真希くんの密談
注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。
ご了承下さい。
五常真希、女子と関わることが多い彼だが――彼? 彼女? 今の五常真希は男子であるため、彼と表記しよう。
そんな彼にも、男子の友人にも恵まれている。その類まれなるコミュ力は人類を等しく友人にさせるのだ。
そして、彼は今、夕暮れが染める教室の片隅で、二人の友人と密会をしていた。
「持って来てんだろうな真希」
「もちろん、滞りなく」
そう言って真希くんは二冊のノートを机の上に置いた。
「これが……」
「ああ、これが超極秘情報がずらりと書き連ねてある例のブツ。全学年全クラスの女子の顔、名前、所属部、その他諸々を独自に捜査した物が、ここに」
「お前最高だよ本当に」
「お代は後で頂戴するとして、こんな物が欲しいなんて変わってるね」
「そうか? やっぱり知っとかないとダメだろ、色々と」
真希くんと会話をしているのが、"神楽坂農"。制服をだらしなく着て毎日生徒指導の先生に叱られているのがこのクラスの恒例行事となっている。
そして、さっきから目を細めてニコニコと笑っているイケメンが"稲垣洸平"。真希くんと一、二を争うイケメンレース参加者。不自然なほどに制服をきっちりと着こなし、色々な推測を呼んでいる。あの衣服の下には武器があるだとか。
ただ……私はあんまり好きじゃない。何かいっつも笑っていて不気味だ。
ああ、紹介を忘れていた。私は白土涼夏。忘れ物を取りに教室に戻ってみれば、まさかこんな密会に出くわすとは……。
ついつい隠れて様子を見ながら、聞き耳を立てているのだ。
「……んで、こいついつからいたんだ?」
農さんが洸平さんを指差してそう言った。あ、呼んだわけじゃないんだ。
「良いじゃないか。面白そうな話をしようとしてたから、ついついね。あはっ」
そう言って洸平さんはにこやかに笑う。……ってか、あの表情からぴくりとも表情筋が動いてなくない?
「……まあ、良いか。と言うわけで、そろそろこのクラスにも慣れたころだからな。やろうと思って」
「悪趣味だとは思うけどね……」
真希くんはそんな言葉を漏らした。おっと、下世話な話だろうか。
洸平さんはにこやかに笑い続け、声を出した。
「へー、どんな話なんだい?」
「そりゃもちろん。男三人集まってする話なんて一つだろ。このクラスの中で誰と一番付き合いたいか」
……女子だってするぞ、そーゆー話。けどこれ……何だか聞いて良い話題なのだろうか。ちょっと気まずい……。
いや、まあ、私は忘れ物を取りに来ただけだし。偶然話が耳に入ってきたってことにすれば……うん、大丈夫!
「真希から見てさぁ、加賀美さんってどうなんだ?」
「亜美ちゃんはね……うん、おっぱいがでっかい」
「そうだよなぁ!? あいつでっけぇよなぁ!?」
いきなりブチこんで来たな真希くん……。農さん勢いのあまり立ち上がってるし……。
「で、なぜか知らんがおっぱいからシャーペン出したところは、見たことがある」
「あれホントどうなってんだろ……」
それは私も知りたい。私だって分からない。
「何だか話の趣旨が変わってないかい? あはっ」
で、相変わらず洸平さんはにこやかに笑い続けている。あの人やっぱり怖い。まず糸目すぎて目を見たことがないし。
「じゃーお前は誰が良いんだよ」
「俺は……うーん、このクラスじゃなくても良いかい?」
「まあ良いだろう。許可する」
「生徒会長のあの人。ちょっと名前を忘れちゃったけど……やっぱり俺は、結婚するならああ言う人が良いなぁ」
……あれが? こいつ、さてはMか? マゾか? 夫婦喧嘩の時は私が初対面の時のあの威圧感で詰められるんだぞ? 正気かこいつ。
「そう言えば、前に農くんは明るくて活発な子が好きだって言ってたけど、中野さんはどうなんだい?」
洸平さんが笑顔でそう聞いた。やっぱりいつも笑顔なのは不気味だな……。
農さんは顔を引きつらせ、少し青い顔で答えた。
「いや、アレは違う。俺の趣味じゃない。俺が好きなのはあくまでオタクに優しいギャルであってな? あれはオタクをバカにするタイプのギャルだ。レモンティー紙パックのままストローで飲んでそうだし」
それは少し古いギャルじゃない……?
「いやいや、ちゃんと優しいよ瞳ちゃんは」
「そうだよ、俺にだって笑ってくれるし、周りによくいる彼女の友達にも、よく話しかけられるし」
真希くんと洸平さんは笑顔でそう言っている。そりゃまあ……だってあんたらは……ねぇ。
「てめぇらはイケメンだから優しくされてるだけなんだよバーカ!!」
良く言えた農さん。
「そんなことないよ。農くんだって、充分カッコいいじゃないか」
「うっせぇんだよ糸目にやにや塩顔イケメン!! けど優しいなお前!! ありがとうな!!」
あいつ、やけに人が出来ている。暴言を吐きながら感謝の言葉を……。
「まず話してみると良いよ。いきなりが怖いなら、瞳くんの周りにいる友人たちから積極的に話してみれば」
「お、おう……お前スゴイ優しいな……」
「それに友達の皆は面白いよ。たまに凄く大きな音で『ちっちっ』って音が聞こえるんだ。瞳さんに話しかけると笑顔で『真希くんになってから出直せ』って」
「……大丈夫かお前、イジメられてないか?」
「いじめ? まさか。きっと俺には分からない演奏を――」
洸平さん……この人、優しすぎる……。
「……お前、大丈夫か?」
「大丈夫? オレオレ詐欺とかに引っかかってない?」
洸平さんは二人の心配そうな表情に笑顔のまま首をかしげ、少し悩んだ素振りを見せた。
「……あぁ! あったあった。誰か分からないけど、オレオレってくり返す電話! 困ってたみたいだから何度か振り込んだんだ」
ああ、手遅れだった……。
人の悪意に触れなさすぎて、こんなに純粋な、子供みたいな無垢な子に……!
「けどねぇ、十二回目の振り込みの時には、何度も謝ってくれて貸してたお金をちょっとだけ増やして返してくれたんだ。やっぱり良いことはするべきだね」
詐欺師がいたたまれなくなっちゃってるじゃん! こいつやっぱりおかしいって!!
「……なあ、真希」
「……何? 農くん」
「……俺達で、こいつを守らねぇとダメだ」
「……そうだね。危なっかしくて見てられないし……」
変わらず洸平さんはにこやかに笑っている。
その様子に真希くんも農さんも深くため息をついた。
「ところで、真希くんはどうなんだい? 付き合うとしたら誰が良いとかは?」
「僕は……いや、うーん、付き合うって言ったって、ねぇ?」
「そう言えば、涼夏さんはどうなんだい?」
え、私?
「やけに涼夏さんの前だと、男子の姿の時があるなーと、思ったんだけど」
え、そうだったの? 全然意識してなかった。思い返しても、心当たりは全くない。むしろ女のコの時のほうが多いような……?
しかし真希くんの反応は、意外にも図星だと言わんばかりの物で、あの特徴的なアホ毛が激しく動揺している。
しかし表情は固まっている。数秒の沈黙が三人に流れた後、真希くんはようやく口を開いた。
「涼夏ちゃんには、いっぱい、恩があるからね」
それは果たして、答えなのだろうか。いや、洸平さんの疑問の答えとしては不適切だ。
しかしなぜか、この場にいる全員がその言葉で納得した。私にははっきり分かる。声が、さっきの真希くんの声が、少し変わっていた。
変化としては極々小さな物だろう。しかしどこか心が安らいで、やけに心臓の鼓動が静かにゆっくりになるのを感じた。
これだから、真希くんは恐ろしい。
その瞬間、学校のチャイムが無機質ながらも親しそうに響いた。下校時間を知らせるチャイムだ。これが聞こえたら、生徒は下校しなくてはならない。
「それじゃあ、今日はここまで」
真希くんはそう言って、こちらにちらりと視線を向け、微笑んだ。
その直後、チャイムの音をかき消すほどの爆発音が聞こえた。グラウンドのほうだ。
瞬間、この教室のグラウンドが見える窓に、超高速で何かが突っこんだ。恐らくそれは人の形をした……と言うか人間。
ガラス片にまみれて飛びこんで来たのは男性で、細身の長髪、白衣も見える。……ん? ひょっとして……。
「あー……いった……。……死ぬかと思った」
「シ、シンカイ先生!?」
シンカイ先生は真希くんのほうを向き、僅かに眉間にシワを寄せた。
「何をしている多感な愚者ども。下校時間のチャイムが聞こえなかったのか?」
「いや、何をしてるって言うか……シンカイ先生こそ大丈夫ですか!?」
「何だと? バカにしているのか? あたしがこの程度で倒れるほど軟弱な男だと――」
その瞬間、シンカイ先生の頭から血が勢い良く吹き出した。
「うわー!? キュウキュウシャー!! キュウキュウシャヨンデー!!」
「これくらいなら問題ない!!」
「モンダイナイワケナイデスヨセンセイィ!?」
……この混乱の隙に、忘れ物取ってさっさと帰ろ。
最後まで読んで頂き、有り難う御座います。
ここからは個人的な話になるので、「こんな駄作を書く奴の話なんて聞きたくねぇよケッ!」と言う人は無視して下さい。
オチに最適なシンカイ先生。
私は恋愛を書くのが苦手なもので……どっちかと言うと悲恋は出来るんですが……。
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