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ざまぁ物にあるまじき有能な相手はいかが?

超展開をスピードでゴマかすスタイル

 婚約者であった王女殿下からスピード死罪を申し渡されながらも即日脱獄した上、助けに来た月影の香りを堪能(たんのう)するドスケベチート転生主人公(激寒自己紹介)である俺の話は逃走翌日には、なんと国中に広がっていた


 その内容は地域差があるものの、大筋は婚約者である王女殿下が密かに心寄せる平民に横恋慕した俺が、その平民へ極悪非道の限りを尽くした結果、婚約破棄と死罪を申し渡されるといった内容であった


「旦那様......この様な物しか......」


「ありがとう、月影......あなたもコレを......」


 あれから街道を走る俺たちは領地までの道のりを追っ手を避けながら突き進んでいた


 そして、今は休憩中という訳である。月影はカッチカチの保存性極振りパンを差し出してくれたが、たいして腹は減っていないので遠慮し、水魔法で生み出した清水を土魔法で整形したコップに入れ渡す


「頂戴いたします......面目ありません......水一杯に事欠く事になるとは」


 勢いよく飲み干す月影のコップに、再び清水を注ぎながら俺は現状に疑問を抱いていた


 王都から逃れた翌日には立ち寄った村で既に俺の一件は知れ渡っていたのだ


「水ならばいくらでも用立てましょう......ですが、馬の飼葉(かいば)となると......」


 そう、金は土魔法でいくらでも鋳造できるし水は水魔法で清潔な飲料水を出せるが、馬の食事である飼葉はどうしても村々で調達しなければならず手をこまねいていた


「......旅の者に飼葉を都合するべからず......ことごとく、先手を打たれております」


 ドスケベ忍び装束ケモ耳くノ一月影を泣く泣く旅の者に化けさせ飼葉を買い付けようにも王国から出された通達により、俺たちは飼葉を手に入れることができず 苦し紛れに草を喰ませるに留まっていた


 当然、草だけではフルパワーを発揮できない腹ペコ馬君では移動速度が落ち、領地までの到着予定は遅れ続けていた


「こうなれば仕方ありません......私が飛行魔法で......」


「ッ!? なりませぬ! 既に空には竜騎士が多数展開されております......旦那様といえど、今の疲弊した御身では」


 手が早い? 早過ぎない? 王都脱出2日目にして既に上空では竜騎士が展開され村々には通達が行き渡っている


「......私は見誤っていたのかも知れません」


 あの断罪直後に手配したとしても、ここまでの周知は5日......いや、7日はかかる


 だが、あの断罪が前もって予定されていたものだったとしたら......イスパ君有能すぎる いや、王女様か?


「......弁解にもなりませぬが......ランドスター家の網には一切の予兆もかかりませんでした」


 なん......だ......と? あのWW1時代まで引き上げたチート諜報網を掻い潜って? できらぁ!


「......ここまで周到に手筈を整えていたという事は......逃走あっての計画という事だったのでしょうね」


 チキショ〜逃げないのが正解だったのかぁ......またもや一本取られましたわ!


「......この月影、一生の不覚ッ......この責は命をもってーーーー」


「月影、あなたの命は私のモノです......私が命じない限り、そのような事は許しません」


 ふぅ〜↑ あっぶねぇ! これだから忠誠心オーバーレブ系は......


「......ッ ......御意ッ」


 とはいえ、手詰まり感がヤバ谷園すぎるな......領地まで最短ルートでもこの調子じゃ10日はかかってしまう


「......月影、戻りますよ」


「ッ!? 旦那様 何をッ!?」


 まぁまぁ、聞いてよ


「月影、あなたは領地へ急ぎ戻るのです......姉上が血迷わぬ様に、私の身が無事な事を伝えねばなりません」


「この月影だけが......で、ございますか?」


「その通りです、私は王都へ戻り事の次第をこの目で確かめてからでなければ、戻る事は出来なくなりました」


 あえて、敵の懐に入って行くぅ↑


「......承知......仕りました」


 そんな死にそうな顔で言われると心が痛むからやめろぉ!


 そのまま草をムシャっている馬君へ強化魔法を施すと馬君からは赤いオーラ(マジで見える)が漂い出し、ブルルッっと勇ましい唸り声と共に地を前足で蹴り出した


「この駿馬(しゅんめ)ならば瞬く間に月影を領地へ送る事が出来ましょう」


「......旦那様......ッ! 承知、仕りました......」


 何かを言いかけたがその言葉を飲み込むと月影は馬君へ跨がり振り返る事なく駆けて行った


 いいねぇ、振り返らないけど肩が震えているところがポイント高いわぁ見えなくなったところで号泣していたら尚よしッ!


「さて、王都へ戻るとしますか」


 俺は”転移魔法”を発動させマーキングしてある王都の隠れ家へと飛んだ


 えっ? 転移魔法(それ)で領地へ戻れよハゲって? ......せっかく断罪イベントが発生したんだから楽しまないとね? それに、イスパ”君には改めてご挨拶しとかなきゃ(使命感)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 王宮では王女マリーが愛しのイスパを自身の膝に乗せ、その絹の様な滑らかな長髪を撫でていた


「......まだユーリは見つからぬのか? あれほど周到に下ごしらえをしたというのに?」


 苛立ちを露わにする王女マリーに、(かしず)く4人の側近達は冷汗を滝の様に流しながらそれぞれが言い分を口にした


「あの下郎(ユーリ)には確かに魔法無効化の首輪をかけておりました! 魔法を使えぬ下郎など顔がいいだけの木偶でございます! たとえ逃げ果せたとしても脅威には......」


 内務大臣を母に持つマチルダは媚びる様な笑みを浮かべマリーへと報告するが、マリーはその冷たい視線で答える


(おそ)れながらッ! マチルダの申す通り、あの下郎の柔足では王都から出る事すら叶わぬかと......」


 護国卿を拝命する母を持つテオドラはマリーの怒りを逆撫ぬように真剣な面持ちで申した


「......なぜ、なぜそこまでユーリを(あなど)る?」


 突然発せられたマリーの凍える様な声色に一同は(おのの)くが、ナーロ教の枢機卿(すうきけい)を母に持つイザベルが慌てて答える


「ユ、ユーリ......様ッ! は確かに、(よわい)5にして魔術を極め齢10にして魔導を極め齢15にして魔法使いとなった天才でございますがッ......所詮は魔力がなければ優男に過ぎませぬ......かように恐る必要は......ヒィッ!?」


 マリーから発せられる雰囲気はおおよそ小娘達が耐えられる類のモノではなくなっていた


「ユーリは完璧な男ぞ......そなたらの様な者達が想像し得る存在では無い......それが分かっておるのは......」


「......ッハ、魔法無効化の首輪は破壊されておりました......厩舎からは馬が一頭減っております......近隣の村々では早速、馬の飼葉を求める旅の者が......」


 公爵として王家の近親でもあり国内有数の領地と影響力を持ち、諸侯のまとめ役とも呼ばれる母を持つカトリーナが答えた


「......その村の方角は?」


「......ユーリ殿の領地......ランドスターへ続く方角にございます」


 マリーとカトリーナは祖母が姉妹となる又従姉妹(はとこ)である、幼少の頃より慣れ親しんできたが故にカトリーナには今のマリーの静かな怒りこそが最も恐ろしい状態であることが分かっていた


「......カトリーナ、大儀......だが、それだけではあるまいな?」


 齢16にして既に女王陛下と言っても過言では無いほどの、凄みに当てられた一同は口を閉ざすことしかできなかった


「マリー様、仮にユーリ様が王都を脱出できたとしても本当に領地へ向かわれるのでしょうか?」


 それまで王女マリーの膝の上で甘えていた美男子イスパはウットリする様な声色でマリーへ訊いた


「......? 領地へ向かわずにどこへ行くと言うのだ?」


 それまで纏っていた覇気を鬱散させ優しく問いかけ直すマリーに、それまで息を呑んで傅き続けた一同は大きく呼吸を再開させ肺に空気を満たした


「例えば......王都(ココ)だったり......しませんよね?」


 茶目っ気たっぷりに愛らしい笑みを浮かべて言ったイスパの言葉にマリーは何をバカなとクスクスと笑うが、ハッとその鋭い眼光を再び戻し一人つぶやく


「確かに......領地へはどれだけの駿馬を用いようと7日はかかる......で、あるならば......あのユーリならば......あえてこの王都で身を隠す事も考えられる」


 マリーはキョトンとするイスパを抱きしめると傅く一同へ命じる


「ランドスターへ続く街道のみ追っ手を残し、その他の街道を追う兵には各所で母上達を足止めしている部隊へ合流する様伝えよ! 近衛達には王都を虱潰(しらみつぶ)しに探らせ、ユーリに似た者は全て捕えよと命ずるのだ! ゆけぃ!」


 慌てて玉座の間から出てゆく一同をマリーの膝の上で見つめるイスパはニタリと粘ついた笑みを浮かべ見送る


 マリーがイスパを再び見つめるとその愛らし笑顔は最初から浮かべ続けていた様に貼り付いていた


「イスパ......愛しのイスパ......あと少し、あと少しで......妾とイスパの祝言(しゅうげん)を......」


「はぁい♡......マリー様ぁ......」


 抱き締め合いマリーの肩から覗かせるイスパの顔にはニタリとした粘ついた笑みが貼り付いていた


マリー殿下はユーリに対して、5歳頃→しゅごい! 10歳頃→どうして、ユーリは何でも出来るのに妾は......(何も出来ないの?) 13歳頃→コンプレックス爆発 15歳頃→完全にこじらせる&イスパ君と出会う 16歳→本編 という時系列で好感度が推移しています


マリー殿下にとってユーリは(表面上)完璧(に見える)だけど劣等感マシマシ異性、イスパ君はその対極で自分が守ってあげなきゃ(使命感)というドストライクな異性

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