部活動だよ真希くん! ②
注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。
ご了承下さい。
「次は先生ですかね?」
アホ毛を動かしながら真希ちゃんはそう言った。……どうやって動いてるんだろアレ。髪の中に神経と筋肉でも通っているのだろうか。
「先生はどうする? 協力してくれそうな先生っているかな?」
亜美は頭をひねらせながらそう言った。何ならひねりすぎて逆立ちになっている。
「……そうだ、先生誘拐しよう」
「そんな京都に行くみたいに!?」
「担任の先生の名前……えーと、えーと、まあとにかくその人をさらう!」
「犯罪行為には加担したくないんだけど!!」
しかし亜美と真希ちゃんはノリノリらしい。どうなっても知らないぞ?
すると、亜美はまたもや胸をまさぐり、麻縄を取り出した。真希くんを縛った物と同じだろう。それを真希くんに手渡し、ホッケーマスクも二つ取り出して被るように促した。
「まさか? これで? 先生を?」
「そう! 捕まえる!」
もう私より仲良くなってない? 何だか複雑な気分だ。
担任の先生の名前は、名前は……ヤッベ、覚えてない。名字は覚えてる。タカハシなのは覚えてる。
黒縁眼鏡の小柄な女性だ。一応優しそうな顔つきだし、実際優しそうなのだが、なーんというか、私達を見る目が若干……こう、艶めかしいというか、何というか。
学校中をうろちょろしていると、廊下を歩いているタカハシ先生の小さな背中が見えた。
直後に、目で追いつけない身のこなしで真希ちゃんと亜美が動き出した。
亜美は髪のお団子を掴むと、手でむしり取った。
「あんたのそれ取れるの!? 磁石でひっつけてるとか!?」
「説明はあと! ここで捕獲しないと逃げられる!!」
亜美は二つのお団子を力いっぱい投げた。きれいな放物線に見とれていると、それは床に落ちると同時に小さな破裂音と多くの白煙を放った。
もう何なんだあのお団子! ずんだ味だし、しかもその味も体調によって変わるし! 挙句の果てにはスモークグレネードみたいになってるし!!
白煙が廊下いっぱいに広がると、誰かが走る風を感じた。音はしない。音もなく走り、そしてタカハシ先生の悲鳴が聞こえた。
僅かに煙が晴れた隙間から見えたのは、真希くんの姿だった。先生を縛り、そのまま亜美と一緒に抱えて全力で廊下を走って逃げていた。
「涼夏ちゃん! 逃げないと他の先生に見つかる! 行くよ!」
「え、あ、私も!? 何もやってないのに!?」
っていうかいつの間に変わったんだ真希くん!! あの一瞬の白煙の中で、しかも衣服が脱ぎ捨てられてるわけでもないし!!
そのまま、私達は旧館の部室予定室に入り、タカハシ先生を椅子に縛った。
「さて、どうする亜美ちゃん。最悪僕が説得しますけど」
「それは最終手段。やっぱり交渉?」
亜美は握っているお団子ヘアーを……握っているお団子ヘアー? 何だそれ。とにかく、それを頭にひっつけた。……どういうこと? ああもう自分で考えても意味が分からなさすぎて頭が痛い……。
「だ、誰ですか貴方達! いやもう声で分かりますけど!」
「はーいちょっと黙っててくださーい」
亜美は胸から出したガムテープで先生の口を塞いだ。
「さー先生がここから無事に帰れる方法はたった一つ。ここにサインしてくれるだけで良いんだよ」
「んーんんー!! んー!!」
「それどっち? 了承?」
先生は暴れるだけで首を縦にも横にも振らない。
すると、真希くんが先生の口に貼ってあるガムテープを無理やり破り捨てた。
「……先生、実はですね。僕、貴方の弱みを握ってるんですよ。学校中にバラされたくなかったら……分かりますね?」
真希くんは悪魔のような笑みを浮かべながらそう言った。何だこのイケメン。どんな表情を様になるなこんちくしょう。
タカハシ先生は一瞬目が泳いだが、すぐに声を張り上げた。
「何をいってるんですか! 私は先生ですよ! そんなバレたらまずい秘密なんて、あるわけが――」
「『R18版 青い春と柔らかな君 朝、昼、夜、晴れ、雨、雪、校内、自室、山中。フルカラー120ページ』。もう一冊は……――」
「あーあーあーあーあーあー!!!」
先生は素揚げされたカツオのように暴れ始め、椅子ごと転げ落ちた。
「しかも内容は先生との……教師としてどうなんですかこれは」
「あーあーあーあーあーあーあーあー!! もう死んでやる! 煮ろ! 先生を煮ろ!! そして焼け!! 醤油にじっくり煮込んでチャーシューにでもしろ!!」
「ちょっと軽蔑しますよこれ。いやまあ、持ってるのは良いんですけど、教師が持つのはちょっとぉ……」
「このままハムに! ハムに調理しておいしく食べて!」
何でさっきからこの人は豚肉ばっかり上げてくるのだろうか。
「何ですか悪いんですか先生が生徒とする同人誌を持ってるのが!! えぇえぇそのために教師になったんですよ私は! お察しの通りですよ! 若い子見たい! あのほっぺなめたいし、何なら今みたいに蔑まれた目線でも全然大丈夫!!」
ついに開き直った!? 先生がそれで良いのか!?
……いやまぁ……性癖暴露されたら死にたいのは分かるけど……しかも生徒となると……。
……というか何でそんなの真希くんは知ってるの!?
「丁度良いんですよ高校生が! 男子も女子も! 分かってないかもしれませんけどねぇ!! そのきれいでぷにぷにの肌って二十代後半になると段々衰えてくるんですよ! というか二十代でもうその兆候が見えるんですよ! 色々やってごまかしてますけどねェ!!」
うわぁー……ちょっとこれは……校長と、教育委員会にも伝えておくか……?
「成程、採用」
「アホなのか?」
「シンプル暴言辞めてよ涼夏ちゃん」
おっと、つい口が悪くなってしまった。
「マイルドにいうけど、頭でも狂った?」
「面白そうじゃない? こんな人がいても良いよ」
……成程、五常真希の行動原理が深く理解できた。
彼、もしくは彼女の思考は理屈じゃないんだ。ただ自分が面白いと思えば、すぐにそれを行動に移す。行動指針は全て「楽しい」か「楽しくない」か、らしい。
そして今の彼は、実に単純だ。この変態教師の存在を楽しんでいる。
「さて、先生。分かるよね? これにサインしてくれるなら僕達はむやみやたらに喋ったりしないって約束できるし、何なら僕お手製のお菓子もあげるから、さ? 脅しちゃった形にはなってるけど、本当はこんなことしたくないんだよ。分かってくれましたか?」
今の真希くんの声を聞いていると、不思議と眠くなる。何なら亜美はもう眠っている。安らかに心が落ち着き、そして鼓動が小さくなっていくのを感じる。
美しい声で油断をさせて眠らせて人を食べる怪物説が、私の中でできあがった。
「ほーら、良いですよね? 別に悪意があるわけでもないですし、それに悪いことでもないですよ? これは部活動設立のための書類ってだけなので。ほら、下に別の危ない契約書があるわけじゃないですよぉ?」
「おっ……おっおっ……のうがおかしくなりゅ……!」
「ほらほーら、良いですよね?」
先生は大人としての尊厳さえも失ったのか、虚ろな目でよだれを垂らしながら真希くんの声に顔を紅潮させた。ちょっと怖いよ真希くん……。
「わ、分かりました……。サイン書きます……」
「ありがとうございます先生。これで『五常真希性別を特定しようの会』が設立できますよ」
「ネーミングセンスの淀みを感じますね……」
「まあ、面白いじゃないですか」
真希くんは再度悪魔のような笑みを浮かべた。僅かな恐ろしさと、妙な心地良さに、私の心情は困惑を極めた。
真希くんは先生を縛る縄を解き、その手を包んでペンを握らせた。
「さあ、サインを」
「あっあっ……声がヤバっ……!! 脳が震えりゅ……!」
何だこの詐欺師に向いてそうなイケメンは。
そのままタカハシ先生は部活動設立のための書類にサインを書いてしまった。
色々おかしなことがあったが、まあ無事に、無事? 本当に無事か? ……とにかく、部活動が設立された。あとはこれを提出して、受理されれば完了。
ついでに、寝ている亜美をけっとばした。
「あでっ!?」
「終わったよ。交渉成立」
「え、あぁ。何だっけ?」
「……部活作るんでしょ?」
「ああ、そうだった。寝てたから忘れてた」
何だこいつ。
ふと目を離したその一瞬、真希くんは真希ちゃんになっていた。制服も女子のものに変わって、何なら髪型も変わっているし、おっぱいもある。
まあ、あのアホ毛は全然変わってない。真希ちゃんと真希くんが同じという証拠は、あの特徴的なアホ毛だけだろう。
真希ちゃんは一人で書類を提出しに行って、どうやらそのまま受理されてしまったらしい。この学校に、頭のおかしい部活動が一つできてしまった。
本当にどうなんだ「五常真希性別を特定しようの会」って。名前もそうだけど活動内容が頭悪すぎる。いや、まあ、私も良いと思ってしまったんだけど……。
帰ってきた真希ちゃんは、何やら段ボールを持ってきた。重そうに運んでいるから、何かがいっぱい入っているのは想像しやすい。
「何それ?」
「ここを部室にしても良いらしいので、ちょっと色々持ってきました!」
「へー。例えば?」
「ゲーム機と数多のクソゲーです!」
「ここ学校ってこと理解してる!? というかせめて持ってくるなら神ゲー持ってきて!!」
すると真希ちゃんは「はーやれやれ分かってないな」と言わんばかりにため息をついた。
「いいですか? 神ゲーなんてただ遊んだら楽しい最高のゲームなんです」
「いやそれなら神ゲーの方が……」
「クソゲーはですね、大して面白くもない苦行を気分を崩しながらクリアのために進める最低のゲームなんです」
「本当にクソゲーである理由が分からないんだけど!? それに結局学校にゲーム機持ってくる理由にもならないし! まず何でそんなすぐに持ってこれるの!?」
亜美は段ボールの中身を覗くと、露骨に顔をしかめた。
「うわっ……過去のトラウマが……うごぉぉ……」
「どれですか?」
「この、ストーリーすっかすかでクソゲーなのにBGMもクソな……」
「あー……はいはい。これですか。……やります?」
「いや……もう遊びたくない。BGM聞くだけで体調悪くなりそう」
どんだけ出来の悪いゲームなの!? ちょっと気になるんだけど!?
――――――
※おまけ タカハシ先生VS野良犬
タカハシ先生は校内に入り込んだ野良犬を必死に追いかけていた。しかしその小柄な体格のせいなのか、全速力で走っても一切追いつけなかった。
「ま……待って……! ここ校内なんですよ……!!」
壁に「廊下を走らないで」と書かれた張り紙が見えたが、気にする暇は無かった。
すると、野良犬は突然振り返り、今度はタカハシ先生に向かって走り出した。
「な、何で今度は私にぃー!!」
最後まで読んで頂き、有り難う御座います。
ここからは個人的な話になるので、「こんな駄作を書く奴の話なんて聞きたくねぇよケッ!」と言う人は無視して下さい。
亜美のお団子は手榴弾にもなります。同時に真希のアホ毛は妖怪センサーにもなります。つまり真希ちゃんは鬼太郎だった……!?
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