し痛々しい音が聞こえた。
そのまま何かが転げ落ちるような音が聞こえたと思えば、真希ちゃんが階段を横に倒れて落ちてきた。
それを簡単に片手で伯父さんが受け止めると、真希ちゃんはすぐに私たちに気づいた。
「あれっ!? 涼夏ちゃんに亜美ちゃん!? 何で!? 何でこんなところに!?」
色々の説明を済ませると、真希ちゃんはほんの少しだけ悩んでいた。
「家、私の家かぁ……」
「……それで、なに、ここ」
「ここ? 伯父さんの仕事の手伝いに来たの。ほら、アルバイトしてたでしょ」
「あぁ……だからこんなホラーチックなんだ……」
事故物件とかだろうか。
しかし真希ちゃんは、全く別のことを考えているらしい。
「……そんなに気になるなら、次の休み、みんなで来る? ちょうど暇だったし」
なるほど、実に都合が良い。
最後まで読んで頂き、有り難う御座います。
ここからは個人的な話になるので、「こんな駄作を書く奴の話なんて聞きたくねぇよケッ!」と言う人は無視して下さい。
亜美ちゃんの胸は四次元おっぱい。
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