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Stella(2)

「ろくでもない邪魔が入ったが、これで漸く腰を落ち着けて話が出来る……。そうだろう、ミュレイ?」


 ザルヴァトーレ本陣に乗り込んだ私達の前で繰り広げられた、わけのわからない戦い……。その全てに私は疑問しか抱かなかったけれども、同時にその全てに意味があったのだ。

 そんな大切な事に気づくのはずっと後の事で、私は二つの事だけを考えていた。襲い掛かってきた黒甲冑の騎士、通称“魔剣狩り”――ヴァン・ノーレッジ。はっきりとこの目で見たわけではないし、ヴァンはなんだか機械的なバイザーを装備していて、顔をちゃんと見る事も出来なかった。しかし、彼はどこかで見た事があるような、そんな気がしたのである。

 記憶の混乱が収まりつつあるような、更に混乱が加速しているような、どっちともいえない気持ちだった。頭の中、彼が私の前に現れたような、そんなイメージが浮かび上がる。何故だろう、決して嫌なイメージではなかった。

 ラクヨウ城に連行されたヴァンの事も気になったが、そのヴァンを唐突に現れて理不尽に倒してしまった白い少女、ステラ……。なんだか良く判らないけど、ロボットアーマーみたいなものを装備して突然ヴァンを伸してしまった。そしてまた直ぐに消える……。一体何がどうなっているのか。

 あの子も、確かに一度会った事がある。これら全て何かの偶然なのだろうか……? 考え込んでしまうのも仕方の無い事だったが、今はそんな状況でもない。ミュレイとシルヴィアは向かい合い、互いに視線をぶつけ合っていた。決して険悪なムードではなく……いや、むしろ二人の間には友好的な空気さえ感じ取れる。

 玉座の階段に座ったままのシルヴィア王と、腕を組んでそれを見上げるミュレイ。ミュレイ曰く、“シルヴィアと煙は高い所が好き”だそうで、彼女はいつも高い所に居たがるらしい。しかしこれだけみているとミュレイが子供の姿なので、なんともいえない状況だ。


「全く、本気でお主が攻め入ってくるのではないかと冷や冷やしたぞ……」


「フッ、別段それでも構わないが……。私はいつでも戦争をする準備があるからな」


「そういう事を言っていると、またステラが来る事になるぞ?」


「…………。“神の使徒”気取りの機械人形か。あんなもの、我が剣で叩き斬ってやるさ」


 噂に違わずシルヴィア王はアクティブな王様だった。なんだか話の趣旨がずれてきている気がするが、ミュレイはその猪突猛進なシルヴィアを上手くコントロールして話を前に進めている。


「しかし、お主らしくもないのう。こんなに急ごしらえの軍隊を展開してくるとは」


「当然だ。最初から戦争などする積りはないからな。だが――――」


 そこでシルヴィアは一旦言葉を詰まらせた。表情の曇りは直ぐに払われ、王は指先で自らの膝の上を叩きながら、静かに目を細めた。


「……敵は何もククラカンだけではないのだ。貴様とて同じ事だろう」


 私にはその意味はさっぱりだったが、ミュレイは意味が判ったらしい。眉を潜め、なにやら気難しそうな顔をしている。さて、私が馬鹿なのか、それともこの二人が阿吽の呼吸なのか……。


「成る程……。であれば、この騎士団の展開も納得じゃな。お主も中々に苦労していると見える」


「単身、出かける事もままならぬのだ。ふん、下らぬ時勢になったものだ……。時にミュレイ、貴様には質問したい事がある」


「わらわもじゃ」


「貴様……うちの馬鹿姫を拉致したか?」


「お主こそ、わらわを暗殺しようとしておるのか?」


 二人は同時に睨みあう。流石にこれは険悪かと思いきや。ウサクはニヤニヤしているし、ゲオルクも何故か呆れたように目を閉じて黙っている。なんというか、さっきシルヴィアの戦闘力は見たけれどこのままほっといたら危ないのでは……。

 しかしそんな私の懸念は杞憂に終わった。二人は同時に疲れたように溜息を漏らし、それからシルヴィアは紅いマントをはためかせ立ち上がった。


「となれば、誰がこんな事を仕組んだのか……徹底的に洗わねばならんな」


「じゃのう……。まあ、大方誰の仕業かは検討もつくが……」


「真実さえ判ればもうここに用はない。ザルヴァトーレ軍は撤収する。お互い、健闘を祈る」


「うむ。わらわも出来る事はやってみよう。シルヴィア、手間をかけたな」


「気にするな。私と貴様はライバル……そして、生涯の友だからな」


 シルヴィア王はそのままスタスタと歩いて去っていってしまった。シルヴィアが居なくなると同時に本陣撤収の準備が開始され、私達はミュレイに駆け寄った。


「えっと、何がどうなったの?」


「…………。どうやら、女王であるあやつは今回の件に関与していないようじゃな」


「今回の件って、ミュレイの暗殺……? でもザルヴァトーレの刺客だったんじゃないの?」


「確かに、シルヴィアは気性が荒く考え無しの鉄砲玉で、王にしておくより騎士団にでも入れておいた方がまだマシというくらいの荒っぽい女じゃ。しかし一本筋の通った、えらく気持ちのいいやつなのじゃよ。暗殺するくらいなら、自分で殺しに来るじゃろう」


 それはつまり、ミュレイ暗殺はシルヴィアが計画したものではない……。つまり、ザルヴァトーレは関与していない、という事になるのだろうか? でもミュレイだって姫の拉致なんて仕組んでいないというし、じゃあ何がどうなっているのか……。

 話についていけないのはどうやら私だけらしく、ゲオルクはウサクと兵を数名残して本陣に戻ってしまった。なんでも撤収やらなにやらやる事があるらしい。ミュレイは考え事をしているのか、近くにあった岩の上にちょこんと座り、夜空を見上げていた。なお、この間も周囲ではザルヴァトーレ軍の撤収が続いている……。


「私はこの状況についていけなくなりつつあるんだけど……。ミュレイ、これからどうするの?」


「うーむ……。今ちょっと考え中じゃ。どうしたもんかのう……」


 考え込みながら足をばたばたさせているミュレイ。その隣に立ち、暇だったので私はあちこちへと視線をめぐらせていた。すると、こちらに向かって走ってくる二つの人影が。

 片方はもう見慣れてしまったザルヴァトーレの甲冑を装備し、もう一人は白いドレスを身にまとっている。ドレスのデザインと顔つき、綺麗な金髪で私でも直ぐにわかった。あれは――。


「って、マジで!? ミュレイ、あれ!」


 振り返ったミュレイは驚き、岩の上から飛び降りた。こちらに駆け寄ってきた少女は肩で息をし、白い肌に汗を浮かべながらミュレイをじっと見つめた。傍らの騎士は何も言わず、自らの主の言葉を待っている。


「失礼……! シルヴィア王は何処へ!?」


「シルヴィアならついさっきこの本陣から撤退したぞ、シェルシ」


「…………え? どうして、私の名前を……?」


「わらわじゃわらわ。ほれ、よく見てみよこの顔」


 シェルシ・ルナリア・ザルヴァトーレ……。行方不明になっていた、ククラカンに拉致されたと言われていたザルヴァトーレの第三王女だ。近くで見ると、シルヴィアによく似ている……。シルヴィアよりもかなり華奢で儚い印象だが、女の子ならこのくらいで別に丁度いいのだろう。むしろ、お姫様って普通こういうもんだ。大剣とか振り回したりしない。

 姫はミュレイに近づき、その顔をじっと覗き込んだ。それから暫く考え込み――慌てて一歩身を引く。どうやら誰だか判ったらしくミュレイは満足げに腕を組み頷いた。


「久しいの、シェルシ」


「ミュレイ、ヨシノ……!? どうして貴方が、ここに……!?」


「待て、少し落ち着け。単刀直入に言うが、お主を拉致したのはわらわではない」


「え? ど、どういう事なんですか……?」


 シルヴィアはともかく、実際に誘拐されたシェルシまでもがククラカンに誘拐されたのだと思っていたらしく、こうなってくると話はかなりややこしい。シェルシがそう判断するには必ず理由があったはずだ。そこでミュレイはシェルシを引きとめ、話を聞くことにした。

 彼女が拉致されたのは一ヶ月ほど前の事で、ザルヴァトーレにある城の中で拉致されたのだという。そのまま国外に連れ出されそうになっている時、この傍にいるイスルギという騎士が助けたそうなのだ。

 その後、彼女がどこでどうしていたのかは特にミュレイは言及しなかったが、結果として彼女は無事にこうして戻ってきた。そして今国境沿いで大変な事になっていると聞いてあわてて駆けつけた、ということらしい。


「そうじゃったか……。難儀じゃったのう」


「ミュレイ様、これは一体……」


「判らぬが、兎に角その話をシルヴィアにも聞かせてやってほしい。今ならまだ追いつけるはずじゃ」


「は、はいっ! それでは失礼します、ミュレイ様! 詳しい話は後日、正式な会議の場で……!」


 シェルシはぺこりと頭を下げ、走り去っていく。流石に周囲のザルヴァトーレ兵が気づいているのか、彼女をさりげなく護衛するような動きが見られた。ふと、残された彼女の騎士はミュレイを見下ろしていた。黒髪の、物静かな雰囲気の男性だった。

 ミュレイはおもむろに溜息を漏らし、それから騎士に歩み寄る。二人は二言三言交わし、騎士は主を追って走り始めた。二人が何を言っていたのかはわからないが、ミュレイの横顔は何故かとても寂しそうだった。

 首をかしげる私の肩をウサクが叩き、首を横に振った。どうも、色々と訳アリらしい……。何はともあれそんな感じで、今回の一件は無事に完了したのである。両軍の撤退を以って、戦争の危機――ミュレイとシルヴィアにそんなつもりはなかったらしいが――は去ったのである。

 そして、私達は一度ラクヨウ城に戻る事になり、再び束の間の休息が訪れようとしていた――。




Stella(2)




 ラクヨウに戻ってきた私達は、そのまま城に暫く滞在する事になった。まだ数週間しか離れていなかったラクヨウだったのだが、久しぶりに平和な街を見て私は思いっきり懐かしくなってしまい、なんだか泣きそうになってしまった。

 まあ、言うまでも無く私は結構涙脆い……。ちょっとしたことで泣きたくなるし、ちょっと嬉しいと泣きたくなるのだ。でも考えてみれば当たり前だ。ここに来てから色々ありすぎてずっと緊張の連続、やっとほっと一息つけたのだから……。

 さて、その後例の戦争騒動はきっちり決着し、数日後にきちんとした二国会議は開かれる事となった。今後の予定はそれから決めるという事になり、私も必然それまでは待機という形になる。

 一体全体何がどうなってあんなことになってしまったのか、正直私には謎だ。シルヴィア王は確かに悪い人には見えなかったし……シェルシ姫もものすんごく可愛い女の子だった。あれくらい可愛ければ人生楽しいんだろうな……というくらい可愛かった。そして、別に腹黒そうにも見えなかったし嘘もついているようには見えなかった。

 じゃあそれこそもうなんだったんだって話になるのだが、話を聞いているとやっぱりシェルシを襲ったのはどうもククラカンの人間らしいのだ。ククラカンの忍隊が装備している唐傘や合羽が見つかったとかで、身のこなしも明らかにククラカンの忍隊だったらしい。というのは、イスルギという彼女の騎士の話なのだが、それをミュレイは丸々信じているようだ。

 何を信じて何を疑えばいいのかわからないが、こっちだって敵はザルヴァトーレの甲冑を装備した騎士だったっていう確かな情報がある。やはり信じるべきは自分なのか、それともあの少女の真っ直ぐな目を信じるべきなのか……。


「おい、もっと集中しろ」


「へ? あぃったっ!?」


 気づいた時には既に遅し……。ゲオルクの放った竹刀の一撃が私の頭を直撃していた。激痛に膝を着き、もがく私……。そう、私は現在絶賛修行中だったのである。

 時間があるのならば修行、というのは既に私の日課になりつつあった。ゲオルクは嫌な顔一つせずそんな私に毎日付き合ってくれる。いや、いつも嫌そうな顔してるから判らないだけなのかもしれないが……。

 ラクヨウ城内にある修練城でこうして稽古をつけてもらうのはもう何度目かもわからない。それが生活の一部になってから、数を数える事は無くなったからだ。頭を撫でながら立ち上がり、私はゲオルクを見上げた。


「そんなに思いっきり叩かないでよ……」


「訓練中にボーっとしているからだ、阿呆……。もっとシャキっとしろ、シャキっと」


 そんな事を言われても、私はシャキっとした女の子とはほど遠いわけだが……。


「余計な雑念は捨てろと毎日言っているだろう。ちゃんと人の話は聞け」


「それは聞いてるけど……。ねえ、ゲオルク? 私達、これでよかったのかな?」


「……なんだ、偉く唐突だな。どうした?」


「いや……うん、そうだね。唐突だった」


 気を取り直し、竹刀を構える。今度は集中を高め、ゲオルクの動きに対応しなければならない。私は思い切りゲオルクへと踏み込んだのだが――集中していてもやはりまだ天と地ほどの実力差がある。一生それが縮まる事はないような気がしたが、兎に角どっちみちゲオルクの竹刀は私の頭をぶっ叩くのであった……。

 まるで勝てる気がしないので、私は基礎訓練をするふりをして考え事をする事にした。ゲオルクは他の仕事もあるので、一日の中で修行に付き合ってくれる時間は限られている。残った時間は大体一人でトレーニングというのが私の常である。ウサクも最近忙しいのか、ミュレイにつきっきりだし、ミュレイはミュレイで不在時の仕事やら、今後の方針の決定やらで忙殺されているらしい。冷静に考えてみたらミュレイはいつも元々忙しそうだったし、あんなにのびのび旅なんかしてたのが不思議なくらいだ。

 こうなってくると折角仲間になれたと思った皆とも離れ離れになり、仕事が無い私は余計訓練に専念するしかなかった。城下町をランニングで一周し、城内に戻って筋力トレーニングを続ける。あんまりムキムキにはなりたくなかったが、心配せずともムキムキにはなれそうもなかった……。

 手ぬぐいで汗を拭き、結んだ髪を解く。なんだか長髪はめんどくさいので止めたいのだが、この街に髪の毛が切れる人間っているのだろうか……。今度駄目もとでミュレイに頼んでみようか。彼女何でも出来そうだし……。

 というか、なんかこの修練場にいると、他の武士たちからの視線が痛い……。武士の中に女性が全く居ないのは、ククラカンでは男が戦うのが当たり前であり、女は家にいるもの……という風習があるかららしい。そんな女である私がここにいるのが気に入らないのか、それとも他の要因があるのか……。まあ、屈強な男達に囲まれているのはあんまりいい気分じゃない。

 修練場から抜け出し、井戸から水を汲んで桶に頭を突っ込む。ああ、気持ちいい……。ていうかなんでこの国の水はこんなに綺麗なんだろうか。私の世界の水道水とは余りにも違いすぎる……。


「何をしているんだい、君? それは君の世界の風習か何か?」


「ぶはあっ!?」


 背後から突然声をかけられ、慌てて桶の中から復帰する。背後には何故か、タケル王子が立っていた。何でタケル王子……? ミュレイと同じく忙しすぎるはずの彼が、なんでこんなところでフラフラしているんだろうか。


「……こんにちは、王子」


「タケルでいいよ、救世主」


「えーと、どうしてこんな所に?」


「最近、修練城に女の子がいるっていうんでうわさになってるからね。様子を見に来たのさ。君、居づらくないのあそこ? みんなじろじろ君の身体、見てるでしょ?」


 言っている意味がわからなかった。首をかしげていると、タケルは口元に手を当てて無邪気に笑う。こうしていると本当にただの美少年なのだが……口が悪くなければなあ……。


「それって面白半分でふらついてるって事か?」


「そうなるね。まあ、いいのさ。仕事は姉上がやったほうが僕の何倍も捗るんだ。それより気になる事もあってね」


 彼は周囲をきょろきょろと見渡し、人が居ないのを確認すると私の手首を握り、ぐっと身を寄せてきた。あんまり人と距離を近づけることの無い私からしてみると、それだけでもうびっくりしてしまうわけだが……。それでは飽き足らず、彼は私の耳元に顔を寄せてきた。


「……今、この城には魔剣狩りが収容されているのは知っているかい?」


「え? それは、うん……まあ」


 この間の一件でステラにぶちのめされた魔剣狩りは完全にノックダウンされ、血を吐いて白目剥いて気絶してたような気がする……。そのままこの城に監禁されているというのは話だけは聞いているけれども、あんな物騒なのがいるわりには城が平和なので特に気にしていなかった。


「魔剣狩りは、地下牢にいるんだ」


「そうなんだ」


「それで、君が彼に会いたいかと思ってね」


「…………ふーん……って、何で?」


「色々と、あるだろう? 僕が一緒に行って上げるから、彼と話をしてみるといい。面白い事が判るかも知れないよ」


 怪しすぎる……。ここまで露骨にうさんくさい笑顔というものは私も始めてみたわけだが……。まあ、確かに魔剣狩りには興味があった。彼はどうやらミュレイの過去を知っているみたいだったし、それに魔剣狩りにあってもう一度ちゃんと顔を見れば、忘れて居る事を何か思い出すかもしれない。

 確かに提案としてはとても魅力的だ。普通に素直についていってもいいのだが、そうできずに踏みとどまる理由は単に彼のうさんくささにある。なんで王子がここに? 何で私に? 何で一緒に? 疑問は尽きない。しかしそんな私の心境を察するように、彼はにこりと微笑んだ。


「僕も、彼には色々訊きたい事もあるんだ。だから、ついでだよ」


「…………ついで」


「それに、姉上に見つかったら怒られるから今しかチャンスがないんだよ。ふふ、ちょっとわくわくしないかい?」


 こいつ……。まあ確かに子供なのだが、そんな下らないことでニコニコしているのか……。まあ、特に悪意無く子供の悪戯に付き合えというのであれば逆にしっくりくる。私だって小さい頃は特に何か意味がなくとも、ワクワクするような事には何でもチャレンジしていたものだ。

 怒られると判っているのに、兄さんのお菓子を食べてみたり……。兄さんの玩具を隠してみたり……。兄さんのおねしょをバラしてみたり……。兄さんが入ったトイレの鍵をかけてみたり……。


「……。何やってたんだ、私は」


「何がだい?」


「いや、なんでもない……。えーと、地下牢だっけ? 別に暇だから、付き合ってもいいけど」


「本当? 良かった、一人じゃ少し心細かったんだ。ありがとう、昴」


 そう言って彼は私の手をぎゅっと握り締め、にこりと微笑んだ。天使のような無垢な笑顔……のはずなのになんでこんなに胡散臭いんだろう。まあ、頼りにされるのは実はそんなに嫌いではない。最近はお荷物になってばっかりだったしね。


「地下牢の鍵は持ってきたから、このまま直ぐに向かおう。さあ、急ぐよ昴」


「あ、うん……? え? 手を繋いだままいくの……?」


 仕方が無く、私は彼に続いて歩き始めた。そうして地下牢に潜入する事になったわけだが……。まさか地下牢であんな大変な事になろうとは、まだその時の私は何も知らなかったのである……。

~はじけろ! ロクエンティア劇場~


*昴ちゃんは眼鏡っ子*


シェルシ「やっと出番がありました! ちょっとだけでしたけど……」


ミュレイ「まあ、そんなに落ち込む事も無い。これからお主の時代が来る……かもしれぬし」


シェルシ「…………」


ミュレイ「時に昴、お主は眼鏡っ子なわけじゃが」


昴「えっ!? ミュレイ、急にどうしたの……」


ミュレイ「いや、お主が眼鏡つけたり外したりする描写がないなーと思ってのう」


昴「そりゃ、眼鏡は頻繁に着け外しするもんじゃないでしょ。基本的には一日中かけてるもんだよ」


ミュレイ「まあそれもそうなんじゃが、修行中とかほれ今回あった桶に顔ドボンとか、眼鏡かけてたら大変じゃろう?」


昴「そりゃ大変だよ……。修行中は眼鏡外してるからね。あとお風呂の時とか……当たり前だけど」


ミュレイ「そんな状態で修行が出来るのか……?」


昴「メリーベルにコンタクトレンズも作ってもらったし、眼鏡も修理してもらったからね。それに両方ともなんか凄く頑丈になったみたい」


シェルシ「……。うう、私だけまだメリーベルに会ってないです……」


昴「…………」


ミュレイ「…………。ホクト編でも出てきてるのにの」


シェルシ「うわーん!! メインヒロインになりたいですーっ!!」


昴「今のところうさ子か、まあ百歩譲ってアクティだよね」


シェルシ「………………。私はどうして生まれてきたんでしょうか」


ミュレイ「ま、まあそんなに落ち込むな! 昴編メンバーなんか全体的に出番少ないんじゃからな!」


昴「私は別に、出番なくてもいいけど」


シェルシ「主人公の余裕ですか、それはっ!?」


ミュレイ「(とか言ってると、アンケートの時に主人公は人気なかったりするわけじゃが……)」

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