休日の過ごしかた ②
注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。
ご了承下さい。
「それじゃあ――」
「ちょっと待って」
「今度はなに? 涼夏」
「……ここ、入るの?」
亜美が先導する道を、白ちゃんとだべりながら……駄弁る? 果たして筆談のときのこの表現は正しいのか?
いやまあ……そんなことはどうでもいい。亜美の誘導に従っていると、ちょっと私には一生お世話になることのない、女子高生なら誰もが憧れる有名ファッションブランド店の入口にまでたどり着いている。
白ちゃんも小刻みに震えている。怯えているのだろう。
「見るだけ見るだけ。ここで揃えるにはちょっとお金が足りないから……」
「あー、将来の夢みたいな、今後の目標みたいな」
「そーそー、そんな感じ。今後来るときのための偵察」
亜美は私と白ちゃんの心情なんて気にせずに、ずんずんと前に進んでいった。
すると白ちゃんが「心配で手を繋いではくれませんか」と書いて見せた。
「私も不安……ダサくない? この服」
服屋に行く服がないという近代の表現に、今まで共感出来なかったが、今ならこの表現もうなずけける。
こんな……こんな、胸が締めつけられて今にも張り裂けてしまいそうな気持ちだったとは。
怯えながら店の中に入ると、あまりにも場違いな空気感に当てられ、一瞬だけ視界が真っ白になった。
白ちゃんが持っているノートで私のほっぺを叩いてくれなければ危なかった……。
誰も私たちを見ていない。見ていないはずなのに、周りの目が気になってしかたがない。
「涼夏、白ちゃん、すごいよこれ。パー高い」
「ぴゃー……きゃー……うっわぁー……さすがにこれが平均じゃないでしょ……」
「これよりちょっと下くらい?」
「憧れるファッションブランド10代20代女性部門第一位ってすっごぉ……」
白ちゃんは目を輝かせながらも、この店の中に広がるキラキラとした陽キャの空気に当てられついには涙を浮かべ始めた。
「は、白ちゃん……大丈夫、私がついてるから……」
と言っている私も、この手は震えているのだが。
すると、私たちに近づいてくるブーツの硬い音が響いた。さすがに、自意識過剰かとも思ったが、確かに聞こえる。
確かに私に近づいてきている。
亜美も気づいたのか、なぜか白ちゃんの背に回って彼女を盾にした。
近づいてきたのは、どこかで見覚えのある女性。黒いベアトップでキレイなおヘソを出して、その上から水色のシャツを羽織っている。その下にねずみ色のショートパンツを着て太ももをさらけ出している。
レンズが濃いサングラスを着けており、首元にはシルバーの片方だけ大きなハートのリングを吊るしたネックレスがある。そして、やけに煩かったブーツの音は、どうやら厚底のショートブーツの音だったらしい。
……んで、誰だこれ。どっかで見たことがあるような、ないような。
「何やってんの? 買い物?」
気さくに話しかける女性は、やはりどこかで……。
「どこかで、会いました?」
「へっ? えっ、何? 記憶喪失?」
「あれっ、あっ、じゃあどっかで……いやー全然思い出せなくて……」
「いや思い出せないとかじゃなくて、毎日会ってるでしょ。同じクラスでしょ」
どいつだ……! こんな陽キャみたいな格好するやつなんて……あ、まさかこの人……。
すると、白ちゃんの後ろに隠れていた亜美が叫んだ。
「ひょっとして瞳ちゃん!?」
「あぁ、なるほど。私服だからか」
そう言って瞳はサングラスを取り、何ともビミョーな表情を浮かべながら私をにらんだ。
「なーんで気づかなかったのよ」
「いやほら、いつも制服だし、気づけっていうほうがムリでしょこれ。雰囲気は……まあ、確かに同じだったけど」
瞳はため息をつきながら、少しだけ目を動かした。
「それで、真希くんはいないの? それとも今は真希ちゃん?」
「ああ、今日は別の用事だって」
面白がって亜美が笑みを浮かべると、そのまま言葉を続けた。
「デートが断られたから別の人と予定入れちゃったんだって」
瞬間に、瞳の指からサングラスが落ちた。それが硬い床に触れると同時に、瞳の膝も崩れた。
「まさか……まさかっ……!? そんなまさか……!? ……いつのまに私が誘われたの!?」
「どんだけ自己肯定感高いんだ!!」
「うっさい涼夏! 可能性あるとしたら私でしょ!? デートに誘われるのも、そのかわりに誘われるのも!! あのクラスだと候補私だけでしょ!?」
「それはまあ、一理ある」
「よく分からないところで聞き分けが良いのは何なの? ちょっとムカつくんだけど」
うっさい。素直な性格と言え。
「はいはい、どうせこんなところに真希ちゃんがいるわけないんだから、瞳はさっさと用事をすませればいいでしょ」
「友達といたらいけないって言うの?」
「え、友達だっけ?」
「えっ?」
「えっ? ……あー……うん、トモダチトモダチ。ワタシタチトモダチ」
あっぶない。また泣かせるところだった。
実際友達よりも……ライバル関係? に近いんだよなぁ……嫌いってわけじゃないけど、純粋に好きにもなれないっていうか。
だってまあ……初めての会話があれだもんなぁ……。第一印象最悪な状態で、ここまで関係値が回復しただけありがたいと思ってほしい。
すると、この空気感を無視して、白ちゃんのお腹の虫が鳴いた。生理現象だからしかたはないが、白ちゃんは顔を真っ赤にした。
この子、表情は豊かだ。
白ちゃんはすぐに「済みません今朝から何も食べてなくて」と書いて私たちに見せた。
「時間もいいし、食べに行く?」
瞳がそう言った。何か勝手に仕切りはじめたぞこいつ。
「フードコートにする? 今の時間めちゃくちゃ多いだろうけど」
「あ、それなら良いお店知ってるよ」
亜美の言葉に、私たちの視線は全員彼女に向いた。
「ここからそこまで距離もなく、雰囲気静かなレトロ系。お爺ちゃんマスターが淹れるコーヒーが絶品の喫茶店」
「昼食とかあるの?」
「あるんじゃない? 少なくとも食べるものはあるでしょ、多分」
「多分って……行ったことないの?」
「あるよ三回くらい。始めに緊張しすぎてエスプレッソ頼んで顔をしかめてたら口直しにタダでケーキくれて、二回目にそのケーキ頼んで、三回目にマスターと喋ってミルク砂糖どかどかつぎこんだコーヒー飲んだもん」
「ちょうどいいカフェ扱いしてない?」
「大体一緒でしょ喫茶店もカフェも」
「それはそうだけどさ」
私たち四人の意見は、その喫茶店に行くことで満場一致した。
ここから大体……電車と徒歩で二十分。この区画が周りに比べて人通りも少ないのには理由がある。簡単に言ってしまえば一等地というものだ。
ここから徒歩でそう遠くない場所には、世界有数の大学がある。詳しくはないが、今まさにひも? の分野で世界をひっぱる女性があの大学所属だったらしい。詳しくはないが。
そんな場所で、ひっそりと店を構えている喫茶愛餐場。客足はそう多くはないが、知る人ぞ知る良店の雰囲気は確かに感じる。
「こんにちはー! また来ましたよー!」
亜美がカウンターの向こうにいる喜寿は超えたであろう老人に向かって元気よく叫んだ。
その老人はシワの多い顔の口角を上げると、コーヒーを淹れるカップを拭く手を止めた。
「いらっしゃい。今日はお友達と一緒ですか?」
「そうですそうです! 昼食食べにきました!」
「あいかわらず元気が良いですねぇ。お好きなお席へどうぞ」
席は選び放題。私たちは外が見えるテーブル席に座った。
「へー、案外安いわね」
瞳がそう言いながら、頬杖をつきながらメニューをぺらぺらとめくった。その隣の白ちゃんはメニューを覗きながら、楽しそうに頭を揺らしていた。
私と亜美は、隣の席からメニュー表を拝借して二人で読んでいた。
「あ、オムライスある。じゃあ私これで」
「ほんとこういうとき亜美は即決ね……」
「涼夏が遅すぎるの」
「違う違う、じっくり考えてるの」
次に決めたのは瞳と白ちゃん。瞳がペペロンチーノ、瞳ちゃんはチキンドリア。私はまだ決まっていない。
「ほーら、最後は涼夏になった」
「ぐぬ……。……こういうときこそ、じっくりと考えるべきなのだよ。本当に……」
よって私のこれは致し方ないことなのだ。決断が遅いのではない。慎重なのだ。
「……店員呼んで。もう決めた」
「どれー?」
「このライスカレーで……」
「妥協してない?」
「まさか」
「いーや、涼夏の腹にはもっと入る、でしょ? 欲望の解放のさせかたが下手っぴ」
「……じゃあ、たまごサンドも。一つで二個らしいから二つ頼めば人数分。入る? 皆、お腹の中に」
「大丈夫大丈夫、現役女子高生なめないでよ」
店員さんを呼んで注文を終えたその直後のことだった。
私の席から、この店の入口が見えるのだが、ガラス張りの扉の向こう側に、何だか見たことのある女のコを目にした。
それは、真希ちゃんだった。前に見た私服に比べてやけにおしゃれしていて、その後ろに誰か、誰かいる。
恐らく女性、真希ちゃんより背が低く、染めているとは思えない金の長髪が見えた。
隣の席にいる亜美も、瞳と白ちゃんとのお喋りをやめて、真希ちゃんのほうを見てしまっている。
真希ちゃんの後ろ、その女性の顔が、もう少しで見えそうになったとき、このちょうどいいタイミングで店員さんがやって来た。
「どーぞ、マスターからのおごりですって」
そういって、人数分のコーヒーが並べられた。感謝したい、感謝したいのだが、ごめんなさいマスター! 今はあの男子か女子かも分からない五常真希のことが気になって……!
真希ちゃんと女性の二人は、カウンター席に座って私たちに背を向けている。恐らくこちらに気づかなかったのだろう。
これ……これは、これはまさか……あれか? あれなのか?
「ねえねえ涼夏」
亜美はそう耳打ちしてきた。
「あれ、彼女さんかな」
「……違うでしょ、多分。女のコだし」
「別に禁断ってわけでもないでしょ。ひょっとしたらデート断られたっていうのも嘘かもしれないよ?」
すると、私たちの様子に首を傾げた白ちゃんが「二人共どうしたんですかいったい?」と書いて見せた。
亜美は真希ちゃんのほうを指さし、瞳と白ちゃんの二人は自然とそちらに視線が誘導された。
目にしたのは、金髪の女性と語り合う真希ちゃんの姿。五常真希ファンクラブ会員の二人にとって、それはまさしくアイドルの結婚報告を聞いたようなものなのだろう。
そのコーヒーを飲もうとしている手は、ひどく揺れている。
「おちつけ二人とも。ここは、観察だ」
「おおおおおおおおちつつつつつつt」
「お前は本当におちつけ瞳」
「あばばばばばばばばばばばばばばいびびびびいいいいいっ」
あーあ、壊れちゃった。叩けば治るかなこれ。
最後まで読んで頂き、有り難う御座います。
ここからは個人的な話になるので、「こんな駄作を書く奴の話なんて聞きたくねぇよケッ!」と言う人は無視して下さい。
NTRやんけぇ!!
寝てから言え!
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