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3本勝負! ①

注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。


ご了承下さい。

「さあ場所は変わって調理室、真希くんの説得によって特別に貸してもらいました」


 ……何でこうなったんだっけ。まあもう良いか。


「第二回戦はもう既に決定しております! 料理対決です!!」


 既に用意されている食材の山、肉も野菜も魚も、調味料も大抵そろっている。……けど、何か珍しい物も多い気が……。


 これとか、この魚とか。何だこれ。どう見ても美味しそうには見えない。ゲテモノ枠だろうか。


「ああ、それはオコゼですね」


 真希くんがそう答えてくれた。


「へー……。……うん? 今、自然と私の心を読んだ?」

「いえいえ、気になってそうだったから」

「ああ、そう……」


 本当に心が読めそうだから怖いんだよなこのコ……。


「判定してくれるのはこの人! 現生徒会長のォォ!! ……名前何でしたっけ」


 知らないのかよ。いや、私も知らないけどさ。


「いや、今はそんなことはどうでも良い。私は、君たちの料理が食べたいのだ!」


 やっぱりこんなキャラじゃ無かったよこの人。今ではすっかりオモシロパイセンになっちゃって……。


 瞳さんと白ちゃんは二人とも位置に付くと、亜美はそのマイクを真希くんに向けた。


「第二回戦、どちらが有利だと思いますか? 解説の真希さん」

「そうですねぇ……。……白ちゃんの家は料亭なんですよね。両親とも相当腕の良い人なので、子供のときから手伝いをしてた白ちゃんが有利かなと」

「瞳さんは?」

「あー……まあ、人並みには出来るはず。けど瞳ちゃんの料理って見たことないな……」


 そう言われている瞳さんは、すごく張りきっている。


「行くぞお前らァァ!!」

「「「「「「ウォォォォォォォォッォォォッ!!」」」」」」


 瞳さんの周りに集まっている取り巻きたちが一致団結し、その拳を上に向けた。その雄たけびはこの教室中に響き渡った。


 各々が包丁を持ち始めたと同時に、真希くんが瞳さんの背中にまわり、その頭を優しく抱きしめた。


「僕は、瞳ちゃんが一人で作った料理が食べたいな」


 瞳さんはおよそ人間の言葉とは思えない声を発したかと思えば、顔を赤くさせ、なぜかその長髪が逆立った。


「ごめん、みんな。私一人にやらせて」


 今の瞳さんは、どこか輝いて見える。金色に、輝いて見える。


「さすがにね。何人もいるとフェアじゃない戦いになるから」


 真希くんはそう言った。それなら前のしりとりは何だったんだ。


 瞳さんは白ちゃんにつかつかと歩み寄ると、その額を合わせて白ちゃんの隠れた目に向けて睨んだ。


「さっきは負けたけどさぁ。今度は負けないよ、デカ女。料亭の娘だか何だか知らないけどさぁ、真希くんを満足させられるのはわ、た、し!」


 審査員会長だけどね。食べるの会長だけどね。理解しているのだろうか。


 ……まあ、良いか。


 そしてもう一度言おう。食べるのは会長だ!


「両者準備が整いましたので! よーいスタート!!」


 亜美の明るい声と一緒に、同時に二人は腕を動かした。


 そして、やはり白ちゃんの手際は非常に良い。包丁の手さばきが見えない。残像だ。


 それに比べて瞳さんは……まあ、普通。普通だ。遅いわけでもなく、速いわけでもなく、普通。


 しかしやる気だけは感じる。やる気だけだが。


 何と白ちゃん、油を使っている。つまり揚げ物を作ろうとしているのだ。魚も捌いているので、その魚の唐揚げとかだろうか。


「白さんが作ってるあれ、何でしょうか」

「オコゼの唐揚げですかね。それにダシも取ってますね。味噌汁も作る気かもしれません」


 そして瞳さんは、牛肉と豚肉のひき肉をこね始めた。


「あ、ハンバーグかな? 牛と豚の合いびき肉だ。これには黄金率と呼ばれるものがあり、牛肉7、豚肉3とよく言われています。けど瞳ちゃんは8:2くらいかな? ちょっと豪華なハンバーグになりますけど、少しでも作りかたを間違えちゃうとパサパサになるぞぉー?」


 お、解説がしっかり解説してる。いや、解説は一回戦目からしっかりしてたんだ。実況が実況をしてないだけなんだ。


 白ちゃんはちらりと瞳さんを見ると、何とも余裕そうな表情を浮かべた。さすがに調理中に手を離して俳句を書くことはないが、まあ何を言いたいのかは分かる。


 白ちゃんは素早く、それでいて丁寧に豆腐を切り、さらに切っておいた油揚げでお味噌汁を作った。


 瞳さんは……うん、普通だ。普通にご飯も炊いてるし。


 先に料理を完成させたのは白ちゃんだった。やっぱりあの残像が見えるくらいに速く動き続けた白ちゃんのほうが早かった。


 オコゼの唐揚げ、背中の鋭いトゲは白ちゃんがとり除き、頭を切り分けて丸々唐揚げにされている。


 そして、オコゼは二匹用意されていた。もう一匹で作られた出汁で作られた味噌汁と、その白身で作られた炊きこみご飯。


 その直後、瞳さんが爆速で調理を終わらせ、盛り付けも終わらせ、会長の前に並べた。


 この瞬間、二人の料理は完成したのだ。


 瞳さんのハンバーグは少々形が崩れているが、いたって普通。ウスターソースとケチャップを混ぜて作ったソースがかかっている。いたって普通。


 千切りキャベツに半分に切られたミニトマト。いたって普通。


 うっすらと黄色に染まるわかめスープに、茶碗には白米山もりもり。普通だ。普通の家庭料理にしか見えない。逆に普通すぎて異質に思えてきた。


 瞳さんは白ちゃんの料理を一目見ると、その場で膝から崩れ落ちた。


 まあ……白ちゃんの料理は、盛り付けは完璧。どうやれば美しく見えるのか、どうやれば美味しく見えるのか。そういう細かな気遣いが、細部から感じとれる。


「あー、あれ、負けを確信してますね」


 真希くんがそう言い放った。言わないであげて。絶望に打ちひしがれて天を仰いで真っ白に燃え尽きてるから。


「それでは会長!」

「ああ、分かっている。実食! まずは、八十白さんのほうから……」


 あ、美味しそうなほうから選んだ。


 会長は唐揚げの皮を箸で器用に破ると、見えたのは白く艷やかな身。会長はその皮ごと口の中に運ぶと、その絶品さに何度か頷いていた。


「流石夏のフグと呼ばれるだけはある。上品で淡白な味、そして唐揚げにしたことで身がパサパサになっておらず、まさしく完璧な調理法だったことが伺える」


 地味に食レポがうまいぞこの生徒会長。


 会長は味噌汁の器を口に付け、それをすすった。感嘆の声をもらしたかと思えば、また何度も頷いた。


「やはり高級食材は腕の良い料理人に調理を頼むのが一番だな。この味噌汁の風味から感じたが、使っている味噌は一種類ではないらしい。この組み合わせを見つけるのにどれだけの日を……」


 もうこの人食レポで食っていけるんじゃないの?


「炊き込みご飯も絶品だ。他の食材……にんじんに、こぼうに、これはえのきか? どれだけ食べても具材がごろごろと見える。飽きないな」


 すると、白ちゃんがノートを出し、ペンを走らせた。そこには「ご飯ならいっぱい作ってありますよ」と書かれてあり、またペンを走らせたかと思えば「皆さんもどうぞ良かったら食べて下さい」と書いた。


 私たちもごちそうになると、たしかに会長がああ言う気持ちも良く分かる。


 瞳さんが渡された炊き込みご飯を恐る恐る口に運ぶと、そのまま泡を吹いて横転してしまった。


「うわぁー!? 瞳ちゃぁーん!?」


 亜美がそう叫んですぐに駆け寄ると、瞳さんは今にも消えそうな声で言葉を発した。


「か……かてない……。……普通の、料理スキルじゃ……あいつには……! かてない……!! ……がくっ……」

「瞳ちゃぁーん!!」


 何だこの茶番劇は。


「さて、これは順番を間違えてしまったかな。悪意はないから許してくれ、中野瞳さん。それでは、実食!」


 会長がそう言うと、瞳さんのハンバーグに箸を向けた。


 器用に一口分に切り分け、口へ運ぶと、その表情は何とも言えないものへと変わった。不味いわけでも、特別美味しいわけでもない。()の表情だ。


「……ああ、うん。……普通、だな。素朴」


 槍のようなその言葉が、もう満身創痍の瞳さんの胸に突き刺さった。


「何の変哲もない、ハンバーグ。コンビニ弁当のほうが特徴がある。特徴がないのが特徴。逆に言えば、アレンジがあればまだ言えることはあったかもしれない」

「もう辞めてあげて!? 後輩の心を穿つのがそんなに楽しいのか!?」


 おっと、つい口に。


 瞳さんは、死体蹴りにも等しい口撃に、息を荒くさせて心の傷口を手でおさえていた。


「はっ……はっぁ……! 嫌だ……三回勝負なのに二連勝されて負けるなんて一番嫌な負けかた……!!」


 まあ、今後の展開のために、ぜひとも瞳さんには勝ってほしいけど……こればかりはもう――。


「……しかし、何だろうな、これは」


 会長の箸は止まっていない。千切りキャベツを食べ、山もりもりの白ご飯を食べ、そしてスープを一口飲んでいた。


「……大して美味しくもなく、不味くもない。だが……ううん、何だろうか」


 決して、その箸は止まらない。


「……特別に感じないのに、違和感がある。何だ……何だ、この……。……何故、私は、箸を止められない……? 何故私は、このハンバーグを、パサパサとしているハンバーグを、懐かしいと感じているんだ……?」


 その箸がようやく止まったかと思えば、会長は一粒の涙をぽとりと自分の太ももの上に落とした。


「……私は、一人暮らしでな。……親から離れて、もう二年以上。一度も帰省したことがない。私の個人的な問題で若干嫌悪な関係だからだ。両親はきっと、私を深く愛している。……何だろう、ああ、育ち、親しんだ味と言うのは忘れられず、そして恋しく感じる。……これは、それだ。そんな母の味だ」


 会長は涙を落とし続け、その箸をまた動かした。


「ただ、懐かしいんだ……ずっと、こんなハンバーグが食べたかったんだ……いっぱいのご飯に合う、肉々しさを流す優しい味のスープが……」


 何か……審査員の感性に、ドンピシャに、奇跡的に、かっちりとはまってる……。


「勝者! 中野瞳!」


 会長は勝手にそう宣言した。

最後まで読んで頂き、有り難う御座います。


ここからは個人的な話になるので、「こんな駄作を書く奴の話なんて聞きたくねぇよケッ!」と言う人は無視して下さい。


会長の両親の話は、ずっとずっと後の後の後に。


いいねや評価をお願いします……自己評価がバク上がりするので……何卒……何卒……

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