第44話 敵の武将、死す
僕は走る。
敵将まであと50メートル――
触れることができればありえない能力を無効化できるんだ。
しかし、間に合わない。
馬上の敵将は背中を丸めて身をかがめる。
鎧の背中に仕込まれていた無数の棘が飛び出す。
「ガハハハ――! 油断したな、頭の悪い魔族共めがぁ――!!」
全方向に飛び出した金属製の棘の一部は間近にいる兵士に突き刺さる。
味方を犠牲にしてでも自分の身を守る捨て身の反撃か!?
「【漆黒の立て板よ】!」
アリシアの体を保護するバリアを形成。
無数の棘は漆黒のバリアに弾かれる。。
アリシアは敵将に斬りかかる。
金属同士が擦れ合う音が鳴り響く。
ドリルのように回転しながら斬り込むが、敵将の固い鎧には歯が立たない。
「死ぬがいい、愚かな魔族めがぁ――!!」
「【ディメンション・スワップ】!」
敵将は体を起こし、胸を張る。
鎧の正面から無数の棘が飛び出すが、同時に繰り出した魔法によって空間ごと消え去る。
「うわっ!」
薄々気づいていたことだが、無数の棘は僕の頭上に出現し地面に突き刺さる。
走っている途中だったから後ろに逸れてくれた。
馬上の敵将は剣を抜き、アリシアを弾き飛ばす。
接近する僕に気づいた弓兵は矢を向ける。
それをカルバスが降り立ち迎え撃つ。
僕の背後に降り立ち、並走するカリンは――
「ユーキ様、ご武運を!」
僕の背中を思いっきり押した。
女の子とはいえカリンは魔人。
その勢いは凄まじく、僕の体は槍のようにすっ飛んでいく。
「ちょこまかとネズミのように動き回る魔人どもよ! 我輩の最終兵器を喰らえ!」
敵将は鎧をパカっと開き、両手いっぱいに掴んだ鉄の玉を空中に放り投げる。
次から次へと出てくる玉を空中へ放り投げて――
「それっ!」
指をパチン、パチンとアリシアとカルバスの方に向けて鳴らす。
鉄の玉は――
雨のように敵将と僕の体に降り注ぐ。
馬は驚き敵将は振り落とされる。
周りの兵士たちは何が起きたか分らずに距離を置く。
「な、な、なんだ? 何が起こった!?」
敵将は起き上がり、慌てふためく。
指を鳴らすが何も起きない。
「あんたの能力はもう使えない。僕がぶち壊したから……」
僕は宣告した。
「貴様、何者だぁぁぁ――!?」
敵将はそう叫びながら剣で僕を突いてきた。
それをカリンが短剣で逸らし――
次の瞬間にはカルバスとアリシアの剣が仕留めていた。
硬かった鎧もただの鉄に化していた。
「僕は……魔族の救世主になる男だ!」
転がる死体に向かって答えた。
大将が斃される光景を目の当たりにした兵士たちは、最後まで抵抗する者、弓を投げだして逃亡しようとするものなど様々であったが、いずれもカルバス兄妹によって斃されていった。




