10 ラブラブすぎる二人
「やりましたねフェルス様! わたし、フェルス様が合格するって信じてました」
「……そうはしゃぐなマリア。まだ真昼だ。見られているだろう」
「だってだって、フェルス様の夢が叶うんですよ? 妻として、そして『岩の貴公子』様の一番のファンとして! これ以上に嬉しいことがあるでしょうか。いや、ないっ!」
困り顔でこちらを見下ろすフェルス様の前で、わたしは大興奮していた。
なんと、この度フェルス・クレーデ公爵令息改め我が夫、フェルス・ホットン男爵が騎士団に入団することになったのだ。
あの事件によって一度は騎士になることを諦めたフェルス様だったが、わたしと共に訓練するうちにまた騎士の道を歩みたいと言い出した。もちろんわたしは喜んでそれを全力で応援し、『岩の貴公子』様がどれほど素晴らしい人であるかをめいっぱいにアピールして周囲からの評判を上げてから、彼を騎士団編入試験に挑ませたのである。
彼の実力は半端ではなかったらしい。すぐに彼は騎士団に入団することを認められ、まずは見習い騎士から始めることになったのだという。つまり彼の念願が叶ったのだ。
それを本人より大喜びするわたしに、フェルス様が言う。
「俺が騎士団に入ったら領地はマリアに任せることになるが……それでもいいか?」
「はい、もちろんです。フェルス様と一緒にいられる時間が少なくなるのはちょっと寂しいですけど、でも、フェルス様の分わたしが頑張ります! だから夜は……存分に甘やかしてくれてもいいですよ?」
「……わかった。留意しておく」
わたしがフェルス様の太く逞しい腕にチュッと軽くキスをすると、彼が赤面していくのがわかる。
意外と可愛い一面があるところがまた素敵で、わたしは何度目になるか惚れ直してしまう。それから数度に渡ってキス攻めを繰り返すと、静かに身を預けた。
騎士になったフェルス様を想像すると胸が躍る。
わたしの時のように、またたくさんの人々を救って彼らの希望になってほしい。そしてまた皆から認められていくのだ。
「でも、一番の座は譲りません。だってわたしはフェルス様の妻ですもの」
「何か言ったか?」
「いいえ。ただ、フェルス様がかっこいいなぁって。そう思ったんです」
そう言ってわたしはにっこりと笑い、また彼へキスを送る。
真昼の日差しが降り注ぐ中で思い切りイチャつくわたしたちを、周囲の騎士の卵たちがジロジロ見ていることには微塵も気づいていないのだった。
〜完〜
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