全力ざまぁは気持ちいいけど白馬の王子様はさらに気持ちいい
領地の中心地、領主が住う巨大な城砦の一室に”転移魔法”で飛んだ俺は懐かしさを覚えていた
「3年前......俺が学園に行った時のままだな......なぜか俺のベットが謎のシミだらけになっているが気のせいだろうな」
なぜかベットシーツやマクラ君が交換されずに3年前のままだが、気のせいだな(遠い目)
「さて、執務室に向かうとしよう」
勝手知ったる我が家を闊歩し母上の執務室へやってきました
『ーーーーッ!! ーーーーッ!!』
部屋の外からでも聞こえる怒鳴り声に若干ビビりながらガチャリとドアを開け放つ
「母上、ユーリが戻りました」
部屋の惨状は言葉にできなかった 執務机に座る母上はいいとして、完全武装の姉上はドスケベ忍び装束ケモ耳くノ一月影の襟首を掴み上げ前後に揺すりながらその顔に涙と鼻水を滴らせていたからだ
「姉上......月影をお離し下さいませ」
「ユーリ......ユゥぅぅぅりぃぃぃぃぃ! 会いたかったぞぉぉぉ! あ”ぁ”ぁ”ぁ”〜ん” は”は”う”ぇ”〜ユ”ーリ”ガァ”ぁ”ぁ”」
タックルの様な抱擁で一瞬意識を持って逝かれかけたが、必死に耐えて姉上をなだめる いやぁ〜今のはヤバかった
「落ち着きなアン! ユーリ、あんたならすぐにでも”転移”で帰って来れたはずだろぉ? 土産の一つでも取りに戻ったってのかい?」
部屋全体が反響して震える様な大音量の声にまたもや意識を持って逝かれかけたが必死に耐える(本日2回目)
「此度の件......仕組まれていた様でございます」
「そんな事は誰だって分かってるよぉ! 結論からいいなぁ!!」
う〜んこの脳筋......美人なのが救いだよなぁ
「......マリー殿下のお心はイスパ殿に......そのイスパ殿の裏には”魔族”が」
「ほぉ〜? ”魔族”とは大きく出たねぇ! アン! ランドスター全軍で魔族に勝てるかい?」
それまで俺を鯖折りにしたいのかと問い詰めたいほどギリギリと抱き締めていた姉上はサッと母上へ向き直ると凶悪な笑みを浮かべた
「3柱の1柱までなら抜かりなく......それ以下の木端魔族なら族滅も」
あれ? 魔族ってめっちゃ強いんですけど? アレレェ?
「はぁん! なんだい! 3柱同時に勝てない様じゃ、まだまだヒヨっこじゃないかい!」
脳筋の会話ってだいたい後出しマウント大会になりますよね? そういうのって良くないと思います
「旦那様......ご無事で......この月影ーーーー」
「月影、大儀でした......さっ、こちらへ」
見るからにボロボロの月影は思った通り、不眠不休で領地を目指した様でそのドスケベ忍び装束も所々が切れていたりして、よりドスケベになっていた
「旦那様......温かい......」
月影に回復魔法を施すと俺の腕の中でスヤスヤと眠ってしまった その月影を抱き抱えると驚くほどの軽さであった
「母上......月影を休ませて参ります......暫しお待ちを」
お姫様抱っこで月影の柔らかボディを堪能しながら運び出そうとすると待ったをかけられる
「ユーリ! 時は刻一刻を争うんだ! そのまま聞いてな!」
えぇ? しょーがねぇなぁ(ご満悦)
「あの小娘共思ったよりヤリ手だねぇ......日和見を決め込んでた諸侯共をあっと言う間に掌握しちまったんだよ」
「諸侯だけに留まらん! 近衛や将兵も既に”新女王マリー”に尻尾を振っている」
ファ!? ちょちょちょ、有能とかそう言う次元の話じゃないぞ オラァ!
「得心がゆきません......諸侯は餌で靡くとしてもマリアンヌ女王陛下に忠義が厚い将兵達が何故......」
「さぁてねぇ? どんな鼻薬を嗅がせたかなんてはどうでもいい事なぁんだよ......大切なのはその将兵を相手にしてどれだけ暴れてやろうかって事さぁね!」
「母上! 今すぐに出陣を! 既に全軍総勢13万の準備は整ってございます!」
13万って......(畏怖) 一応、ほぼ近世っぽいけど中世風世界やぞ
「たかだか、5万の王国兵なんぞに”正規兵13万”なんてバカ言ってるんじゃないよぉ!」
そうだ! そうだ! 国防も考えろってんでぇい! この脳筋姉上! そんなんだから婿が来ないんだぞ!
「全部注ぎ込んで30万で押しつぶしなぁ!! ランドスターのユーリをコケにしくさった小娘共にケリをつけるんだよぉ!」
あっ......(察し) ウチみんな脳筋過保護だったわ
「お待ちを......此度の一件は根が深うございます」
このまま行ったら全面戦争待った無しになっちゃ〜↑ う
「「あぁん!?」」
威圧ハモリやめろ
「私に考えがございます......それを聞いてはいただけませんか?」
私にいい考えがある! ってだいたい良くないアイデアですね でも、私は違います(半ギレ)
「ーーーーーーーーと、いうのはいかがでしょうか?」
一通り話終わった後母上と姉上は腕を組み考え込む、どうでもいいけど、月影さん実はもう起きてるよね? 起きたけどタイミング逃して寝たフリ続けてる系だね
母上と姉上があーでもないこーでもないと言い合っている横で俺は月影を抱き直すフリをしながらセクハラを楽しんでいると、寝たフリをしながらもビクッ! ビクッ! と際どい部分に手が触れるたびに反応する月影を堪能した
「......話はわかったよ! だがねぇ......ユーリはそれでいいのかい!?」
いきなり音量ぶっ壊れるのやめてぇ お耳痛い痛いなの
「そうだぞ! ユーリ! マリー殿下といえど、此度の事は反乱に他ならない! いかなる事情があろうと死罪は免れん! それを助ける様なマネをなぜ!?」
そう、俺の考えは至ってシンプルこのランドスターで練度MAXにされたツヨツヨ軍隊で一気に王都までカチ込みマリー殿下をSEKKYOUして全部なかったことにしましょうというハッピーエンドォ......作戦である
「マリー殿下のお心は既に、私から遠く離れてあそばされておられるのでしょう......ですが、私は”婚約を破棄された”とはいえ殿下の臣下であることを破棄された覚えはございません。で、あるならば殿下を諫めるのもまた私の役目でございましょう」
厳密にはマリアンヌ女王陛下の臣下だけど細けぇ事はいいんだよぉ! あと、全力でざまぁ! してぇからに決まってるだろぉ言わせんな恥ずかしい
「......ふん、しばらく見ない間にいい男になったじゃなぁいかい......あたしが母親でなきゃ力ずくで奪いたくなっちまう位のいい男さ」
「ユーリ......そんなにまで......あんな無下にされながら......あ”ぁ”ぁ”ぁ”〜ん”」
脳筋の目にも涙ですね 見てくれだけは超美人なのになぁ......
「不出来な倅の、生涯一度のわがままを......どうか、お聞き願いくださいませ」
これで堕ちるだろ? 堕ちろ!
「バカ言っちゃぁいけないよぉ......ユーリ、あんたはランドスター......いや、貴族一の忠義者さぁ......この大馬鹿モノめぇ」
そう言って背を向ける様に立ち上がり肩を震わせる母上 、堕ちたな(確信)
「それでは......私も戦装束の準備をして参ります」
さぁて......マリー殿下......全力ざまぁ! タイムのお時間だゼェ? 震えて眠れぇ!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
王都では玉座の間にて”新女王マリー”が頭を抱えていた
「なぜだ......なぜ......こうなった......妾はどこで間違った?」
「陛下! ランドスターは延べ20万の大軍でこの王都へ押し寄せて来ています! 道中の諸侯達も次々と無血開門を......」
「陛下......将兵達の間でランドスターがマリアンヌ様から王権を簒奪する心算である、という陛下のお言葉は誤りだったのではと次々と声が上がっております......」
「陛下、ランドスターの先陣は戦装束を纏ったユーリ様であると報告が......」
「陛下......マリアンヌ様の直筆の書状で各国へ娘と婚約者のお遊びに付き合わぬ様にとのお達しが......」
マリー殿下に数日前の凄みはとうに無く、そこにあるのは年相応に小さくなって震える小娘であった
「ユーリが......妾を断罪しに参る......ユーリが......妾を......」
譫語の様に繰り返すマリー殿下を側近は見守ることしかできなかった
「イスパ? ......愛しのイスパは何処へ?」
「マリー様♪ あぁ〜おいたわしや......マリー様ぁ♡ でも、あのユーリ様相手ならしょうがないですよ!」
「なっ!? 無礼であるぞ! イスパ!」
「ん〜? マチルダ様♪ そんなこと言って〜♡ 『私のイスパを思う気持ちは殿下には負けぬ、だから”気分を変えて”みたくなった時は気兼ね無く言うのじゃぞ』なんて言った口で無礼だなんて♡」
「マチルダ!? 共に陛下の恋路を支えようと申したのはマチルダからではないかっ!?」
「ふふっ♪ そんな約束してたんですねぇ......でもぉ、テオドラ様も......『イスパ......殿下は気難しいお方故、”息抜き”をしたくなれば私に申せ、遠駆けだろうとなんだろうと”都合”させてみる』なぁんて情熱的な言葉をくれたのに♡」
「そぉ〜れぇ〜に♪ イザベル様ぁ♡」
「ヒィッ! 殿下! た、確かに私はイスパへ愛をささやきました! で、ですがにべも無く断られてございます!」
「ふふっ♪ だ〜け〜ど、その後、無理やり抱き締めて『これで諦める、だからもう暫しこのままで』って♡」
「......そうか、痴れ者は私だけではなかったのだな......」
「カトリーヌ様が一番情熱的♡ で、ございましたよぉ? 『イスパ、そなたの愛で我が心を満たしてはくれぬか?』って♪」
ケラケラと笑い玉座の間を駆け回るイスパの姿を虚な目で追うマリーにはもう、何も残されていなかった
「あぁ〜♡ 楽しかったぁ......でも、これでおしまいですねぇ......もう少し楽しめると思っていたのに残念です」
「......イスパ、そなたは......いったい」
誰が言ったか、その言葉は紛れも無く玉座の間にいる者たち全ての言葉であった
「ふふっ♪ まぁ、最期くらい教えてあげなきゃ可愛そうですものね? 私の本当の姿を」
そう言ってケラケラと浮かべていた軽薄な笑みを引っ込めると小柄なイスパの体はメキメキと音を立ててその造形を作り替えていった
「ふぅ〜♡ やっぱり、この姿が一番ですわね♪」
その姿は淫靡で妖艶な肉体と漆黒の羽を持つ”淫魔”サキュバスとなった
「なっ!? ま、魔族ッ......それも、高位の”淫魔”だと......それでは、妾は......妾は......ユーリを捨て......魔族の女に? かまけていた? そんな......そんな......」
「あらぁ〜ん? でも、イスパは紛れもなくマリー様ぁ♡ が欲した理想の異性を現実化させたんだから♡ そんなに悲しまないでぇ♪」
「お、おのれぇ! よくもォォォ! っ!? ゲボォァ!?」
腰の剣を抜きイスパであった淫魔に斬りかかったテオドラは、目に見えぬ何かで殴られた様に吹き飛ばされると口から血を流し蹲った
「あらやだわぁ〜♡ 急に斬りかかるから軽〜く押し返しただけなのに......人族って脆いわねぇ♪」
艶やかな手つきで顎に手を当て考え込む様にすると淫魔は思い付いたとばかりに手を合わせた
「そうね! そうしましょう♪ あなたたちの御首級を手土産にして、ユーリ様に会いに行くとしましょう! ユーリ様ならきっと喜んで下さるわぁ〜♡ いったいどんなお顔をして下さるのかしらねぇ♪ かつての”婚約者”と首だけで再ッ会なんて......ゾクゾクしちゃう♡」
もはや、誰もが諦めて動く事はなかった
ただ、自分の末路を甘んじて受けいるだけの矜持だけは手放さない......それだけが、彼女達に残された最後の誇りだったからだ
「ま〜ず〜は〜♪ う〜ん、やっぱりマリー! さぁまぁ♡ 心配しないで下さいね? 死んだ事すら気付かない様にスパッ♡ と終わらせて差し上げますから♪」
ゆっくりと近づく淫魔をただマリーは虚な瞳でボンヤリと眺めていた
まるで、これは夢なんだと......夢から醒めればいつもの様にユーリが叱ってくれると......ユーリ?
「ユーリ......ユーリは何処へ? 妾を口煩く叱るユーリは? 妾を支えてくれると申したユーリは?......はよう、参れ......ユーリ」
淫魔が目の前まで来てもマリーはうわごとの様にユーリの名を呼んでいた、自らが断罪し婚約破棄と死罪を申し渡した、かつての婚約者の名を
「......いっそ、哀れでございますね? さようなら、マリー殿下」
淫魔が手を振り上げるとその指先からは鋭い爪が伸びマリーの細首などは軽く両断されてしまう事は明らかであった
「ユーリ......すまなかった......ユーリ......もう一度、会えたなら......妾は......」
「そのお言葉が聞きたかったのです」
突如、一陣の風が締め切った玉座の間に吹き込むと腕を振り上げていた淫魔は後方へ退いてた
「......? ユーリ? そなたはユーリなのか?」
「はい、殿下......ユーリでございますとも」
「ユーリ......遅いではないか......ユーリ......妾は......妾は......あ、あ"ぁ”ぁ”ぁ”あ”あ”! わ”ら”わ”は”、ユ”ゥ”リ”ィ”ィ”ィ”」
マリはー顔をグシャグシャにしてかつての婚約者ユーリへと抱き付いた、その大きく逞しい背に顔を埋め、顔から溢れる滴で濡した
「殿下......お遊びが過ぎましたね? ですが、苦楽を共にするのも私の務め......共に陛下に詫びましょう」
「感・動・的♡ あぁ♪ ゾクゾクしちゃったわぁ♡ ユーリ様ぁ♡ 本当にあなたって”いい男”♪」
淫魔は顔を朱に染めその艶やかな身をよがらせながらウットリとした表情を浮かべ言った
「さぁ......イスパ殿? 白馬の騎士がお相手仕りましょう......」
戦装束を纏った人族最強のチートスケベ野郎がその身に溢れんばかりのスケベ力と覇気を滾らせ淫魔と対峙した
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マリー殿下は諸侯達へはランドスター領を切り分けて与える約束をして取り込み、将兵達へはランドスター家が王権を簒奪しようと画策しているので協力しろと取り込みました