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愚者の行軍(2)

「さてと……。これで暫く俺は出撃になるわけだが。シェルシ、お前はどうするつもりだ?」


「私は私で考えがあります。ホクトとは一緒に行きません。足手まといになるのはわかっていますから」


 やけに聞き分けのいいシェルシの反応にホクトは軽く困惑していた。戦の準備で浮き足立った城内の中、二人は見詰め合う。ホクトは既に出撃準備を完了し、支給された新しい戦闘服に着替えていた。

 袴姿に似た和風デザインなその服にはククラカン王家、ヨシノの家紋が刻まれている。服装のデザインは意図的に白騎士と似通った物となっていたが、ミュレイのその意図にホクトはあえて気づかないフリをした。余計なお世話もいいところだったが、一応兄妹で仲良くしなさいという事なのだろう。

 ホクトの準備と言えば服装を着替えたくらいで他には何もない。移動用のバイクの準備はククラカンのメカニックがしているのでむしろ暇なくらいであった。そんなわけでへこたれ姫の様子を見に来てみればこの様子である。以前のシェルシのしつこさからすれば、少々不気味でさえある。


「考えって……。お前まさかまだ変な事考えてるんじゃないだろうな?」


「む……っ! 変な事ってなんですか? 平和的解決を望むのがそんなにおかしいですか?」


「そういう事じゃねえだろ……って、何で若干ご機嫌斜めなんだ?」


 すねたような様子で腕を組み、そっぽを向くシェルシ。頭上にクエスチョンマークを浮かべまくるホクトであったが、シェルシの不機嫌の理由はホクトには判らなかった。そう、判る筈もない。それはまだ彼らがバテンカイトスに居た時の話……。メリーベルとの会話が原因だったのだから。

 ホクトが過剰なまでに平和的解決を求めようとするシェルシを戒める理由、それがミラ・ヨシノの存在である事は明らかである。彼はまるでヴァンとは別人であると語り、この世界の事も、この世界に生きる人間の事も、まるでどうでもいいと言った様子である。実際彼の行動には脈絡がなく、一貫性も無い。“気まぐれ”だけで生きているように、そんな風にも見えるだろう。

 だが、結局のところホクトの行動は目先の人間全てを救いたいと考える理想から成っている。困っている人は放っておけない。人の願いは叶えてあげたい……。そんな気持ちが根本的な部分にあり、善悪や可能性の是非は無関係に彼はそれを遂行しようとしている。だからこそ、まるでふらふらとしているように見えるのだ。

 囚われているのは、今とて同じ事。彼は過去に失ったミラの痛みをまだ抱え、彼女がやろうとした事を一人で続けているのだ。そうした意味においてホクトはシェルシよりもずっと平和主義なのである。それでもホクトが口をすっぱくしてシェルシに余計な事はするなと注意するのは、それだけシェルシを心配しているから……。そして、シェルシをミラと重ねてみているからなのだ。

 メリーベルはその話を念頭にシェルシの肩を叩き言った。“貴方が貴方として成すべき事を成し、願う事を叶える。それが結局ホクトの呪縛を解き放つきっかけになる”と――。


「お~い、へこたれメイドプリンセス……? お兄さんの話、聞いてますか~?」


 考え込むシェルシの目の前、ホクトは片手をひらひらとシェルシの顔の前で振っていた。それに気づいたシェルシがはっとした様子で顔を挙げ、一歩後退する。


「き、聞いてますっ」


「ほお~……? じゃあなんて言ってたか教えてくれよ、シェルシちゃん」


「う……。えーと……そ、そんな事はどうでもいいじゃないですか。貴方は出撃準備で忙しいんでしょう?」


「いや、ところがどっこい暇なんだぜ! この戦場の空気の中、シェルシが一人で寂しがってんじゃねえかと思って相手しに来てやったわけだよ。俺って優しいだろ?」


 確かに、この独特の緊張感の中特にする事もなくフラフラしているのは疎外感があって寂しくはあった。しかしそれを素直に認めるのが悔しくてシェルシはまるでそんな事はなかったという素振りをする。


「と、兎に角! 私は私で勝手にやらせてもらいますから!」


「どうしたんだ、そんなに張り切って? お姫様なんだからもうちょいおしとやかにしとけよ」


「…………むーっ!! どうせ私はミラ・ヨシノのようにおしとやかなお姫様じゃありませんからっ!!」


 そう叫び、思い切りホクトの足をハイヒールのブーツで踏みつけるシェルシ。ごりごりとヒールが爪先に食い込み、ホクトは声にならない悲鳴を上げた。シェルシはそれで少し満足したのか、颯爽と振り返って歩いていく。


「おーい、ちょっと待てよー? なんでそこでミラの名前が出てくるんだ? つか、せっかく新調した靴なのに……踏むかな普通」


「貴方の靴の心配なんて知りません。勝手に穴でもあけて行軍してください」


「おいコラ!! てめー、人がさっきから優しくしてやってんのになんじゃその態度はっ!? 教育がなってねえんじゃねえのかオイッ!!」


「むーっ!? なんですって!? 貴方みたいな育ちの悪い人間に言われたくありません!! 節操無しに誰にでも声をかけるわ、ミュレイさんの胸を揉むわ……っ!! 貴方人として少し最低ですよっ!?」


「少し最低ってなんだそれ何語だお前!? はっはっは、わかったわかった……。さてはお前、“やきもち”焼いてるわけだ。そんなに揉んで欲しいならもっと早く言ってくれれば良かったのにな」


「違いッ! ますッ! からッ!!」


 腰から下げた訓練用のサーベルを抜き、ホクトへと斬りかかるシェルシ。しかしホクトは両手を頭の後ろで組んだままひょいひょいとそれを回避してしまう。それを見たシェルシがなんだか変な具合に笑みを浮かべ、物凄い勢いでサーベルを振り回し始めた。


「甘い甘い、お前の剣なんて目を閉じてても避けられるぜ~」


「死になさい悪逆非道っ!! 貴方なんか! 貴方なんかっ!! むーっ!!」


「はっはっは! 見える……私にも敵が見えるぞ!」


 そうしてシェルシに追い回されるホクト。二人はそのまま暫くの間格闘を続けていたのだが、それを遠巻きに眺めロゼは冷や汗を流していた。隣では整備を終えたバイクを押してくるウサクの姿もある。


「あの二人、とっても仲が良いのでござるなあ」


「仲いいのかな、あれは……。一応シェルシが振ってるの真剣じゃない……?」


「喧嘩するほど仲が良いと申すでござるよ。シェルシ殿、自国との戦争で落ち込んでいた様子だったのでよかったでござる」


 しかし見ていると、ホクトが指先でシェルシの剣を受け止めてしまい。サーベルはぽいっと投げ捨てられてしまった。シェルシはがむしゃらに両手を振り回しながらホクトに突っ込んでいくのだが、体格に差がありすぎた。ホクトが片腕でシェルシの頭をがっしりと押さえると、シェルシは涙目になりながら手をブンブン振り回してそれに抵抗している。


「…………。アレ、いじめられてんじゃないの?」


「……喧嘩するほど、仲が良いと……」


「うわあああん! うああああああんっ!!」


「本当にシェルシはへこたれプリンセスだなあ~。全く攻撃が当たってないぞ~」


「わああああんっ!! ホクトの……ホクトのばかあーっ!!」


 二人は同時に視線を反らし、それから遠くの空を眺めた。今日もいい天気……戦争などなければ丁度いい日和だろう。鳥達が囀る声もいずれ聞こえなくなる。深く溜息を漏らし、それから二人はホクトとシェルシの所へと歩き始めた。




愚者の行軍(2)




「わざわざ前線からご足労ありがとうございます、シルヴィア王」


 ザルヴァトーレ首都、ルーンリウム……。前線で開戦の準備を進めていたシルヴィアは城内の会議室に足を踏み入れていた。部屋の中には既に帝国の騎士が何人か待機しており、その奥にはケルヴィーと将軍たちの姿もある。

 シルヴィアは腕を組み、少々不機嫌そうに席に着き足を組んだ。彼女が前線からわざわざここまで戻ってきたのは当然彼らの呼びつけを受けたからである。しかし開戦前のこのデリケートな時期、指揮官であるにも関わらず呼び戻されシルヴィアとしては面白くない状況だ。


「して、何用か? ケルヴィー殿。我々は開戦準備で猫の手も借りたい状態……長話は遠慮願いたい」


「ええ、ええ。大丈夫ですよ。そんなに長くはなりませんから。今回の開戦ですが、少々厄介な事になっているようです」


「厄介……と?」


「例の“魔剣狩り”……どうやらククラカン側についているようなのです」


「魔剣狩り――ヴァン・ノーレッジか。インフェル・ノア脱出からこちら音沙汰なしかと思いきや、そう動いてきたわけだ」


「というわけで、こちらもただ見ているというわけには行かなくなりましてねえ。もしヴァン・ノーレッジを発見したら、こちらの剣誓隊が対処しますので。それぞれの拠点に将軍クラスを配置させていただきたいのですが」


 シルヴィアとしてはその内容に大きな不服はない。戦力が増強されるのであればそれに越した事はないし、実際にヴァン・ノーレッジが大暴れしてくるとなると、戦況は一気に混乱する可能性がある。シルヴィア当人の主義としては余り他人の力を借りるというのは好みではないが、ここは王としての選択で四の五の言うわけにも行かない。


「それは承知……むしろこちらも助かる。話はそれだけで?」


「それともう一件……。実は、先日完成した剣誓隊のエクスカリバー隊を実戦配備させてもらいたいのです。まあ、兵器実験だと思っていただければ……」


「我々の戦場で新兵器のテスト、か……」


 当然それもシルヴィアとしては面白くない。だがすべては民の為、国の為である。出来る限り騎士たちを死なせたくはないし、帝国に逆らって心象を悪くする必要もないだろう。


「……了解した」


「では、詳しい配備位置や運用などは細かく決定してから追って連絡差し上げましょう。ああ、そうそう……。シェルシ様の件ですが、何か情報は入っていませんか?」


 シェルシの失踪は当然シルヴィアにも伝えられている。シェルシはホクトに連れ去られた、というのが帝国側の見識となっており、その後シェルシがどこへ行ったのかは帝国も当然追っていたのだ。しかしその探し方はお世辞にも真面目とは言えず、半ば投げやり……。大雑把な捜査しかしていなかった。それより大事な物が失われたのだから、当然だとも言えるのだが。


「いや……こちらにもまだ何も。愚昧がご迷惑をおかけして申し訳ない」


「いえ、インフェル・ノアの警備システムにも問題があったので……。相手がヴァン・ノーレッジだとすれば、シェルシ様も同行している可能性があります。魔剣狩りを捕らえれば必然、シェルシ様の居所もつかめるでしょう」


「こちらも魔剣狩り捕獲には協力させていただく。シェルシの事を頼みます。あんな愚昧でも……妹だからな」


 話が終わり、ケルヴィーと将軍たちは部屋から出て行った。一人残ったシルヴィアは腕を組み、目を瞑って少しの間考え込んでいた。当然思考の矢先は妹の安否である。彼女自身の事もそうだが、彼女には今後のザルヴァトーレの命運がかかっているのだ。この戦争、そういった意味でも負ける事は決して許されない。

 一人で考え込むシルヴィアの背後、扉が開いた。現れたのは黒いドレスを身に纏った姫である。美しく長い黒髪――シェルシやシルヴィアとは異なる目の色、髪の色、顔立ちのその姫は王の傍に立ち、その顔色を伺っていた。


「お姉様、何のお話をしていらしたの?」


「……ネーヴェか。いや、帝国側が脱走した魔剣狩りの捕獲と兵器実験に協力してくれと言って来ただけだ」


 立ち上がり、シルヴィアは振り返った。ネーヴェ・ルナリア・ザルヴァトーレ……。ザルヴァトーレの第二王女であり、シルヴィアの妹にしてシェルシの姉である。王であり騎士でもある姉シルヴィアや婚姻の儀の花嫁であるシェルシとは異なり、ごく普通の姫なので話題に上がる事もなく、彼女は常に二人を影から見守ってきた。そんなネーヴェも此度の開戦では大人しくしているわけにも行かず、シルヴィアの片腕として各地を奔走している。


「魔剣狩り……ヴァン・ノーレッジですか? 確か、帝国から脱走したと……。シェルシを連れ去ったとか」


「そうらしい。全くあの馬鹿は何をサラっと拉致されているのか……実に腹立たしいわ!」


「まあお姉様、そう仰らずに……。あの子にはあの子なりに事情があったに違いありませんわ。わたくしたちに出来る事は、あの子の無事を祈る事……。そして今は国を護り戦う事ですわ」


「確かにその通りだな……。良い。ネーヴェ、前線へ戻るぞ。それと宣戦布告の用意を」


「そちらの方は滞り無く」


 シルヴィアは頷き、部屋を後にする。ネーヴェはにっこりと優しく笑顔を作り、シルヴィアの半歩後ろを歩き出した。髪を束ねシルヴィアは心境を新たにする。これより始まるのは血も涙もない戦争――。無慈悲な悪逆非道が繰り返される地獄の創造である。その覚悟と重責、それを背負わねばならない。王として。人の命を預かる者として。絶対に負ける事は出来ない、戦いを前に――。




「ザルヴァトーレより宣戦布告の合図あり!! 敵本隊、ラクヨウに向けて進軍開始されました!!」


 ラクヨウ城の司令本部、通達を受けた通信士が声を上げた。その声を聞き届け、タケルはゆっくりと目を細める。戦争が始まった。それは、たった一つの合図で幕を開ける。なんとシンプルでなんと罪深い……。王子は片手を揮い、通信士たちに命じる。


「各部隊に伝達! 戦闘開始準備――! 姉上……どうぞ、ご無事で」


 ラクヨウの街の外、荒野にエンジンを唸らせるバイクが一台停まっていた。その上に跨ったホクトは左右のサイドカーに乗ったロゼとウサクを見やり、それからゴーグルを装着する。


「さて、俺らは敵陣付近までこいつで突っ走って、あとは徒歩で潜入だ。段取りはオッケーだな?」


「了解でござるよ!」


「てかこれ、バイクじゃなくてもう三輪車……」


「つべこべ言ってるとは余裕があるな……」


 グリップを握り締め、ホクトは荒野の果てを見渡す。街を取り囲むように展開した防衛部隊から飛び出したその場所で男は戦いの足音を確かに感じていた。

 既にミュレイたち本隊は敵の進軍を抑える為に出動している。あとはホクトたちがポータル破壊工作の為に向かうだけである。全てが上手く行くかどうかは判らないが……兎に角今はやるしかない。


「さぁて、ほんじゃまいっちょ……やってみますかねえ」


 バイクが発進し、荒野に砂と埃を巻き上げながら疾走していく。それを見送り、背後でシェルシは一人借りた馬の上に跨っていた。ホクトのようにバイクは運転出来ないが、乗馬ならば子供の頃から嗜んでいる。城に残っているとホクトに言い訳したのも束の間、シェルシは既に前線に出る気満々であった。

 サーベルを腰のベルトに差し、白馬を走らせるその姿は姫というよりは剣士そのものである。ホクトとは別方向、本隊をも追い越すように迂回しシェルシが目指すのはザルヴァトーレ本陣――そう、姉シルヴィアのところである。

 戦争を中断させるという理想を叶える為に行動しなければならない事……判っている。無謀だといわれようがなんだろうが、人は自分が正しいと思ったことしか出来ないから。心に素直に正直に……ならば自ずと向かうべき場所は限られてくる。

 風を切り、自由自在に荒野を駆ける――。こんな瞬間にずっと憧れていた。でももう憧れているだけではいられないから。一人の姫として、人間として……。他の誰かと比べてではなく、自分自身として。願いを叶える為に、手は伸ばさねばならない――。


「…………ごめんなさい、ホクト。でも私は……それでも自分の信じた道を往きます」


 その結果、結局どうにもならなくて失敗したとして……。そうなった時、ホクトはどんな顔をするだろうか? そう考えると少しだけ胸が痛んだ。ミラを失った悲しみを再び彼に味わわせないためにも、シェルシは死ぬわけには行かなかった。生きて……。そう、生きて。この世界を、変えなければ成らなかった――。


「…………。出来れば夢であって欲しいものだな。戦争など……」


 シェルシが荒野を駆ける頃、前線では武士団を背後にミュレイが荒野の先を見つめていた。戦争が始まり、丁度敵軍が見える位置に陣取っていたミュレイたちも動かねばならなくなった。敵軍がゆっくりと迫っているのが見える。ミュレイは深く溜息を漏らし、それから顔を上げた。


「攻められたのならば、護らねばならぬ……。ミラよ……お主が生きていたなら、わらわを笑うか……?」


 誰にも届かない、小さな小さな呟き。それからミュレイは気持ちを切り替え、振り返って魔剣ソレイユを空に掲げた。背後にはククラカン武士団とサーペントヴァイト、そして砂の海豚の混成部隊が控えている。


「皆の者、良いか!? これは愚かなる歴史の一歩である!! 我らは争い、争う以外では何も護れぬ愚かな弱き存在じゃ!! 故に戦うしかなく、戦う以外を選べない! しかしそれ故に――なさねばならぬ事も自ずと一つ!!」


 振り返り、扇を広げて迫り来るザルヴァトーレの軍団を指し示す。シルヴィアは――。生涯の友は、どんな気持ちで今この戦いの音色を刻んでいるのだろうか――。


「ミュレイ・ヨシノの名において汝らに命じる! 我が国を、汝らの国を護り給え! 太陽の守護者よ!! 誇り高き剣士たちよ!! 日々の鍛錬の成果を存分に発揮し、そして――。そして……仲間を。友を。家族を。故郷を……。己の命を護り給え!!」


 戦場にミュレイの声は静かに響き渡った。もう、後戻りは出来ない……。高鳴る鼓動の音に耳を向ける。そして息を合わせ、声高らかに――。


「全員、抜刀許可! 白兵戦闘用意ッ!! 往くぞ――ッ!!」


 ミュレイが掲げた魔剣を合図に武士たちが一斉に刀を装備する。荒野には無数の魔法陣が浮かび上がり、そこからミュレイの召喚に応じて何体かの巨大な龍が姿を表した。ミュレイはそのうちの一体であるヴェルファイアの肩の上に乗り、扇にて敵陣を指し示す。一斉に武士たちが移動を開始し、それに伴い龍たちも前線へと移動していく。

 ザルヴァトーレ側は帝国により与えられた小型の高機動ヴィークルに搭乗した騎士たちが先陣を切り、それに続いて騎士たちと小型機動兵器が進軍していく。戦力差はやはり圧倒的である。ミュレイは空の上から眼下、敵陣のシルヴィアを見据えた。遠く離れた距離で見詰め合う事など出来るはずもない。だが二人は互いに互いの存在を感じ取っていた。


「…………行くぞ、ミュレイ。長年の決着――我らの代で清算しようではないか……!」


 シルヴィアが魔剣を装備し、立ち上がる。騎士と武士、二国の勢力が激突する――。先陣を進む騎士と武士とが刃を交え、その音を以ってして愚かな戦争の火蓋が斬って落とされたのであった――。


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