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0.64% あなたならやってみる?

ほんのちょっとのことで日常が変わる。

今なら本気でそう思える。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「何か面白いこと起きないかなー」


独り言をつぶやいてみる。

まあだからって何か起きる訳ではないが。


「どうしかしたか?」


「……ケイか」


(ひがし)(けい)

俺の唯一の同中であり、親友である。


パッシブのコミュ症持ちの俺とは違い、近寄りがたい雰囲気は出しているもののカーストの上位にいる。


俺?いつも通りの定位置ですが、何か?


「いや、ちょっと言ってみただけ。それより家帰ったら何狩りに行く?」


今日もいつも通りこいつとゲームやるつもりでいた。


「悪いな、ヒロ。今日は先に帰っててくれ」


でも今日はちょっとだけいつもと違っていた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


帰り道。

ケイと遊べないので時間ができてしまった。


「うーん、何しよう?ソロで行ってもいいけど、そこまでして欲しいのは無いし……」


そうだ、せっかくだし新しくできた本屋でも行こう。

行きたかったけど、一時間くらい歩くからまだ行ってなかったんだよな。


そう思い、スマホを取りだして場所を調べる。


「うーんと……大通りを通ると遠回りだなー。裏道通った方が早いか」


ま、時間はあるんだしと思い歩いていく。


しばらく歩いていると何か見られてる気がして、ふとそちらに視線を向ける。

すると若い男性が声をかけたそうに見ていたので、道が分からないのかな?と思い話しかけてみる。


「すみません、どうかしましたか?」


「……」


だんまりですか。

うーん、こっちから声をかけたからこのまま引き下がるのも失礼のような。


「すみません、大丈夫ですか?」


「……」


ダメだ。

全くっていうほど反応がない。


男性のことは無視し、気を取り直して本屋へ行こうとした時


「……0.64% やってみる?」





















「……はい?」


「いや、だからやってみる?」


「あの、まず何のことを言ってるのかさっぱりなんですが」


いやだって、さっきまでずっと黙ってたのにいきなり「やってみる?」だよ。


ちょっとヤバい人に話しかけちゃったのかなー、少し後悔していた。


「あ、ごめんごめん。いやねえ、珍しく高確率だったから驚いちゃって」


「……はあ」


うん、あれだ。ヤバい人だ。

これ以上かかわるといけない気がする。


「うん、でやってみる?転生」


「いえ、僕は用事があるのでそれでは……え?」


いや、ちょっとまて。

今何か転生って言わなかったか?


「そっか、残念だな。うーん、でも無理強いはできないし」


「いや、ちょっと待ってください!……あの今“転生”って言いましたか?」


十中八九俺の聞き間違いだろうけどね。


「うん、言ったよ」


「そうですか。やっぱ違います……えええええええええ!?」


は?うそ?マジ?え?ガチで?


「……うるさい」


「……すみません。いやでも“転生”って、あの転生ですか?」


交通事故で死んで、気づいたらベイビーで母親相手にご褒美プレイ……げふんげふん、羞恥プレイするあれか!?


「……うん、合ってる合ってる!その転生で間違いないよ」


今の怪しい間は何なのだろう?

でもそんなことはどうでもいい。


「あの、その話詳しく聞かせてもらえませんか?」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


今俺は喫茶店にいる。

いや、あそこでもよかったんだけど、万が一他の人に心変りして、その人を転生させるってなったら嫌じゃん?


「……まあこんなところかな?」


教えてもらったことを簡単にまとめるとこうなる。


・転生できる!


・でもうまく転生できる確率は0.64%


・低いと思うかもしれないが、そこらへんの人は0.00…とかいう確率なので俺の数値を見てびっくり!


「どうする?やってみる?」


「お願いします!」


「そうだよね。やっぱ悩む……ええっ!?」


ん?何かおかしいか?

だって異世界転生だよ?

小説の中にしか存在しないと思ってたあれだよ?

即決にきまってるじゃん。


ここの世界での未練は?

ないないない、とは言い切れない。

そりゃケイだっているし、生徒会(オタクの墓場)という居場所もある。

両親にここまで育ててきてもらった恩もある。


俺にしては恵まれてる。

今まではそう思ってきた。


「お兄さん、お願いします」


けど、目の前に主人公になれるかもしれない人参がぶらさがってんだよ?


「やらせてください」


我慢できる自信は無い。


「うん、まあ僕もノルマがあるからありがたいんだけど……」


今度はお兄さんがうーんと悩み始めた。

そんな殺生な。ここまできて、やっぱ無しはきついですって。


「お願いします!この通りです」


そう言って土下座した。

人生で初めて。

イジメられようが何されようが、負けた気がするから土下座だけはしないと心に決めていた。

でも本気でやりたいと思ったらそんなちっぽけなことは気にならなくなる。


「……」


沈黙が怖い。

でもはっきりダメって言われるまでは絶対諦めない


「お願いします!どうか……」


「……」


「お願いします!」


「……うん、じゃあやる?」


「本当ですか!?ありがとうございます!」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


もう二度と戻ってこれないと思うので、皆にメールを送った。

電話はしたら気持ちが鈍るからしない。

中学校の友達に。生徒会のやつらに。ケイに。兄弟に。

そして親に。

最後のメールを書き終わって、送信する。


お父さん、お母さん。

ごめんなさい。


「……準備は良い?」


「……はい」


転生をするのに大がかりな準備がいると思ったら、喫茶店のカウンターの奥の部屋でやるらしい。


ふうっと息を吐いて部屋に入る。


RPGによくある石の壁の部屋だ。

今から本当に転生するんだな……。


「……手を出して」


ん?何でだろう?

まあ言われたとおりにするか。


「ゴニョゴニョ……、よしと」


「あの、今の何ですか?」


「あっちの世界に行ったら“ボックス”と唱えて。簡易ハウスボールと食べ物シート、万能辞書が入ってるから」


おおっ!何かすごそうなものくれたみたい。


「すみません、ありがたく使わせて頂きます」


「うん、それじゃね」


お兄さんが手に持っていたボタンを押した瞬間、俺の意識は消えていた。


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