16話
「……っとやべぇ、遊びすぎた」
夢中になりすぎていつの間にか、かなり時間がたっていた。
いかん、魔法が面白すぎる。
あの後、毒魔法を練習しようと思ったが、相手がいないくて困った。
いや、流石にこれはスライムやアルラウネにはできないからね。
かといって、いくら耐性もちとはいっても自分にやるのは怖いし……。
おっさんに毒魔法の試し打ちをしてもいいけど、リリアちゃんのお母さんに会うまで止めた方が良いだろう。
あと、冷静になったあと毒魔法に知力関係ないことに気づいた。
転移魔法の時に知力関係なくて新しく買ったのに、同じ失敗してる。
本当に何やってんだよな、俺。
またも暇になり、悩んだ結果「もう一個だけ」と500ポイントの妨害魔法を買った。
妨害魔法は地面に段差を作りだす嫌がらせから、特殊な魔力波で平衡感覚を狂わせるもの。
ある一定範囲内の詠唱をできないようにするものまであった。
ただレベルが低いと規模が大きいのは使えない。
でも今は問題ない。
どうせダンジョンは少数精鋭のぶつかり合いだ。
数人の邪魔できれば十分。
何百人という単位で妨害する魔法は使わないはずだ。
あと、先に一個だけ申請しておく。
妨害魔法で亀甲縛りができるのに心が惹かれたわけではない。
毒魔法といい、煩悩にまみれてる訳ではないのだ。
買った後、妨害魔法の練習をした。
だが地面に段差を作るのはすぐ終わってしまい、魔力波や詠唱の禁止は試す相手がいない。
なので他にやることが無かったから、しょうがなく亀甲縛りのための練習をしていた。
ここ重要。
その練習なんだが別に誰かを縛るというわけではない。
その魔法を応用すれば亀甲縛りができる、ということだ。
元々の使い方は、地面から足を引っ掛ける縄を作りだすという魔法。
その作り出した縄は魔力を消費することで動かすことができる。
ちなみに消費するMPは知力依存だとか(by万能辞書)
そのおかげか1mの縄なら一秒あたり10しか消費しないんだよね。
10mくらいの縄でも100くらいしか使わない。
この縄は最初、うまく操れなかった。
いや、一本ならできないことはないんだよ。
ただ複数縄を操ると、何か阿修羅みたいに100本の手で動かしてる感じがするんだよね。
その感覚にめっちゃ戸惑った。
でも何か悔しくて夢中になって練習してたら、ちょっとだけ上手くできるようになった瞬間があったんだよ。
そこからは感覚が慣れて今までがウソみたいに動かせる。
10本くらいまでなら余裕。
これで亀甲縛りだろうが磔みたいな拘束だろうができる。
ちなみにこの縄、物理法則はガン無視ね。
いきなり地面から出現 → 一気に縄が伸びる → 瞬く間に巻きつける
これ余裕だから。
ただ、まだ実際に亀甲縛りとかはやってない。
早く試してみたいぜ(この魔法を一生使う機会がないといいけどな!)
いかん……本音と建前が。
あ、亀甲縛りが分からなかったらググって調べてくれ。
ただし調べる時には1つ注意が。
たまに男(しかも小太りのおっさん)が縛られてるページがあるからくれぐれも気をつけよう。
俺はそれで精神的ダメージを受けた。
あれはガチで誰得なんだよな。
閑話休題
「おーい、リリアちゃん。そろそろご飯食べよう」
リリアちゃんを起こす。
このまま寝かせてもいいんだけど、昼ごはんも食べてないからな。
流石に今の健康状態的に夜を抜くのはまずいと思う。
「……ぅ、ぁ……っごめんなさい!」
意識が覚醒したようだが、焦ったようにいきなり謝ってきた。
分かんないけど、多分これも奴隷の時の何かなんだろうな。
「大丈夫、大丈夫。リリアちゃんは何も悪くないよ」
頭をなでながらリリアちゃんをなだめる。
リリアちゃんは一瞬びくっとしたが、ここがダンジョンだったと気がついたらしい。
落ちついてくれたみたいだ。
にしてもリリアちゃんなでるの気持ちいな。
獣人だからか?
もふもふは正義って今ならよく分かる。
「気分は大丈夫?よく寝れた?」
「……はい」
それはよかった。
まだあのおっさんがいるからあれだけど、少しでも休めたならそれでいい。
「それじゃあ夜ご飯にしようか」
「……はい!」
昼飯食べてないから、お腹はすいてると思う。
なのでまるまる一個皮をむいて渡す。
「……いいんですか?」
「良いよ、いいよ。全部食べちゃって」
うなずいてあげるとリリアちゃんは勢いよく食べ始めた。
すごい食欲だな。
でもやっぱ子供はこうじゃないとね。
俺も自分用にもどきをむいて食べる。
「……にげぇ」
いつも通りの苦さ。
何でこんなのバクバク食べれるんだろうな?
……いや、あれか。俺に気を使ってくれてるのか。
リリアちゃんならありえそう。
もしくは苦くても量食べれるだけありがたいってとこか?
とりあえず食は早く改善していかないとな。
結局リリアちゃんはもどきをまるまる1個食べきった。
……俺もまさか食べきるとは思わなかったよ。
いや、別に食べれるなら食べたほうが良いからいいんだけどね。
「リリアちゃん、お代わりいる?」
「……」
リリアちゃんはフルフルと首を振った。
お腹一杯になったみたいだね。
「それじゃあ、お風呂入っててくれる?その間にあのおっさんに夜飯を食べさせるから」
「……」
リリアちゃんは一応コクッとうなずいてくれた。
ただ、明らかに挙動がおかしくなってる。
「それじゃあ入ってきて。あと、俺が良いというまでこの部屋には入らないでね」
これは絶対おっさんに会わせたらいかん。
でも机はここにしかないからここで飯を取るしかない。
なので少しの間だけリリアちゃんに退避してもらう。
こんなことならケチらずに机と椅子セットを買っとけばよかった。
後悔先に立たず、ってまさにこのことだな。




