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9・贅沢は望まない。


「まずは冒険者についてのご説明をさせて頂きますね。」


 という訳で、今リリアさんに冒険者登録について説明してもらっている。まぁ実際は街を見てから仕事を探そうかと思ってたんだけどな……



「冒険者にはクラスがあります。一番下のクラスFから最高クラスSSです。このクラスは、実力不足で高い難易度のクエストを受ける事を防ぐ為のものです。パーティや個人の荷物持ちを請け負う『運び屋』には適用されませんが。」


 なるほど、新入社員に大手の客との営業はさせないのと一緒か。それに荷物持ちは例外と。


「クエストの掲示板はあちらにありますが、クエストには『討伐』『採集』『その他』『指名』『緊急』『強制』があります。それぞれには指定クラスが書いてありますので、それを見て選んでください。」


「『その他』というのは?」


「まあ、街の方々が依頼してくる雑務とか雑用ですね。『屋根を修理してほしい』とか、『仕事を手伝ってほしい』とか。」


「それも冒険者の仕事なんですね。」


「はい。主にクラスFかEの方々がメインでやってはいますが……」


「安いし冒険者っぽくないから皆やりたがらなくて、依頼が処理されずに溜まる一方とかですか?」


「そ、その通りです。処理出来なければ、依頼主に預り金を丸々返金します。」



 『その他』クエストから、やってみるか。街を知る機会にもなるし、競争率がほぼ無いのが良い。



「説明を続けますね。依頼完了の証明は、クエストに応じて受付で処理します。『採集』は採集物。『その他』は依頼主のサイン。『指名』も依頼主のサインです。『討伐』『緊急』『強制』は特殊ですが。」


 配達の受領と同じか。何にしても証明が必要なのは当然だしこれは分かる。


「次に、クラスの上げ方ですが、これは依頼をこなして頂くしかありません。完了したクエストの数と内容に応じてポイントがあり、規定数に到達して、ギルドマスターが承認すると、クラスが上がります。」



 ふむ、実績があれば上に行けるシステムか。冒険者ギルドは成り上がりも夢じゃない企業の様だ。



「さて次に、登録に入りますね。登録は簡単です。」



 そう言ってリリアさんは、カウンター上に置いてあったA3の紙程のサイズの石板の上に何も書いていない白いカードを置く。それと俺から見て左にある水晶玉に手を向ける。



「こちらの水晶に手を当てて魔力を流してください。すると、こちらの石板の上の紙にケイマさんの情報が浮かび上がってきて、ギルドカードが出来上がります。」


「おお……不思議なアイテムですね……」


「魔力は人それぞれで違いますので、このカードはケイマさんの魔力のみに反応する他者が使用出来ないものになります。」



 魔力は元の世界では無いものだったし、指紋やDNA的なそういうものなのか。


「ちなみに、報酬の預け入れや払い出しにはギルドカードが必要ですので、その際はお忘れなく。」


 銀行のキャッシュカードと同じか、ギルドは銀行みたいな事もしてるんだな。


「わかりました。」



 水晶に触れて魔力を流すと、水晶とカードはぼんやりと光り、すぐに元に戻る。すると、カードには先程まで無かった文字が何行か浮かび上がっていた。読めないけど。



「カードの表には名前・レベル・クラスが、裏には何も書いて無い様に見えますが、自分の魔力を流すと自身のスキルが浮かび上がり、確認出来ます。魔力を止めると消えます。これで冒険者登録は終了です。続けてカードの更新をしましょう。」


「更新?」


「はい、魔物等を倒したりした場合、倒した物の魔力が経験値として魂に刻まれ蓄積されます。それにより自身のレベルやスキルレベルが上がるんです。」


 レベルときたか。RPGじゃん。しかも魂に刻まれて蓄積されるのが経験値なら、レベルによる強さに嘘がつけないって事か。


「この水晶に同じく手を当てます。そうすると、魂に刻まれ蓄積された経験値を水晶が読み取り、ギルドカードに反映させるんです。先程クエストで『討伐』の完了証明は特殊と言いましたが、討伐した魔物等の情報は水晶を通して転送され、こちらの紙に転送記載されますので、嘘はつけないんです。」


 ふーん、流石に自身の魂に刻まれて蓄積された経験値を偽る事は出来ないだろうから、討伐証明としてはこれ以上無いシステムかも。



「じゃあ更新してみようかな。」


「はい、どうぞ。」


 俺は水晶に再び手を当ててみる。水晶とカードぼんやりと光り、やがて収まった。




「これで更新は完了ですね。ギルドカードをご確認ください。」


 ご確認くださいって、だから読めないんだよね。まあ確かにさっきとは一部文字が違うのは分かるけど。



「それと、討伐した物のリストはこちらで保管、管理させて頂きます。…………あれ?」


「?どうかしました?」


「1枚じゃない?2枚…3枚…………3枚!?」


「3枚が何か?」 


「…………」


 リリアさん、紙を凝視してるな。俺の「3枚が何か?」の質問も完全に無視されたし。



「すみません!カードを見せてください!」


「え?はいどうぞ……」


 美人にいきなりカウンター越しにぐいっと顔を近付けて頼まれたら断れないだろ。他の受付嬢も今誰の対応もしてないから暇でこっち見ちゃってるし。しかし、なんなんだ?


「レベル…………115…………」



 リリアさん、今レベル115って言ったよな?ほほう、レベル115と書いてあったのか。文字が読めないんじゃいちいち聞かないといけないってのも面倒だな。数字だけでもそのうち覚えるか。



「リリアリリア!今の本当に?」


「ちょっと見せて!」


「……うわ!本当だ、3桁初めて見た……」


 他の3人の受付嬢がこぞって見に来てしまった。暇なの?


「し、しまった。ち、ちょっとみんな……」


「大丈夫、誰にも言わないから。」


「わ、この討伐リスト凄……って、タイラントもいる!」


「これ、素材だけでかなり遊んで暮らせるね~。」


 やべぇ、なんかこの集まってきた感じに、他の冒険者も注目し始めてしまってる。早く解散してくれ。


「ちなみに素材や魔石はどうしたんですか?よかったらギルドで買い取りもしてますよ。」


 名前は知らないが茶髪の受付嬢が聞いてくる。素材や魔石、素材や魔石かあ……


「やっつけただけで放置してきました。」


『えっ?』



「俺には不要な物でしたし……倒せただけでも良かったかなと。」


 てゆーかどこの部分が売れるとか知らないし、持ち運べないし、そもそも魔石ってなに?当時は素材を持ち帰る概念すらなかったんですけど。


 ちくしょう……あのデカイ恐竜の一部でも持って帰っていれば遊んで暮らせたのか……




「不要な物……」


「一財産分の素材なのに、なんて欲の無い方……」


「それだけの強さがあれば、いつでも倒せるってことなんですね!」



 だから解釈が純粋なんだってば。ただ持ち運べなかったって解釈は出来ないの?


 ギルド職員って純粋じゃないと出来ないとかなんだろうか……




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