プリズム(1)
「異世界からやってきた救世主……? ホクトが……?」
「おう」
「で、でも記憶喪失って……」
「ありゃ嘘だ。すまん!」
「「「「 はああああああ~~ッ!? 」」」」
大事な話があるという事でホクトに集められた一同はそこで衝撃的な事実を聞かされる事となった。バテンカイトス最上階、メリーベルの私室……。ホクトは腕を組み、あっけらかんと嘘を吐露する。唖然とするロゼ、苦笑いを浮かべつつ、剣に手を伸ばすリフル。メリーベルは沈黙、ミュレイは腕を組み何かを考えている。アクティは目を丸くして状況についていけないという様子で、シェルシは瞳を反らして上の空……。そんな中、ブラッドが前に出てホクトを見やる。そうして首をかしげた。
「とは言うけど……貴方、どこからどう見てもヴァン・ノーレッジよ?」
「ああ。だから、外見はヴァン・ノーレッジなんだよ。というか記憶喪失が嘘というのは厳密じゃないんだが……。兎に角、俺はどうやら昴の兄貴らしい」
「らしいって……自分の事でしょ貴方……。それにしてもまさか、あの白騎士と貴方が兄妹だなんてねえ……。不思議な縁もあったものだわ」
「ちょ、ちょっと待ってよ!! じゃあヴァンは!? ヴァンはどうなったの!?」
戸惑いを隠せずホクトに駆け寄るアクティ。ホクトはそんなアクティの前に屈み、真剣な眼差しで応えた。
「ヴァンは……ここにいる」
ホクトが見せたのは術式がびっしりと刻み込まれた腕であった。そうして少し距離を置き、空中にガリュウを召喚してみせる。そうして魔剣を机の上に置くと剣はぎょろりと目を剥きアクティを捉えた。
「肉体は俺……北条北斗が預かってる。じゃあヴァン・ノーレッジ本来の意識がどこにあるのかというと……“ここ”だ」
ガリュウの刀身をこつんと叩くホクト。アクティは信じられない現実に思わずその場に膝を付いた。愕然とする――。するなという方が無理だろう。目の前にある巨大な剣、それがまさかあのヴァン・ノーレッジだなんて――。そう言われてはいそうですかと納得できるはずがない。
「お主の言っている事は事実なのか? わらわにはイマイチ理解が追いつかぬのじゃが」
「元々ヴァン・ノーレッジの肉体は取り込んだ無数の命……“死者の魂”で構築されている群像だ。外見的にはヴァン・ノーレッジの形を保っては居たが、ここ数年のヴァンは最早ヴァンなのか、それとも違う何かなのかその区別は難しい段階にまで悪化していた」
ヴァンの持つ力、蝕魔剣ガリュウ――。それは肉体をも取り込み、“平らげて”存在を死と重ね合わせる――。一つの命としてではなく。魂を情報へと変換しそれを取り込む力を持つガリュウを宿す人間は、等しくその力の代償として己の魂と肉体を囚われる事になる。
例外なく、ヴァン・ノーレッジもまたその力に取りこまれてしまった。ガリュウは、この世界の“死”と繋がる剣である。死の群れの中に紛れ、ヴァンと呼ばれる存在の意識は希薄になっていく。戦闘すればするほど、その死の力を使えば使うほど、魂は喰われ、穴だらけになり、肉体の内側でゆっくりと崩壊していく――。
「魂を取り込みすぎたヴァン・ノーレッジは、ガリュウという形をした“死”に飲み込まれた。肉体は“死”の総意であり滅ぶ事はないが、ヴァンという人間の人格はとっくの昔に穴だらけになってたんだよ」
「そんな……。じゃあ、ヴァンは……? ヴァンはもう、死んじゃったって事なの……?」
「そうとも言い切れない。例えばアクティ……お前は俺を見てヴァンを感じないか?」
顔を挙げ、ホクトを見つめるアクティ。これまであった出来事――それらから思う事がある。記憶喪失になったとしても、ヴァンはヴァン……。そう思えたのは、ホクトの言動の節々にヴァン・ノーレッジ“らしさ”を感じる事が出来たからに他ならない。
そう、ヴァンはまだ生きている。ガリュウという死の渦に飲み込まれても直、自意識を保っているのだ。それは人間としての精度で言えば、ただ本能と記憶の残滓が漂っているだけの状態なのかもしれない。それでもヴァンはその戦闘本能と記憶の一部をまだ保ち、その技術は魔剣ガリュウとして……。そして記憶と感情の一部はホクトの中へと残しているのだ。
「…………じゃあ、あんたの魔剣が勝手に動くのは……」
「ヴァン――だけ、ってわけじゃないんだろうけどな。だが死者の……魔剣狩りの本能がまだ剣に残っている証拠だろ」
成る程と納得し、ロゼは前に出る。ガリュウを見つめ、唇を噛み締めているアクティの肩を叩き、そっと身を引かせた。ホクトはガリュウを解除し、メリーベルの執務机の上に腰を下ろした。煙草を取り出し、そこにうさ子からもらったライターで火をつける。
「実際、俺は記憶喪失でな。元々の俺の人格……北条北斗としての記憶は殆ど残ってない。だけどまあ、それも最近は徐々に思い出し始めてるんだ。で、ヴァン・ノーレッジの記憶も剣を通じて流れてきている……つまりそういう事だ」
記憶喪失というのは嘘ではない。だがホクトの人格がヴァンのものとは全くの別物であるというのも事実である。そして二人は一つの肉体を共有し、そしてガリュウという死の渦に囚われている虜囚なのだ。
「…………興味深いのう……。つまりお主は本当に死者の意識の一つであり、たまたまヴァンの器の中に入っているだけ、ということか?」
「理由は俺にも良く判らないが、まあそんな所だ。死んで、気づいたらここに居た……そんな感じだな。といっても、それを思い出したのもつい最近なんだが……」
ホクトの告白に場は完全に沈黙していた。彼の発言には様々な意味があった。ヴァン・ノーレッジの死……。魔剣ガリュウの持つ危険性。ホクトとヴァンが別人であるという事。魔剣狩りと呼ばれた最強の剣士は既に存在しないという事。そして――ヴァンがそうであったように。ホクトもまた。その意識をガリュウに侵食されているという事――。
誰も何も言えず、重苦しい空気が圧し掛かった。ホクトは少しだけ寂しげに微笑み、それから紫煙を吐き出した。こうなることは判っていた。それでも語っておくべきだと思ったのには色々と理由がある。ここに関わりのある人物が集まっていた、というのもその一つだろう。だがロゼが前に進もうと歩き出し、アクティはヴァンを失った事に悲しみを覚え、そして白騎士は――。
元々、惰性で生きてきた。ホクトと呼ばれる人格には別段ヴァン・ノーレッジと同じように振舞う必要性はなかったから。彼の意識や記憶はあったが、それに従う積りも別に無かった。だからその日暮らし――。誰とも深く関わらず、誰とも絆など結ばなければいいのだと思っていた。
けれどももう、そんな悠長な事は言っていられないのだ。どうやらヴァンの残した因果はホクトを開放する積りも無く、これからもずっと付きまとうらしい。ならばいっその事――という思いもある。今まで何となく、本当に何となく、理由もないのに戦ってきた。この世界を滅ぼすほどの巨大な力を持ちながら――。
「というわけで、俺はお前らの期待するヴァン・ノーレッジじゃなかったとさ。めでたしめでたし、だ」
「――――ふざけるなっ!!」
肩を竦めるヴァンに怒号が浴びせられた。開いた出入り口の向こう、包帯まみれになった昴がウサクに支えられて立っていたのである。甲冑を脱ぎ去り、華奢な少女としての姿を取り戻した昴は震える瞳でホクトを見つめている。
ミュレイは昴に駆け寄ろうとして、しかしウサクにそれを止められていた。絶対安静のはずである昴がここにきたのは、すべて昴の意思であった。ウサクは友として、仲間として、そんな彼女の意思を尊重したかった。
「何なんだよ、その話は……っ!! 出任せもいい加減にしろっ!!」
「す、昴殿……もう少し落ち着いて……」
「ウサク……これが落ち着いていられるか!? あいつはっ!! お前は、ミュレイを殺したんだぞ!?」
昴の発言には誰もが首をかしげずには居られなかった。一番驚いたのはミュレイ本人で、鳩が豆鉄砲を食らったような――という顔である。まさかそこで自分の名が挙がるとは思って居なかったミュレイの脇を抜け、ふらつく足取りで昴はホクトへと歩み寄る。
その襟首を掴み上げ、机へと強く押し倒した。ぎゅうっと握り締めるホクトのシャツが伸び、昴は包帯だらけの顔から鋭く視線で男を射抜いている。確かに――それもそうだろう。昴にとってこんなにふざけた話はなかった。これ以上無い……複数の意味での侮辱である。
「北条北斗は死んだ……あっちの世界で死んだんだ! おかしいだろ!? なんでこんな所にその北斗がいるわけがあるんだよっ!! ヴァンがもう死んでて、剣になってるとか……なんだそれっ!! ふざけてないで真面目に話せよっ!!」
「俺は真面目に、事実だけを話している。少し落ち着けよ、昴」
「~~……っ!! 私の名前を、判ったように呼ぶなあっ!!」
振り上げた拳はしかし振り下ろされる事は無かった。北斗はただじっと、至近距離で昴を見つめている。わかってしまう。わかってしまった。そんなに真っ直ぐに見られては。ごまかしているのは自分の方なのだと――理解出来てしまう。
「私は、認めない……。私は……っ!!」
「昴殿、大丈夫でござるか!? 無茶しすぎでござる!」
「お前を、倒せば……終わるって! お前さえ居なくなれば……それで平和になるって! そんな風に馬鹿みたいに考えてたわけじゃないよ、でもっ!!」
倒れ掛かった昴を背後からウサクが支える。昴は涙を零しながら両手を広げ、叫んだ。それ以外にどうする事も出来なかった。高ぶる感情を押さえ込むその手段を、まだ少女は持ち合わせていなかったから。
「でも……こんなのってないよ……っ!! お前が北斗なわけないだろ、ばかっ!!!! なんで今更!! 今更兄さんの名前を出してくるんだよっ!!!! やっと……やっと乗り切ったのに! 忘れようとしてたのに、お前ぇえええっ!!」
「昴殿!」
「認めない……絶対に認めない……! 私は……お前、なんか……っ」
ホクトを睨み、指差しながら昴は前のめりに気を失ってしまう。ほっと一息ついた様子のウサクが昴を担いで部屋に戻っていく中、ミュレイはホクトの隣に立ち、視線を合わせずに呟いた。
「……すまぬな。昴にはもう少し、時間が必要じゃ」
「だ、ろうな……。まあ今更兄貴面するつもりもねえし……。あの様子じゃ、あいつはあいつなりにシャキっと頑張ってるみたいだしな」
「どこまで記憶にあるのじゃ? その……昴の事は」
ミュレイの質問をホクトは笑って濁した。そうして一旦話はお開きとなり、それぞれが思い思いに部屋を出て行く。残されたホクトの隣、メリーベルは同じように机に腰掛けた。
「良かったの? これで」
「…………。恐ろしいねえ。あんた、俺と再会した時には気づいてたんだろ?」
「まあ」
「嘘をつき続ければ、取り返しの付かない事になる――。あんたの言うとおりだったな。ま、今更そんな事を言ってもしょうがねえが」
立ち上がり、ホクトは去っていく。その後姿を見つめ、メリーベルは問いを投げかけた。
「これからどうするの? ホクト」
「――――これから考えるさ」
扉が閉ざされ、沈黙が再び降り注ぐ。メリーベルは腕を組み、静かに目を閉じた。壊れかけた街の上、消えない月の光が平等に降り注ぐ。誰も彼も、その思いに対しても分け隔てなく――。
プリズム(1)
「その、ホクト……。この世界の人間ではないというのは、どういう意味なのでしょうか?」
夜のローティスを歩くホクトの隣、何故か付いてきたシェルシの姿があった。煙草の煙を吐き出しながら歩くホクトの周囲、街は戦闘の傷跡が大きく残り、あちこちで焼け落ちた建造物や機動兵器の残骸が見えた。ギルドの関係者もそうでない人も無差別に行われた帝国の攻撃――。それが残したのは目を覆いたくなるような惨状だった。
血と肉がこげる臭いの中、ホクトはただ黙って歩き続ける。シェルシは寂しそうに目を伏せて歩いていたが、ホクトは急に思い出したかのようにシェルシへと目を向ける。
「お前、まだくっついてきてたのか」
「へっ?」
「いや……。あんな話の後だしな。もうくっついてこねえかと思ってたぜ」
足を止め、振り返るホクト。シェルシは不満げに拳を握り締め、ホクトに詰め寄った。まさかのガン無視に抗議したくもなるだろうが、それをぐっと堪えてシェルシは改めて質問を投げかける。
「貴方はこの世界の人間ではないのですか」
「ああ、そうらしいな」
「……それは、その……どういう意味なのでしょうか?」
「文字通りの意味だ。ヨツンヘイムでもプリミドールでも、エル・ギルスでもオケアノスでもない。この世界には存在しないどこかからやってきた」
「では、貴方は……ヴァン・ノーレッジでは……?」
「ないな。だからもうずっと皆に言ってきたんだけどな……。ヴァンじゃねえって」
「では、貴方は……。貴方は、どこの誰なのですか?」
真っ直ぐに見上げるシェルシの目――。それを見ていると、何故か時々悲しくなる。ホクトは自分の感情を表に出す事は殆どなかった。これからもそれはないはずだった。しかしそれでも――思い出すのだ。自分が護りたいと思った人達の事を。薄暗い物置の中で膝を抱えていた少女……。自分を愛していると笑ってくれた姫の事。それら全ては今のホクトにとっては過去であり、同時に幻でもある。問いかけられたところで答える事は恐らく不可能だろう。彼はヴァンでもなく、恐らくは北条北斗ですらない。闇より出でた存在……。ガリュウの偏在意識の一つなのだから。
「シェルシ、まあそこに座れ」
「はい? 判りました」
二人は道端に転がっていた木製の樽の上に座った。ホクトはぼんやりと空を見上げながら煙草をふかし、シェルシはそれを見習って空を見上げた。
この世界の月は、決して遠い場所にあるわけではない。この虚無の海に浮かぶ世界の周りをぐるぐると、文字通り回っているのだ。淡く光を放つその存在に思いを馳せる。いつだったか、誰かと共に見つめたその世界を……。
「正直俺は、今まで何となく成り行きで戦ってきた。自分自身が何なのかも今のところわからねえしな」
「では、成り行きで帝国と……?」
「まあ……そういう事になる。とりあえずなんかやってりゃ答えは見つかると信じてたし、今もそう信じてる。立ち止まっているよりは千倍マシだし……それに、じっとしてるのは性に合わないからな」
何となく、その場その場で自分の気持ちに正直に対応してきた。困っている女の子は助けてきたし、期待されれば応えてきた。だがそれで本当に前進できているのか――それはホクトには判断しようがないのだ。これからもこれからも、彼は虚無の記憶の中を生きていく。自分でありながら他人であるの身体と意識で、生きていくしかない。そうする他にないのだ。
「わかったろ? お前にはお前のやるべき事があり、そしてそれは幸せな事なんだよ」
「…………。ホクト……いえ、師匠。師匠はこれからどうするつもりですか?」
「うむ、それはこれから考える。基本考えなしだからな。天運にすべて任せるってのも中々楽しい」
「言っている事が矛盾しているような気がしますが……。でも、私はそれでいいと思います」
樽から飛び降り、シェルシは背後で手を組んで振り返った。そうして優しく微笑み。ホクトへと手を差し伸べた。開かれた手が男を誘うように導き、ホクトはそれに手を伸ばす。
「きっと本当に正しい事なんてこの世界にはないんです。その時その時、出来る事を信じていくしかないんですよね?」
「……かもな。よし、そんな弟子にはこいつをプレゼントしてやろう」
ホクトがシャツの中に手を突っ込み、引っ張り出したのは首から提げられたパズルだった。記憶喪失になったホクトがずっと持ち歩いてきたお守り――。それをシェルシの手の中に落としてみせる。
「これは……?」
「俺の幸運のお守りって所か。パズルになってるんだが、いくらやっても俺にゃ解けなかった。お前は頭良さそうだし、頑張れば何とかなるんじゃないか?」
手の中でそれを何度か回転させ、シェルシは眉を潜めた。一見しただけで直ぐにわかる難易度に思わず唸ってしまう。そんなシェルシの様子に満足したのか、ホクトは笑いながらシェルシの肩を叩いた。
「ま、精進したまえよ。はっはっは!」
「…………むー。師匠、それより稽古をつけてください」
「いや、なにもこんな時にやらんでもいいだろ……」
「こんな時だからこそ、です」
シェルシの目に、崩れたローティスの街はどのように映ったのだろうか? 姫はずっと誰かの言いなりになって生きてきた。帝国に尽くす人生を生きてきた。だが、時々思うのだ。それはふと、まるで運命の悪戯にように訪れる。こうやって誰かが悲しんでいる世界……それは本当に正しいのだろうか?
何をするにも力は必要になる。何かを変えたいと願うのならば。何かを護りたいと願うのならば。その力の使い道はまだ判らない。それでもシェルシは求めた。何かを変える、何かを護る、そんな力を。
「師匠は――どうして今、本当の事を話したんですか?」
ホクトが取り出した魔剣の一つをシェルシに投げ渡す。姫はそれを握り締め、構えを取りながら問いかけた。ホクトは剣を片手に首をかしげる。理由はきっと彼にも判らない。でも――。
「話したくなったんだ。いや……離したくなくなったのかもな」
「え?」
「ほれ、さっさとかかって来い。前回のおさらいからだ。行くぞ、メイドプリンセス!」
「メイドじゃ――ありませんっ!!」
走り出したシェルシが振り下ろした刃がホクトの刃とぶつかり音を鳴らす。真剣な表情で取り組むシェルシを見つめ、ホクトは何故か楽しい気持ちになっていた。
とりあえず、これからどうなっていくのかは判らない。それでも恐らくきっと、自分の成すべき事は変わらないのだろう。すってんころりんと転んでみせるシェルシに手を伸ばし、助け起す。それが今の自分の――。ヴァン・ノーレッジの。北条北斗の役割だとでも言うかのように。当たり前に、優しく――。
「…………ねえ、師匠」
姫は寂しげに微笑み、その手を握り締めて立ち上がった。そうして目を閉じ、間をおいて紡ぐ。
「貴方はきっと……本当の事を話して、それで正しかったのだと思います。だから……悲しまないで下さいね」
「…………。俺のどこが悲しんでいるように見えるんだ? 生意気言うのは俺にボコボコにされなくなってからだ」
「ふふふ……。じゃあ、メイドプリンセスの本気を見せてあげましょう」
「望むところだ!」
再びシェルシが剣を放つ。血を吸い、命を吸い、死を刻む力――。今だけはそれがまるで児戯の如く、軽やかに楽しげに刃音を立てていた――。
~はじけろ! ロクエンティア劇場~
*リクエストされたら基本的になんでもやっちゃうけどさ……*
ホクト「……皇帝のアレ」
シェルシ「びくっ!?」
ホクト「皇帝の大きさ的に考えて……」
シェルシ「がくぷるがくぷる……」
ホクト「いやあ~、でかいよなあ~っ! あんなのやられたら俺だって流石に一発でいっちゃうぜ」
シェルシ「えぇええええええええっ!?」
ホクト「すごいよなあ、皇帝の剣」
シェルシ「………………ぽかーん」
ホクト「どうした? 何を想像してたんだ? ん?」
シェルシ「い、いえ……なんでもないです……」
ホクト「ダメだぞ~やらしいことを想像しちゃ~! 仮にもお姫様なんだからな!」
シェルシ「や、やらしいことなんて考えてませんっ!! 考えてませんーっ!!」
ホクト「そうなのか? じゃあお前皇帝のアレどう思うよ?」
シェルシ「うーん……。凄く大きいと思います。そもそも私、皇帝の上に乗れるくらいですから……その皇帝の剣ですから、もうものすごいですよ。近くで見たらうわぁ~って感じでしたね」
ホクト「ほうほう」
シェルシ「それにホクトと皇帝が並んだ時思ったんですけど、ホクトのより何倍も大きいんですよ。ホクトのアレもかなり大きくて黒いと思うんですけど、皇帝のはその数倍のサイズでぴかぴかでしたからね」
ホクト「…………」
シェルシ「私実は、昔から大きいアレってかっこいいなあって思ってて……。イスルギのも大きいんですよ、すごく。前に触らせてもらったんですけど、がちがちで――初めて触ったからちょっとドキドキしちゃいました」
ホクト「…………」
ミュレイ「ん? 部屋の中で二人は何の話をしておるのじゃ?」
アクティ「さ、さあ……」
ウサク「は、鼻血が……っ」
(後日談)
ホクト「なあメリーベル、俺の魔剣もっとでかくなんねえかな……」
メリーベル「なんで……?」
ホクト「なんか、皇帝に負けた気がするから――」
メリーベル「は?」