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EP.10

 イザヤ、ってどうしておれの名前を?

 口に出していないのに。何故?

 サマエルの時もそうだった。あの時も、口に出していないのに、なぜわかる?

 「素晴らしい名前だ。天使に相応しい」

 相応しいだと?

 「ふ、ふざけるな、誰が」

 「嗚呼、怒らないでおくれ。私は君達を解放しに来た。君も手伝ってくれ。君の心は揺れている、だから君に問いかけているんだよ。私はサタンの首をはねられればそれでいい、だが、神やその他天使の頼みで私がこうして君に説得をしているんだ。どうだ? 揺れたかい?」

 ふざけるな、ふざけるな。なんだよ、何なんだよ皆して。自分勝手じゃないか。軍団を作って天界を支配しようとする元天使の悪魔や人間を解放すると言って天使がわざわざこちらへ来た。あと五百年後が約束の時であるというのに。自分たちで決めた約束だろうに、身勝手すぎやしないか?

 「天使って、そんなに身勝手なのかよ。おれたちを何だと思っているんだ?」

 「おっと、私は別に」 

 「おれは訳も分からないまま、無我夢中で精いっぱい鍛えてきたつもりだ! それを、おれが築き上げた物を壊されて黙っていられるわけないだろう! 天使だが何だか知らないけど、おれは抗う。悪魔の配下になったつもりはない。それに、おれは仲間と幸せに暮らせればそれでいいんだ。死者の道へ戻されればおれたちはきっとばらばらになってしまう。それだけは、それだけは絶対に嫌だっ!」

 叫んだ。思い切り思っている事全てを叫んだ。胸が、目頭が熱い。仲間を傷つけるのは許さない。誰であろうと。悪魔なんて、天使なんてものは関係ない。おれの人生に必要ない。

 「強い意志を感じる……そうか、天使は必要ない、か」

 目の前の天使は、おれから離れ、羽ばたいた。

 「ああ、分かったよイザヤ。君の意思を尊重しよう、しかし、君の仲間以外は良いよね?」

 「え?」

 緑毛の天使は他の二体の天使に何かを言い、二体の天使がこちらへ飛んできた。

 「ルシフェルの友よ!解き放たれんことを!」

 死神のような鎌を持った天使が言った。おれたち五人の他の仲間が、皆苦しみだした。マスクがひとりでに外れ、それぞれの頭から何かが出てきた。それは、文字だ。文字がつらつらと書かれた何かが現れた。よく見ると、数字や文字がずらっと並んでいる。きっと、彼らのプロフィールに違いない。こんな力があったのか。

 「彼らの命に報いを。彼らに祝福を」

 いつの間にか、おれやEたちのマスクも外れている事に気が付いた。確かに、もう意味を為さない。彼らには見えている。意味が無かった。総て、総て意味が無かったんだ。鍛える必要だって、わざわざ顔を隠す必要も、番号も、全部。全部。全部全部全部無駄だった。

 「あ、ああ……」

 「い、いざ、や……イザ、ヤ、しっかり、しっかりして! あなたが強く意志を持たずして誰が!」

 「もう、いいよ」

 「え?」

 「君の名前、教えてよ」

 「……エリーザ、よ」

 「エリーザ、素敵な名前だ。もう終わりにしようよ、皆も」

 全てが無駄だと感じた瞬間、総てどうでもよくなった。

 「おい、イザヤ。しっかりしろよ!」

 チャーリーがおれの肩を揺らしている。何も感じない。

 「ったく、意志が強いんだか弱いんだか」

 すると、Zがおれとチャーリーの間に割って入ってきて、おれに平手打ちをした。痛い。とても痛かった。

 「……」

 驚いた。彼が、おれにこんなことをするなんて。

 「馬鹿、人間は馬鹿。こんなやつをたくさん見てきた。僕に対して勝手に期待したくせに、しまいには僕に対して嫌悪感を抱いて、殺人鬼梓豪(ズーハオ)に仕立て上げたのは全部環境のせいだ。お前らだって!僕に対して期待したろ? 演習の時、僕が他より優れていたからって甘えただろ。悪魔たちもそうだよ、僕たちを捨て駒にして、最初から軍団なんて作り上げて支配しようなんて考えちゃいなかったんだ!僕たちは、悪魔の奴隷として、使わされていたんだ!身勝手な妄想に付き合わされ、勝手な想いに浸って、天使が敵だって? 笑わせるな。僕たちは誰の味方でもないんだよ! 天使サマの助けなんかいらない!抗ってみせるさ!そうだろ、イザヤ!」

 「ズー、ハオ……お前」

 「なんで心が折れた? それはお前の心が弱いから、芯を強くもて!お前は何か判ったんだろ、僕に分からない何かがわかるはずだ!立てよ、イザヤ!さっきの威勢はどうした? 天使サマに叫んだ、心の叫びをもっと叫べよ!」

 「梓豪。分かった、銃は捨てる。これ以上、戦う必要はない」

 梓豪はおれの代わりに今までの思いを打ち明けてくれた。だから、こんなに泣いているんだ。梓豪は泣いていた。怒りながら泣いていた。感情がコントロールできていないくらいに、感情的になっている。こんな状況だから、だろうか。

 こんな状況なのに、悪魔は現れない。

 やはり、彼の言っている通り、捨て駒と言う事か。

 「いいさ、捨て駒でもなんでも。天使が敵だとも味方だとも思わない、自分しか信じられないんだ。誰も信じることなんてできない」

 おれは立ち上がった。

 銃を捨て、フードを取り、天使を睨みつけた。

 「何故だ? 何故……」

 「彼らをどうしましょうか、ミカエル様……ミカエル様、見ていらっしゃるのなら答えてください。彼らをどうすれば良いのですか!」

 「ウリエル、やめよう。彼らは囚われてなどいない」

 「しかし、人間がここにいていいわけが!」

 「そうだな、アズラーイール。門を開けよう、エデンか、天国へ」

 「それはダメだ、ラファエル」

 「何故?」

 「あの梓豪と言う少年とイザヤと言う少年、二人とも人を殺めている。それも、何人も殺している」

 「何だと?」

 「罪人、だというのか?アズラーイール、彼らは救われるべき人間だった! 育った環境が間違っていたんだ、そうやって間違ってしまった人間は幾人もいる。救われるべきだよアズラーイール」

 「……しかし、」

 すると、どこからかラッパの音が聞こえた。耳元で吹かれているような大きさだ。しかし、周りに変化はない。音だけが聞こえる。なんだ? 天使の仕業か?

 天使の方を見ても、何事もない。どういうことだ。

 「うるさい、!」

 不吉で嫌な音がだんだん大きくなっていく。耳を塞いだ。他の残っているおれを含めた五人は耳を塞いだ。

 「くそ、イスラーフィールだ! ミカエル様が動いた!」

 ラッパの嫌な音が去った。大地も轟かせるほどの音だった。何とも表現しがたい、耳を劈く嫌な音だった。どこから鳴っていたのだろう。メロディを奏でる訳もなく、ただラッパを吹き荒らしてるような、拙い音。

 音が去った瞬間、頭に直接的に響くように、声が聞こえてきた。聞いた事が無い美しい声だった。

 「イザヤ、エリーザ、ヒナ、チャーリー、ズーハオ、計五人を神の御前へ」

 「何だ? なんで、おれたちの名前を……」

 「神前裁判……と言う事か。ミカエル様、どうして」

 「神が仰られたとか?」

 「しかし、それでも」

 「連れてきましょうか? 私ウリエルにお任せください」

 「……頼んだ、ウリエル」

 また、来た。緑毛の天使。

 「参りましょう、共に神の御前へ」

 「どういうことなのか、説明して」

 エリーザは言った。

 「神の御前って何?」

 「神前裁判と呼ばれるものでございます。神の質問に答えるいたって簡単な物です。返答次第で、天国か地獄か、はたまた転生か生贄か、神が選びます。さあ、行きましょう」

 神前裁判。先程のラッパはそれを知らせるためなのだろうか。

 「最終裁判、最後の審判、などと呼ばれる事もありますが、そこまでの大事では無いと存じます故、神前裁判と」

 「あの、行かないとどうなる、んですか?」

 「神への反逆行為とみなし、人間であろうが私が斬り捨てます」

 「……」

 殺されるのか?

 転生と言っていた、もしかしたら、五人で共に転生、なんてことは、あり得るだろうか? そうなれば、おれたちは。

 「分かった、行こう」

 「イザヤ、……行くの?」

 「行くよ。神に従えばいいんでしょ?」

 「そのようだね、神様とか、天使とか悪魔とか信じないとは言っていたけどさズーハオ君。これはちゃんと行かないとね」

 チャーリーは茶化す様にそう言った。

 「もちろん行くさ、行かないわけないだろう。神様がいるのなら分かってもらわないと困るよ」

 「私も行きます、皆さんと一緒に……!」

 「……分かった、私も行く」

 「決まりですね? さあ、この階段を上ってください。天界の門を開いて待っています」

 天使はそう言って消えた。

 それと同時に輝く階段が現れた。天の先に続いている。行くしかない。

 おれたちは一歩を踏み出した。


 「人間、全滅しました」

 「そうか」

 魔王の城には、悪魔など総勢ざっと数えて約数万体。外を見る限り、アズラーイール、ラファエル、ウリエルが動いたようだ。アズラーイールとラファエルの力で人間たちの魂を死者の道へ帰そうという魂胆か。魂に戻した後その魂を浄化する。ウリエルの役目は、反撃者が出た場合のそれか。

 「どうする、ルシファー」

 「どうもしない。このままだ」

 「全く、私がせっかく作った塔が台無しだ。全員天に消えるなんて」

 「サマエル、貴様はご苦労であった。この作戦から降りろ。あとは、貴様の偉大で強大な力を取り込めば完璧だ」

 「そんな事、出来ると思っているのか?」

 「出来るさ、貴様を体内に取り込めばいいのだ」

 傲慢な魔王、サタン。そこまでして神を殺したいのか。支配する必要があるのか。真の魔王と呼ばれる私でさえ、彼の考える事が分からなかった。

 「やらせない。お前の体に取り込めば、お前の体はきっと壊れてしまう」

 「ふふ、……あっははは!そうか、そうだな!あっははは!冗談だ、サマエル!さっさと失せろ」

 「……ああ」

 ルシファー、勝算がなくなったから、あとは奥手しか残っていないから、焦っている。このままいけば、天界の勝利だろう。戦うことなく、終わる事だろう。サタンは殺され、サタンの怨念だけが、空しく人間界を這いずり回る事だろう。私も消える身だ。総ての元凶であるがゆえに。

 エヴァに禁断の果実を食べさせた、誘った赤い蛇こそが私だから。

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