第7話 弱者と強者の差は思ったより大きいようです。
俺つえええな主人公ではないですが、少しずつ成長するのを見守って頂ければと思います。
ーーカーン、カーン、カーン
大きな鐘の音に、目を覚ます。まだ眠い目を擦りながらゆっくりと起き上がる。裏通りなので陽当たりはあまり良くない。
「今何時だろう……」
僕は壁の時計を見る。時刻は[6:00]丁度いい時間帯だ。この世界には目覚まし時計のような便利な物はない。朝の[6:00]と昼の[12:00]そして夜の[18:00]この3回の鐘が目覚ましがわりだ。
まだこの世界の事はあまりわからないので目覚まし時計のような物があるかもしれないが何れにしても手が出せる値段ではないだろう。
僕は準備をして、部屋を出る。
受付にはおばちゃんが立っていた。
「おはよう、朝食でいいかい?」
僕が言う前に察して声をかけてくれた。
「おはようございます。朝食お願いします」
「はいよ、食堂で待ってておくれ」
食堂では、僕以外にも何名か朝食を食べていた。革鎧やローブを着ているのを見ると冒険者なのだろう。僕の先輩という事だ。
「待たせたね、パンに昨日のボア肉と野菜を挟んだものだよ」
「ありがとうございます」
肉が詰められたホットドッグ見たいな感じだ。昨日食べた柔らかいボア肉を思い出すと涎が溢れてきそうだ。
パクっ、モグモグ
「野菜もシャキシャキしてて美味しいな。この味だよ、昨日のボア肉。何回食べてもうまい」
大満足の朝食だった。僕はそのまま宿を出て服を買う為に60番通りを目指す。大広場を東に抜け[60]と書かれた看板を曲がり通りにある古着屋を探す。古着屋はとても分かりやすくすぐに見つかった。
お店の外まで服が大量に置いてあるのだから僕でなくともすぐに見つける事が出来るだろう。
中に入ってみる。入り口はバーゲン状態で服が無造作に置いてあったが中は意外と整理されており綺麗だ。シンプルで色合いも地味な服装が多いが。誰が着るのかわからないような派手な服も置いてある。
奥に行くとお婆さんが受付に立っていた。この人がシモン婆だろうか?
「おはようございます、ラピスさんから紹介されて来ました彼間です」
「これはこれはご丁寧に、最近の若者にしては珍しく礼儀がなっとるね。私はシモン。ラピスの嬢ちゃんからの紹介なら安くしようかね。好きなのをお選び」
迷ったが、シンプルに黒と紺の服にカーキとグレーのパンツ。後は下着などを3日分購入する事にした。これだけあれば問題ないだろう。お会計はかなり安く銀貨3枚で収まった。
「ありがとうございます、また来ますね」
僕は挨拶をして古着屋から出る、次は武器と防具だ。冒険者になるのだから、初心者であっても最低限の装備はあった方がいいだろう。舐められて……うん、テンプレ的な絡みは必要ない。
それに、魔物にもし出くわしたらと思うと少しでも防御力が欲しいのだ。勿論魔物退治にいきなり行こうとは考えていない。薬草採取中にも遭遇する事があるかも知れないからだ。
古着屋から出て大通りに戻ってきた。武器と防具を……と思ったが、広い上に沢山のお店があるのでどうして良いかわからない。
高価そうなしっかりとした佇まいのお店から、在庫処分品のように樽などに乱雑に入れられているお店など様々だ。僕には鑑定があるので、ある程度の目利きは可能だ。
男ならやっぱりカッコいい剣を見てみたい。僕は少し大きく、綺麗な佇まいの武具店に入った。
お店の名前は[プレミアム]如何にも高価そうだ。中に入ると様々な武器が壁や商品棚に掛けられている。
「うあー、すごいなぁ。武器がいっぱいだ」
日本ではこんな光景目にする事はない、アニメや漫画の世界だ。掛けられている武器は勝手に手に取ったりは出来ないようだ。
武器を留めている半輪っか状の物に鍵穴が付いている。外すには鍵が必要なのだろう。セキュリティーもきちんと考えられてるようだ。
奥の方には今まで見ていた物より厳重に管理されている武器が並んでいた。何が厳重かと言うと先程の半輪っか状の留め具が倍の4つ付いているのだ。鍵穴が4つある。
剣、槍、斧、レイピア、杖が飾られており、その下に札が付いていた。
[ドラゴンキラー]、[ドラゴンスピア]、[ドラゴンアックス]、[ウインドレイピア]、[グリフィンロッド]……
これはまた大層な名前が付いている。お値段も……。うん、見なかった事にしよう。一番安い斧ですら、白金貨10枚もするようだ。
「これは、変わった格好のお客様、武器をお探しでしょうか?」
「ふぇっ、あ、いえ。すみません、また来ます」
あまりの金額の違いに、やばいと焦ってしまい逃げ出してしまった。なんとも情けない。
「はぁ……多分他の棚の武器も僕じゃ手が出せなかったよなー。日本で言うブランド店見たいな感じか」
僕は樽に入った武器が乱雑に置かれていた先程の店に戻る事にした。どれも先程の店と比べるととシンプルと言うかなんというか……鉄を剣の形に整えただけにしか見えない。樽の中の商品は全て銀貨5枚と書かれている。
今の僕には値段的に一番安いこの樽の商品が合ってるようだ。店の中の武器もとりあえず見てみるのだが、先程の店と比べると格段に安いのだが、それでも良さそうな物は金貨5枚程と手が出せない。
「武器って高いんだな……防具も考えるとやっぱ樽の中の武器かな」
ーー僕は樽の中の武器を鑑定していく。
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◾︎鉄の剣
品質:粗悪
詳細:鉄を剣の形にした物
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品質は粗悪だし、詳細に剣の形にした物とある。これは酷いな……でも、お金のない初心者冒険者とかは多分使ってるんだろうな。
ーー鑑定を繰り返して見ていく。
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◾︎鉄の剣
品質:粗悪
詳細:鉄を剣の形にした物
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◾︎鉄の剣+1
品質:粗悪
詳細:鉄を剣の形にした物
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◾︎鉄の剣+2
品質:普通
詳細:鉄を剣の形にした物、絶妙な火加減で作られている。
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どれも鉄の剣で見た目にはわからないが、微妙に品質が違うようだ。[+1]とか[+2]ってなんだろう?ゲームとかだと作成時に+値が高い程強かった気がするが同じ感じなのだろうか?こういう時、主人公ならきっと封印された伝説の刀などが錆び付いて入ってるのを見つけたりするのだろうが。
[鉄の剣]しか入っていないのだから仕方がない。
僕は[鉄の剣+2]を持ってお店の奥へといく。
「すみません、これください」
「おう、見ない顔だな……新米冒険者か?」
「初めまして、この後冒険者登録して来ようと思ってます」
「そうか、銀貨5枚だな」
僕はお金を渡し剣を受け取る。
「サービスの研ぎ石だ。やり方はわかるか?」
「いえ、剣を触るの初めてなので……」
「そうか、運が良いな。樽の中に入ってた武器の中じゃ一番良い物だ」
「そうなんですね、[+2]ですもんね」
「[+2]が何かはわからんが、説明するから覚えろよ。これをするかしないがでメンテナンス頻度も変わってくる。メンテナンスは武器代金の10%いるからな」
10%という事は銀貨5枚だったから、銅貨5枚と言う事か。さっき見た斧だと白金貨10枚だから、メンテナンスに白金貨1枚か……とんでもないな。
ーー僕は剣の研ぎ方を簡単に学んだ。
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・剣を布で拭き綺麗にする
・研ぎ石で研ぐ
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以上の2点だ。研ぎ方は実演してくれたので大体わかった。あくまでメンテナンス期間を延ばすためなので大体でいいらしい。
「ありがとうございます。防具も買う予定なんですが、良い所ありますか?予算はあまり無いので武器と同じくらいだと助かります」
「なんだ、見てないのか、そこの棚に初心者用の鎧があるだろ」
えっ……ゴミ箱かと思っていた。
とても汚れた革が廃棄されているようにしか見えない。
「失礼な事考えてそうだが、ちゃんとした革鎧だぞ?使い回しだから品質は良く無いが……新米は皆通る道だな。
新米を卒業すると次の世代に引き継がれる。まあ、新しい鎧と変える時に新米用に銀貨1枚で買い取ってる」
初心者防具か……引き継がれると聞くと剣道などの防具を思い出す。高校に入り剣道の授業があった。
そして、防具は10年以上先輩達が体育の授業で使い込んできた物。皆嫌な予感はしつつも授業なので仕方なく防具を付ける。
「臭い……」
「生乾きの臭いがする」
「こっちは腐った何か……うぇ」
「う○こだ」
皆の感想は様々だったが、どれも酷いものだった。僕の使う事になった防具は生乾きの臭いがした。まだマシと言えるだろうがかなりの苦痛だった。
「これいくらですか?」
新米を卒業するまでの我慢だ……安全の為に僕は覚悟を決める。
「銀貨1枚だ。破れたり余程の事がない限りは同じ値段で買い取ってやる」
僕は銀貨1枚を払い、革鎧を受け取る。
早速臭いチェックだ。
「ん……あれっ、臭わない。というか無臭だ」
「失礼な奴だな……一応言っておくがきちんと[クリーン]の魔法くらいはかけてあるぞ?」
はて?[クリーン]とはなんだろうか。名前から察するに綺麗にする魔法なのはわかるが……こんな厳つい叔父さんが魔法を使えるのか。
「[クリーン]を知らないのか?]
「はい、魔法はまだ使えないので……魔力の出し方がイマイチわからなくて」
「ん……何を言ってるんだ?魔力石で解放はしたのか?」
あれっ、魔力石で解放?なんだそれは。
「おい、まじかよ。そんな事もお前知らないのか……常識だろ」
異世界から来たんだから仕方ないじゃないか……常識なんて知るはずがない。
「どこでその魔力石は買えるんですか?」
「買うような物じゃないぞ?王都だと[冒険者ギルド]、[商業ギルド]、[教会]で解放の儀式を受ける事が出来るが……その歳で解放してないとは珍しいな」
「はははっ、田舎から出てきたので……常識に疎くて」
「どんなけ田舎だよ、まあ変な奴に騙されないようにな。冒険者登録するならその時に言えば出来るだろう。まあ、解放をしても才能がなければ使えないがな」
「ありがとうございました。早速行ってきます」
「おう、またこいよ」
僕は着替えだけさせて貰い、冒険者ギルドの場所を聞いてお店を出る。まさか、魔法を使う前の前提の儀式があるとは……頑張って練習していたのが恥ずかしい。
うんともすんとも言わない訳だ。
冒険者ギルドは、大広場を越えて丁度こことは反対側の西側エリアにあるとの事だ。大きな目立つ剣と盾、そしてお酒のジョッキのマークの看板があるらしいのですぐ分かるらしい。
「あれだな」
この看板を見逃す人はまずいないだろう。
例え老眼であっても……見逃さないはずだ。何せ、建物自体がとても大きくその大きな建物の半分程もある看板が壁に付けられている。
なんて自己主張の強い看板なのだろうか……
それだけこの世界では冒険者ギルドと言うのは重要な場所なのかも知れない。儲かっていなければこんな大きな建物を建てる事は出来ないだろう。
石造りの3F建ての建物だ。とりあえず入ってみよう。中に入ると沢山の人で賑わっていた。剣や杖、鎧など男であれば憧れないはずもない。
「ここが冒険者ギルド……」
1F部分は酒場に兼受付となっているみたいだ。2Fに行く階段にはBランク未満立ち入り禁止と書かれている。
僕は受付に用事があるので酒場とは反対方向の受付に並ぶ事にする。受付は7つあるようで[新規登録窓口]、[依頼報告用窓口]が4つ、[買取カウンター]が2つあるようだ。
「僕は……っと[新規登録窓口]だな」
新規登録窓口には現在僕を合わせて6人程並んでいる。僕より小さい3人組の子供、そして2人組の僕と同じか歳上と思われる女性だ。最初からパーティーメンバーがいるとは羨ましい。
しかし、こんな幼い子達も冒険者として活動するんだな……見た感じ12歳前後くらいにしか見えない。
「やったぜ、ついに俺達冒険者だぜ」
「ハクちゃん、恥ずかしいからやめてよー」
「僕もちょっと恥ずかしいよ」
3人組の1人がはしゃいでいる、僕もその気持ちは分からなくはない。12歳くらいで召喚されてたら同じように舞い上がっていたかも知れない。
恥ずかしそうにする2人に連れられて掲示板の方へと向かっていった。
次は2人組の女性だ。
「説明は必要でしょうか?」
「いらないわ」
さっきの子供達もそうだが、説明はみんな聞かないんだな。この世界の常識見たいなものなのかもしれない。2人組の女性が終わったようで次は僕の番だ。
「こんにちは、新規登録でよろしいですか?」
受付の女性はおそらく20代前半、優しそうな眼鏡をかけた人族の女性だ。
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◼︎名前:ネモア [22歳]
種族:人族
レベル:26
総合能力ランク:D
スキル:+
趣味:+
スリーサイズ:+
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鑑定してみた。よし、当たりだ22歳。当たったから何と言う事もないが何となく当ててみたかったのだ。スキルや趣味、スリーサイズ、他にも様々な事が見れそうだ。
「はい、新規登録お願いします」
「では、こちらの紙に記入お願いします」
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登録用紙
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○名前:彼間 天
○年齢:16歳
○スキル:
○得意な事
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「すみません、スキルは全て書くんですか?」
「いえ、スキルや得意な事はどちらでも構いません。パーティー募集の斡旋や依頼する際の参考にするだけなので」
依頼斡旋に関係するなら最低限は書くべきだろう。
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登録用紙
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○名前:彼間 天
○年齢:16歳
○スキル:採取、風魔法
○得意な事:なし
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「これでお願いします」
「はい、彼間様ですね。風魔法が使えるのですね」
「あ、いえ、覚えてはいますが、まだ魔力石の解放前でして……」
「そうなんですね、大丈夫ですよ。登録したらご案内しますね」
「はい、ありがとうございます」
「登録する為に血を一滴こちらにお願いします」
針の様な物と鉄のプレートを渡された。この鉄のプレートに血を垂らすと登録出来るって事か。どう言う仕組みなんだろ?
僕はプレートに血を垂らしてみる。するとプレートが青白く僅かに光る。
「はい、登録完了ですね、ギルドについての説明は必要ですか?」
「はい、お願いします」
「はい、必要ありませんね……えっ、説明いるんですか?」
「あ、はい。ダメでしたか?」
「いえ、珍しいのでびっくりしただけです。最近は説明させてもらう事も減りましたので、きちんと聞いてくださる方が嬉しいです。説明を聞かずに危ない事をして、命を落とす方もいらっしゃいますし、後で文句を言う方もいますからね」
良かった説明して貰えるようだ。
それにしてもさっきから話をしながら鑑定結果を見ているが[+]となっている部分が見れない。[+]を開くイメージをしてみるとパスが必要です。と出る。
パスワードの事だろうか?パスワードとか異世界でどうしたらいいんだ。メアリーさんのスキルは見れたんだけどな……何か違いがあるんだろうか、要検証だな。個人情報丸見えのチートスキルではないようだ。
「以上となりますが、分からない事はありますか?」
鑑定結果を見る為に集中してる間に説明が終わったようだ。勿論ちゃんと話は聞いていた。纏めるとこうだ。
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冒険者ギルド説明
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○冒険者ギルドは依頼の受発注を仲介している所で、仕事は様々で、一般的には薬草採取や魔物退治、護衛などの仕事がある。その他にも依頼者から寄せられる様々な依頼があるとの事。
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○ランクはF、E、D、C、B、A、Sランクの7段階あり、依頼をこなす事で上がっていく。
Cランクからは昇級する為に試験があるらしい。内容は昇格時に教えて貰えるようだ。
○依頼自体は自分のランクの1つ上のランクまで受ける事が出来るがランクが変わるだけで危険度がかなり違うので過信して、上のランクの依頼をして痛い目に会う方が多いので気をつけてくださいとの事。
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○ギルドの身分証は国を跨いでも冒険者ギルドがある場所であればどこでも使えるとの事。ギルド証には、[依頼討伐記録機能]、[通帳機能]、[個別認識機能]が付いているらしい。失くした場合、再発行には金貨3枚かかるらしい。
○FランクからCランクまでは鉄のプレート、Bランクになるとシルバープレートに変わり、Aランクになるとゴールドのプレートに変わるらしい。Sランクは、なってからご自分で確かめてくださいとの事だ。
○その他図鑑や地図などの資料は受付に言えば持ち出し厳禁だが貸して貰えるらしい。
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ーー以上だ。
「はい、大丈夫です」
「では、このプレートを持って、あちらの部屋にお願いします」
受付横にある扉に案内された。
部屋の中に入ると大きな黒く丸い水晶の様な物が置かれていた。
これが魔力石……と言う事か。確かに買う様な物ではないな。ギリギリ抱き抱えれるか、と言うくらいの大きさだ。
「では、触れてみてください」
「はい」
魔力石に触れてみる、すると体の中で何かロックが外れたような感じがした。これが魔力解放なのだろう。
先程から、体内に何か不思議な感覚がある。動かそうと意識してみると、何かが体を伝わっていく。
「これが魔力の感覚……」
「はい、これで魔法の適正さえあれば訓練は必要ですが魔法が使えるはずです」
「ありがとうございます」
僕はお礼を言うと早速掲示板へと向かう。お金はなるべく早く稼いだ方が良いだろう。今は余裕……が少しはあるが、尽きるのも時間の問題だ。
掲示板の前には来た時よりも、人は減ったがまだ沢山の人がいる。なんとか、掲示板が見える位置に来たので薬草採取を探してみる。
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依頼掲示板
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○常時依頼
ヒール草採取×5本
報酬:銅貨20枚
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○常時依頼
ゴブリン退治×5匹
報酬:銅貨40枚
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薬草採取の依頼を見つけた、どうやら常に依頼として出されている常時依頼のようで5本で銅貨20枚。僕の場合、宿泊費用が銀貨1枚なので最低でも25本必要だ。
大体どれくらい取れるのかわからないので、目標25本として頑張ってみようと思う。
他にもFランクの僕が受けれる常時依頼にはゴブリン討伐があった。緑色の小人見たいな絵が描かれている。
ファンタジー世界で初心者が最初に倒す事になる代表的な魔物だ。両方こなせば効率は良さそうだが、僕はまだ魔物を殺せるかわからない。そもそも、僕のステータスでは死にかねない。
この世界の一般人と同じ能力値で1レベル。流石に1レベルで挑む人はいない気がする。遭遇しないよう浅瀬でまずは薬草採取をしてみるのが良さそうだ。
僕はギルドを出て忘れていた物を買いに行く。来る途中に通った雑貨屋さんに入り、薬草を入れる袋を探すのだ。
「すみません、この袋っていくらですか?」
「麻袋は[大]、[中]、[小]で値段が違うよ。どれがいいんだい?」
麻袋を広げて見ると、[小]がポリ袋、[中]がスーパーの袋、[大]が丁度[中]の倍くらいの大きさだった。
流石に小では小さ過ぎる。中か大の2択だ。紐が付いていて首を通して肩にかける事が出来るので先を考え[大]を選ぶ事にした。
「[大]とこれとこれもお願いします、いくらですか?」
「銅貨70枚だけどいいかい?」
「はい、お願いします」
僕はその他にも役立ちそうな紐などを一緒に購入する。お金を渡し、購入した麻袋をかけて外へと出る為南門へと向かう。門を出ると草原が広がり、草が程よく揺れる心地良い風が吹いていた。
気候も暖かく寝転んだらとても気持ち良さそうだ。門には人が沢山並んでいるので、こんな所で寝たりしたら、怪しい者として通報されそうだが。
「あっ」
道なりに進んでいる所である事に気付いた。何処で薬草採取をすれば良いのか聞いてくるのを忘れたのだ。受付のお姉さんもきちんと聞くようにと言っていたのに……
「まあ、初心者依頼だし、近くの森だよね」
僕は一番近くに見える森に入る事に決めた。20分程歩くと森の入り口に到着した。振り向くと街がギリギリ見える距離だ。初心者が遠くに行くのは難しい、となるとここで合っているはずだ。
森の入り口に入り早速薬草探しを始める。[WIFI]スキルのお陰でどれがヒール草かわかるのでひたすら鑑定をしていく。
「あった、これがヒール草か。見た目だけだとただの草にしか見えないな」
僕は短剣で少し穴を掘り、根っこから採取していく。土が付いてしまって汚くなってしまうが、途中で切るより根っこから採取する方が良いと、日本にいた頃読んでいた小説に載っていたのだ。理由はよく分からない。
僕は順調に採取を続けていく。途中知らない草も合ったが雑草と書かれていない草はなるべく採取している。
採取スキルのおかげなのか、スムーズに抜く事が出来る。本来なら根っこを全て掘り出すのは大変なのだが、軽く掘ってから引き抜くだけで、根っこも綺麗に抜けるのだ。
レベルが上がればそのまま引き抜くだけで綺麗に抜けるようになるかもしれない。1時間程歩き回った所でヒール草も40本と目標を大きく超えていたので帰宅する事にした。
ガサガサ、ガサガサ
何か嫌な音がする。まさかゴブリンか……
僕はゆっくりと後ずさる。剣を構えいざとなったら対抗出来るように注意しつつ下がっていく。
ガサ
何かが飛び出してきた。僕は慌てて剣を振り回す。
「えい、えい、えい、くるな、くるなくるな」
あれ、何も起こらない。僕は恐る恐る目を開いて見ると、そこには、角の生えた兎が僕を威嚇していた。なーんだ、兎か可愛い……なんて事にはならない。
角が生え牙が生えた兎とか恐ろし過ぎる。僕は兎に剣の先端を向けながらどうするか考える。
1:倒す
2:逃げる
3:様子を見る
この鉄の剣で捉えきれるだろうか割と重いので、避けられて角でそのままグサッっとか笑えない。口の中にヒットしてもそのままガブッっと牙で剣を白刃どりとかあるかも知れない。
このまま逃げたいのは山々だが、兎の方が僕の逃げるスピードよりも速そうだ。それに、薬草採取をこれからしていく上で兎も倒せないようでは、非効率過ぎる。
僕は3の様子を見るを選んだ。とりあえず鑑定をしてみようと思う。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
◾︎ホーンラビット
レベル:3
総合ランク:F
詳細:角の生えた兎、食用として用いられる。
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ランクは僕と同じだ。レベルが上なのが気になるが倒せない事はなさそうだ。ホーンラビットと対峙しながら僕は自分の有利な点を、考えていた。
「魔法……か」
風魔法の本を読んでおけば良かった。思い付いたは良いが呪文が分からないのだ。魔法はイメージと読んだ事がある……僕はかまいたちをイメージしながら、魔力を手の平から放出する。
スパッ、スパッ、スパッ
「えっ、マジ……出来ちゃったの」
緊迫した状態から解放されその場に座り込む。兎が綺麗に切り刻まれている。
「僕が殺したのか……」
当たり前だが動物なんて殺した事もなかった。可哀想なんて思ったらダメなんだろうな。僕はあまり触りたくは無かったが奪った命を捨て置く事はしちゃいけない気がした。
買っておいた紐で近くの木の枝に兎を吊るし血抜きを行う。
「血は垂れてるけど……こんな感じでいいのかな?」
血の匂いに釣られて魔物が来たりしたら危ないので急ぎたかったが、血はポタ、ポタ、ポタと少しずつしか落ちてくれない。
こんな時にリズム良く落ちなくていいのだが、見ていると砂時計の様に妙に落ち着くのが不思議だ。次来る時は血抜きの良いやり方を聞いてこよう。
兎ってそもそもどれくらいで売れるんだろうか……屋台で見かけたから売れるとは思うけど、安いだろうな。
20分程で血が出なくなった。その間周辺の薬草などを拾いつつ、少し離れて様子を見ていたが魔物が現れる事はなかった。
兎を袋に入れる。薬草と一緒でいいのか不明だが、そのまま持ち歩く訳にもいかないよね。街へと道のりはとても遠く感じた。風魔法を使った影響だろうか、魔法を使った後から体が少し重いのだ。
魔力を使い過ぎると気絶するとかあるのだろうか?これも聞いておかないと魔物が出た時に気絶してしまっては大変だ。
小説の用に運良く冒険者が現れ助けられるなんて事は現実中々起きるものではないだろう。
行きの倍の時間をかけて門へと到着した。
冒険が終わり街に帰る冒険者達が沢山並んでいる。僕もその列に並び、順番を待つ。
「次の方、身分証を」
僕は身分証を渡す。
「袋の中身拝見しますね」
「薬草とホーンラビットですね、どうぞお通りください」
特に何もなく通して貰うことが出来た。悪い事はしていないので当然なのだが、身分証確認などされると、警戒してしまう。
日本で何もしてないのにパトカーが通ると警戒してしまうのと同じだ。
僕は真っ直ぐ冒険者ギルドへと向かう。
冒険者ギルドへと入ると夕方だからか、とても賑やかだ。
冒険を終えた冒険者で溢れている。それとは別に人だかりが出来ている。僕も野次馬に参加してみる。聞き覚えのある声が聞こえる。
「僕なら当然さ、次はもっと大物を取ってくるつもりさ」
誰だったか……
僕は近くにいた人に尋ねてみる。
「何かあったんですか?」
「ああ、新人冒険者がソロでオーガを倒したらしいぞ。しかも亜種だとよ、それでいきなり異例のCランクだ」
それは凄いな……僕なんて兎を倒すだけで精一杯だったのに。
「それは凄いですね」
「凄いなんてものじゃないさ、オーガ亜種はBランクパーティ3組で挑む魔物だぜ。Aランクでもソロでは戦わないな」
そんな強い魔物なのか……
どんな人なんだろうか?僕は野次馬を押しのけて見える位置まで移動した。人混みの隙間からその人物を見る。
「根影……」
僕は何故か顔を合わせたくなかった。
人だかりから出て静かに依頼カウンターへと並ぶ。
国王様の言ってた事は正しかったようだ、僕は今劣等感でいっぱいだ。一緒に召喚されたのに、この実力の違い。
「なんでだよ……」
静かに唇を噛みしめる。
「依頼の報告ですね」
「……」
「あの……」
「あっ、はい。すみません、依頼の報告でお願いします」
考え過ぎて僕の番になっている事に気付かなかった。こんなに人に劣等感を感じるようなタイプではなかったはずなのに。
同じクラスのクラスメイトが勇者で僕は一般人。余りにも不遇の差が大き過ぎるのかも知れない。
よく見ると狐耳の可愛い受付嬢だ。胸も……大きい。金色の髪と瞳が印象的だ。是非耳を一度触らせて欲しい。
僕は、こんな美人と接した事がなかった。目があってる事に、急に恥ずかしさが込み上げてきて慌てて袋から薬草を取り出す。
僕は取ってきた薬草を出していく。
○ヒール草×50本
○マナ草×8本
○光草×1
結構頑張ったと思う。
「ヒール草が50本、後はマナ草が8本、後これは光草……珍しいですね。確か、依頼にも出てたはずです、依頼受理してからの報告って事にしておきますね。マナ草については依頼はないので買取のみになります」
「ありがとうございます、後お聞きしたいんですが、ホーンラビットって売れるんですか?」
「銅貨30枚程で買取はしていますよ、買取ですか?」
「いえ、参考に聞いただけなので」
「そうですか、では、ギルド証をお願いします」
ギルド証にスタンプが押される。薄く青白く光った。これも魔道具なのだろう。
「では、ヒール草の依頼達成報酬の銀貨2枚と光草の達成報酬金貨5枚です。マナ草は1本銅貨80枚での買取でしたので銀貨6枚と銅貨40枚です。
彼間様の取られた薬草は綺麗に取られていて品質も良かったので買取最高額とさせて頂きました」
光草……高い。まさかの臨時収入だ。それにマナ草もヒール草の4倍とは美味しい。ヒール草のように多くは生えていないので沢山は取れないがいい収入となった。
「ありがとうございます。そう言って貰えると嬉しいです」
「では金貨5枚と銀貨8枚と銅貨が40枚ですね。お確かめください。今回の依頼達成で条件を満たしたのでEランクとなります」
お金とランクの所が[E]に変わったギルド証を受け取り、僕は宿へ戻る前に武器屋へと向かう。
「すみませーん」
「おう、朝の坊主か、どうした?」
「坊主ではなく、彼間天です」
「それは悪かった、テンだな。俺はダレスだ」
「ダレスさんですね。臨時収入が入ったので新しい剣を買いたいなと思いまして」
「今朝買ったばかりじゃねーか」
「鉄の剣、重いんですよ」
「んな、初心者が……何言ってやがる。鉄の剣も触れない奴が良い剣持っても一緒だ。その剣をまず使いこなしてみろ。そんなひょろひょろじゃあ冒険者として成功しないぞ、少しは努力しろ」
怒られてしまった。初心者武器も使えない奴が、確かに強い武器を使ってもどこかで躓いてしまいそうだ。筋トレでもしてみるか?
「すみません、剣を教えてください」
「なっ、俺は武具屋だぞ?」
「ダレスさんが、努力しろって言ったんだから、責任取って教えてくださいよ」
「まあ、いいか。だが、俺は剣は作れても剣の振り方はわからん。知り合いに頼んでやる」
ダメ元で言ってみたのだが、言ってみるものだな。
「ありがとうございます」
「まあ、期待せずに待て。また来週辺り顔を出してくれ」
「はい、よろしくお願いします」
僕は宿へと帰る。お腹空いたなー。今日は何だろうか。僕は歩きながらご飯の事ばかり考えていた。すると目の前に3人の……冒険者?
「おい、さっさと有り金置いていきな」
なっ、こんな所で追い剥ぎか。
「冒険者に今日なったばかりなので、僕なんて襲っても仕方ないと思いますよ?」
「何を言ってやがる、金貨5枚と銀貨8枚銅貨40枚だったか?」
ちっ、見てたのかこいつら。
「はいはい、それがどうしましたか?何故貴方達に上げないといけないんです?」
「おい、お前兄貴はCランク冒険者だぞ?逆らってただで済むと思ってるのか?」
「早く出せよ、小僧」
さて、どうしようかな。正直言うと怖い。でもお金は取られたくない。魔法なら先制攻撃も可能だ。しかし、僕の魔法で効くのか?
「仕方ないですね」
「ようやく出す気になったか、冒険者は先輩の言う事は絶対なんだよ」
「出すなんて言ってませんよ?害虫を先輩とは言いません」
「なっ、なんだと、お前らやっちまえ」
わーチンピラの子分が剣を片手に襲いかかってくる。僕は魔法を唱える。
「風の刃」
名前がわからないのでとりあえずそれっぽく言ってみる。
ズシャっ
「な、こいつ魔法使いか……しかも詠唱短縮だと」
「兄貴、痛い、痛いよ、腕が腕がー」
「まだやりますか?次は足、最後は首ですかね?正当防衛なので遠慮なくやらせてもらいますよ?」
体がだるくなってきている。次撃てばどうなるかわからない……
「ちっ、覚えてやがれ。今回だけは引いてやる」
チンピラ達は、退散したようだ。Cランクの冒険者の方がかかってきてたらどうなるかわからなかった。助かった……
しかし、風魔法強いな。魔力量がないので1発しか撃てないがいざという時にとても役に立つ。帰ったらもっときちんと勉強しよう。
宿に着いた頃には暗くなっていた。チンピラ達のせいでお腹が減り過ぎて動くのもしんどい。魔力が無くなるとお腹も減るのだろうか。急激にお腹の減りが早まった気がする。
「ただいま帰りました」
「あら、おかえりなさい。遅かったわね」
「ちょっと色々邪魔がありまして」
「邪魔?」
「いえ、そんな事より、お腹が空いたのでお願いできますか?」
ギュルルルル
大きなお腹の音がなる。
「ふふふ、急いで作ってもらうわね。食堂で待ってて」
「あ、はい。後これお土産です。使えますか?」
僕は兎を見せる。
「あら、ホーンラビットね。喜ぶと思うわ」
お腹ってこんな大きな音なるのか。僕は誤魔化しきれないお腹を隠しながら兎を渡して食堂へと向かう。
今日はお客さんが沢山いるようだ。
ほとんどが冒険者のようだが盛り上がっている。きっとパーティーなのだろう。男3人女2人のバランスの良さそうなパーティーだ。
「今日のオーガの聞いたか?新人がソロで討伐らしいぞ」
聞いた事のある話題を話している。
「私も聞いたわ、素材には傷1つなかったらしいのよ」
「僕はその魔物を魔法で収納していたと聞いたよ」
「やばいな、どっちが化け物だよ。あんな大きいのアイテム袋にも入らないだろう。それこそダンジョンとかにある伝説級のアイテムとかじゃないか?」
お、根影の事は気に入らないがアイテム袋と言うのは気になる。よく小説である沢山荷物が入る魔道具だろうか?
お金が足りないだろから買えないけどいつか欲しいな。魔道具のお店を覗いてみよう。
「名前なんだっけ?」
「確か、ダーク・シャドウだったわよ」
ダ、ダーク・シャドウ。思わず吹き出しそうになった。なんて恥ずかしい名前を名乗ってるんだ。
「苗字があるって事は貴族様?」
「知らない、でも、次はドラゴンの依頼をランク不足なのに無理やり受けたらしいわよ」
ドラゴンか……チートな勇者なら狩れるんだろうな。
「はいよ、待たせたね、物凄くお腹減ってると聞いたから大盛りにしといたよ。それと兎ありがとうね。明日はお礼に弁当を作って置くから持っていきな」
「はい、ありがとうございます」
今日の料理は、お肉と野菜の炒め物だ。
皿いっぱいに盛られている。蒸した芋とパンが添えられている。
「いただきます」
パクっ
美味しい。シンプルな塩の味付けだが野菜の甘みがシンプルだけによくわかる。お肉も柔らかく食べやすい。この宿にして本当に良かった。
「ふうー、食べ過ぎた」
美味しいとつい食べ過ぎてしまう。今日は大盛りだったと言うのもあるが、残さず食べれるくらい美味しいという事だ。
僕は部屋に戻ると早速読み掛けだった?いや、最初のページしか見れていなかった風魔法の本を読む事にする。
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風魔法[初級編]
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魔力操作が出来るようになった貴方、次は属性を操る基礎に入ります。基本的には魔力解放をしていれば詠唱通り唱えれば魔法が発動します。
短縮詠唱と言う高難易度の技もありますが、覚えれる者は一握り。しっかり呪文を覚えましょう。大切なのは詠唱を間違えずに覚える事です。
◾︎初級は風魔法レベル1〜2が対象
◾︎中級は風魔法レベル3〜4が対象
◾︎上級は風魔法レベル5〜7が対象
自分自身に合った本をお買い求めください。
初級風魔法
○ウインドカッター
風の刃を1つ飛ばす魔法です。
魔力の込める量により大きさの調整が可能。
詠唱:[風の精霊よ、我に風の祝福を、不可視の刃を放て、ウインドカッター]
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どう言う事だ。僕が使った魔法はウインドカッターに似ているようだが、ホーンラビットの時に使った時は風の刃が3つ出ていた。チンピラ相手にした時は1つだ。それに、なんだこの長い詠唱は……こんなの唱えていたらやられてしまう。
大切なのはイメージではなく、呪文を覚える事と書いてあるが必要なのだろうか?短縮詠唱が高難度と書いてあるが無詠唱が出来てしまっている。
「僕って意外と魔法の才能が……って魔力の量がないから無詠唱出来てもあんまり意味ないか」
イメージで魔法が出せるのは一般的じゃないみたいだ。これだけでも多少だがこの世界の人よりも優位なのではないだろうか。
劣等感ばかりだったが、頑張ればそれなりになれるかもしれない。オリジナルの風魔法を作るのも良いだろう。
でも、既存のスキルと違い過ぎると……目立つ、似た魔法を唱える時は、この世界の魔法名を唱える事にしよう。
続いて気になっていたステータスだ。
兎を倒したのでレベルが上がっているかも知れないと思ったのだ。
手の平に丸を描き唱える。
「ステータスオープン」
◼︎名前:彼間 天
レベル:2
総合能力ランク:F
スキル:採取[1] 風魔法[2]
ユニークスキル:WIFI[1]
加護:男神の加護
称号:巻き込まれなくてよかった者、魔法の創造者
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おお、予想通りレベルが上がっている。ランクはそんなすぐに変わらないかー。どう言う基準でランク評価されているのだろうか。僕は詳しく見れないかランクの所を詳細が見たいと意識してみる。
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生命力:120/120
魔力:140/140
体力:22/40 [F]
力量:22/40 [F]
知力:34/60 [F]
敏捷:22/40 [F]
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詳細が出た。どうやらこの4つの項目。[体力][力量][知力][敏捷]で評価されているようだ。
横の数字に達するとランクが上がるのだろうか?レベルが上がるとどれくらい上がるのか確認してみよう。ランクの上がる目安がわかるだろう。
風魔法も[2]に上がっている。早いのか遅いのかこれもわからないな。説明通りならまだ初級レベルだ。
称号に何かが増えている。[魔法の創造者]、なんとも大層な名前だ。詳細を見てみる。
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◾︎魔法の創造者
魔法を創造する者に与えられるもの。
・魔力と知力の上昇時補正
・消費魔力量減少
・魔力回復量増加
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魔力と知力が他より少し高いのはこの称号のおかげのようだ。魔力が既に全快なのもこれの恩恵のようだ。
消費魔力についてはまだよく分からない。とりあえず、弱い僕にとってはとてもプラスになってるので有難い。
魔法の創造者を見た時僕は思った事がある。果たしてイメージで出来るのは風魔法だけなのだろうか?勿論適正があると言うのは聞いているので知っている。でも、イメージは自由だ、やってみる価値はある。
僕は安全を考慮して、水を放出するイメージをしてみる。水道の水を出すように……
「やばい」
ーーカーン、カーン、カーン
目が覚めると朝になっていた。
昨日、水魔法を試そうとして水を数滴出した所で魔力が切れて意識を失ったのだ。使えるか使えないかと言われれば他の属性魔法もイメージが出来れば使えるみたいだ。
しかし、水を少し出そうとしただけで、体内の魔力が急激に放出され始め止めようとしても無くなるまで止まる事が無かった。
「はぁ……風以外は今の所使い物にならないな」
もしかしたら、全属性使えるチートな魔法使いになれるのではと期待してしまっただけに落胆も大きい。
やっぱり僕にはチートは備わってないようだ。加護が一番のチートだろうか。女神の加護と同じく経験値補正の加護だ。弱いので成長補正があっても成長は遅いかも知れないが、こちらの世界の人からしたら喉から手が出る程欲しいものなんだろうな。
勇者達が恵まれ過ぎてて、欲が出てたようだ。僕なりにゆっくり成長していこうと思う。
今日は、魔道具屋を覗いてから冒険者ギルドで依頼を受ける。お金に余裕は出来たがそれが働かない理由にはならない。冒険者として成長するため、暫くは毎日依頼を頑張ろうと思う。
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