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紫陽 圭

リンクス

作者: 紫陽 圭

 あの日の、たった1つの出会いが人生を変えた。 その出会いから、予想外の想いを知った。 明かされる、いくつもの衝撃の事実・・・。

(と言いつつ、シリアスではありません。)

 **********


 その日、人生がひっくり返るような出来事は、足並みそろえてやってきた。 しかも、発端はたった1つの出会いという、信じられないようなかたちで・・・。



「! リリアーナ!」

「! ユリアナ!」

 訪問者の1人を見た途端、無意識に1つの名前を叫んだのは覚えている。

同時に相手も何か叫んでいたような記憶も有る。 侍女の悲鳴らしきものも・・・。

どうやら、この時、私は(相手も)気を失ったらしい。



「日記!」

 そして、眼を覚ました私の第1声がそれだった。

無自覚に、ガバッと上半身を起こしながら叫んでいたようで、周りは驚いて固まっていた。 そして私も、状況が分からずに周りをきょとんと見つめるしかなかった。




 **********


 ここは、ライエングラム侯爵家の応接室。


 私は、ライエングラム侯爵家長女、ユリアナ・ファム・ライエングラム。 現在16歳。

私の左には、1つ年上の兄マリウス・ファタル・ライエングラム。 その更に左にはライエングラム侯爵家当主である父が座っている。


 そして、父の前には、ランドリエール侯爵家当主であるランドリエール侯爵。 その左には、兄の婚約者で私より1つ年下のリリアーナ・ファム・ランドリエール嬢が座っている。

 2人は、婚約解消のお願いと謝罪に来たと言う。

ところが、私とリリアーナ嬢は、初対面にも関わらず、お互いを見た途端に叫んで次の瞬間には2人とも気を失ってしまった。

さらに、ほぼ同時に目を覚ましたと思ったら2人して『日記!』と叫ぶというシンクロぶりで、本題の婚約解消の話は後回しの状態。

 で、今は何をしてるかといえば、応接室でお茶してたりする。

実際のところは、私たちの言う『日記』はそれぞれの曾祖母のもので、それぞれの家で母親や侍女が探して持ってくるのを待っているところ。



 リリアーナ嬢には、どうしても想いを断ち切れない想い人が居るらしい。 絶対に結ばれないと分かっている相手で、だからこそ相手については何1つ話せなかったし、修道院に入ることさえ考えていたと言う。

 ライエングラム侯爵家とランドリエール侯爵家はほぼ同格なこともあって、思い詰めた愛娘を見ていられなくなったランドリエール侯爵は、婚約者2人の将来のためにもと婚約解消を考えた。 そこで、我が家を訪問。

 ところが、私とリリアーナ嬢は・・・以下同文。


「婚約解消の件ですが、私自身は受け入れることはできます。」

 何故か気まずくなることなく過ぎる時間の中、リリアーナ嬢とランドリエール侯爵の話を聞いて、兄が答える。

あっさりとした反応に、目の前の2人は目を見開き、父がため息を1つ。 驚きを感じられない態度に、やっぱり父も気付いてたんだなと私は納得。

そう、これは両家の曾祖母の願いによる婚約であって、兄はリリアーナ嬢に対して特別な感情は抱いておらず、貴族の義務の1つとして受け入れていただけだった。 だから彼には悲しみも怒りも無く、父も私も気付いていたからこそ、室内の気まずさが少なかった。


「ただ、リリアーナ嬢が社交界デビュー前ということで婚約を正式には公表してませんけど、もしかすると彼女の名誉が・・・。」

「当方で対策は考えますし、本人も覚悟のうえです。」

「当然こちらでも対応します。 侯爵家2つを怒らせるほどの愚か者には援護の価値も無いでしょう。」

「そうですね。 ともに対応していただけるなら助かります、ありがとうございます。」

 兄の言葉にランドリエール侯爵が答え、リリアーナ嬢がうなづく。

 父がさりげなく実力行使も辞さないとほのめかすと、ランドリエール侯爵が少しだけ口の端を上げてハッキリとうなづいて同意する。

さすが、2人とも侯爵家の現役当主、似た部分があるらしい。

 ほぼ同格の侯爵家なのにランドリエール侯爵のほうが腰が低いのは、婚約解消は向こうからの申し出と言う引け目と、ライエングラム侯爵家のほうが少し家格が高いから。

 父の口調が少し傲慢っぽいのはライエングラム侯爵家の特徴だし、ランドリエール侯爵の口調も同様なので誰も気にしない。

つまり、兄の今の口調も『婚約に乗り気じゃなかった』引け目からの自制の結果だし、私の思考や言動が男っぽくて可愛げが無いのも環境(我が家の男ども)のせい、ということにしておいてほしい。



「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

 男性陣が婚約解消の話を詰めている間、リリアーナ嬢と私はじっとお互いを見ていた。 おそらく、ほぼ同じような表情で。 まるで、相手の目から、相手の考えや感情を読み取ろうとするかのように・・・。

 婚約解消の話より先に日記の件を片付けたいと、私たちは意図せずに2人して頼んでいた。 日記の重大さを、私たちだけは知っていたから・・・。

私たちのあまりの必死さに即座に日記探しが始まったところで、ただ待ってるのは時間がもったいないからと男性陣は婚約解消の話を始めていた。



 そして、我が家で見つかった日記と、ランドリエール侯爵家から運ばれてきたものとが揃った時、リリアーナ嬢と私以外の面子が固まった。 新たに加わった、私たち兄妹の母であるライエングラム侯爵夫人、日記とともに至急呼び出されたランドリエール侯爵夫人と令息のユークリッド様も・・・。

表紙に『リアナ』とだけ書かれた色違いの日記に只ならぬものを感じたらしい。

 我に返った侯爵2人によって使用人を退室させて関係者の家族だけになった室内は異様な雰囲気を漂わせていたと思う。

そんな中、リリアーナ嬢と私は、一瞬だけ目を合わせると、日記に手を伸ばす。

相手方で見つかった日記を、なんの躊躇ちゅうちょも無く手に取ると、ぎゅっと抱きしめる。

その後、立ち上がると、日記を片手に持ったまま両手を広げ、お互いを抱きしめる。


「すべて思い出したの。」

「やっぱり、貴女なのね。」

「会うことが出来て嬉しい・・・。」

「私もよ。」

 唖然あぜんとしている両家の家族を気にするよりも、お互いのことを確認する方が重要だった。


「わけが分からないんだが?!」

「説明してもらえるのかな?」

 まず我に返って言葉を発したのは2人の侯爵だった。

さすがではあるけど、表情には娘を気遣う思いと困惑がありありと出ている。

取り繕う必要も無い場だということもあるが、そんな余裕も無いのだろう。

次いで、次期侯爵2人は何かを考え込み、侯爵夫人2人も我に返るが戸惑ってるのがわかる。

 リリアーナには後で話したいことが有ると言うので、私が説明することになった。



 **********


 まず、重大な事実を1つ。

 本当は、私がリリアーナ・ファム・ランドリエールであり、彼女はユリアナ・ファム・ライエングラム、つまり何故か入れ代わってしまっていること。

 彼女に会った瞬間に思い出した、幼少時の誘拐で失った記憶に関わるショックが気を失った原因の1つであり、何故か『入れ代わってる』ことに確信がある。

そう言うと、彼女も、『私も同じよ。』と言ってうなづく。


「ユリアナ、私の娘、は3歳の誕生日の翌日5月4日に誘拐され、当日中に西隣の領地の廃屋から救出されたが、それ以前の記憶を失っていた。」

「・・・・・・。 リリアーナも誘拐され、東隣の領地で救出されたものの記憶を失った。 同じく3歳の誕生日翌日5月4日。」

 ライエングラム侯爵の言葉に周りが息を飲み、大きく息をついてから続きのように語られたランドリエール侯爵の話に、全員が動きを止めて思考を巡らせる。


「つまり、私たちは同じ日に生まれて・・・-」

「同じ日に誘拐されて・・・-」

「同じ日に救出されて・・・-」

「同じ日に記憶を失った?」

「そして・・・-」

「その日に・・・-」

「「入れ代わった?!」」

 思わず2人で一緒に内容を整理する。


「ライエングラム侯爵領は王都の東で間には2つの伯爵領。」

「ランドリエール侯爵領は王都の西で間には2つの子爵領。」

「2組の犯人の逃走方向が逆で、タイミングだけは重なっていた。」

「救出した時点で入れ代わってしまったんだろう。」

 2人の侯爵がうなづき合う。

 両家の領地の位置関係は、簡単に言えば、東からライエングラム侯爵領・2つの伯爵領・王都・2つの子爵領・ランドリエール侯爵領。

つまり、2組の犯人は王都を超えて逆方向に辿たどりついていた、と。


「普通は近場から探すうえに、この2人では・・・。」

「同時に誘拐が起きるなんて考えもしないし、当時も似ていたとしたら・・・。」

「まだ幼いうえに記憶も無く、誘拐というショックな事件に遭って・・・-」

「たとえ変化が有ったとしても家族が気にすることは無いな。」

 2人の次期侯爵もうなづき合っている。 曾祖母が姉妹という血縁の遠さにも関わらず瓜二つな私とリリアーナを交互に見ながら・・・。


 そして、沈黙。 全員が、複雑な心境で、これからのことを含め考えることが有り過ぎて、考え込んでいた。


「それで、他には?」

「日記は何の関係が?」

 意外にも、沈黙を破ったのは2人の侯爵夫人。

眉間にしわを寄せてる男性陣と違い、既に思考を切り替えたのか穏やかな表情と口調で聞いてくる。




「実は、リリアーナ曾祖母様とユリアナ曾祖母様も入れ代わってたんです。」

「「「「「「・・・・・・。」」」」」」

 2つめの重大な事実。 驚きと、頭の中での家系図の確認で、言葉が出ない様子なのを、じっと待つ。

『もっと詳しく』と求められ、話を再開する。


 リリアーナ曾祖母様とユリアナ曾祖母様はワーレン公爵家の双子で瓜二つ。

リリアーナ曾祖母様はライエングラム侯爵継嗣と、ユリアナ曾祖母様はランドリエール侯爵継嗣と婚約が決まっていた。

 しかし、2組合同の婚約披露パーティーが決まったころ、他に想い人の居たリリアーナ曾祖母様は家を飛び出して失踪。

そのうえ、慌てた3家での会合で、ユリアナ曾祖母様とライエングラム侯爵継嗣とがお互いに一目惚れしてしまう。

それをユリアナ曾祖母様たちがランドリエール侯爵継嗣に打ち明けたところ、彼にも他に想い人が居ることが分かり・・・。

 結果、若い3人はリリアーナ曾祖母様を探しながら、リリアーナ曾祖母様とユリアナ曾祖母様の入れ代わりを計画。

ランドリエール侯爵継嗣のほうはなんとか婚約を解消すべく協力しあうことにしていた。

 そして、親より先にリリアーナ曾祖母様を見つけたのを幸いと計画を実行しようとしたところ、驚きの事実が!!

なんと、リリアーナ曾祖母様とランドリエール侯爵継嗣はお互いがそれぞれの想い人、つまりは相思相愛だった。

 で、結局は結婚式当日に入れ代わって、本来の予定通りと喜ぶ周りをよそに、本人達も内緒で大団円。

 周りへのせめてもの謝罪がわりにと、血も本来の位置に戻そうと婚約を考えたが子供では血が近すぎるうえに双方ともに息子しか居らず、どうせなら孫娘に自分たちの本名も一緒に継がせようと遺言を遺した。 ところが、孫も男ばかりだったので曾孫に託すことになった。


「ちなみに、リリアーナ曾祖母様は、遠乗りで馬が蜂に驚いて暴れだした時、通りがかったランドリエール侯爵継嗣が見事に馬をなだめて助けてくれた様子に恋したそうです。 でも、顔合わせ前だったし、当時は曾祖母様はまだ社交界デビューしてなかったので、お互いに婚約者の顔を知らなかった、と。」

「「「「「「・・・・・・。」」」」」」

 私は話を終えて口を閉じる。 リリアーナの視線に気づき、2人して苦笑する。 他は全員、黙って頭を整理している様子。



 要は、曾祖母リリアーナ・ファム・ランドリエールの実際はユリアナで、曾祖母ユリアナ・ファム・ライエングラムの実際はリリアーナでしたってだけの話。

先代リリアーナと先代ユリアナは双子なんだから、家柄・血筋とも同じだから家としての不都合は無い。 世間体を守りつつ本人達の幸せを叶えたということで、入れ代わりを隠すことに文句は出ない。

 あとは、私たち2組の婚姻が成立すれば、2人の曾祖母は遺言が叶い、名前も血も3家の望みどおりになる・・・はずだった。

 ところが、私たちの入れ代わりで問題発生。 本来のままの組み合わせでの婚姻は中身(血筋)を考えると近親婚になってしまうので、なんとしてでも回避しなくてはならない。

そこにリリアーナの『他に想い人が居ます』発言で婚約解消の可能性が・・・。




 **********


「それでは、先祖にならって、再び結婚式で彼女たちを入れ代えましょう。 今までは兄妹でも実際は遠縁なんですから・・・-」

「戻しての婚姻なら、関係者と使用人たちを抑えれば問題無い、か。」

「リリアーナたちは2人ともまだ社交界デビューしてないので顔を知られてませんし・・・-」

「まだ正式な婚約発表もしてないし、な。」

「これで、私は彼女を思い切り愛せます。」

「俺もこいつを堂々と口説けるな。」

「え?」

「は?」

 考えをまとめたらしいユークリッド様が口を開き、マリウス兄様が同意している。

その内容に、リリアーナは目を見開き、私は呆然とする。 両家の親はまだ考え込んでいる。



「リリアーナ、いや、ユリアナ。 愛しています。 私と結婚してほしい。」

「私・・・ですか?」

「貴女です。 想いが報われる日が来るとは思えなかった。 でも、貴女も私を想ってくれているのかもと感じるときが有って諦めることが出来ずにいたんです。」

「私も・・・諦めなくていいんですね? 貴方を愛していいんですね?」

「それでは・・・-」

「はい。 喜んで。」

「ありがとう。」

 ユークリッドがユリアナ(元リリアーナ)に求婚し、彼女が受け入れていた。

つまり、ユークリッド・ファタル・ランドリエールとユリアナ・ファム・ライエングラムの婚約が決まった、名義はそのままに花嫁の本体だけ入れかえて・・・。

 『どうしても想いを断ち切れない、絶対に結ばれない相手』・・・実の兄だと思っていた男性ならば、それは悩みに悩んでいたことだろう。

彼女の『後で話したいこと』とはこれだったのかと納得。 だって、私と出会って入れ代ってるのが分かったからこそ、玉砕覚悟ででも告白しようと決意したんだろうから・・・。



「リリアーナ、お前も俺との結婚に同意するよな?」

「え?」

「曾祖母たちは『入れ代えて戻す』ことを望んで遺言を遺したんだぞ? 1組だけってことは無いのは分かってるだろ?」

 ユリアナ(元リリアーナ)たちに心からの祝福をささげてると、横から耳元に告げられた言葉に、思わず飛び上がりそうになる。 声のぬしはマリウス。

つまり、私もリリアーナ・ファム・ランドリエールとしてマリウス・ファタル・ライエングラムと結婚しろってこと?!


「え? でも、私には婚約の話は無かったはず・・・-」

「逃げ出しそうだったから、直前まで話すつもりはなかっただけだ。」

「出奔まで先祖にならうなよ?! 逃がしはしないけどな。」

 慌てて話をかわそうとすると、マリウスとは逆からライエングラム侯爵の声。

そこに、マリウスが、揶揄やゆする響きの中に本気をにじませて釘をさしてくる。


「兄だと信じてきたし・・・-」

「だから、これから口説くと言ってるだろ?」

「そんな様子はまったく無かったはず・・・-」

「俺を警戒させて気まずくなるだけだと思ってたからな。」

 予想外の展開にパニックになって思考がまとまらない。

 あれ? 確か、マリウスは、自分に寄ってくる『令嬢らしい魅力』をアピールしてくる相手に辟易へきえきしてたはず。

で、男っぽい、つまり令嬢らしくない私を口説こうとしてる?

でも、この性格ってマリウスの影響も大きいんだけど・・・ってことは、まさか性格形成を誘導されてた? マリウスならやりかねないかも?!

 とんでもない予想が思い浮かんで、パニックが酷くなる中、援護を求めて周りを見る。

ユリアナ(元リリアーナ)たちは相変わらず2人の世界。

2人の侯爵はユークリッドの提案を検討してる様子。 え!? まさか確定?


「貴女には想い人は居ないでしょ?」

「じゃぁ、恋愛結婚が2組になるのかしら?!」

「しかも、娘として愛してきた相手なのだから、私たちは嫁との苦労をしなくて済むし・・・-」

「夫たちも可愛がってきた娘を手放さずに済むのは喜ぶわね。」

 母として私を見てきたライエングラム侯爵夫人には退路を断たれ、ランドリエール侯爵夫人には嬉しそうに追い打ちを掛けられて・・・。

それに、さらりと暴露されたけど、2人の侯爵は揃って娘溺愛?!


「想い人なんて居ないよな。 社交界デビュー前だし出会いなんて無かったし・・・。 曾祖母様と違って遠乗りの趣味なんて無いし?!」

「っっ!」

「婚約も結婚式も、ユークリッドたちには先にやらせればいい。 実質的な婚約者には、すぐにでもなってもらうけどな。 そうすれば、今までどおりの組み合わせで住んでいても問題無いし・・・。 じっくりと攻め落として、十分に溺れさせてやるから、楽しみにしておけ。」

 兄だった男性が一人の男としての本気をぶつけて来た時、それまでの頼もしさがどう変化するのか、よく分からない震えとともに実感したのだった。


「親戚だと分かったし、これからも仲良くしてね?!」

 無意識だろうけどダメ押しのようなセリフをユリアナ(元リリアーナ)は言うし・・・。

 



 **********


 そして、2つのプロポーズの後、いまだパニック気味の私をよそに、当然の質問が来た。



「で、あの日記は?」

「出奔したリリアーナ曾祖母様が見つかって入れ代わり計画を決めた時に、お互いの気持ちの部分を2人で書いた物です。」

「わざわざ罪の証拠を残したと?」

「入れ代わりが大きなトラブルになったときに血筋の証明にでもなればと思って。」

 ユークリッドにはユリアナ(元リリアーナ)が、マリウスには私が答える。


「何故2人は日記のことを知ってたんです? そして、なぜ曾祖母たちの話でも断言することが?」

「曾祖母様の記憶が有るからです。」

「出会った瞬間に思い出したのは、これも、なのよね。」

「一度に2つのショックな記憶がよみがえったのか。」

「気を失うのも当然よね。」

 お互いを引き金にして記憶が戻り、頭の中を疑われそうな内容もお互いが居るから打ち明けられる。

実際の私たちは遠縁だけど、双子の曾祖母の記憶の影響か、初対面だし性格は違うのに息はピッタリ。



「今回も、先代リリアーナの曾孫がライエングラムの血筋に、先代ユリアナの曾孫がランドリエールの血筋に、それぞれ惹かれてるのね。」

「・・・先代リリアーナが亡くなってからリリアーナは生まれてるのよね。」

「あら? こちらもよ?」

「もしかして・・・-」

「記憶が有るのではなくて、生まれ変わり?!」

「生まれ変わっても前世と同じ血筋に惹かれるって・・・-」

「それも記憶がよみがえる前からなんて、運命みたいで素敵ね。」

 ランドリエール侯爵夫人の呟きに、ライエングラム侯爵夫人が反応する。

そこから思わぬ結論が出るかもと感じた途端に、ランドリエール侯爵夫人によって甘いロマンスに仕立て上げられてしまった。

ランドリエール侯爵夫人、夢見るのは自由だけど、運命的なロマンスとして語り継ごうとか考えないでね?!

ライエングラム侯爵夫人、私に色気の有る話が無いからって、これ幸いと暴走しないでね?! お願い!


「母の夢見がちなところはユリアナと似てますね。」

「リリアーナは現実的だし、生みの親より育ての親に似たのか。」

「生まれ変わっても、という気持ちは分かります。」

「俺たちも先祖の影響が有るのかもな。」


「時空を超えた執着愛か。 これを叶えないと、どうなることか考えたくもないな。」

「上手くやれば、今回も大団円ですよ?!」

「そうだな。 祖母孝行と子供の幸せの為に頑張るか。」

「そうしましょう。」

 息子たちの遣り取りを聞き、父親たちも方針を決めたらしい。

私のほうは後回しでいいから、と言いたくても家長の方針には口出しできないし、たとえ言っても、当主と継嗣けいしが乗り気では・・・。


「遅くても社交界デビューの舞踏会で、たとえ仮でも婚約発表するぞ。 害虫どもを近づける気も、よそ見させるつもりも無いからな。」

 そして、マリウスは、実にイイ笑顔で宣言。


 日記関係の説明のはずが、ことごとく、外堀を埋められていくきっかけになっている?!

私、どうなるの?! お願い、せめて自分と向き合う時間を!!




 ***** 完 *****

 曾祖母2人の双子ならではのリンク、曾祖母カップル2組と曾孫2組とのリンク、曾孫(2人の令嬢)同士のリンク、で『リンクス』。 出会いが明かし、日記が証明する複数の事実の絡み合い。

 あえて設定しなかったタグは『生まれ変わり』『婚約解消』『ガールズラブじゃない』『双子』『近親愛じゃない』など(笑)。

 主人公の恋愛面が中途半端っぽいですけど、この先はマリウスが確実にR18やらかしますし、作者にはR18は書けないので・・・すみません。

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