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溶岩の大地の中に

 やがて、暗黒弾の影響が収まってくる。

 幸いなことに、地球全体に大きな影響を与えはしたが、地球そのものを破壊するまでには至っていなかった。

 いくつもの山が崩れ、近くの海が割れて陸になっているだけ。

 大和は、その様子を満足そうにながめながら、得意げな表情で、元は砂浜だった場所を見下ろした。

 今は、煮えたぎる溶岩で覆われた場所。海水が浸入を試みては、一瞬のうちに蒸発していく。

 そんな場所ではもう生きているものなどあるはずもない。生き残っていられるものなど、あるはずもない。

 だが、大和は、その溶岩の大地の中に奇妙なものを見つけた。

 大和のいる上空からは砂粒のほどにしか見えない小さな光。かすかで淡く、弱々しい。ともすれば、煮えたぎる溶岩の金色の光の中に紛れ込んでしまいそうだ。

 不思議に思い、その正体を確認するために地表へ近づいていく。

 近づいていくと、その小さな光の大きさや形、そして色がはっきりしてきた。

 丁度、人間の身長ぐらいの大きさで、真ん丸い光の塊。そして、その色は桃色だった。

 さらに近寄る。気がつくと、吹き飛ばされた天使たちの一部もようやく戻りはじめている。

 大和は、そんなことに構わず、さらに良く見ようと、その桃色の丸い光の塊に近づいていった。

 その光の中心部には、なにかが見える。なにかの影が周りの光を通して浮かんでいる。

 円錐の形。いや、違う。完全な円錐というわけじゃなく、円錐の上部が二つに割れている。

 大和は、ようやく、その円錐形の形がなにを表しているのかに気がついた。

 これは…… 人だ! 二人の人物が顔を寄せ合いながら、抱き合って座り込んでいるのだ!

 抱き合って……!

 大和は、今さっき、自分が殺したカップルの最後の姿を思い浮かべた。あのとき、あの二人は、座ったままお互いを守るように抱き合って、見詰め合って……

 大和は、その桃色の光の塊のそばまで下りてきた。足元は煮えたぎる溶岩が流れ、猛烈な熱さが大和を襲う。だが、そんなことすら、もう気にならない。今や光の中の様子が手にとるように確認できる。

 その目の前の光の中では、二人の人物が抱き合った姿勢のままじっとしている。お互いに眼を閉じて、唇を……重ね……

「うをぉぉぉぉーーーー!」

 大和の手の中で、闇の暗黒弾が次から次へと生まれ出る。発生するそばから片っ端に、その桃色の光の塊に向けて発射される。なんとか、二人を引き離そうと、執念深く、何度も何度も撃ち込む。

 だが、そのどれをも、中の二人には届かなかった。光の塊はビクともしなかった。それどころか……

 さっきよりも、桃色の光の塊が膨らんでいる。大きくなっている。

 そんなことに気がつきもせず、大和は攻撃をやめない。

 そんな中、中のカップルが唇を離し、恥じらいながら、視線を逸らす。そして、何かをお互いに伝えあったようだ。

 次の瞬間だった。その桃色の光の塊が急激に膨張した。そして、あっという間に、大和の体を飲み込んだ。

「ぐわぁあああ~~~~!」

 大和の口から、この世のものとは思えないような断末魔が放たれた。

 そして、一瞬の後に、大和の体は、遠くへ弾きとばされたのだった。


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