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14、折角3人集まったので、思い出話でも始めましょうか?

誤字脱字報告ありがとうございます。

大変お世話になっております。


1週間ぶりです。

第3章はのったりゆったりやりたいと思います。しばらーく過去話です。


ジャンル引越ししようか考え中です。


王国、神国、妖精の国を回り、次の国を目指す私たちは今、馬車の中におります。


私とトーリおにい様が旅路の途中で体調が悪くならないよう極限まで職人たちが趣向を凝らして作り出した馬車で、普通の馬車の倍の面積があり靴を脱いで寛げるのです。

物凄くゆったりできるのはいいのですが、暇です。前回はちょっとした作戦会議があったので、そこまで暇でもなかったのですが。


相変わらず私の顔を見てるだけで時間を忘れるトーリおにい様はともかく、私が暇になってきました。


「ふふふ。そんな事だろうと思って、ティアの為にアルバムを持ってきたよ」

「あら。ありがとうございます、ゼクトおにい様」


そう。前回からでしたが、従兄がもう1人同乗しておりますの。それでも広々快適なのは魔法のお陰です。その魔法を展開しているのは私ですけどね。


ゼクトおにい様は、トーリおにい様のお兄様です。お2人は兄弟なんですの。目と髪の色は同じ。ゼクトおにい様の方がトーリおにい様より2歳年上です。


「トーリが送ってくれなかったせいで、12歳までの写真しか無いけど、思い出話には丁度いいよね。

トーリ、君が隠し持ってる膨大な写真は後でアルバムに入れること。大祖父様も"彼"も君が自主的に提出するのを待ってるよ」

「嫌です。私が撮ったものです。ティアとの2人だけの思い出を減らすつもりですか」

「いや、出来事としての思い出は減りようが無いと思うけど?」

「ティアの可愛さを独り占めしている私の幸福感と優越感が減ります」

「……"彼"とは違うけど、トーリのティアへの執着もなかなかだと思うよ?ティアにドン引きされる前に過保護はやめたら?」


いい加減、従妹(いもうと)離れしようね?と言外に言っているゼクトおにい様はモノクル(度無し)を着けていて、初対面の人間に対しても気安く接します。

その顔の良さと、人当たりの良さ、そして話し上手聞き上手なので、社交界デビューしたばかりの令嬢や令息はもう家ぐるみで隠してる事をするっと聞きださ……。


……けほけほ。あら、何でしょう。やっぱり喉の調子がいまいちですわ。こほん。

他人の懐に入り込む……ううん。言語って難しいですわね。


とりあえず、誰とでも仲良しになるおにい様です。トーリおにい様と一緒に組ませないように大抵任務は方向が真逆の国や、接点の全く無い国に同時に行かせるように調整が入るのです。何故って…………混ぜるな危険という意味で仲良しだからですかね?


でも仲良しだからといって、違う事だってちゃんとあるんです。トーリおにい様は壊れた玩具に興味は無い方ですが、ゼクトおにい様は壊れた玩具が割と好きです。


完璧を崩してグズグズにするのが好きなおにい様と、

崩壊を操作して組み直して混沌を作るのが好きなおにい様。

……あら?よくよく考えたら、好きに作り変える所は同じですね?やっぱり兄弟だわ。あとは……そうですね。

ゼクトおにい様はダイルにい様によく構っていて、暇つぶしの際に私に構ってくれる従兄。

トーリおにい様は基本的に私優先で、偶にダイルにい様と悪巧みをする従兄。……でしょうか。これが1番大きな違いかもしれません。……だからといって、別にゼクトおにい様に嫌われてるとかそんな事はありませんので悪しからず。


一時期トーリおにい様が玩具に夢中で構ってくれなかった際に共謀して、トーリおにい様が自分で玩具を手放して私に構ってくれるように手を打った事がある程度には仲良しです。


「……それにしても、よく持ち出せましたね。これ、陛下の宝箱の中に安置されてるアルバムじゃないですか」

「いやぁ、そこはほら、僕の遊び相手のダイルがとられちゃったから腹いせにちょちょっとね」


トーリおにい様が呆れたようにアルバムのページを捲ります。

出てくる前に取ってきたんだ〜と悪びれもなく言うゼクトおにい様。反省も後悔もしておりませんわね。


まあ、それはともかくとして……。


「1番最初の写真は、集合写真ですのね」


私が12歳、双子の従弟達が6歳の頃。私とトーリおにい様が王国に行く直前の頃の写真ですわ。

大祖父様と大祖母様を中心にして、全員でとった唯一の写真です。……私とトーリおにい様が国外に出てから生まれた子は居ませんが。


「この頃にはもうカティアが1番懐いてたの、トーリだったよね。セインも可哀想に」

「ゼクトおにい様、棒読みですわ」

「文字列だけで見れば分からないよー?」


そうですか。そうですね。


「この集合写真を撮るとき、トーリにくっついてたよね」

「1番可愛がってくれるの、トーリおにい様なので」

「欲に忠実だね。流石ティア」


それは褒めてますか?貶してますか?トーリおにい様。

まあいいですけど。


「……僕が見てた限り、可愛がるって意味では、セインの方がどろっどろにティアの事を可愛がってた気がするけど」

「そうですね」「そうだね」


私とトーリおにい様が揃って応えると、トーリと僕が同腹の兄弟の筈なのに、ティアとの方が息ピッタリってどう言う事?と、少し遠い目をしました。……聞いたのは自分ですのに。


「……どうして、セインからは逃げたの?」

「それは……」


永遠の溺愛を向けてくれるトーリおにい様と、永遠の最愛を向けてくれるセインおにー様。前者は受け入れられたのに、何故後者からは逃げたのか。


「実際、どんな事をしてもティアを裏切らず、愛し続け、ずっと一緒にいてくれるのは、セインだよ?そこの破壊狂は、基本スタンスは変わらなくても、いつかティア離れはするし」

「実の弟に向かって破壊狂とは酷いですね。私は壊した後はちゃんと再生しますよ」

「だから余計に性質が悪いって事でその罰として追い出されたんだろ?本当に反省してる?」

「してます。やるなら証拠も証人も残さないべきでしたよ」

「流石我が弟。反省の方向が違うや……」


……何故、逃げたのか。

その質問に答えるのは簡単です。


「セインおにー様の私に対する感情は、"番だから"だと、そう思ったからです」


その感情の名は、果たして愛か。


私には、分からなかったからですわ。

読了ありがとうございます。

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