真希くんとナカノさん ①
注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。
ご了承下さい。
「……雨だね」
「雨だねぇ……」
「……傘、一つしかないけど」
「じゃあもうやることは決まってるね」
「……マジ?」
「そりゃ、雨に濡れる趣味があるなら別に良いけどさ」
「……やるしかないかぁ……」
この家の傘は一本だけ。両親は傘を使わず、不要だと思っているタイプ。明らかにそちらの方がマイノリティである。
そして真希くんは傘を持って来ていない。つまりだ。
「……相合い傘か……」
……せめて、せめて女のコだったら……女のコの時だったら……まだ、まだ仲良しみたいに見られたのに……! 何で男のコの方になっちゃってるのよ!!
……しかたない。背後から刺されないことを願うしかない……。
外では雨が降っている。土砂降りではなく、心地よい音を奏でる静かな雨。
こんな状況でなければ、心躍りながらスキップでもしていたというのに……。
気が気ではいられない。私と真希くんの距離は、肩が触れ合うかどうかの距離。ちょっと体を傾ければ、ぴとりと触れてしまうだろう。
けど離れるわけにはいかない。雨で、濡れる。
いや、相合い傘はそれが良いでしょっていうのは理解できるけどさ? それは……こう、好きな人同士でやるからとか、甘酸っぱいシチュエーションでやるから映えるのであって、ねぇ?
「そういえば……外に出したあの子、どこ行ったんだろ」
「……帰ったんでしょ」
「……何か、冷たい?」
「いや、別にそんなことはないっていうか、なんというか」
こっちはこっちで色々抱えてんだよこのヤロー!! 人の気持ちを知りもしないで……。
通学路を進めば、徐々に見たことのある顔が増えてくる。そしてその殆ど全員が、こちらに視線をちらりと向ける。
女子グループは何やらこそこそと話しているし、男子グループは何やら笑い合っているし、これだから嫌なんだ……!
真希くんでも、真希ちゃんでも、目立つんだよ!! 隣にいると!!
まあ隣にいてほしくないわけじゃないんだけど……それはそれとしてさぁ?
ほらまた女子グループがひそひそと! ああいうグループは悪口で盛り上がってるって私が一番知ってるんだから!
平穏! 何より平穏! 平穏が一番だいっじ!! にも関わらず、こんな……こんな……!!
私達は、多くの視線の中、学校に着いた。はい、花の高校生生活終了の合図でーす。仲良くするだけなら、何ら問題なかったんだから。
……今日は、今日だけは、平穏に過ごせるように、神様に祈っておこう……。まあ私のおじいちゃんは住職なんだけど……。
真希くんは、どこか機嫌が良い。狭い傘に触れない程度に離れていたから、制服の片方の肩が濡れてるのに。
「あ、涼夏ー!」
亜美が私の顔を見て駆けよった。
「真希くんを誘惑して家に連れこんで朝チュンしたってホントー!?」
「ブチ殺すぞ貴様」
「口悪ッ!?」
……まだ、まだ私と真希くんが学校に着いてから十分も経っていない。つまり、その短い時間に噂が広がり、尾ビレ背ビレ胸ビレ腹ビレが生えて、挙げ句の果てには腕と脚ができている。
クッソ……今日でワンチャン私の命日だぞ……!? どうする……どうする……!?
真希くんに弁明……は、また私の噂が酷いことになるのは明白ッ!!
「ねーえー涼夏ー? 答えてよー」
私からの弁明は意味がないッ! 最早この流れはせき止められない!! なら……ならば……どうするッ!! どうすれば、平穏が訪れるッ!?
「ねーえー」
「……いや、真希くんが女のコの時に、お泊りしただけだし」
これしかないッ!! あくまで、あくまで女子同士のお泊り会ッ!! 何の変哲もないッ!! やましいことがあったと考えるほうがちょっとアレなシチュエーションッ!! そして何より、真希ちゃんから真希くんになったのは真希くんからと言い張れるッ!!
そして、何一つ、嘘はついていないッ!! 事実しかないため、真希くんに事実確認の話が行ったとしても、真希くんはうなづくしかないッ!!
七十五日をすぎれば、勝手に消滅するはずッ!! その間にちょっと噂が流れるだけだが、それくらいなら許容範囲ッ!! 今の四肢が生えた噂よりは、はるかにマシッ!!
後は……後は、亜美が、勝手に広めてくれれば……。……亜美は噂好きだ。広げてくれるだろう……そう願う……。
そしてやって来たホームルームの時間。それに関しては、何の滞りもなく終わった。
「何か変な噂が流れてるね」
隣の真希くんが眠たそうにあくびをしながらそう言った。
だ、れ、の、せ、い、だ、とッ!! ……と、叫びたかったが……考えてみれば、雨のせいか……。
すると、タカハシ先生が真希くんを呼んだ。真希くんは目をこすりながら、教室を後にした。
その直後、何やら教室中の視線が私に向いた気がする。同時に、重厚感が私の両肩に乗りかかった。
……さて……逃げるか。
そう思い席を立とうとすると、突然誰かが私の席の机を思い切り叩いた。
叩いたのは、一軍グループのドン。名前は……何だっけ。ああ、ナカノさん。染色された茶髪と派手に巻かれた髪の毛、前時代的なギャルである。
もう少し、こうさ。今の流行りは清楚系だぞ? ……まあ、言ったら学校から消されるから黙っておこ。
見れば、私の周りに取り巻きが囲っていた。はいはい、逃げられない。……はい、終わったぁ。学校生活終了の合図。
「あんたさぁ、調子乗ってんの?」
眉間にシワを寄せながら、ナカノさんはそう言った。
いや、ふざけてるとかふざけてないとか、そんな話ではないでしょこれ!?
「ちょっと何の話か……」
「真希くんの話」
「あー……荒唐無稽な噂が流れてるねぇ……あはは、はは、は……メガワラッテナイ……」
「で、どうなの?」
「お泊りしたことは事実、だけどその時は女のコだったし、男のコになったのは私が起きた後! だから噂は真実ではありません! はいッ!!」
さあどうだ! 反応は!
「ふざけてんの?」
はい駄目でしたッ!!
「色々ヤッてんでしょ?」
「いや、まさか……そんなずっこんばっこんする仲でもないし……ただの友人だし……」
「いや、やってるんでしょ? ちゅーとか」
……おっと?
「……へ? ……あー……やってないけど」
「はぁ!? 男女が同じ屋根の下にいたら、ちゅーとかするでしょ!?」
「……へ? あぁ……え? ……そういうのって、【自主規制】が【自主規制】でずっこんばっこんずっこんばっこんとかじゃないの? 例えば【自主規制】を真希くんが【自主規制】して、【自主規制】と【自主規制】を【自主規制】して――」
唐突に、取り巻きの女子達に口を塞がれた。
「馬鹿野郎! ナカノちゃんにそんなこというんじゃねぇ!!」
「まだキャベツ畑とかコウノトリとか信じてる無垢な少女なんだよ!! 無修正のポルノ見せつけるみたいな下卑た行為をするんじゃァァねェ!!」
「キスしたら子供できるって本気で思ってんだよッ!! 一回黙れッ!!」
「てめぇが穢していい子じゃネェんだよ!! 聖母マリアみテェに扱えボケェェ!!」
性教育の敗北ッ!! 高校生にもなってその認識は非常にマズイ!! 逆に心配になる!!
ナカノさんに視線を向けると、タコみたいに顔を真っ赤にさせながら、頭から湯気を出し、その場で倒れてしまった。
「あー!! あまりのセンシティブさに気絶したー!!」
「泡吹いてる泡!! 先生呼んでー!!」
どうなってんだこいつ!! いかにもヤリまくってますみたいな顔しやがって性耐性皆無なのかよ!! そして、この取り巻き保護者かよッ!!
「はーい、そ、こ、ま、で」
そんな声が、私の背後から聞こえた。
ふり返ると、真希くんが私を抑えている取り巻きの背後にいた。その手には、一体いつの間になのか、包丁が握られていた。
その光る刃は、取り巻きの女子の首筋にぴとりと当てられていた。
……うーん、端的に言えば、銃刀法違反。
「色々言いたいことがあるけど……まず、離れようか」
取り巻きたちから変に小さな悲鳴が聞こえると、私を抑えている腕の力が、少しずつ弱くなっていった。
「……で、どう言う状況? これ」
「センシティブワードに触れて気絶した」
「……えーと、意味が分からないんだけど……」
「【自主規制】が【自主規制】とか言ったらこうなった」
「……ごめん、本当にごめん。こんなこと言っちゃって本当にごめんなんだけど……頭おかしいんじゃない?」
「……ところで……それ、本物?」
「いや全然。おもちゃおもちゃ。あ、でも触らないほうが良いよ。危ないから」
危ないのならおもちゃではないのでは……?
「けど……うーん、分かった。信じてみる」
すると、真希くんはわずかに悪そうな笑みを浮かべた。
「ちょっとおもしろいこと考えた……キーッヒッヒッヒ……!」
真希くんは倒れているナカノさんに近づき、その耳元に語りかけた。
「【自主規制】、【自主規制】、【自主規制】」
真希くんの口から出たのは、私でさえ恥ずかしさのあまり耳を塞ぎたくなる淫語の数々。
偶然か、はたまたこれも真希くんの計算の内なのかは分からないが、その声は私以外には聞こえていないようだ。それでも色々問題なのはそうだけど。
ナカノさんは、その膨大な情報量を処理しきれずに、口から血を吐いた。
「お、ホントだ。きちんと保健体育の授業は受けようねぇ」
あの言葉の羅列に関しては、もうそんなレベルじゃなかったけどね……。
最後まで読んで頂き、有り難う御座います。
ここからは個人的な話になるので、「こんな駄作を書く奴の話なんて聞きたくねぇよケッ!」と言う人は無視して下さい。
あれは取り巻きと言うよりかは、親衛隊では?
真希くんは罪な子ですねぇ、色んな人の初恋を奪って、捨てて。おっそろしい子。
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