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プロローグ

可能なかぎり、毎日ちょっとずつ投稿の予定です。

年末までにエピローグまで到達できればいいな。

一応、SFっぽいのは、プロローグだけです。

 太古、この世界にあまた存在する宇宙の半ばまでをも支配する者があった。暗黒の大魔王と称されたその者は、銀河一つ分にも及ぶ肉体を持ち、念じるだけでブラックホールすら消し飛ばす強大な力を誇っていた。

 その力は偉大で、だれも逆らえず、対抗しうるものもなかった。

 そして、その力に惹かれ、魅了される者も多く、幾多の宇宙の知性体たちが自ら望んでその支配下へ入ろうとした。そんな彼らは大魔王の手先となって、命じられるままに他の宇宙へ侵攻し、大魔王の勢力拡大を手助けした。そうして、大魔王の支配宇宙は増加の一途を辿るばかりだった。

 そんなあるとき、大魔王は偶然にも世界の未踏査辺境領域に一つのちっぽけな宇宙を見つけた。

 それまでだれにも知られていなかった宇宙。発見直後に探索をおこなった大魔王の手下たちは、その宇宙には、大魔王の脅威となりうるような勢力も、また、大魔王の勢力拡大に貢献するような資源エネルギーも存在しないと報告してきていた。

 もちろん、そんな役に立たない宇宙など、わざわざ侵略の触手を伸ばすまでのこともないのだが、ただ、この大魔王は貪欲だった。

 大魔王は、この世界に存在するありとあらゆるものを自分のモノとしておきたかった。自分の支配下においておきたかった。そして、その貪欲さの前では、新たに発見したどうということもないちっぽけな宇宙ですらも見逃しの対象とはならなかった。

 直ちに、征服軍が編成され、そのちっぽけな宇宙へ送り込まれることになる。

 もちろん、予め偵察者たちが報告していたように、その宇宙には、この様々な宇宙の知性体たちで構成される強力な大魔王軍に対抗しうるだけの原住知性体勢力があるわけではない。征服者たちにとっては、わけのない侵攻になるはずだった。そして、実際に、その宇宙に侵攻を開始した大魔王軍は連勝につぐ連勝だった。その宇宙のどこの銀河、どこの宙域であっても、原住知性体たちは大魔王軍に対抗することはできなかった。

 たちまちのうちに各銀河・各星系の知性体たちは侵略者たちの前に屈服し、ある者たちは皆殺しにされ、ある者たちは奴隷として他の宇宙へ連れ去られた。


 だが、それでも、あきらめずに抵抗を続ける知性体も存在していた。

 膨大な数の仲間の犠牲を出し、出身銀河・種族を越えて共闘し、激烈な抵抗を試みたが、結局、一度も大魔王軍を撃退することはできなかった。

 そして、ついに、その宇宙の抵抗軍は小さな銀河の片隅のしょぼくれた太陽系のみすぼらしい惑星の貧弱な要塞の一つにまで追い詰められた。

 もう、この要塞を陥落させられてしまえば、すべての抵抗は終焉し、この宇宙も完全に大魔王の支配下に組みいれられる。しかも、この要塞を攻略しようとする大魔王軍にとっては、要塞どころか、このしょぼくれた太陽系全体を吹き飛ばすことすら朝飯前だった。

 抵抗軍のだれもが絶望していた。だれもが、自分たちはこの最後の戦いが始まれば数瞬以内には、その命が消え去る運命であることを知っていた。だれもが、死を覚悟していた。

 けれども、そのだれもが、侵略者である大魔王軍に降伏しようなどとは考えていなかった。

 たとえ、一瞬で終わる戦いだとしても、命だとしても、最後まで抵抗を続ける決心でいたのだ。

 そうして、惑星上の要塞では、最後の日が暮れた。

 要塞の内部では、この宇宙の各地から集まった各知性体種族が、お互いに抱擁を交わしあい、酒を酌み交わしあった。お互いの勇気をたたえあい、翌朝にはじまる最後の戦いの健闘を誓い合った。

 そして、同じ種族同士の間では、それぞれのパートナーとの別れを惜しみ、最後に絆を確かめ合った。最期の瞬間まで、お互いがお互いのことを想いあい、信頼しあうと誓ったのだった。

 やがて、陽が昇る。

 抵抗軍の戦士たちは、それぞれの戦闘準備に入り、戦士たちのパートナーでもある非戦闘員たちは、それぞれの神に祈りを捧げた。自分たちの祈りがそれぞれの心にかける戦士たちを守り、幸運をもたらすように、奇跡が起きるように、真剣に、そして、敬虔に。


 ついに、大魔王軍の最後の攻撃が始まった。

 そのしょぼくれた太陽系を取り囲むように配置した宇宙戦艦から、一斉に恒星崩壊ビームが照射され、超光速で飛ぶ惑星破壊ミサイルが発射された。

 それらは、恒星と要塞がある惑星へ殺到し、着弾し、爆発する。

 各宇宙戦艦の艦内では、勝利を確信する大歓声が沸き起こり、この侵略戦争の終結を祝う宴の準備が急ピッチで整えられていく。

 戦闘開始から一時間ほどたったころだろうか、それまで恒星と惑星を包み込んでいた爆発光が弱まり、ビームやミサイルの爆発によって、星表面から吹き上げられ、星の姿を包み込んで観測できなくしていた原子の雲がしだいに薄れていく。

 さきほどの攻撃がキチンと効力を発揮していたのであれば、そこにはもう光や熱を発する恒星も、固い岩盤でできた惑星も存在していないはずだった。そして、宇宙戦艦の乗員のだれもが、そうなっていることを疑ってすらいなかった。

 やがて、原子の雲が薄れ、再び観測ができるようになってくる。次の瞬間、戦艦内部に警報音が鳴り響いた。浮かれ気分でいた戦艦の乗員たちには、なにが起こったのか分からない。分からないながらも、規則にしたがって戦闘配置につく。

 次の瞬間、乗員たちは、自分たちの視覚器官が故障したのではないかと疑った。原子の雲が薄れ、再び観測できるようになった対象宙域を捉えた外部観測用モニターに写っていたのは…… しょぼくれた恒星とみすぼらしい惑星の変わらない姿だった。


 よくよく観察すると、その恒星と惑星は、鮮やかなピンク色の繭のようなオーラによって、連結するように包みこまれている。

 侵略軍の指揮官たちは、慌てて、攻撃の第二派を命じた。だが、その攻撃も、最初の攻撃と同じで、恒星と惑星には何の影響も与えなかった。

 どうやら、あのピンク色のオーラが大魔王軍のすべての攻撃を退け、無効化しているようだ。

 しかも、その恒星と惑星を包み込んでいたピンクのオーラは、時間とともに拡大しているようでもある。

 戦艦内部で、そのオーラの分析が急ピッチでおこなわれた。だが、いくら分析しても、その正体はまったく明らかにならない。

 あまたの宇宙の最高頭脳や既知宇宙を網羅する膨大な知識の量をもってしても、そのオーラを解明する手がかりすら得ることができない。

 その間も、オーラの拡大は停止することがない。いや、それどころか、拡大スピードは、しだいに加速すらしているようだ。

 ついに、侵略部隊の最前線にいた一隻の宇宙戦艦とオーラが接触した。

 次の瞬間だった。その宇宙戦艦が急激に膨張した。いや、違う! 爆発したのだ!

 その宇宙戦艦の周囲にいた船も次々にオーラと接触して、同じように爆発する。

 難を逃れようと、近くに浮かんでいた何隻もの船が一斉に向きを変えようとしてお互いに衝突し、大破する。

 そうなると、もうパニックの連鎖だった。

 侵略軍の指揮命令系統や秩序は崩壊し、どの船も我先に逃げ出す。大魔王軍はあっという間に軍隊の態をなさなくなった。

 それでも、オーラの拡大は止まらない。それどころか、拡大のスピードは加速し続ける。

 すぐに、その恒星のあった銀河全体がピンク色のオーラで覆われ、近隣の銀河も包み込まれ、そして、銀河団が、ついには宇宙全体がオーラに包まれた。

 その宇宙に運び込まれていた他宇宙産の物質は、つぎつぎにエネルギーにまで分解され、宇宙の外へ弾き飛ばされる。それは、侵攻してきていた宇宙戦艦や異宇宙知性体たちも例外ではなかった。

 あっという間に、そのちっぽけな宇宙から大魔王を奉じる者たちは駆逐されてしまった。

 だが、大魔王にとっては、それで終わったわけではなかった。

 そのちっぽけな宇宙で生まれたピンクのオーラは、その宇宙の近隣に存在していた宇宙でも発生し、それらの宇宙製ではないすべての物質や生命体たちをエネルギーレベルにまで分解排除した。

 その連鎖は、次から次へと広がり、拡大し、大魔王の支配宇宙群を次々に飲み込んで行く。ついには、大魔王の本拠宇宙にまで到達した。

 瞬時のうちに、ピンク色のオーラが大魔王の肉体がある銀河を包み込んだ。

 そして、あっけなく、その銀河規模にまで広がっていた大魔王の肉体は、爆散したのだった。


 今やこの不可思議な話は伝説となって久しい。だが、それは実際に太古におきた出来事のひとつだ。

 そして、我々、神々は、長期に及ぶ分析によって、その謎のピンク色のオーラの正体を、すでに明らかにしている。

 そのピンク色のオーラとは、ちっぽけな宇宙の知性体たちが最後に見せた真摯にして、深遠な思いやりの心、愛するものに最後まで寄り添おうとする気持ち、それらのモノに宇宙の根源エネルギーが共鳴し、自然発生し、顕現した世界最強の力だったのだ。

 何ものをも寄せ付けず、何ものも抗しえない力。

 そう、それは、一つの言葉として今日では知られている。

 この世界の根源的にして、普遍的な最強最大エネルギー。

――――『愛』の力として。

ドゥドミナリオン著『神々が我に語らう真実』


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