第六章 その3
敵のボスとの最後の戦い!!
さて、夕輝は世界を救う事ができるのか!?
「力尽くでの征服は、お前も悪だと認めていただろう? だったら、結局、お前のやろうとしていることが悪であることにはかわりがないじゃないか」
「ぬ……」
「そして、悪を止めるのは正義の行いだ。だから俺はお前を止める。ただ、それだけのことだ」
そう。
ボスの発言内容から気がつけば俺は相手のやろうとしていることを正しいのではないかとさえ考えていたが。
基本に戻って「悪いことは悪い」と考えれば、ボスの思想がどうであれ、過去がどうであれ、彼の計画、それ自体は悪であり、彼自身もそれは認めているのだった。
だから正義の味方として正しくあろうとする俺が、自らを悪だとするヤツの行動を止めようとすること、それ自体は間違っていないのだ。
そして――
「し、しかしお前は我々と多数派、どちらも悪ではないのかという私の意見を聞いて、迷いが生じていたではないか。そのことについてはどうなったというのだ!?」
「ああ、確かに両方悪なのかもしれない。だが」
「だが?」
「まずは目の前の悪を止めるのが正しい行いだろ? それができなくて何が正義だ」
この世の中に、正義の味方として扱わなければならない問題は山のようにある。
例えば少数派が不当に扱われるといった問題。それもまた正義の味方として考えなければならない問題の一つには違いないとは思う。
けれど、それはそれだ。
正義の味方としてやらなければならないことは。
いつだって今、自分の目の前にある問題に全力で挑むことだろう。
ならば今回の場合、とりあえずは変態が一国を征服しようとしているのを阻止するべきなのだ。変態扱いされている少数派をどうやって助けるかとか、そういうことはその後考えればいい。
「さて、というワケで。お前の計画もこれでおしまいだ。大人しく一緒に来てもらおうか」
俺はボスの腕を引きながら、同行するように促す。
能力を破られたのだし、ボスもこれで計画を諦めるだろう。俺はそう思っていたのだが。ボスは笑みを浮かべながら、
「おしまいか……はたしてそうかな?」
と、呟き、ポケットから「緊急時にはこれを押せ」と言わんばかりの見た目をしたスイッチのついた装置を取り出した。
これはさっき亜犯が偉止を呼ぶときに使ったのとほとんど同じタイプのものだ。だとするとこれもまた仲間の応援を呼ぶための装置に違いない。
のだが、
「仲間の応援でも呼ぶつもりか? お前の部下三人は既に片付いているぞ?」
ボスが応援を呼ぼうにも、既に助けに来る人間は存在しないはず。
ボスだって、研究所の奥にある自分の部屋まで俺が辿り着いているのだから、そのくらい想像がついているはずだ。
ならば何故、この段階でそんなスイッチを取り出したのか……
「ふふふふふ……部下三人は確かに来ないだろう。しかし……」
ボスはそう言いながらスイッチを押す。
すると。
ボスの部屋の壁の一部が動き出し、出入り口のようなものが現われた。どうやらこの部屋には彼の部下達も知らない隠し通路のようなものがあったらしい。
そしてその隠し通路からぞろぞろと怪しげな恰好をした集団が部屋に入ってきた。一体何人いるのだろうか? 部屋の中に今いるだけでも四、五十人はいそうだが、どうやらまだまだ部屋の外に待機しているような気配があるし……もしかしたら百や二百はいるのかもしれない。
「こ、これは……」
援軍というヤツだろうか? しかし、ボスの元に来た変態は確か三人の部下を除いてみんな犯罪臭い悪党だったから追い返したのではなかったか?
「宇焚のヤツが五月蠅いので表向きは追い払っていたことにしていたが、実は私の元に来た変態は善悪を問わず片っ端から仲間にしていたのだ」
「何!?」
いやいやいや、片っ端から変態を仲間にしたからってこの数は多すぎるだろう。
いったいどんな手段を使って仲間を募集したらこれだけ集るんだ?
というかこの街の周辺にいつの間にかこんな数の変態が集結していたのか。それは変質者に関わる事件が増えるワケだ。
「この人数だ。宇焚の協力が得られていないため、彼らは特殊能力などを持ってはいないが、それでも流石にお前に勝目はあるまい」
「数の力で虐げられてきたヤツが人数に頼っていいのかよ!?」
「ふん。虐げられてきたからこそ、数の恐ろしさを知っているのだ。お前も多数の前では無力ということをその身をもって味わうがよい!!」
変態どもにそんなもの味わわされたくねえ!!
とか考えている場合ではない。
これはかなりまずい状況になった。
ボスが呼んだヤツらは一人一人は大したことがなさそうなんだが、そんなヤツらでもこの人数が相手である。ボスの言うとおり俺に勝目はなさそうだ。
俺が破ったのはボスの能力だけで偉止の超威嚇は破っていないから、残念ながら能力を使ってコイツらを片付けるってワケにもいかない。
最早、ここまでか。
……いや。
ここで諦めるワケにはいかない。
俺は釉美さんや観基から、ボスのことを任されているんだ。
俺のせいで戦えなくなってしまった釉美さんや、俺が役に立たなかったために能力を使いすぎてしまった観基。そんな二人のためにも、俺は何とかボスを止めなければならないんだ。
だから俺は、最後まで戦う。
確かに今の状況は絶体絶命。
だが、それでも、戦わねばならないときがある。
そう決意して、俺は例の特殊警棒を構える。
「この期に及んでまだ戦おうとするか。愚かな」
「愚かだろうが何だろうが、俺は最後まで絶対に諦めない」
「面白い。ならば無様に足掻くがいい……お前達、やってしまえ!!」
ボスの指示を受けて変態どもが俺に襲いかかってきた。
俺は自分に迫り来る変態の攻撃をかわしながら警棒で反撃し、一人、また一人と打ち倒す。
この変態軍団、さっき思ったとおり、個々の力は決して強くはない。
が、やはり数が数だ。
いくら一人ずつは弱いとはいえ、こんな人数を相手にして体力が持つはずもない。
十数人倒したところで俺の動きはキレをなくしてきてしまい、二十数人倒したあたりではもう、相手の攻撃を避けるので精一杯になってしまった。
そして。
俺からの反撃が来なくなったことに気がついた変態達は、返り討ちにあう恐れがなくなったことを良いことに、一斉に飛び掛かってきた。
そして彼らの一人が俺の腕を掴む。
「ふん。もう疲れているのか? まあ、よい。よく頑張ったと誉めてやろう。おい、そいつを連れて行け!!」
ボスの指示を受けて変態達は俺を担ぎ上げ、どこかに連れ去ろうとする。
これは……俺のピンチ!
「そこまでじゃッ!!」
部屋に突如、声が響いた。
俺も、ボスも、周囲の変態どももその声のする方へと顔を向ける。
すると。
そこにはいつの間にか亜犯、偉止、宇焚の三人が立っていた。
彼ら三人はボスを指さして、
「嘘偽りをまことしやかに語り、不埒な者たちと手を組む不届き者よ!! この正義の使者」
「亜犯!!」
「偉止!!」
「宇焚が、貴様とその仲間たちを成敗してくれる!!」
と、名乗りをあげた。
そしてそれぞれ変な決めポーズを取った。
……何か既視感を感じるシチュエーションが気になるが、気にしないことにしよう。
「緋暮殿。その男との会話、聞かせてもらいましたぞ」
「まさかぬしらが言っているように、こやつが本当に悪事を働いていたとはのう」
「貴様! 私達を騙していたのだな! 許さん!」
「しかし凄い数の敵ですな。これは戦い甲斐がありますぞ」
「騙されていたとはいえ、このようなヤツに協力してしまっていたとは……悲しいことじゃ」
「この私の美しい技の数々をお見舞いしてくれる! さあ、かかってくるがよい!」
息のあった名乗りを終えると、三人は好き勝手に話し始めた。まったくコイツら、まとまりがあるのか、ないのか……まあ、それはともかく。
何でコイツら、ここに現われたんだ? それに、
「おい、そいつと俺との話を聞いたって……一体どうやって?」
この部屋の扉は結構分厚いものだったはずだ。壁の方もおそらくそれなりの厚さはあるだろう。そんな部屋の中で交わされていた会話を、部屋の外から聞き取ることができるのだろうか?
俺の疑問に宇焚は、
「ふむ。実は以前からワシはボスの発言に少々おかしいところがあると疑っておったのじゃ。しかし、ワシが直接こやつに問うても真実を語りはせんじゃろう。そう思って、先程、ぬしと戦った時、ぬしの服にワシが開発した小型の盗聴器をつけさせてもらったのじゃ」
と、答えた。
服に盗聴器? そんなもの……あ、本当だ。今気がついたが、確かに俺の肩に何やら小型の機械のようなものがついている。
おそらく、戦いの最初の方で宇焚が俺の肩を叩いたときにつけたのだろうが……これで俺とボスとの会話を聞いていたワケか。
いや、でも、
「お前、観基に撃たれて気絶していたはずだろう?」
盗聴器を使ったとしても聞く本人が気絶していたのでは意味がない。と、いうかそれ以前に、気絶していたらここに現われることもできないはずだ。
俺が宇焚の部屋から出ていった後、すぐに回復したということだろうか? いや、あのゴム弾は結構な威力があるはず。腹にまともに受けているのに、そんなに早く回復するなんてことは……、
「あれは気絶したフリじゃ。ワシのこのスーツは強い衝撃を吸収する素材でできておる。あれぐらいの弾は大したことがないのじゃ」
ほう。あの服にはそんな性能があったのか。
しかし、宇焚とかいうヤツ。俺が知っているだけでも立体映像投影装置、異世界間移動装置、超能力の発現方法、小型盗聴器、衝撃吸収素材を使った戦闘服と、色々なものを発明しているが。一体、専門分野は何の科学者なのだろうか?
まるでフィクションにたまに登場する「何でもつくってくれる博士」みたいで気になるところだが……今はそれはどうでもいいか。
そんなことよりも。
「宇焚がここにいる理由はわかったけど、じゃあ偉止はどうしてここにいるんだ? お前は警察に連れて行かれたはずだろう?」
亜犯は観基が倒れたときに俺が事務所に連絡したから、それを聞いてやって来たのだろうが、偉止は……、
「偉止殿はワシが連絡用の装置を使って呼んだのじゃ」
「取り調べの最中でしたが、緊急事態になったので抜けてきたのですぞ」
おい。取り調べ抜けてきたらまずいだろう。おそらくまた力業で強引に出てきてしまったのだろうし……後で厄介なことになりそうだ。
「さて、夕輝殿」
「何だ?」
「この男が語った過去じゃが、あれは大嘘じゃ」
宇焚はボスを再び指さして言った。
そうか。あれは嘘だったのか……って、
「何っ!? 嘘だったのか!?」
「じゃって、ヤツの能力もワシが目覚めさせたものじゃからのう。じゃからヤツの話、幼い頃から能力があったというところからして作り話なのじゃ」
なるほど。あんな過去を持っているボスの覚悟をどうして俺があっさり越えられたのか疑問だったが。その過去が作り話だったというなら納得だ。
しかし、それにしても嘘だったとは。
「……おい、お前。よくも騙したな」
「ばれては仕方がない。その通り、あれは全て嘘だったのだ」
「やけにあっさりと認めるな?」
「もう嘘をついて貴様を惑わす必要性はないからな。何せこの状況だ」
ボスは周囲を見回して言う。
「既に捕らえられている貴様を除けば、私の邪魔をする者は、私に利用されていただけの愚かな元部下三人のみ。対してこちらはざっと二百人の大人数。常識的に考えれば私が勝ったも同然というワケだ」
確かにボスの言うように常識的に考えればこの人数をたった三人で片付けるというのは難しいだろう。仮に俺が何とか敵の拘束から抜け出せたとしても四対二百。一人あたり五十人は倒さなければならないような状況だ。それは普通ならまず不可能な数だと思う。
だが、しかし。
「果たしてそうかな?」
「何?」
「お前、自分が部下にしていたヤツの実力をもっと評価しておくべきだったな……正直、コイツらは手強いぜ」
変態だけど。いや、変態だからか。
この三人の実力は常識では計れないものがある。
正直、この三人の前では二百人なんて大した数ではないだろう――そう思わせるだけの強さが彼らにはある。実際に彼らと戦った俺にはそれがわかる。
「ふん。いくら手強くても所詮はたかだか三人。この数の前には無力だ。おい、お前ら、いつまでぼうっとしている。この三人も片付けてしまえ!!」
ボスに命令されて、敵の変態どもは三人に襲いかかろうとした。
だが、彼らの前にはいつの間にか亜犯と偉止、二人しかいなかった。
残り一人、宇焚は何処に行ったのか。襲いかかろうとしていた変態どもは辺りを見回し、彼の姿を探す。そうしているうちに。
「がっ!」「ぐっ!」「ぐぇっ!」
俺を捕らえていた変態どもがうめき声を上げながら倒れた。そしてその直後、
「大丈夫かのう? 緋暮殿」
という声がどこからともなく聞こえた。
どうやら宇焚は俺を助けるために既に超気配を使って姿を消していたらしい。
「ああ、問題ないぜ。ありがとな、宇焚」
「何、これでワシらも人質を気にせず戦えるというものよ……亜犯殿、偉止殿!!」
「うむ! では、やりますかな!」
宇焚に呼ばれて、まず動いたのは偉止。彼は自分に迫ってきていた敵の変態を片っ端からむんずと掴んで、まるで紙切れでも扱うかのようにひょいと投げ飛ばした。
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!」
変態どもが宙を舞う。
「ほれ!! ほれ!! ほれ!! ほれ!! まだまだ行きますぞぉ!!」
「ひいぃぃぃぃぃぃ!!」
「むはあぁぁぁぁぁ!!」
「うわあぁぁぁぁぁ!!」
「むはははあぁぁぁぁぁ!!」
「ぐわあああぁぁぁぁぁ!!」
自分の近くにいた敵を粗方投げてしまった偉止がそのままの勢いで突っ込んでいったため、敵の集団は大混乱に陥った。
「くっ! こうなったらこれを使うか……」
「むっ! それは!」
偉止の圧倒的な力を目にして人数にものをいわせるだけでは勝てないと考えたのか、敵の一部が懐から銃を取り出し、偉止に銃口を向けた。
確かに、偉止は筋肉質で、その外見は銃弾さえもはね返してしまいそうな雰囲気ではあるが、実際には碌な装備もつけていないほぼ裸な男である。また、偉止は飛び武器を持っていないし、遠距離の敵に対して有効な能力を備えているわけでもない。
なので、偉止を彼の間合いの外から銃で攻撃するという敵の行動は、狙いとしては正しい行動だといえる。
ただし、それはあくまで偉止に対しては正しい行動だというだけのことだ。
「撃てッ!!」
声を合図に一斉に放たれる弾丸。
だが、それらが偉止に届くことはなかった。
何故なら。
「フン! フフン!」
「な、何!?」
「私を忘れてもらっては困ると言うものだ」
弾丸は敵と偉止との間に割り込んできた亜犯が全て受け止めてしまったからだ。
「助かりましたぞ、亜犯殿」
「何、私の超防御の前では大したことではないさ」
そう言いながら、亜犯はどこからともなく薔薇を何本も取り出し、まるでダーツでも投げるようにして投擲。投げられた薔薇は銃を持つ敵の手に命中し、彼らの得物を叩き落とした。
果たしてどうやったら投げた薔薇なんかで銃を叩き落とすことができるのだろうか?
まあ、ああいう感じの人物が投げた薔薇が武器になるのはよくあることだ。
気にしても仕方がないだろう。
「偉止殿、宇焚殿。銃を持った敵は任せてもらおう」
「うむ。では任せましたぞ――さて、我輩ももう一暴れするとしますかな」
「今度はワシも一緒にいくぞい!」
再び敵の集団に突っ込んでいく偉止と、姿は見えないがおそらくは偉止に続いて敵の中に飛び込んでいっているであろう宇焚。
そして「秘技、乱れ薔薇吹雪!!」などと叫びながら、薔薇を使ってワケのわからない技を放ち、銃を持った敵を次々に倒していく亜犯。
彼ら三人の活躍によって、二百人はいるのではないかと推測された敵の数はあっという間に激減した。そして残った敵ももう勝目がないと踏んだのか、建物の外に次々に逃げ出していく。
こうして、四対二百という圧倒的な数の差で始まった変態大合戦は、数の少ない方が圧倒的な力を見せる形で勝利したのであった。
……ん?
何か忘れているような。
そんな気がしたので俺は部屋の中を見回す。
すると、部屋の隠し通路の方の出入り口。負けを悟った変態どもが逃げようと殺到しているその中に、敵のボスの姿があった。
そういえば、大勢現われた敵にばかり気を取られてボスのことをすっかり忘れていた。
とりあえずこいつだけは捕まえなければ。
「おい、ちょっと待て」
「な、何をする!」
俺はボスの腕を掴み、変態の集団の中から連れ出した。
のだが、その連れ出した相手を改めてよく見ると〈変態のボス〉というイメージからはあまりにかけ離れているヤツだった。
コイツがボスでいいんだったかなと不安になった俺は、
「あれ? こいつ本当に変態のボスだっけ?」
と、いつの間にか俺の側に姿を現していた宇焚に問う。
「間違いなく、ボスはそいつじゃ」
どうやら、ボスはコイツであっているらしい。だが、それにしては、
「なんか普通の見た目っていうか、雰囲気も平凡っていうか……」
あまりに特徴がないヤツだ。変態達のトップがこんな何処にでもいそうなヤツというのは何か意外な感じがする。
顔もやっぱりよくある顔というか、目立った点がないというか――ん?
何かボスが俺の方を睨んでいる気がするんだが……、
「き、貴様……よくも私の気にしていることを……」
ボスは声を荒げて言う。
「気にしていること?」
「許さん! こうなったら貴様だけでも――」
怒ったボスは俺の疑問に答えることなく、ポケットからナイフを取りだし俺に突きつけてきた。
俺はボスを掴んでいない方の手に持っていた警棒で咄嗟に応戦。ナイフを叩き落とし、そのままボスの腹部に一撃を喰らわせる。
するとボスは「ぐえっ!」と呻き――
そのまま気を失ってしまった。
………………
え?
えーと。
これで終わり?
「あ、あっけねぇ」
「ふむ、こやつはワシの目覚めさせた能力を除けば、戦闘能力は皆無と言っても過言ではないようなヤツじゃからのう」
「そうなのか……」
確かに、組織をまとめる力と、戦闘面での実力には何の関連性もないからボスが弱いということもあるだろうけれど。
それにしては最後はあっさり片付いてしまったというか……、
まあ、いいか。
「ところで、何かこいつ、俺の言ったことで怒っていたみたいだったけど、あれは一体何だったんだ?」
「さあ、知らんのう」
何か普通扱いされたことに腹を立てていたみたいだったが、結局詳しいことは聞けずじまいになってしまった。
俺としては非常に気になるんだが……後で機会があればどうして怒ったのか、聞いてみるとしよう。
と、ボスが怒ったことについてはさておき。
とりあえず、変態達との戦いはこれで終わったのだろう。
ならばまずは。
アイツを迎えに行かなければならないな。
今回の一件、一番の功労者。
俺の相棒を――
☆ ☆ ☆
亜犯達三人にボスのことを任せた俺は、まだ眠っている観基を背負って、応援に駆けつけてくれていた釉美さんと一緒に事務所への道を歩いていた。
時刻は日暮れ時。
夕暮れの太陽が、まるで今日が無事に終わっていくのを祝福するかのように輝いて、世界を緋色に染めている。
「観基さん。本当に大丈夫なのだろうか?」
観基の顔を見ながら、釉美さんが俺に問う。
「ああ、単に疲れて眠っているだけだからな」
立ち止まって、俺は答える。
本当はここまで激しく能力を酷使していると、能力そのものが劣化している可能性が高いので、あまり大丈夫とはいえないのだが。
釉美さんは釉美さんでまだ具合がよくなっているワケではないので、余計な心配をかけたくはない。この場合の嘘は悪い嘘ではないだろう。
しかし。
このまま、この先も今回みたいに能力を無理して使っていってしまったら、観基は一体どうなるのだろうか?
能力があって成り立っている彼女の生活。
能力が無くなれば崩れ去ってしまうかもしれない。
そうさせないためには、俺がもっと強く、頼りになる人間にならないとならないだろう。
そして。
仮に観基から能力が無くなったとしても、そんな彼女を支えられるようにもならないといけないだろう。
何せ俺は。
観基の唯一の友人なのだから。
観基から頼られている相棒なのだから。
よし。
これから先も観基と二人で平和を守っていこう。
輝ける未来を守り続けていこう。
そう決意して。
俺は再び、歩み始めたのだった。
こうして、変態達による世界征服計画は。
ヒーローに憧れる青年によって阻止されたのだった。
これで、彼も世界を救ったヒーローに……なるのでしょうか?
次回、後日談にてそれが明らかに!?




