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ドゥドミナリオンの闇聖典  作者: くまのすけ/しかまさ
デート(?)×ストーカー
23/39

お人よしたち

――うむ。あんさんら、人間っちゅうんは、ときどきわからんことしまんな、ホンマ。

 オレの頭の中でも、疑問の声が。

 ま、そりゃそうだ。オレたち人間自身でも、自分の行動について、すべてを理解しているわけではない。あの二人のさっきの行動にも、オレにとってナゾな部分だって確かにある。けれど、それでも、人間であるオレに分かるものもないわけじゃない。

 オレたち人間は、他者に好意を抱き、他者を激しく求めることがある存在なのだ。大和が見せたあの場面の様子は、あきらかにそういうことだったし、オレが今まで気づいてもいなかった大和の本心があの一瞬の態度にはっきりと表れていた。

 だが、他者を求めることをしない、する必要がないこいつらには、あの場面の意味を真に理解するなんて不可能なことだろうし、それを人間は妙なことをすると不可解に思うのは当然のことなのだろうな。

 多分、今、オレたちが自分の持つ言語能力のすべてを費やしたとしても、今のことをこいつらが本当の意味で理解するなんて、とても怪しい話だ。

 って、そんなことより、大和が知っている若草さんの想い人ってだれなんだ? もしかして、オレたちと同じ学校の生徒なのか? それとも……

 オレが隠れて悩んでいる間も、もちろん大和たちは話し込んでいる。

「あ~、ゴホン。あれは、そう、あれだ。若草さんの額に俺の額を押し付けることで、記憶の交換を行い、若草さんがウソをついていないかどうかを確認しようとしていただけだ。うん」

「えっ? そうだったの。私、てっきり…… あ、そ、その、ごめんなさい。ヘンな誤解をしてしまって、ごめんなさい」

 青くなったり赤くなったりして、ペコペコ謝る若草さんに、怖い眼をして睨む大和。あれは、すこし黙っててくれないかと心の中で念じている眼の色だな。

 そんな眼の色に気がつきもせず。

「わ、私、初瀬くんが、そ、その、私に、き、キ……」

「わぁっ! っとと、な、なにを言っているのかな、若草さんは。あはは。お、俺がそんなわけ。あはは」

 わざとらしく、頭の後ろを掻いている男が一匹。涙眼だし。

「あっ、そ、そうだったんだ。ごめんなさい」

「い、いいって。ご、誤解だったのだから。あはは」

「そうなのか、お主ら人間には、記憶を交換するような機能が…… うむ。ますます興味深い。このように貧弱な体だというのに、意外と高スペックよのぉ」

「なるほど、それゆえあのような…… ふむ。今後、そのことについては考慮しておかずばなるまい。ふむ」

 あ、あれ? これって大和のウソに大天使たちコロリとだまされてないか? それに、そのウソを信じてしまったっぽい人間も若干一名いる気もするが……?

 そして、ここにも、だまされやすい憑依体が一人(ん? 一冊か?)……

――な、なに! そ、そのような機能が! ワテが最初にあんさんの体を精査したときには、そんな機能ありまへんでしたのに! ど、どういうことでっか、富雄はん?

 ったく! 面倒くせ~!


「そんなことより、わ、私にだって、プライベートってあるのだから、ダメよ、そんなことしようとしちゃ。めっ!」

 赤い顔の若草さんがそんなことを言いながら口を尖らしている。小動物みたいだ。な、なんだ、この生物は?

 か、かわいい~ 眺めているだけで癒されるぅ~

 ううう…… こんな物陰から盗み見るんじゃなくて、あの近くで見てみたい。大和その場所をオレと変わってくれ!

「あははは。そ、そうだよな。ご、ごめんな」

「うふふ、もう、『めっ!』だよ」

「あははは~~~~」

 うぐぅ~ 大和に対する殺意が……

 こんな風に、二人が仲良く笑いあっているのを見ているのが、正直、つらい。なごやかに会話しているなんて……

 く、くそぉ~!

「そんなことより、本当に、若草さんは昨日、なにも見ていないんだね?」

「え、う、うん。そ、そうだよ」

 だから、そこで視線を逸らさないでよ! ウソって、バレバレだよ!

「そう……」

 大和め、まだ疑ってるな。というか、ああいう態度を目の前に見せられて、疑わない方が、よほどのお人良しか。

「うん、分かった。俺、君のこと信じるよ」

 大和が大きくうなずき、自分の胸を強く叩いてみせる。

 って、ウソだろ! こんなところに、そのお人良しがいたよぉ~

 若草さん、その言葉に、とても気まずそうな表情を浮かべている。引きつった笑顔を浮かべ、大和に微笑む。

 それに対して、大和はいつものように明るく爽やかな笑顔を返していた。


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