久しぶりの交流
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『あれ?もしかして、さっきの当たっちゃっいました?』
身体に鱗を持つ生物が急に視界に現れる。先ほど彼がいた位置は、そんなに近くはないだずだったのに。驚きによる意識の覚醒で身体をビクつかせて返事をする。
「い、いえ!私は無事です。見事な手腕に驚いてしまいまして。先ほどは、ご助力感謝致します。改めまして私はカエルムの森サラ族のアイサ-と申します。一族の戦士長を務めています。よろしければ、そちらのお名前を教えていただけますか?」
身体に鱗があるとなるとリザードマンか?いや翼も生えているのであれば、ドラゴニュートであろうか。ドラゴニュートもリザードマンも里からは滅多に出てこないと言われているが。
『えっ!?名前!?名前ですか。いや、あのー、えーと。。。』
何か訳ありなのだろうか。昔聞いた話によると、リザードマンやドラゴニュートはとても屈強な顔付きをしており、さすがドラゴンの末裔だ。親類だ。と言っていたが目の前にいる者は、背は高くともヒュームの青年のような顔付きをしている。いや、もし女性であった場合、青年などとは失礼だな。
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まずい。名前!?名前なんて知らないぞ!名前なんて今まで必要なことなんてなかった。
それに丸裸で登場するわけにもいかず、土魔法と木魔法で即席の鎧のような物を作ることにしか頭が回っていなかった。
『えーと。。。そうですね。名前を名乗るほどのことはしていないのでー。あ!では、さようなら!』
久しぶりの会話で完全に浮ついている。パニックだ。こんなにも流暢に言葉を投げ合わないと行けないのか。小さき者は、なんて忙しいんだ。これは一度仕切り直す必要がある。自分の名前を考えるんだ!
「そんな!お待ちください!」
足早に立ち去ろうとしたところを、唐突に女性の森人が引き留める。
「あの数のフォレストタイガーに包囲されてしまっては、戦士長のアイサ-がいたとしても弓を得意とする、わたしたちエルフは無事ではありませんした。是非とも村でもてなさせてください。ここまでの恩を返せぬとは、エルフの恥です。」
懇願する眼差しを向け、強い口調で引き留められた。
相手に負い目を感じさせるために助けたわけでもないし、何よりもご馳走だ。森人が何を食しているのか知らないが、これはなかなかの興味深い!
『ん゛。えー。あなた達の恥となってしまうのであれば、その、うん。受け取ることにしましょう。それにさっきの虎が再び襲ってくる可能性もありますし。』
決してご馳走目、食べ物に釣られたわけじゃないぞ。とアピールできただろうか。お礼と聞いて露骨に態度を変えるのも少し恥ずかしいし。
「申し遅れました。わたしは、サラ族の巫女を務めております、サラ・メイサーと申します。メイサーとお呼びください。此度は助けていただきありがとうございました。」
メイサ-が深く頭を下げると、周りに森人も頭を下げる。
他の森人を見渡すとメイサ-と同じような服装をした者が2人、アイサ-と同じような格好の者が4人いた。森人8人のうち、5人は戦士、3人は巫女なのだろうか。
「早速ですが、わたしたちの村へご案内します。アイサー、周囲の警戒よろしくお願いします。」
「姉上、かしこまりました。」
戦士の森人が巫女達を囲むような陣形でメイサーの案内のもと、森の中へ足を進めた。