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新部員だよ真希くん! ②

注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。


ご了承下さい。

「第一回! 新入部員審査!!」

「イエーーーーーーーイ!!」


 何だ急に。


 亜美が胸の谷間から取り出したマイクを構え、真希くんがマジックで出したクラッカーを鳴らした。


「外でやりたかったけど雨が降ってるから仕方がない! 中でやろう中で! 実況はわたくし亜美で!」


 真希くんはマイクを奪いとり、見るだけで明るくなれる笑顔を向けながら叫んだ。


「解説はこの五常真希がやります! 今回の新入部員は二名! 中野瞳と、八十白だァァーーーーーッッッ!!」


 何なんだこのハイテンションバカ共は。ほら、瞳さんと白ちゃん見てみなよ。若干引いて――引いてるかあれ?


 瞳さんはわりとノリノリだし、白ちゃんに至っては「何だかとても楽しそうなことを始めそう」って書いてるし。


「……で、何なの? 何が始まるの?」

「第三次世界大戦」


 亜美は物騒な言葉を吐いた。


「んなもん始めるな」

「まあそれは冗談として。今から始まるのはッ!」


 亜美が真希くんに視線を向けると、それに真希くんは答えるように声を思いきりだした。


「今から始まるはッ! 新入部員直接対決の3本勝負! 勝者はこの五常真希の特別お手製ショートケーキ1ホールが贈られますッッ!!」

「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉっぉっぉっぉぉっぉぉっぉ!!!」」」

「盛り上がってるかお前らーーーッッ!!!」


 亜美と瞳さんとタカハシ先生が主に盛り上がってる。白ちゃんは、相変わらず五七五で言葉を紡いでいる。


 この中で、まともなのは私だけなのか? 会長は……まあ、マトモかと言われると、別に……。普段はマトモだけど真希くんが絡むとアホになる……。


 ……まず、何でタカハシ先生まで盛り上がってるんだ? あんた教師だろ。是正する側だろ。


 ……まあ、教師になった理由が理由の人だしなぁ……。


「第一回戦はァァ!! ……どうする亜美ちゃん」

「……考えてなかったや! けどダイジョーブ!」


 亜美はその胸の谷間から、その胸よりも大きい立方体の箱を出した。本当に、どうやって入ってるんだ、あの胸の中に。


 こればかりは、幼馴染でも分からない。


 亜美はマッキーでさらさらっとその箱に文字を書き、そのままハサミでがたがたの丸い穴を開けた。


 書かれた文字は、「勝負箱」。……勝負箱? もう少しなかったの?


 さらに何枚かの小さな紙にさらりと文字を書いた後に、四つに折って箱の中に入れた。


「はい、どっちか引いて」


 そう言って亜美は瞳さんと白ちゃんに箱を差し出した。


 先に引いたのは瞳さんだった。やる気は充分、目が血走っている。……いや、もうそんなレベルじゃないなあれ。充血だな。目から血が出そうなくらいに赤くなってるな。


 まあ、真希くんのお菓子は美味しいから気持ちは何となく分かるけど。


「……しりとりって書いてるんだけど?」

「じゃあしりとり対決だよ」

「OK死ぬまでやろう」


 白ちゃんも「しりとりなら私は滅茶苦茶得意です」とノートに書いていた。


「第一回戦はしりとりで決定! それでは両者構えッ!!」


 亜美がマイクを奪い取りそう叫ぶと、ギラギラとさせた目線をさせながら、瞳さんと白ちゃんは両者握手を交わした。


 ……けど、白ちゃんってどうやってしりとりをするんだろ……。五七五でしょ?


 そんな疑問はよそに、しりとりが始まった。


「しりとり始めッッ!」


 瞳さんが女子高生であることを捨て、全力で叫んだ。


「めッ、めッ、メダカァァッッ!!」


 熱量が凄い。聞くだけで鼓膜が破れそうだ。


「さー始まりました第一回戦しりとり対決」

「凄い熱量ですねー。こっちまで熱くなります」

「この勝負、どう思われますか解説の真希さん」

「断然、白さんが不利ですねぇ。彼女は五七五でしか会話できないという縛りがありますから。そこをどう切り抜けるのかは見ものです。その縛りを今だけは解くのか、はたまた自身のイメージを保つのか!」


 白ちゃんは、何とも冷静に、そして静かに、ノートにさらりと文字を書いた。


 ノートに書かれた文は、「顔に似ぬ発句も出でよ初桜」と書かれている。


「何ですかあれ、解説の真希さん」

「かの松尾芭蕉の句ですね。続猿蓑(ぞくさるのみ)編纂時に土芳との対話から生まれたとされる句です。老い衰えた今の自分に似つかわしくない初桜のような華やかな発句が出てきてほしいという思いを秋に読んだとされています」

「なるほどよく分かんないや」


 すると、外野の方から野次が飛んできた。


「それで良いのか実況!」

「真面目にやれ実況!」


 ……私も言っておこ。


「もう少し手に汗握る実況をしてみやがれ!」

「野次馬ウルサイ!! なら見ておけ!!」


 よし満足。


 瞳さんは悩む素振りを見せたと思えば、ちらりと雨が降る窓の外に視線を動かした。


 そして、力強くこう答えたのだ。


「ランタノイド!!」


 何だそれ!?


「何か出ましたランタノイド! 解説の真希さん! 何ですかそれ!!」


 お、実況に力が入ってる。


「ランタノイド、原子番号57から71、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムの15の元素の総称です。各々の性質が非常に似ており、このようによくまとめられます」


 その解説に、私はついつい叫んでしまった。


「何でそんなことをあの、瞳さんが知ってるのよ! 頭良さそうには見えないけど!」

「何ですってこのバカ!! 誰の頭が悪いって!?」

「そこまでは言ってねぇよバカ!」

「ふん、私はお前みたいに勉強もてんでできないバカとは違うってだけ」


 この野郎……バカにしやがって……。


 さっき瞳さんが向いた窓のほうには……確か……瞳さん親衛隊が……まさかッ!!


 急いで窓のほうを向くと、そこにはさっき見た瞳さんの取り巻きがさらに数を増やしており、その中の一人の男子がクリップボードをこちらに見せていた。


 そこには、確かに、「ランタノイド」と書かれている。


「おい実況! あれ良いのかあれ!」


 私が窓のほうを指差すと、瞳さんは「あっヤベッ」と小さくつぶやき目を背けた。


「どうする? あれ」

「面白そうだからアリで」

「真希くんの許可が降りたのでアリで行きます!」


 ルール崩壊まっしぐら!


 瞳さんはガッツポーズをして、何ともムカつくドヤ顔を私に向けた。


 しかし白ちゃんは動じない。むしろさらなる闘争心を出したのか、さらに素早く筆を走らせた。


 書かれた文は「どんみりと(あうち)や雨の花曇り」であった。


「あれは! 何ですか!」

「これも松尾芭蕉の句ですね。(あうち)栴檀(せんだん)の古名です。梅雨空がどんみりと低く垂れているから、(あうち)の薄紫色の小さな花がもの憂げに咲いている。という意味ですね。芭蕉の気だるい感じの季節感をしみじみと感じます」


 今さらだが、真希くんの知識量には目を見はるものがある。これ全部解説できる知識量っていったい……また真希くんの謎が深まった。


 しかし瞳さんもまだ負けていない。瞳さんはまた窓のほうを見た。やっぱりあれ反則にするべきでしょ。


「リエマージング感染症!」


 ハイレベル……ハイレベルかこれ? 片方はカンニングだし、まあ、もう片方は確かに凄いけど。


「何ですかそれ!」

「再興感染症と言われ、かつて流行した感染症のうち、一度は患者数が減少して制圧されたが、また患者数が増えている感染症のことです」


 白ちゃんは「うしろから月こそ出づれ鵜飼(うかい)舟」と書いた。


「中興五傑の一人、大島蓼太の句ですね。後ろから月が出て、鵜飼(うかい)船が下流へ流れてゆく様子を読んだ句です」


 そして、瞳さんはまた窓の外を向き、「子忌(ねい)み!」と叫んだ。


「産まれたての赤子には産の穢れがあるとして忌み慎むことで、その期間のことも指します。生後100日目か120日目に赤子から穢れが抜けると考えられて、その日には箸初(はしぞ)めと呼ばれる祝い事をやったりします。僕もやったことがあります」


 白ちゃんは「水無月や鯛はあれども塩鯨」と書いた。


「やっぱり芭蕉の句が多いですね。水無月の季語は旧暦の6月、現在の7月に当たります。この時期は鯛が旬ですが、私は、つまり松尾芭蕉にとっては塩鯨のほうが良いという意味です。ちなみに旬の野菜と一緒に塩鯨を入れた物をイルカ汁と呼んだりします」


 解説が完璧すぎてほれぼれする。


 瞳さんはすぐに、「ランチェスターの法則!」と叫んだ。


「ものすごく大雑把に簡単に言えば、戦闘力=兵力の質✕量っていう数式です。 1位を強者、2位以下をすべて弱者と定義して、同じ武器なら勝敗は兵力数で決まるという定義をもとに弱者の戦略、強者の戦略に分けられています」


 白ちゃんは「雲とへだつ友かや(かり)の生き別れ」と書いた。


「遠い雲をへだて、江戸に出て行きます。これが旅立つ雁の生き別れ、という意味です。雁と仮をかけたんじゃ? みたいな話もあったりなかったり」

「解説の真希さん、気づいてますか?」

「……多分、亜美さんが言おうとしてることは」

「先ほどから八十白さん、ほとんどの俳句がラ行で終わってます」

「ラ行で終わらせ、瞳ちゃん親衛隊の知識が底を尽きることに賭けていそうです。ラ行の言葉はそう簡単に思いつきませんから」


 お、ちゃんと実況してる。


 そして、しりとりの激しい攻防は三十分続いた。


 しかしこのしりとりの終わりは、想像できないほどに、稚拙な方法で終わった。


 白ちゃんが「呑み明けて花生にせん二升樽」と書くと、やはり瞳さんは窓のほうを向いた。


 しかし、外にいる取り巻きが一人、また一人と、雨が降る暗い外に消えていった。


 いや、違う。先ほどまでヤモリのように引っついていても、所詮は人間。いずれ体力的な限界が訪れる。


 しかも雨! いくら愛の力で貼りついたとしても、やがては滑って落ちる! そう、この勝負! 白ちゃんの持久勝ちなのだ!


 ……何熱くなってるんだろ私。これ、しりとりなのに。亜美の実況のせいかな。


 いつの間にかタカハシ先生が職員室からポップコーン持ってきてくれたし。何か……野球観戦? 映画鑑賞? それに近い。


 瞳さんは悩みに悩んだ末に、声を絞り出した。


「……ルーマニア」


 限界が来たのだ。誰でも思いつきそうな単語を呟いた。


 そして、その隙を逃す白ちゃんではない。


 白ちゃんは、「あら何ともなや昨日は過ぎて河豚汁(ふぐとじる)」と書いた。


 そう、ここに来てダメ押しの()()()ッ! 瞳さんは顔を赤くさせながら、頬を膨らませているッ!


 ざまぁみやが……おっと危ない。つい言葉に出てしまうところだった。


「……ルシファー」


 はい堕天使キタコレ。


 白ちゃんは分かっていたのか、すぐにノートをこちらに見せた。


 そこには、「あさむづや月見の旅の明け離れ」と力強く書かれている。


 瞳さんは徐々に、徐々に赤い顔を青くさせて、やがて動悸が荒くなっていった。


 頭を抱え、歯を軋ませながら、あまりに巡らせた思考はやがて脳を焼いたのか、頭から煙を出し、目を回らせながら、瞳さんは椅子から転げ落ちた。


 バカみたいな顔をさせながら、瞳さんは倒されたのだ。


 会長が瞳さんの横で何度も床を叩き、カウントダウンを始めた。カウントダウンが10(ten)になると同時に、真希くんが白ちゃんの片腕を高らかに挙げた。


「WINNERRRRRRRRRR 白ちゃーーん!!」


 かくして、この初戦のしりとり対決は白ちゃんの勝利となったのだ。


 ……さて、熱も冷めたころに、今さらながらに、言って良いものかと悩んでいることがある。


 ……結局、この戦いって何で始めたんだっけ?

最後まで読んで頂き、有り難う御座います。


ここからは個人的な話になるので、「こんな駄作を書く奴の話なんて聞きたくねぇよケッ!」と言う人は無視して下さい。


松尾芭蕉もこんな対決で自分の句が使われるとは微塵も思ってないよなぁ……


いいねや評価をお願いします……自己評価がバク上がりするので……何卒……何卒……

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