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巨木の村

 数あるツリーハウスの中でも、村の中で最も幹の太い巨木に作られたツリーハウスに案内された。

森の中を進んでいる時以上に、木の香りというのだろうか。洞窟やマグマには感じられない清々しさが感じられる。洞窟も涼しいし、マグマも暖かいのでそれはそれで良いのだが。


 アイル本人?は気づいていないが常に雲が見下ろせる標高何千メートルの山頂付近の洞窟が涼しいで済むわけがないし、マグマなんて常人は近づくことも困難な熱量だ。これも空の民のドラゴンの耐性が成せるものである。


『素敵な空間ですね。それにとても広い。』

「ええ。この建物はこの巨木に棲まう木の精霊と契約して幹の一部をくり抜き貸してもらっているのです。ここは森の神が来られた時に住処としてもらうらしいですよ。村中のエルフが集ってもまだまだスペースが余るほどです。普段は村の長が会議をしたり、客人を招く宴の際に使われます。」


 巫女のメイサーに案内され、広い空間の奥にあったもう一つの部屋に通される。

そこには三人の森人が座っていた。メイサーと私の後ろに控えていたアイサーも空席となっている場所に座る。


 普段はこの五名で村についての話し合いを行なっているようだ。


「ご客人。よくぞいらしてくれました。そして、我が村のエルフの窮地を救っていただき心からの感謝を。」


 最奥に座る森人の女性が気持ちの良い姿勢から両手を拳にし床につけ頭を下げた。それに連なり、他の四名も同じような所作で頭を下げる。

これが森人の感謝の表現力らしい。美しい佇まいだ。私も今後の参考にしよう。


「わたしはサラ村の長を務めております、サラ・サークラと申します。そして、こちらは秩序の番をしているシールスと叡智の番をしているリンシーです。」

「お客人、よろしゅう」

「よろしくお願い致します。」


 シールスは少し顔にシワがあるが、他は皆同じような容姿をしていた。村の長はサークラ様と言う女性の森人のようだ。


『えっと、私のことはアイルとお呼びください。よろしく。』


 古くから生きているドラゴンと言えども地位は何もないので長に対して敬意を払うべきだな。


「木の精霊を伝い、メイサーから話を伺いました。本来、大勢で群れることのないフォレストタイガーから命を救っていただいたとのことで。いま感謝と歓迎の宴を準備させております。メイサー、準備が整うまで村の案内と今夜泊まるところを準備してください。」

「サークラ様、かしこまりました」

「アイサーは報告を。アイル様、ではまた後ほど宴の際にお話を伺わせてください。」

「アイル様、ご案内します。」


 メイサーは立ち上がり、出口へと案内した。


 巨木の大広間から外に出ると、村全体が見渡せる。

他の巨木には様々な形で居住地が作られている、中には木の上ではなく木の根を利用した住処もあるようだ。


「アイル様、外から初めてエルフの村に訪れた方は皆同じように驚かれるのですよ。私たちエルフは住処となる巨木も含め森の手入れをする、巨木に憑いている精霊は住処を貸し与える。エルフと精霊は、お互いが共存しているのです。」

『なんというか、美しいですね』


 メイサーは自分が褒められたかのように、耳を赤らめ両手で口を隠し喜んでいた。


「では先に、アイル様の泊まる場所へご案内します。木よ。」


 平静を装っているのだろうが、まだ嬉しいのか耳がピクピク動いている。

メイサーが呼びかけると木に絡まっていた蔓が動きだし、差し出すように大きな葉が足元に現れた。


「アイル様、此方へどうぞ。村の巨木には、至る所に蔓と葉があり精霊が手を貸してくれるのです。」


 メイサーと共に大きな葉に乗ると、蔓は乗っている葉と共に付近の巨木の枝まで移動した。


「こちらが、本日よりアイル様に泊まっていただく客間となります。何か御用の際は近くにいたエルフにお声お掛けください。わたしは、巫女の衣装から動きやすい格好へ着替えてくるので、その間に荷物の整理などしていただければと思うのですが。アイル様は、荷を持たれていないのですね。」

『あ、ああ!私は異空間に荷物を収めてますので』


 黒く染まる空間に手を入れ一冊の本を取り出した。


「アイル様は空間魔法を使えるのですね!是非お時間があれば、わたしに空間魔法を教えてください!!」

『は、ははは。ええ、都合が合えば。』

「ありがとうございます!絶対ですよ!』


 村への移動中も思ったがメイサーは相当空間魔法を使いたいようだ。確かに空間魔法は、祭壇にあった物やアイテルの実など色々な物が劣化せずに保存できるので便利だ。問題は私の方だな。他人に魔法を教えるなどしたことがない。


「では、また迎えに来ますので!」


 走るように客間から出て行ったメイサーを見送り、異空間にある衣類をテキトーに物色する。さすがに木と土で作った鎧で過ごすには不便だし、無骨過ぎて食事の席には相応しくないと思ったからだ。


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