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3本勝負! ②

注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。


ご了承下さい。

「……二人で、トランプ、ね」


 真希くんはそう呟いた。


 最後の対決は、トランプに決まった。ババ抜きだ。


 しかし、二人。二人は少々つまらないと真希くんは言いたいらしい。亜美とわずかに相談すると、いきなり私と会長を指さした。


「「急遽参戦決定!!」」


 OKそう言うことね。やれってことね。


 けど、もし最後に残るのが私とか会長になったらどうする気なんだろ。まあ、良いか。別に。


 円環に並べられた四つの机の一席に私は座ると、その中央に、机の上に真希くんが座った。行儀が悪いわよ。


 すぐに瞳さんと白ちゃんが席に座り、まだ納得していない会長がやれやれと言った風に席に座った。


「えー、それでは最終戦。これに勝った人が、今までの勝敗関係なしに僕お手製のスイーツが与えられます。もちろん、瞳ちゃんや白ちゃんが負けても、勝者が急遽参戦した二人が勝ったとしても。四人だと三人の勝者が生まれるわけですけど、とりあえず一位にスイーツを。ニ位と三位にはまた別の物ってことで。最下位には、残念ながら何もあげれません」


 おっと、急にやる気が湧き上がってきた。会長も瞳をギラつかせている。


「と言うわけで第三回戦を! 開始します!」


 真希くんはお得意のマジックなのか、手を合わせるとそこからトランプの束が現れた。披露される多くのパフォーマンスだけでもう満足だ。


 丁寧にシャッフルされたカードが配られると、ようやく真希くんは机の上から降りた。何で机の上に座ったんだあの子……。


 手カードの半分ほどが捨てられ、ようやくババ抜きが始まった。


 ……けど、なんていうか……全員、殺気をひしひしと感じるのはなぜだろうか。


 白ちゃんが瞳さんの手カードを一枚引き、一組のペアを捨てた。そして今度は、私が白ちゃんの手カードから一枚、引く番だ。


 しかし、この白土涼夏、ババ抜きは大得意である。幼少期のころにやった家族団らんトランプ大会ではあまりの強さに殿堂入り。


 地域の催しでトランプをやったとすれば優勝をかっさらう生ける伝説。


 コツは相手の微細な反応を用心深く観察すること、そして、やはり運が必要。観察が7で運が3くらいの比率だろうか。


 つまり! この勝負! 私が有利なのだ! 悪いが白ちゃん! 私が真希くんのスイーツをもらう!


 そう思いながら、私は手を伸ばした。


「ジョーカーは持ってないかなぁ怖いなぁ」


 白ちゃんは反応しない。


 ……反応なしか。なら基本的に何でも取って良いけど……。


 そう思って一枚の手カードを取ろうとした直後、白ちゃんは器用に指を動かして別のカードを取らせようとした。


 その指を寸前で止め、掴む前に手を遠ざけた。


「なっ……何だとっ……!」


 何で今、動かした! そんな終盤でようやくちらほらと見せるテクニックを! なぜ! 今! こんな序盤で!


 ジョ、ジョーカーを、持っている、のか……!? だが反応は――この子、ずっと無表情だったぁ!


 ど、どうする……! 取らせようとしたカードを取るか!? 取らせようとしたカードがジョーカーだなんて、そんな安直なことをするやつが、はたして高校生にいるだろうか!? だが、他のカードを取るのもリスクが高い! まだ序盤なのに、こんなことをする意味があるはずだ! そう考えるとむしろ他のカードのほうが、リスクが高い!


 いや、大丈夫、大丈夫だ。白ちゃん、私が蛇に見えたのなら、貴方こそ蛇なんだ! 貴方は蛇だ、貴方は蛇だぁ!


 取ってやる、取ってやるぞ、白ちゃぁん……!


 差しだされたその、一枚! 取ってやるぞォ!


 序盤なのに、こんな熱量で取ることは今後はないだろう。それだけの熱意を持って、引いたトランプの一枚。


 私は抜き取ったその絵を見て、驚愕した。


 ジョーカーだ。ジョーカーだった。視界が歪む感覚があったが、まだ、まだ序盤だ。挽回は簡単だ。


 冷静になれ、会長に、さとられないように、何とかこのジョーカーを、会長に回してやれば……!


 会長に手カードを向けると、会長はわずかに思いつめたような表情を浮かべ、一枚のカードに手を伸ばした。


「……誰がジョーカーを持っているか分からない以上、私は君がジョーカーを持っていると言う仮定の下、取らなければならない。油断はしない、怠慢も無い。覚悟を決めろ、白土涼夏」

「序盤! まだ序盤! まだ一周目! 理解してますかそれ!? これは終盤でやる心理戦でしょ!?」

「成程、ジョーカーは君が持っているんだな」


 何でバレるんだよクソッ……!!


「これか?」


 答えるな! いや、答えるという心理戦も充分な効力を発揮するが! 今のこの状況では、むしろ悪手! 何も答えずに、会長に選択の余地を広げて混乱させる!


 会長はひとしきり聞いたあとに、一枚のカードを掴んだ。


「ふっ、分かり易い」


 そう言って会長が引いたカードは、ジョーカーだ。


 笑みがこぼれそうだった。いやいや、今は、こぼすべきだろう。私からジョーカーが動いた。会長が今は持っていると伝えるのも、また一つの策!


 先輩だからって手加減すると思うなよ会長……! トランプの大体は心理戦なんだ……! 全員の顔色をうかがって、それで誰にジョーカーが行ったかを予測し、警戒し、そして時にはブラフもかます! そういう、心理戦なんだよ!


 そして、また私が引く番が回ってきた。まあ、ジョーカーはそうそう頻繁に動かないから、どれを取っても大丈夫だろ。


 そして取ったのは、ジョーカーだった。


 ありえない、最初はそう思った。冷静だった。後から、困惑と焦燥が私の体を駆けめぐった。


 だって、おかしい、おかしいぞ。白ちゃんは何の感情も……この子無表情だった! 何でそんな超超ポーカーフェイスで産まれちゃったの! 感情もっと表に出せよ! 華の女子高生だろ! 何でそんな、エロ漫画に出てきそうな八尺様みたいな見た目してんだよ!


 顔には、顔には出すな、この怒りの気持ちを。


 出せば、会長にバレる……!


「成程、ジョーカーがまた回って来たらしいな」


 何でこの人はジョーカーを誰が持ってるかだけは正確に予想出来るんだよ!!


 いや、大丈夫、大丈夫だ。また会長にジョーカーを引かせれば、何も問題はない! そう、何も――。


「……ぽ」


 何周も回り、最初に上がったのは白ちゃんだった。


 ジョーカーは、未だに、私の手の、中に。


 白ちゃんは両腕を挙げて勝利を表明した。クソッ……先を越されたか。だが、まだニ位が残っている。真希くんが一体何をくれるのか、それはまだ分からないが、まあニ位だから相応の物だろう。


 大丈夫、まだ狙える。まだ挽回出来る。


 そう思っていたが、次に上がったのは会長だった。


 わ、私は一体どこで間違えた!? 最初か!? 最初に白ちゃんのジョーカーを引いた時か!?


 そして、事態は最悪! 私がずっとジョーカーを持っていたせいで、私の手カードは二枚、そして瞳さんは、一枚!


 そして瞳さんが私の手カードから一枚引く! まずい、非常にマズイ! これで瞳さんがジョーカーを引いたとしても、私は二分の一を強いられる! 非常にマズイ! この最後の運ゲーにならないように謀略を巡らせることが一番の勝機だったと言うのに!


 しかし、まだだ。まだ、まだ勝負は分からない。ここで、瞳さんにジョーカーを引かせれば良いんだ。


 勝負の土台に立つためだけに、私は全力を尽くす!


「一位は、逃がした。二位も盗られた」


 瞳さんは、私の目を睨みながらそう言った。


「さっきまで私は、最下位にさえならなければ良いと思っていた。ビリにさえならなければ真希くんから、何かは貰える。そういう心構えだった」


 何だ、何で急に話しかけたんだ……!? 動揺を誘うためか……!?


「けど、そうじゃあない。そうじゃあなかった。それは間違いだった。負けないように、じゃあない。勝つために私はお前と対峙する」


 何で急にジョジ◯みたいな口調になったんだ……!


「白土涼夏、私が勝てば、今日の帰りは私が真希くんと相合い傘で帰らせてもらう」

「勝手にしろぉ! というか、それは真希くんに頼め真希くんに! 何で私なの瞳さん!」

「違う、瞳さんじゃない。呼び捨てにしなさい」

「だぁーお前めんどくせぇな!! それは会話じゃないんだよ会話じゃ! 質問に答えた後に質問するのは良いけどさぁ! さっきのは私の質問の答えじゃなくて自分が話したい内容を無理やり押し進めてるだけであって、それはおしゃべりロボットの前で延々と独り言してるみたいな感じ! 分かる!? 分かるかなぁ、この例え!?」

「さっきから何言ってるか全然分かんないんだけど」

「ああそうですかい! ならさっさと引け、瞳!」


 瞳は私の手カードに手を伸ばした。それと同時に、私は右のトランプを上に動かした。


 瞳の手は止まり、その額に汗を浮かべた。


「……何の、つもり?」

「何のつもりって……見てのとおり。やったこともなければ見たこともない?」

「違う! 何で今、この局面でやるかってこと!」

「瞳、貴方は、私との勝負を宣言した。なら、私は全力で貴方に臨む。油断も怠慢も隙もなくし、ひたすらに全力でお相手する。さあ、心理戦を始めましょう」


 そう、心理戦だ。勝負を、全力の勝負を望んだ瞳にふさわしい心理戦。


 せめて、運ゲーにならないように。


 瞳は勝負に弱いことが分かっている。一回戦と二回戦の、あの動悸と呼吸。もう分かっている。先ほどの言葉は自分を鼓舞する理由もあったのだろう。


「さあ! (ライト)か! (レフト)か!」

「ちょ、ちょっと待――」

「Come on! Come on, Come on, Come on!!」

「だから――」

「さっさと決めろ! 雨が止むぞ!!」

「あ、あぁ……アァァァッッ!!」


 瞳は、思いきり右のカードを引いた。


 そのカードを見た瞬間、瞳の顔はみるみる内に歪んでいった。


 土俵に立ってやったぞ、瞳ィ! 彼女が引いたのはジョーカーだァ!!


 ついつい私の口から笑みが溢れてしまう。


「バァカ! 大した考えも無しに引きやがったぜこいつ! そうだよなぁ! どう見ても緊張性だからなァ!」

「クソッ……! 逆を読んだせいで……!!」

「これが心理戦だ! これが勝負だ! これが全力だ!」


 瞳は私の顔をまた睨み、二枚のカードを背中に隠した。


 恐らく混ぜているのだろう。まあ、そうする。誰だってそうする。私だってそうする。そうしないと心理戦の土台にも立てない。


 瞳さんは私の前にトランプを出した。


「右が、ジョーカーだけど、どうする?」

「なるほど……? 言葉で攻めるか」


 最もポピュラーな策、しかし確かな効力を発揮する方法。


「じゃあ左を取ろうかな」


 瞳さんは汗を拭った。


「いや、嘘の可能性もあるな。じゃあ右か」


 瞳さんは私の目をじっと見る。


 これは戦いだ。真剣勝負だ。


 混乱させ、困惑させ、そしてもぎ取る。


 さっき、瞳さんは右を取らせようとした。右を取ろうとしたときもわずかな反応を見せた。


 つまり、右にジョーカーという言葉は、真実! 取るべきは、左!


「勝った! 私の勝ちだァ!」


 左を思いきり取り、そのカードに目を向けた。だが、書かれている絵は、絵柄は、私が期待していたものではない。


 また、ジョーカーだ。


 何度も、何度も何度も私の手に戻って来る呪いのような、ジョーカーだ。


 瞳は口を手で隠し、肩を震わせていたが、やがて耐えられなくなったのか大きな声でゲラゲラと笑い始めた。


「さっき私のことバカって言ったよなぁ! なぁ! 本当にバカなのはお前だよバァカ!」

「うっせぇバァカ! まだ終わってねぇだろ!」

「そうだなぁ涼夏ァ!」

「瞳ィ!」


 二人の戦いは、苛烈を極めた。


 時には目で、時には言葉で、時には拳で、さらに蹴りで、ジョーカーの押し合いは続いた。


 その様子を、真希くんは、少年のように目を輝かせて見ていた。すでに戦いを終えた白は貰ったケーキに舌鼓を打ち、会長は二位の賞品として貰った名作クソゲー十選に頭を悩ませていた。


 そして、亜美はというと、いつも真希くんが寝ている布団の上で眠っていた。


 数時間後、夕暮れが隠れ夜が訪れそうなほどの時間。


 涼夏と、瞳は、互いに息を切らして汗だくになりながら、互いを睨んでいた。


 瞳のだらんと垂らされた左手の先から、汗が一雫、床に落ちた。


「……そろそろ、終わらせたいんだけど?」


 瞳は口角を無理やり吊り上げそう言った。


「こっちだってそろそろ帰らないといけないんだよクソが……」

「ちょっと口が悪いんじゃないの?」

「瞳にだけは言われたくない……!」


 震えた手で、瞳は涼夏が構える二枚のトランプを掴んだ。


「……宣言しておく」


 涼夏はそう呟いた。


「私は、左を取ってほしい」

「……終わらせたいの?」

「さあ? それは自分で考えて」


 多くの選択肢を与え、相手の混乱と困惑を誘う。涼夏の常套手段である。


 この何時間にも及ぶ攻防戦において、瞳は逆に頭が涼しくなっている。息を大きく吐き出し、そして確かな眼光で一枚のカードを見つめた。


「……もう、終わらせる。この戦いを」

「お好きにどうぞ」


 疲れ切った指を動かし、瞳は左のカードをつまんだ。


 瞳の息がさらに荒くなり、視界も若干歪んできた。しかし確かな覚悟を持って、瞳は左のカードから手を離し、右のカードをつまんだ。


 全ては、下校時に真希くんと相合い傘をするために。


「誰が、お前の要望を聞くと思ってるんだ! 私は、私が選んだほうを引く!」


 カードを勢い良く引き、瞳はそのトランプの絵柄を見た。


 一人は天を仰いだ。一人は地を眺めた。


 天を仰いだのは、瞳だった。手札を机の上に叩きつけ、両手の拳を上に向けた。


 涼夏は膝が崩れ、椅子から転げ落ちた。そのまま床に倒れ伏し、涙を流した。


 勝利を宣言したのは、瞳だった。長きに渡る戦いを制したのは、瞳だった。


「勝った! 勝った!! 真希くん! 今日は私と一緒に――」

「あ、雨が止んだ」


 瞳はクマの咆哮のような大声を上げながら椅子から転げ落ちた。


 涙を流しながら倒れ伏し、あまりの発汗のせいかうっすらと蒸気が漂っていた。


「というわけで勝者! 瞳ちゃーん!」

最後まで読んで頂き、有り難う御座います。


ここからは個人的な話になるので、「こんな駄作を書く奴の話なんて聞きたくねぇよケッ!」と言う人は無視して下さい。


実はオモシロニンゲン涼夏ちゃん。


お口も悪い涼夏ちゃん。


いいねや評価をお願いします……自己評価がバク上がりするので……何卒……何卒……

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