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プロローグ

 俺は普通の高校生だ。スペックは普通だし、頭が良くて運動ができるわけでもない。それでも、それなりに楽しく生活している。

 今日は、お気に入りの漫画の最新刊が出たから、近くの書店に向かっていた。今はその帰りだ。

 まさか、主人公が神の生まれ変わりで、実は最強でした!なんて、あの時はびっくりしたな。

 前巻の話を思い出しながら帰っていたその時だった。


 「危なぁぁあい!!!」


 声に反応して後ろを振り向くと、横断歩道の上で少女が転んでいた。しかもそこには、トラックが走ってきている。トラックの運転手は、少女には気付いていない。

 そこまで理解した時、俺の体は勝手に動いていた。


 「キキィィィ!ドーン!!」


 俺は、少女を助けるために横断歩道に飛び出した。そして轢かれた。


 「お兄ちゃん!」


 少女が泣きながら俺の事を呼んだ。しかし、俺にはもう喋る気力も残っていなかった。


 「お兄ちゃん、ごめんなさい!私のせいでお兄ちゃんが轢かれちゃった・・・」


 そこまで言うと、少女は泣き出した。近くの大人が必死に俺に呼びかけたり、救急車を呼んだりしているが、俺には何故か他人事のように感じられた。

 ああ、俺は死ぬのか。

 そう思うと、虚しくて仕方がなかった。もっと親孝行していれば良かった。せめて、漫画の最新刊だけは読みたかった。

 そんな思いが、心の底から溢れ出てきた。しかし、俺はもう死ぬんだ。

 そんな事を思っていると知ってか知らずか、少女が必死に呼びかけてきている。最後になにか言ってあげるか。


 「こら、泣いてばかり、いるんじゃ、ないよ・・・。君は、なにも、悪いことは、していないから、泣きやんで・・・」


 「でも、私のせいでお兄ちゃんが死ぬことになっちゃうんでしょ!?そんなのだ、グスッ駄目だよ!?」


 なんか、すごくいい子だな。なんか、罪悪感を感じたられたままだと、こっちもいい気はしないよな。


 「お兄ちゃんは、何にも、君の事を、責めてないよ・・・君が、悲しいままだと、お兄ちゃんも、あの世で、悲しくなっちゃう・・・この事故は、だーれも悪くないんだよ・・・だから、これからも、笑顔で、お兄ちゃんの分まで、幸せに、生きてね・・・」


 「お兄ちゃん・・・わかったよ、お兄ちゃんがそう言うなら、私はこれからもずっーと笑顔でお兄ちゃんの分まで精一杯生きるね!」


 良かった良かった。これで安心して死ねるな、ってあれ?少女がなんかしてる。何してるんだ?


 「お兄ちゃん、お母さんが言ってたんだけど、人が死んじゃう時には、『冥土の土産』っていうものを渡すといいらしいの。だから、これをお兄ちゃんにあげる!はいどうぞ!」


 そう言って渡してきたのは、イモムシだった。

 うぉーい!ちょっとまてやコラァァァー!イモムシって、舐めとんのかワレェェエー!

 そんなことを思いながらも、俺は少女の眩しいほどの笑顔と、イモムシを目にしたのを最後に息絶えた。

 しかし、この時の俺はまだ知らなかった。この『冥土の土産』というものの恐ろしさを・・・



*************************

*************************



 あたり一面真っ暗。そんなところに俺はいた。

 あれ、ここはどこだ?ていうか、なんでこんなところに俺はいるんだ?

 今までの経緯を思い出そう。確か、轢かれそうになっていた子を助けようとして、、死んだんだっけか?じゃあ、ここはあの世的な感じ?

 よく分からんけど、とりあえず動くか。よいしょっと。


 「パキパキパキッ」


 は?え、ちょ何!?

 俺が起き上がる時に、体になにかが触れた。そして、俺はそれを突破った。パキパキという音を出しながら。

 ん?んんんんん?????えー!?!?!?

 よーく見たら、それは卵の殻だった。ということは、、恐る恐る自分の身体を確認してみる。イモムシだった。どうやら俺はイモムシに転生してしまったらしい。

 わいいずざっと!?なーんで俺イモムシになっちゃってんのー!?こんなのありえーん!!!!うおぉぉあぁぁぁぁああー!!!!!!!

 とりあえずすっごい叫んだ、つもりだった。つもりだったというのは、実際全く声が出てなかったからだ。無慈悲でやんす。

 しどい!人助けをして命を落としたのにも関わらず、転生したらイモムシでしたー!なんて酷すぎやしませんかねー!?!?

 てか、なんでイモムシなんだよ!もっと他にもあるだ・・・待てよ?一つだけ心当たりが無きにしも非ずだぞ?でも、まさかね。ま、ま、まさか助けたあの子が最後に冥土の土産としてイモムシくれたから、俺もイモムシになった的な・・・?

 絶対そうやん!逆にそれ以外理由がないですやん!恨むぞー、恨むぞ少女よー。夢に化けてやる。

 とりあえず、考えるのは後にしよう。ここがどこなのかだけ確認したい。でも、暗くて何にも見えないんだよな。見えるのは、足の下の葉っぱだけ。

 日本だといいんだけどなー、まさかの異世界だったりして。

 そんな事を思いながら、よーく目を凝らしていた時にそれは起こった。


 【ミッション『暗闇ヲ見ル者』を達成しました。報酬として、スキル《暗視》が配布されました。】


 【スキル《暗視》を、入手しました。】


 うん、何となく知ってたよ。これってあれだよね。最近流行りのあれだよね。あれだとしたらここは地球じゃないんだな、きっと。空から声聞こえちゃったもんな。地球じゃそんな事ありえないよな。

 どうやら認めなければならないらしい。俺は異世界転生をしてしまったようだ、しかもイモムシになって。

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